カンタベリーのお姫様
豊かな自然に囲まれた小さな国・カンタベリー王国。
当時の国は平和そのものだったからそこに住む人々は笑顔がいっぱいだったね。
それもそのはず、この国には『ガーディアンズ』って言う最強の近衛兵部隊がいたからね。
もちろん私はそこの新人として日々励んでいたよ。
驚いた?まぁ当時の私は入学したての君たちみたいに強くなかったからね。
でも、平和は長くは続かなかった。
『空の上』からやって来たインヴェーダーが奇襲を仕掛けて来たからカンタベリーのほとんどが崩壊。
国中は炎と血の匂いが充満し、今やカンタベリーは奴らの占領地となってしまった。
辛くも脱出出来たのはカンタベリー女王とその妹の姫様。
みんなも知るエヴァ団長と先輩騎士2人と私。あとはみんな散り散りに散って行った。
いつか故郷を取り戻すと信じて私達はこの日本でその機会を待っています。
「って言うのが三年前の話。どうだった?」
紙芝居を用いて最後まで言い切ったキシノに話を聞いていたA組一同は複雑そうな顔をする。
「…なんつーか、結構ハードなっていうか………」
チャラくてムードメーカーな上鳴はどう言葉にしたらいいか分からないようだ。
「あの敵が言っていた『カンタベリーの生き残り』って言うのはキシノに対してだったのか」
障子は複製口で納得したような口調で言う。
「で、そのインヴェーダー?って敵はなんでUSJ………って言うより日本に来たんだ?」
タラコ唇が特徴的な佐藤が疑問を口にする。
「しかも敵連合って連中とつるんで行動してたよな?」
「キシノさんの話では人類を滅ぼすかのように言ってましたけど…」
「…多分頭のいい敵が考えたんじゃないかな?」
切島と八百万の疑問をキシノが答える。
「インヴェーダーと接触して取引をした。詳細は知らんけど利害の一致でヒーロー育成場である雄英に目をつけて攻撃を仕掛けたってところかな。………これ団長の受け売り」
「利害の一致か。辻褄は合うな」
轟は納得するように頷く。
「………じゃあ、彼らの目的って?」
緑谷がおずおずと聞いてみる。
「さあ?でも一つわかる事といえば、奴らは再び現れる。いま私たちができるのは全力で戦うだけだよ」
決意じみた宣言にA組一同は黙ってキシノの話を聞いていた。
するとキシノはパンっと両手を合わせる。
「…さて、暗い話はおしまい。体育祭の話をしましょうか!」
「テンションの格差よ」
真面目な話から一変。
やたら興奮した様子のキシノ。
怪我から復帰した相澤先生(ただしまだ包帯が巻かれている)によると、かつてオリンピックが流行っていたものの、個性持ちの出現でなんやかんやで廃れてしまい、雄英のみで開催される『雄英体育祭』がその代替わりとなっている。
「そんなに体育祭楽しみだったのか?」
「当たり前だよ!体育祭どころかこう言う学校イベントは初めてだから楽しみで仕方ないんだよ!」
興奮で捲し立てるキシノ。
鼻息が荒く目もギラギラと光っている。
「じゃあその前は何やってたの?」
「(すんっ)ひたすら訓練生活ですが何か?」
「すいませんでした」
(綺麗な土下座…!?)
芦田が地雷を踏んでしまい、キシノの表情が消えた。
そして素敵な土下座を披露と共にA組が驚愕した。
「むふー、クラスメイトと共同で競争、弁当、組体操………」
「おい、なんか知識偏ってないか?」
一体何と混同しているのか苦笑いのA組。
するとガラっ!とドアが開かれる。
「HEY!リスナー・キシノ!今あいてるかい?」
ドアからプレゼント・マイクがキシノを呼ぶ。
「マイク先生?珍しいですね。何かようですか?」
「俺って言うより消太の用事だぜ。話があるから来てくれってさ」
「ちなみに俺は呼び込みお使いだ」と付け足すプレゼント・マイク。
「…分かりました。で、相澤先生はどこに?」
「それならまず生活指導室に………」
キシノとプレゼント・マイクは教室を出て行った。
「相澤先生、キシノに話ってなんだろうね」
「あれじゃないか?クエスターとか」
「もしくはUFJの件かもしれませんわ」
残ったクラスメイト達はキシノについて話し始める。
「いろいろ考えたけど、キシノって何気にすごいの経験してるんだな」
「えと、カンタベリーの最強部隊ガーディアンズの新人で、インヴェーダーの戦いの生存者で、一人前のクエスターで…」
「………そのうちNo. 1ヒーローになったりして」
「一番は俺だ!!殺すぞ!!」
「かっちゃん抑えて抑えて!」
思い耽る上鳴、一つ一つ数える麗日、一言ぼそっと言う葉隠、一瞬反応する爆豪と収める緑谷。
ガラッ!
そんな時ドアが開く音がした。
「あれ?もう戻って来たの………………ん?」
一斉にドアの方を見るが、そこにはキシノではなく、金髪でエメラルドが埋め込まれたティアラを被った8歳前後の小さな少女がいた。
少女はキョロキョロと教室を見渡しているが、少しして悲しげな表情になる。
「…誰だあの子」
「どっかの生徒の子かな?」
「もしかして迷子?」
ほとんどがヒソヒソ話したりじっと観察している中、緑谷が前に出る。
「あ、あの〜。君はどうしてここに?」
「…ガーディアンを探しに来たの」
問われた少女は少し間をおいて答える。
『ガーディアン』と言う名前にA組はある人物を連想した。
「ガーディアン?………ああ、キシノさんだね」
「でもタイミング悪かったな。さっき呼び出し受けて出ちまったよ」
「そうなんだ…」
瀬呂の説明に少女は深くため息をついた。
この場に沈黙が支配する。
(お、おい!誰か声かけろよ)
(いやいや無理無理ハードル高いって!)
(や、ヤベェ。こんな娘に男らしい会話が出てこねぇ!)
(どうしよう!ウチ慰め方分からん!)
(ヤオモモ!口田!なんかないか!?)
(!………ブンブン!(全力で首を振る))
(お、女の子は人形が好きと言いますし、私のこけしで…)
(何故よりによってこけし!?)
(…む、無垢の阿鼻叫喚)
(お、落ち着け。素数を数えて落ち着くんだ!3.14………って円周率ではないか!)
ほとんどのクラスメイトは少女に対して何したらいいか分からない様子。
「そ、そそ、そうだ!キシノさんが帰ってくるまで僕たちとお話ししようか!」
沈黙に耐えかねた緑谷が少女に提案する。
「お話し?お話しできるの?」
「で、できる範囲でなら…」
少女は少し明るさが戻る。
「分かった!お話しする!」
元気になった少女にクラスメイトはホッと胸を撫で下ろす。
「じゃあ、みんなガーディアンのことどう思ってるか教えて!」
少女はキシノの話を持ち出した。
「キシノさんのこと?………じゃあ僕が初めて会った時だけど………」
それからA組は1人を除いてキシノの事を語る。
入学試験、体力測定、ヒーロー訓練、友好関係、そしてUSJの出来事(極力過激な内容は省いて)など。
話を聞いている少女はワクワクした表情で聞き入っていた。
「そっか。ガーディアンここでも大活躍なんだね!」
「まぁそうなるかな」
両手を広げてすごい!と表現している少女にクラスメイトは可愛いと思いながら同調する。
「じゃあガーディアンはこの学校で一番だね!」
機嫌を良くした少女だが、『一番』と言う言葉に過敏に反応する人物がいる事を知らなかった。
「一番は俺に決まってんだろうが!!」
爆豪である。
無視を決め込んでいたのだが、『キシノが一番』と言う内容に流石に無視するわけにはいかなかったのである。
少女は爆豪の怒鳴り声にビックリしてしまう。
「おい爆豪!女の子相手に大声出すなよ!」
「うるせぇ!俺は常に一番を目指してんだ!あんなクソ騎士より俺が一番になるんだよチビスケ!」
切島が非難混じりに爆豪を嗜めるが、聞く気はない様子。
少女は爆豪の剣幕に怯えた様子。
「ぅ………ぅぅ」
「あー、爆豪泣かせたー」
「悪いんだー。爆豪悪いんだー」
「ああ、泣き止んでくださいまし。とりあえずこのこけしを」
「いやだからなんでこけし?」
涙顔になった少女に芦田と葉隠が非難じみた目を向け、八百万がこけしで慰めようとする。
爆豪は少々複雑そうな顔をする。
「ごめーん!みんなお待たせ………」
すると話し合いを終えたキシノが戻って来た。
か、様子が変だったのですぐに状況確認。
涙顔の少女、慰めるA組、じっと睨む爆豪。
把握。
「
「べぶぉあっ!?」
「かっちゃああああああああああん!!?」
少女をいじめたであろう爆豪を一撃でビンタで沈めたキシノ。
「ガーディアン!」
「大丈夫ですか?もう安心してください。あっちの悪い虫ケラのような爆弾魔は私が退治しましたので」
「サラッと爆豪に追い打ちかけんなよ」
少女とキシノが抱き合い、さり気なく毒を吐くキシノに切島がツッコむ。
「それにしてもよくこんなところまで来れましたね」
「うん!ガーディアンのことを聞いて会いに来たの!」
A組一同と話してた時よりもハキハキとした口調で会話し合うキシノと少女。
「だとしてもここ雄英のセキュリティは先の事件から強化されて入れないはずですが…」
「え?そうなの?あたし高い木から飛び移って来たんだけど」
「あぁ、塀を飛び越えて………なかなかアグレッシブですね」
「えっへん!」
「いやいやいやいや!普通に不法侵入だから!」
ドヤ顔の少女だが、緑谷の言う通り不法侵入である。
「………だめ?」
「だめ…だけ………ど………」
潤んだ少女の視線に緑谷は情緒が揺さぶられる。
「次からは玄関から入ったほうがいいですよ姫様」
「分かった」
「いや多分そう言う問題じゃない」
2人のやりとりに切島は力無くツッコむ。
「あ、ガーディアンに渡すものがあるの。はい!」
すると少女はキシノに正方形の光る石を渡す。
「ありがとうございます姫様」
「えへへ。喜んでもらえてよかった」
ニッコニコの少女にA組女子は微笑ましく見ている。
「さて、先生に事情説明しないと」
スッと立ち上がるキシノ。
少女に全く悪意はなくとも雄英に侵入したのだからお咎めなしというわけにはいかない。
知人であるキシノが少女の事を説明しないといけない。
「ガーディアン…」
不安そうな顔をする少女。
自分の行動が迷惑をかけた自覚はあるようだ。
「大丈夫です。相澤先生は合理主義の
「サラッと毒吐きやがったぞ。いや気持ち分かるけど」
「失礼だぞ峰田。いや気持ちはわかるけど」
「上鳴さんも失礼ですわよ。いや分かりますけど」
「ヤオモモもじゃん。いやわかるけどね」
「先生の輝きはぼくほどじゃないけどね!」
「頭に引っ付いたゴミつけたまま喋るなウザ男」
「ひどい!!ってウソ!?」
フォローのようでフォローしてない発言にツッコミつつも、A組は担任に対して見た目よろしくないと思っていたようだ。
「それでは行きますよ。………ところで挨拶済ませました?」
「あ、ごめん忘れてた!」
少女は振り返って元気に名前を名乗った。
「あたしコヒメ!『コヒメ・カンタベリー』!みんなよろしくね!」
「こちらこそよろしくねコヒメちゃん………………カンタベリー?」
カンタベリーの名前を聞いて引っ掛かりを感じたA組。
キシノが助け舟を出す。
「………カンタベリー王国王女のコヒメ様ですよ」
「「「「「「「「「「………お、王女様かよォォォォォ!!!!!?」」」」」」」」」」
まさかカンタベリーの王女とは思わず大驚愕するA組であった。
そんなこんなでキシノは少女コヒメを連れて相澤にあいにきたのだが、
「が、ガーディアン!怖いおじさんがいる!」
「姫様、この怖い人が私達の担任です」
「…俺は怖くねぇ」
そんなやりとりを見ていたプレゼント・マイクとオールマイトは必死に笑いを堪えていたと言う。
人物紹介
コヒメ・カンタベリー
カンタベリー王国の王女でキシノが慕う少女。
本人もキシノが好きであり、キシノが好きな光るものを見つけるためにあちこち出歩いてはプレゼントしている。
「将来冒険家になりそう」と友人の談。
個性は何故か詳細不明でキシノ含むカンタベリー関係者は「悪いものではない」と口にしている。