騎士様のヒーローアカデミア   作:只の暇人

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苦労なく逆転ポイントを加算するのはいかがなものか

『第一種目のクリアおめでとう!若干素敵………もといサプライズな場面があったけどみんな良くやったわ!』

 

障害物競走を終えたクラスメイト達はニマニマと緑谷を見ている。

 

「緑谷ぁ。おめーキシノにお姫様抱っこされてどーよ?」

「うらやましーなおい。抱っこされた感想教えろよ」

「………できればいじらない方でお願いします」

「「だが断る」」

 

上鳴と瀬呂に肘でツンツンされる緑谷。

 

「キシノ!後でオイラにも頼む!」

「んー、後でももちゃんにドレス作ってもらうかな?」

「お?姫騎士キシノがお姫様抱っこするってか!?」

「ブドウ君が着る用」

「プリンセスオイラ!?」

「「「「「似合わねぇ(笑)」」」」」

 

峰田とキシノのやり取りにほぼ笑うクラスメイト。

 

『外野がうるさいけど早速第二種目を始めるわ!』

 

そう言って箱から取り出した競技名は…『騎馬戦』だ。

 

総勢45人のうち2〜4人でのチームを組んで騎馬を作り、障害物競走の結果に従って各自にポイントが振り分けられる。

それ以外は普通の騎馬戦と同じ。頭に結ばれたハチマキを奪い合って点取り合戦を行う、上位の選手程狙われる下克上サバイバル。

 

「与えられるポイントは下から5Pずつ!42位は5P、41位は10P……と言った具合よ。そして!1位に与えられるポイントは500万!!!

「緑君、雄英の教師ってバカばっかなの?」

「き、気持ちはわかるけど失礼だよ」

 

呆れ顔のキシノに緑谷は嗜めた。

 

ルール説明によると15分以内に頭に巻いたハチマキの合計ポイントを奪い合い、上位を決めると言うもの。

 

個性有りの残虐ファイトであるが、騎馬戦のルール違反は御法度なのでルール通りにやるべし。

 

そして15分の間にチーム決めの交渉が始まったのだが、

 

「………誰も来ない」

 

キシノのところに近付くものが誰もいない。

緑谷は別のとこで交渉中だ。

 

「…これがぼっちってやつかな」

 

若干黄昏るキシノ。

 

「他に組んでくれる人なんて………ん?」

 

ふとあるチームに目をつけたキシノ。

 

「やっぱり無理なんだな。ここまできたのは運が良かっただけなんだな」

「ここでリタイアしても別に減るもんではないでござるよ」

「馬鹿野郎!初めから諦めてんじゃねえよ!」

 

それは英呂、出縁、王田の叡智研究部3人組だった。

 

「でも実際被害のないルートで進んだからバトルはないでござる。それに荒事は得意ではないでござる」

「お、俺も痛いのは嫌なんだな」

「言いたいことはわかる。けどな、俺みたいなモブでも一目置かれる存在になりたいんだよ」

「ショート君と爆豪のダブルパンチを叩き込まれたいってこと?」

「誰がそんなドM行くか!美女に叩かれるならともかく!………ってえ?」

 

英呂が振り返るとキシノが目の前にいた。

 

「やっほー。半月ぶりだね」

「き、キシノ!?」

「「おお!キシノ殿!」」

 

びっくりした英呂と心強い人と出会ったかのように驚く王田と出縁。

 

「ねぇ君達。私とチーム組も」

「「賛成!」」

「早すぎるだろ決めるの!もう少し悩めよ!」

「私と組むの嫌なの?(わざとらしく潤んだ目)」

「どうぞ騎手になってください」

「人のこと言えないけど英呂氏もちょろいんだな」

「ござる」

 

なんやかんやでキシノのチームが決まった。

 

「ところで作戦なんだけど…」

 

 

 

 

 

『さあ起きろイレイザー!15分経ったぜ!フィールドには12組の騎馬が出揃った!』

 

 

【キシノチーム】500万15P

・キシノ(騎手)

・堂神英呂

・出縁大苦

・王田邦男

 

【緑谷チーム】500万655P

・緑谷(騎手)

・麗日お茶子

・常闇踏陰

・発目明

 

「緑君より下?」

「俺らワーストスリーだから」

「なーる」

 

『約1チームなんだか不安だが、カウント行くぜ!!!3…2…1…!』

 

『START!!!』

 

響き渡るプレゼント・マイクの合図と共にほぼ全ての騎馬がキシノ達の騎馬へと群がった。

 

「実質500万(ソレ)の争奪戦だ!」

「なんで私なの?緑君もあるのに」

「多分拙者達が足手纏いっぽいからやり易そうな方を選んだでござるよ」

「………要は舐められてると」

 

個性を構えながら殺到する騎馬を前に、顰めっ面をしながらも騎馬の英呂達に手を添える。

殺気だった騎馬たちの前にビビり顔の英呂たちだが、キシノが手を添えるだけで多少落ち着いていく。

何かしらの迎撃があるとばかり思っていた騎馬達は肩透かしを食らった気分になりながらも、無抵抗ならそれはそれで構わないとばかりに手を伸ばし──

 

ポンッ

 

バッ!

 

「何っ!?」

 

まるで瞬間移動したかのような移動に呆気に取られるB組の悪顔男・鉄哲。

 

「ん?おい!ハチマキ!」

「え?なっ、なんだとぉ!?」

 

しかもいつのまにか頭に巻いてたハチマキが無くなっていた。

そのハチマキは、キシノの手に収まっている。

 

「ばかな!?避けた瞬間に獲ったってのか!?」

 

瞬間移動と錯覚するような回避の瞬間、鉄哲の頭のハチマキをぶんどる技術を持つキシノ。

 

「次、あっちのチーム」

「りょ、了解!」

 

キシノは次の標的を目指す。

 

「お?獲物が来たぞ!」

「よし!奪って高得点を…」

 

ポンポンポンポンっ

 

バッバッバッバッ!

 

「な、何っ!?すり抜けた!?」

「うわいつの間にかハチマキが!?」

『キシノチーム次々とハチマキを奪っていく!まるで一騎当千の勢いだぁ!』

『騎馬側との相性もあるが、あの動きは普通科の動きじゃねぇな。その前に何回か合図を作ってるようだ』

 

相澤の推測通り、キシノは合図で英呂達を操作している。

タイミングを見計らって合図を出すことで回避や移動をこなしていた。

 

「スッゲェ!俺ら大活躍してる気がする!」

「キシノ氏のおかげなんだな!普通こんな動きはできないんだな!」

「『叩いた音と位置を聞いたら全力で飛んで』とは驚きでござるが、これは大興奮でござる!」

 

キシノの活躍のおかげで興奮冷めやまぬ英呂達。

 

「キシノはどう………なんかすげぇ!?」

「ボケっとしてないで。足元注意」

 

英呂が振り返ると飛んできている蛙吹の舌を全部回避しているキシノにびっくり。

そして足元には峰田のもぎ玉が散乱していた。

 

「やるわねキシノちゃん」

「けどそこはオイラが仕掛けたトラップで動けないだろ?このままハチマキゲットしてやる!」

「油断するな2人とも」

 

峰田を騎手に蛙吹が攻撃、障子が騎馬と言う複製腕を使って戦車のように2人を隠しながら接近してきた。

 

するとキシノは遠くを見つめ、ギョッとした顔で、

 

「あ!葉隠ちゃんが丸見え!」

「「「え?」」」

「む?」

「ケロッ?」

「え?!」

「「「「「「「「え?」」」」」」」」

『え?』

 

「ふぇ?」

 

騎馬達が一斉に葉隠チームを見る中、

峰田は無意識に『顔を出して』後ろを振り返る。

 

スポン

 

「いただき」

「しまったァァァァァ!!!」

「…われながら大失態だわ」

「…俺としたことが」

 

ハチマキを取られて絶叫する峰田と釣られてしまい頭を抱える蛙吹と障子。

 

『オイィィィィィお前嘘かよ!!期待しちまったじゃねぇか!!』

『おい、ちゃんと実況しろ』

 

プレゼント・マイクが怒りの叫びを放ち、相澤にツッコまれる。

一応言うと葉隠は未だ透明のままだ。

 

「え………と、裸は?」

「いないよ。でまかせ」

「そりゃないでござるよキシノ氏」

「流石に物申すんだな」

「ごめんごめん。これで許して」

 

ジト目で睨む王田と出縁にキシノは2人の頭を撫でる。

 

「「許す!」」

「チョロすぎにも程がある」

 

人のこと言えないが、チョロさに頭を抱える英呂。

 

「さて、次のターゲットは…」

 

パシッ

 

「…あなたね」

「…完全に死角のはずなのに…」

 

次の相手はB組のサイドテールの生徒・拳藤だ。

背後からハチマキをとろうとしたが、キシノが振り返らずに阻止した。

 

「こうなったら失うものは何にもねえ!突撃だ!」

「キシノちゃん!覚悟!」

 

峰田といつの間にかハチマキがない葉隠チームがキシノに突貫する。

 

「出縁君噴射、王田君足元触手」

「ぬ?わかったんだな!」

「遂に我らの出番でござるな!」

 

すると出縁の身体中からローションが吹き出して数メートル広がり、王田は足元から触手を出す。

 

「ぬ!?こ、これは!?」

「す、滑る滑る!?」

 

近づいてきた騎馬達はローションに足を取られてしまう。

逆にキシノチームは触手がローションの上を苦もなく動けていた。

 

「す、すごいんだな!ヒーロー科のみんなが近づけてないんだな!」

「まさか拙者の触手にこんな活用法があったとは。やはりキシノ氏とチームで正解でござるな」

「…今回俺いいとこないなぁ」

「無駄口してないでハチマキ取るよ」

 

そしてスムーズに慣れた手つきでハチマキを奪っていく。

 

「次はあっち」

「…あいつか」

 

キシノの指差す方向に英呂は複雑な顔をする。

A組に対して大胆な宣戦布告をしてきた普通科の男・心繰だ。

よく見ると彼が乗る騎馬がなんだか様子が変だ。

 

「早く行って」

 

キシノに急かされ仕方なく向かう英呂。

するとソッとキシノが英呂の耳を塞ぐ。

 

「彼の言葉を聞いてはダメよ。しっかり前見て」

 

と英呂に警告するキシノだが、英呂は耳よりも別のことを考えていた。

 

(頭に柔らかいのが当たってるんですが!?)

 

耳を塞ぐ為に屈んだおかげでキシノの胸が英呂の頭を包んでいる。

 

ここで英呂の個性『ラッキースケベ』が真価を発揮する。

女性にセクハラまがいをしてしまうと言う悪いものと思われがちだが、特定の条件を満たす方ができれば、

 

「最高にハイってやつだぁぁぁ!!!」

 

ドピュンッ!!

 

「なっ!?」

 

仮面ライダー顔負けの戦闘力を発揮し、まさに瞬間移動の如くの早さで心繰のハチマキを全て奪い取った。

 

『うおお!!すげぇ!!キシノチームが残り4チームを除いてノーダメージでハチマキを全部取りやがった!!こりゃ史上初のハチマキ全取り一番となるかぁ!?』

「んだとぉ!?」

 

プレゼント・マイクの実況にやっぱり一番に反応する爆豪。

 

「おい!あのウザ野郎は後だ!あのクソ騎士をぶっ殺す!!」

「殺すなよ。でもこのままじゃポイントとれねえぜ」

「おっと行かせると思ってたのかなぁ?」

 

爆豪はターゲットをキシノに変えようとするも、B組の物間に邪魔される。

 

「正直僕のチーム以外B組全滅は予想外だったけど、油断すると君のハチマキは僕のものになるよ」

「邪魔だとこの野郎!」

「おっと危ない」

 

挑発にのった爆豪は腕を振るうも回避される。

 

「はっはっはっ!この程度じゃ僕には勝てないよ?」

「ギギギ………」

 

爆豪は怒り爆発寸前だった。

 

「………?」

 

が、途中で怒りを吹っ飛んだ出来事を見た。

 

「どうしたんだい?そんなマヌケな顔をして?さては諦めた?はーっはっはっはっ!つまり僕が優秀だってことだよねぇ!」

 

完全に調子に乗っている物間。

しかしだからこそ、背後から近づくキシノチームに気づかない。

もちろんそっとハチマキを取られたことも気づかない。

 

「宣言しよう。君たちはハチマキを取られてマヌケな顔を晒すのさ!」

(うん、現在進行形でマヌケだな)

 

物間のハチマキはすでにキシノに握られていた。

 

「君のような単細胞は操りやすくて助かるよ。まぁ僕は優秀だからそう簡単にハチマキは取らせないけどね」

(いや思いっきしハチマキ取られてんぞ)

 

爆豪達がジト目で見る中、後ろのキシノがそっとあるものを乗せる。

 

「そして時間切れになったら君らにこう言うのさ!このトグロやろうってね!」

(ほ、本当にそれっぽい姿に………お腹痛い)

 

騎馬役の芦田が必死に笑いを我慢している。

何故なら物間の頭に『トグロを巻いた触手』が置かれていた。

 

他者を貶して愉悦に浸っていた物間だが、その姿はまさにマヌケを体現させていた。

 

「………ぶっ!」

「ククッ」

「い、いひひ」

「………(失笑)」

 

その姿に流石の爆豪達も我慢が漏れてしまう。

 

「?どうしたんだい君達。もしかして敗北を悟って狂ったのかい?」

「…物間、お前…頭………頭………」

 

物間チームの騎馬が必死に笑いを堪えながら頭を指摘する。

 

「?頭がどうかし………………なんじゃこりゃああああああ!!!?」

 

物間が頭を調べると、ハチマキがなくなった代わりにトグロを巻いた触手が置かれて絶叫した。

 

『ぎゃははははははは!!今頃気づいた物間チーム!め、めっちゃシュールだったぞ!!』

 

実況のプレゼント・マイクも爆笑しながら実況する。

 

「お似合いのトグロ頭ですね。モノマネクズ男君?」

「き、君の仕業なのかい!?絶対許さないからねぇ!!後僕は物間寧人だから!!」

 

ニヤニヤ笑うキシノに真っ赤な顔で怒りを露わにする物間。

 

「…ショックバン…」

 

キシノが両手を広げる。

その姿に警戒態勢に入る物間チームだが、これが間違いだった。

 

「スマッシュ!!」

 

パァァンッッッ!!!!!!

 

「「「「うわあああああああああああ!!」」」」

 

両手を叩いた衝撃が物間チームをバラバラに吹き飛ばした。

 

『おっとぉ!ここで物間チームが脱落したことで残りは4チームだけだぁ!!凄い快進撃を見せてくれたキシノはどんな活躍を見せるのかぁ!』

「よっしゃ!このまま勝ちに行くぜ!」

 

英呂はやる気満々の様子。

しかしキシノは間を置いた後、

 

トントンッ

 

英呂の肩に『ある合図』を指示する。

 

「え?ここまで?」

 

英呂が振り返るも、キシノは首を横に振る。

 

「クソ騎士!!覚悟しやがれ!!」

「ば、爆豪が来たああああああ!!!」

 

邪魔者がいなくなり、爆豪はキシノと対峙する。

 

ガガガッ!

 

「んなっ!?」

 

が、キシノがわざと爆豪の両腕と絡めて動きを封じた。

 

「離しやがれこの!」

「悪いけどここで動かないでね」

『残り10秒!………9…』

 

プレゼント・マイクからカウントダウンが始まる。

爆豪は解こうと奮闘するも、うまく行かない。

 

ふと緑谷チームと轟チームでは、轟チームの飯田が機転をきかして緑谷の500万ハチマキをぶんどった。

そこを常闇のダークシャドウがクロスカウンターの如く轟のハチマキを奪った。

 

『3………2………1………ここでタイムアップだ!!』

 

そしてタイムアップの合図がなる。

キシノが力を抜き、爆豪を放す。

 

「クソ騎士てめぇ…!」

「ごめんね爆豪君。これは必要なことだから」

「俺を見下す為に必要だってのかぁ!?」

 

怒りに満ちた爆豪に対しキシノは、

 

「爆豪君達と戦うのに余計な人達は要らないんでしょ?」

「!」

 

爆豪はキシノの言葉の真意を理解した。

キシノは爆豪含む強敵達と戦う為に敢えて三チーム以外のハチマキを全部奪ったのだと。

 

爆豪は複雑そうな表情で、

 

「もしテメーと当たったら速攻ぶっ潰してやる」

「なら私は全力で対抗するよ」

「………チッ!」

 

爆豪は舌打ちした後、そそくさと去っていった。

 

「さーて、次の試合はなんなのかな〜♪」

「ははは、燃えたよ。燃え尽きた、真っ白にな…」

「立つんだジョー!………じゃなかった。立つんだ英呂氏!」

「よくがんばったなんだな!叡智研究部の偉業を成し遂げられただけで十分なんだな!」

 

真っ白に燃え尽きた英呂と称え合う王田と出縁。

どうやら次の試合は出れなさそうだ。

 

「ま、彼らの分も頑張りますか」

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