「いやー、負けてしまった」
包帯に巻かれた麗日が頭を掻いてペカーっと笑いながら言う。
「怪我は大丈夫?」
「リカバリー・ガールにリカバリーされた!まぁちょっとだから体力は残ってるし。…それにしてもキシノちゃん強かったな〜。完膚なかったな〜」
「………………」
「………………」
なんと言ったらいいか言葉が出てこない緑谷と麗日。
ガチャ
「うららちゃんいる〜?」
「「キシノさん(ちゃん)!?」」
ついさっき麗日を負かしたキシノがやってきた。
「あ、緑君きてたんだ。うららちゃんを激励しにきたの?」
「あ………えと…」
「まいっか。うららちゃんに話したいことがあってね」
キシノの言葉に麗日がビクッと反応する。
これから話す事に緊張するような面持ちとなっている。
「うららちゃん………ナイスファイトだぜ!!」
「「………へ?」」
親指を立てるキシノに2人は唖然とする。
「強者を相手にしても負けない根性!どうすれば相手に勝つかと言う知略!そして前を進む勇気!ヒーローを目指す以上避けては通れないけど、私からみてうららちゃんセンスあるよ!」
「………………」
「でも負けたからってここで立ち止まっちゃダメだよ?むしろ負けたからこそその経験を活かして何をするべきかを考えよ?立ち回りから動き方まで色々考えて、そして自分の納得する攻略方法を見つけようよ」
麗日を褒めた後は対策法を伝授させているキシノ。
麗日は搾り出すように聞いてみる。
「な、なんで………?」
「?戦ってる時はライバルだけど『友達』でしょ?」
「………………」
ツー
「う、麗日さん…!?」
「あれ?泣いてるの?」
「え?」
顔を拭いて確かめると、麗日の目から涙が溢れる。
「あ、あれ…?おかしいな………涙が………全然………止まんない………!」
スッ
いつの間にかキシノが麗日を包み込む。
「………………」
キシノは何も言わず麗日の背中をさする。
さながら泣くのを我慢する子供を慰めるように。
「………くっ………ぅぅ………うぅぅ………」
麗日は泣き声を抑えつつ、キシノの背中の服を力一杯握りしめる。
そんな麗日を見つめるキシノの目は慈愛に満ちた目をしていた。
チラリと緑谷をみて口パクで「肩に手を置いて」と指示して、2人で麗日を慰めた。
「ほんっとうにすんませんでした!!」
数分後、正気に戻った麗日は土下座して謝った。
「う、麗日さんが謝る事じゃ無いよ…」
「そうそう。悔しさとかを一緒に共有してこそ友達って奴だよ」
「そうなんやけど………めっちゃ恥ずかしいって言うか………」
今顔を上げたら真っ赤な顔を見せてしまう事に羞恥心を感じている麗日。
『二回戦の組み合わせが終わったぜ!出場選手は準備しろよ!!』
「あ、そろそろいかないと…」
「それじゃうららちゃんまたね〜」
「うん、見とるね、頑張ってね」
緑谷とキシノは控え室から出て行った。
「………………」
通路を歩いてる中、緑谷の表情が優れない。
「まだうららちゃんのこと考えてる?」
「…本当ならもっと声をかけるべきなのに…また背中を押された」
「似た者同士だからね君達は」
「それってどういう…」
「おお、いたいた」
すると目の前に火事オヤジ…ではなく炎のヒーロー・エンデヴァーが現れた。
「エン…エンデヴァー!?」
「うわ、暑く無いのかなぁ?」
現れたエンデヴァーに緑谷はびっくりし、キシノは的外れな発言をする。
「緑谷出久…だったか?君の活躍見させてもらった。素晴らしい個性だね。指を弾くだけであれ程の風圧。パワーだけで言えばオールマイトに匹敵する個性だ」
「な、何を言いたいんですか?僕もう行かないと…」
エンデヴァーの言葉に何か不安を感じた緑谷はそそくさとこの場を去ろうとした。
「ウチの焦凍にはオールマイトを超える義務がある。君との試合はテストベッドとしてとても有益なものとなる。くれぐれもみっともない試合はしないでくれたまえ」
が、エンデヴァーの言葉に少し前に聞いた轟の話を思い出す。
『俺は、親父の個性を使わずに勝利することで、親父を完全に否定する』
彼と父親であるエンデヴァーの拗れた関係に思わず口を出す。
「…僕は………オールマイトじゃありません」
「?そんなものは当たり前…」
「当たり前の事ですよね。轟君も、あなたじゃ無い…!」
そう言い残して緑谷は試合へ…
「ねぇ」
…行こうとして後ろから『冷たい刃物のような』声を聞いた。
「私状況分かんないけど、なんとなく分かったことを言うね。エンデヴァーさん。貴方はショート君の『父親』だよね?」
「?そうだが?」
「じゃあさ、『息子』のショート君をどう思って育てているの?」
極めて冷静に聞こえる声だが、緑谷だけは『死神が鎌を研いでいる』ような錯覚を感じ取っていた。
しかし対峙しているエンデヴァーはそれに気づかない。
「無論『オールマイトを超える』ためだ。さっきも言ったが焦凍はオールマイトを超える義務がある。今はまだ反抗期だが、いずれ俺が成し遂げられなかった領域に到達できるのだ。『そうするべく育てた』」
「………………」
「それと、君のあの宣誓を聞かせてもらった。世界中がオールマイトを讃え、崇めているのは誰もが知っている。そして奴の立つ場所を目指し、時には超えるためにあの手この手で躍起になっているヒーローもいる。…俺もその1人だがな」
「………………」
「だがダメだった。どれほど鍛えようと、どれほど活躍しようと、奴の領域には届かない。ならば俺の全てを焦凍に託し、いずれオールマイトを超えるために鍛え続けさせた。この試合は、焦凍にとってのデモンストレーションになる」
もはや確執としか言いようがない『オールマイトを超えたい』エンデヴァーの言葉。
父親とは仲が悪いと聞いてはいたが、かなり溝が深いと感じた緑谷だった。
「言いたいのはそれだけだ。失礼する」
言いたいことを言った後はさっさとこの場を後にするエンデヴァー。
「…すみません。最後に一つだけ言いたい事があります」
「?なんだ?」
キシノに呼ばれてエンデヴァーはふりかえり………
「歯ァ食いしばれ」
『待たせたなてめーら!!血湧き肉躍る第2回戦がまもなく始まるぜぇ!!』
会場の人々がプレゼント・マイクの宣言に雄叫びをあげる。
『まずは見た目はクールだが攻撃は熱い!轟焦凍!』
『
そしてステージには轟と緑谷が対峙していた。
「来たな緑谷」
「………うん」
「?」
緑谷の表情がどこかおかしいと感じた轟。
すると観客声から声が聞こえる。
「おい!その話本当か!?」
「マジだって!さっきチラ見したんだけど『エンデヴァーが顔面陥没した状態で医務室に運ばれた』んだよ!」
「が、顔面陥没!?いやそれ以前にNo.2とは言えエンデヴァーがやられたってのか!?」
「ああ!それと聞いた話だがエンデヴァーが倒れた周囲は『目一杯亀裂が広がってた』って!『ものすごい力でぶん殴った痕跡』って聞いたぞ!」
「いやどこのどいつだよ!エンデヴァーをぶん殴るって!?」
(親父が…!?)
エンデヴァーが大怪我したと聞いて動揺を隠せない轟。
ふと目の前の緑谷はどこか怯えた表情をしていた。
「………緑谷?」
「ご、ごめん轟君!じゅ、準備はできてるよ!」
半ば強引に話を進める緑谷。
だが緑谷は知っている。
エンデヴァーが負傷した真実を。
その犯人は騎士を目指している友達であることを。
『もういいって?分かったぜ。今回の体育祭、両者トップクラスの成績!両雄並び立つ今!轟対緑谷!』
『START!』
今2人の戦いが切って落とされた!
友達思いの性格を考えて………どうしてこうなった(遠い目)