騎士様のヒーローアカデミア   作:只の暇人

33 / 33
噂のアイツ

「う〜む………」

 

指で顎を支えて何かを考え込む老人ヒーロー。

 

「………あの、どうかなさいましたか?グラントリノ」

 

その老人に逆さまでぶっ倒れている緑谷が問いかける。

ついさっきまで特訓していたようだ。

 

「小僧、俊典に送ったと思うがもう1人のやつについてどれぐらい知ってる?」

「もう1人?…キシノさんですか?それほど詳しくはないですが多少は…」

「何も問い詰める気はせんわい。分かる範囲でいいぞ」

「わ、分かりました」

 

緑谷は自身の分かる範囲でキシノ・ガーディアンについてグラントリノに話した。

 

「個性『レベルアップ』とな?」

「『たくさん経験を積めば積むほどスキルが………言い換えると個性を増やせる』とかなんとか」

「個性を増やす………じゃと?」

 

眉間に皺を寄せるグラントリノ。

緑谷はその様子に緊張の面持ちとなる。

 

「おい小僧。おめぇこの事を言いふらしたりしてねぇだろうな?」

「いえいえいえ!滅相もございません!説明受けた時にキシノさんから『間違っても悪い人に話さないでくださいね』と散々注意を受けられてますから!」

「ほぅ?多少自分自身を理解していると見えるな」

「あ、あと『自分のみならず珍しい個性持ちは何かと注目されるからいろんな方面から狙われやすい』とも言ってました」

「ほほう?ますます興味が湧くわい」

 

グラントリノはキシノの人格を高く評価したようだ。

 

「何か気になることでも?」

「いや気にするな。単なる好奇心じゃ」

 

緑谷ははぁ…と空返事しながら埃を払い落としていく。

 

(OFAとは別口で厄介な運命を背負ったみたいじゃの。しかもそういう経験を受けたと言う。もし機会があればあやつの出生についても聞かねばならぬかもしれん。………やつに目をつけられるかも知れぬがな…)

 

グラントリノはかつて相棒でありオールマイトの師匠でもあったあの人の命を奪った宿敵を思い浮かべた。

 

 

 

 

 

???

 

「………………………」

 

スーツを着てフルフェイスのマスクを被った男があるデータを見ている。

 

『まだ調べているのか?』

 

そこにメガネをかけた小太りの医者がホログラムで現れる。

 

「ふふふ、仕方ないさ。僕は色々な個性を見て来たが、彼女のような個性はこの僕ですら初めて見るからね」

 

マスク男が見ていたのは『キシノ・ガーディアンのデータ』だ。

 

「『経験を積めば積むほど個性を増やす』なんて、それこそ今の僕に相応しくないかねドクター」

『だがすぐに増えるとは限らんぞ。軽く調べたところ『一年以上も個性が増えなかった』とある。タイミングもばらついているからいざって時に出ないかも知れんぞ』

「それについては僕なりに考えてあるさ。僕の個性ならば『根源ではなく増えた方』を奪えばいいって」

『飼い殺しにするのか』

「いずれはね。ふふふ、正義の騎士が敵に堕ちるなんて面白いと思うね僕は」

 

ふふふと笑うマスク男にドクターと呼ばれた男はやれやれと呆れながら通信を切った。

 

「…それにしても」

 

マスク男は今一度キシノのデータを見る。

 

「こんなことは初めてだよ。僕は弟一筋のはずなのに今は君が気になって仕方がない」

 

マスクなので表情は見えない。

しかし声色からどこか狂気じみた感じがする。

 

「ああ、楽しみだよ。君に出会ってその魂を悪に染め上げたい…」

 

 

 

 

 

 

 

「クソ!イライラする!」

 

怒りを隠さない男は八つ当たりに電柱を蹴る。

 

「おいおい大丈夫か暗血」

「血糖値上がったのか?」

「うっせぇ!黙ってろ!」

 

男は反逆暗血(はんぎゃくあんち)。体育祭で麗日やヒーロー達に侮辱した男であり、キシノに酷い目に遭わされた経験を持つ。

 

「くそ!あの兜女のせいで………」

「ああ、体育祭の優勝者だろ?」

「聞いた聞いた。たしか『ヒーローと人々は共に助け合う』とか言ってたやつ」

「えー?やだなー。ヒーローはアタシらの雑用係でいーじゃん」

「ブハッ!言えてる!ヒーローは俺たちのために働いてればいーじゃん」

 

彼らはヒーローを下に見る発言をする。

彼らの中では『ヒーローは一般市民の奴隷』と言う認識らしい。

 

「それでどうする?今日もヒーロー反対運動でもするか?」

「………やめとく。今日はなんだか気分が悪い」

「なんだよノリ悪いな」

「うるせ」

 

暗血はそそくさとこの場から離れて行った後、

 

(くそ!あの目が………あの光景が今でも思い出す!)

 

それは死神(キシノ)が自分を見つめた時の記憶。

あの目を見た瞬間命を握られた感覚を今でも思い出すのだ。

 

「おい!シオンさんの路上ライブだ!!」

「まじか!早くいかねぇと!」

「し、シオンさんのライブだと?」

 

ふとストリートワーカー達の話に正気に戻った暗血。

早足で向かうとたくさんの人混みと中心に小さな蝙蝠を連れた少女がギターを手に現れた。

 

「本日は傷ついた思い出から癒される曲『ラブミー・ハート』を歌います」

「「「「「「イェーイ!!シオンさーん!!!」」」」」」

「ラララ〜ラ〜♪」

(はぁぁ………やっぱ彼女の曲を聴くと癒されて心が洗われるようだ…)

 

流浪の音楽者『シオン・サウンディア』の曲を聴いてイラついた心が洗い流されるのを感じた。

彼女の曲は(自称)シオンファンクラブ第一号の暗血にとって癒しそのものだった。

 

(俺はヒーロー含め何もかもを陥れて愉悦に浸る生活を送っていたが………彼女の歌だけは唯一俺が陥れたくないと思ったんだ。もし誰かが彼女を陥れる馬鹿がいるなら、絶対に俺が陥れてやるからな!)

 

さっきまでイラついた顔はなく恍惚な顔で気持ちを新たにする暗血。

すでに怖い思いはもう無くなった。

 

………だが未だに女騎士の顔が消えることはなかった。

 

 

 

 

 

???

 

「………準備はいいか?」

「はっ!完了であります」

 

インヴェーダーの一小隊が隠れ家にて話し合っている。

 

「最後に確認だ。数日後、ある街で騒ぎが起きる。我々はそれに乗じて作戦を行う」

「………あのガーディアンについてはいかがいたしましょう?」

 

少し不安げな兵士が隊長に問う。

 

「奴はこの作戦エリアから離れているから問題ない………とは言え、警戒は必要だな。何名か援軍を要請してみる」

「ありがとうございます」

「奴は我々の目の上のたんこぶ。全員気を引き締めろ!」

「「「ヤー!」」」




主人公(キシノ)は色んな意味でモテモテです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

TS転生したら小鳥遊ホシノだったので青春を………Q.誰?お前?A.エーテリアスです(作者:如月トッポ)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

ある日、少年だった人物は見知らぬところで目を覚ました、▼よく見てみるとなんとブルアカの小鳥遊ホシノに転生していた!?▼けれど、転生先はブルアカでは無いようで……▼色々ちぐはぐすぎるこの主人公はこの終末世界でどう生きるのか………


総合評価:3338/評価:7.9/連載:14話/更新日時:2026年08月26日(水) 00:11 小説情報

ダンジョンの外で戦技売りをするのは間違っているだろうか(作者:ルンルンベア)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

 異世界に謎の転移をしてしまった男、田西ユウタ。彼はこの世界の大都市オラリオでホームレス生活を送る羽目になる。しかし彼には大好きなゲーム「エルデンリング」の戦技をゲームと同じように武器に付与すると言う謎の能力ともう一つ能力があった。▼ 戦えない、頭も良くない、身元を保証するものがない、そんな田西は特殊な能力だけを頼りに今日も何とか生きていく。


総合評価:2061/評価:7.73/連載:6話/更新日時:2026年06月23日(火) 18:46 小説情報

うちの庭めっちゃ猫くる。(作者:じゅに)(原作:ポケットモンスター)

シンオウ地方きってのド田舎カンナギタウンで毎日をぼーっと過ごすわたしの家には、でかい庭がある。最近、見慣れないポケモンがくるようになった。


総合評価:4654/評価:8.46/完結:9話/更新日時:2026年04月16日(木) 11:11 小説情報

Re:TS白黒ストライプバニー老害によるナツキ・スバルの悲喜劇観賞会(作者:F・M・T (フランチェスカ、マジ年増))(原作:Re:ゼロから始める異世界生活)

「アハハハハッ!始まり、始まりぃー♪パンフレット買った?ポップコーン持った?早くしないと世紀の戦いを見逃しちゃうよ?」▼ Fakeのあのキャラに転生したオリ主が、スバル君の奮闘を眺めてケラケラ笑いながら観賞をする話。▼「……あれれー?もしかして、このスバル君。放っておいたら正史から簡単に外れちゃうぅ?」


総合評価:6231/評価:8.75/連載:5話/更新日時:2026年08月22日(土) 18:00 小説情報

ポケモン現代入り(作者:ささみ)(原作:ポケットモンスター)

▼ よくあるポケモン現代入り系作品です。それ以上も以下もないよ。


総合評価:15985/評価:8.28/連載:102話/更新日時:2026年08月16日(日) 00:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>