保須市のビルの上
「………」
その下にはUSJとはタイプが違う複数の脳無がヒーローと対峙していた。
「脳無………『敵連合』が近くにいるのでしょうか」
眼下の戦闘に手の仮面の少年を思い出すキシノ。
「………今はこの災害を鎮火することを考えましょう」
頭を振って気持ちを切り替えるキシノ。
そして、目の前にいる『手足がナナフシのように長い脳無』を見やる。
「こいつもきっと黒幕が作った脳無でしょうね」
ナナフシ型脳無はキシノを見るや、『ビルごと腕で切り落とした』。
「『ナナフシ』と『刃物系』の個性。なかなかに驚異的ですね。まぁ私にはまだまだですが」
しかし、キシノはすでにナナフシ型脳無の背中に移動していた。
ナナフシ型脳無はキシノを見失ったらしくキョロキョロと見回している。
「『背中に乗られる』のは想定されてないですね。ま、それが貴方の敗因です」
SLASH!
キシノはナナフシ型脳無の両手足を全て切り落とした。
ナナフシ型脳無はなすすべなく地面にのたうちまわっている。
「早いとこ脳無達を無力化しないと」
キシノは弓に切り替え、脳無達に射る。
ドドドドドド!
「な、なんだ?」
関節を射抜かれまともに動けなくなる脳無達。
「無事ですかみなさん?」
「!君は!」
「今の矢はお前か!ヒーローにもなってない奴がしゃしゃり出るな!」
降り立ったキシノに1人目のヒーローは驚きの表情をしたが、2人目は憤慨した表情で叱りつける。
それを呆れたような顔で反論するキシノ。
「緊急事態にそんなこと言ってる場合ですか。今は1人でも多く助けませんと」
「ライセンスもないくせに何言ってやがる!とにかくここはオレ達ヒーローがやるんだからさっさと避難しろ!」
「…さっきまでやられかけたくせに。そんなことよりも他に被害の大きいところはどこですか?」
「おい無視するな!」
埒があかないとキシノは1人目のヒーロー、飯田を指名していた『マニュアルさん』に問いかける。
「あ、ああ。君のおかげでここはある程度大丈夫だ。あとあのエリアにもこの怪物が現れたって報告もあるが…」
「OK。そこですね」
キシノはグッと脚に力を込めて残りの脳無がいるであろうエリアへ向かう。
「………」
「おいマニュアルさん!なんなんだあの失礼な勘違い野郎は!見たところ学生みたいだが」
キシノに対して失礼なヒーローはマニュアルさんに問い詰める。
「………キシノ・ガーディアン君さ。プロヒーロー並みの実力を持つクエスター保有者だ」
「は?クエスター?あのヒーローもどきの?」
「もどきじゃない。彼女こそ、騎士道という誇りを持つヒーローだ」
別エリアにて
ドドッ!
「助けにきましたよ!」
「誰だよお前!民間人がヒーローの邪魔をするな!」
弓で援護したキシノだが、悪態をつくヒーローにムッとする。
するともう1人のヒーローがキシノに気づく。
「あ、あんたもしかしてキシノ・ガーディアンか!?」
キシノは頷く。
「よかった!感謝します!我々だけでは苦戦してました!」
「貴方は話がわかるようですね。私は次のとこで援護に回ります。あなた方も気をつけて!」
キシノは再び別エリアへ移動を開始した。
「………おい!お前アイツを知ってるのか?」
「逆になんで知らないんだよ!彼女はヒーロー界隈でも有名な『お助け騎士』だよ!」
「あの噂の!?」
「ああ!自分も含め彼女に助けられたヒーローは多い!彼女こそまさに英雄的ヒーローさ!」
さらに別エリアにて
「おや貴方は」
「むぅ、貴様は」
キシノは複数のサイドキックを引き連れたエンデヴァーと出会った。
ついでにグラントリノとばったり出会った。*1
「体育祭ぶりですね。もう顔は大丈夫ですか?」
「貴様に心配されるほどやわな鍛え方はしておらん!」
「それはよかったです」
「………」
体育祭以降エンデヴァーは複雑そうにキシノを見ている。
(むぅぅ、なぜこいつを見ているとオレの体がざわめいてくるんだ?)
キシノを見ていてなぜが自身の体が緊張し、こころがザワザワと落ち着かなくなる。
「ところでふと思ったのですが『まだオールマイトこと考えてますか?』」
キシノから質問された瞬間体が極度に緊張し、ざわめきが強くなる。
それでも表に出さずぶっきらぼうに答える。
「………貴様には関係ないことだ」
「そうですか。まぁいいですけど」
話題を打ち切ったことにエンデヴァーは心から安堵した。
(!?なぜオレが安堵などと!?)
自身の変化に戸惑いを隠せないエンデヴァー。
が、そんな戸惑いをかなぐり捨てて命令を下す。
「よし!ここは任せる!俺はヒーロー殺しを追う!」
「ワシもついていくかの」
「なら私は………?」
エンデヴァーとグラントリノが移動する中、キシノは路地裏で見覚えのあるものを見た。
「なぜアイツらが?」
キシノは気になって路地裏に入り、コソコソ動き回っている不届き者へ成敗する。
「御用だ御用だ!神妙にお縄につけぇい!」
「げっ!?が、ガーディアンだ!」
「見つかった!」
不届きもの・インヴェーダー兵達がキシノを見て驚愕する。
「もうそれはいい!目的は達した。退却する!」
隊長の号令で現れた転移ゲートへそそくさと移動するインヴェーダー兵達。
「また会おうガーディアン」
そして隊長もゲートへ移動し、ゲートは消滅した。
「ぅ………」
「大丈夫ですか?」
捨て置かれたヒーローは気を失っているが大した怪我は負っていなかった。
「あのインヴェーダー達はヒーローに何しようと?」
インヴェーダー達はヒーローを誘拐して何かしようとしていることに危機感を募らせる。
「………後ろ髪を引かれますが、今はこの人を運んでみんなと合流しないと」
とりあえずキシノは気絶したヒーローを秘密裏に病院へ運び、エンデヴァー達が向かったエリアへ向かう。
そして現場に辿り着いた時、
「──偽物が蔓延るこの社会も、徒に力を振りまく犯罪者も、粛清対象だ……」
「全ては…正しき…社会の為に……!!」
頭を切られ死体と化した脳無と、緑谷と轟と飯田。そしてプロヒーロー達。
およそ瀕死の人間とは思えないプレッシャーがその場の空気を殺した。
「贋物……正さねば、誰かが……血に染まらねば……!」
「英雄ヒーローを取り戻さねば!!」
「来い。来てみろ贋物ども」
「俺を殺していいのは本物の英雄・オールマイトだけだ!!」
かなりボロボロなのにも関わらずたくさんのヒーロー達に立ち向かうヒーロー殺し・ステイン。
彼の放つ覇気に飲まれ、戦意が萎縮していくのが見て取れた。
そして、だからこそ…
「それが貴方の信念ということですか?」
「キシノ…さん」
キシノが降り立ち、ステインの前に立つ。
「貴方は
両手を大きく広げ、真正面からステインのプレッシャーを全てを受け止めるかのような力強い姿勢を示す。
「………………(はぁ………やはりそうだ)」
ステインは意識朦朧としながらもキシノの力強い『目』を見ていた。
初めて出会った時、彼女の目の中から何かを感じ取ったステイン。
そして再び出会った時確信した。
幻視だろうか。キシノの背後に『本物の英雄』のような面影を見たのだ。
「お前………こそ……しん………の………えい………ゆ………ぅ………」
「え?」
一番近くにいた緑谷がステインの言葉を聞き取った。
そしてステインは『ついに見つけた』と言わんばかりに口角を上げたまま気を失った。
「………」
手を下ろしたキシノは静かにステインを見つめる。
そして胸に手を当て、ステインに『お辞儀』をした。
(な、何をやってるんだ!?)
(ヒーロー殺しにお辞儀?)
キシノの行動に理解できない表情をするヒーロー達。
ヒーロー(まだ学生)が敵に対してお辞儀をするなど前代未聞の行動だ。
「………何が何だか分からんが、確保だ!」
いち早くプレッシャーから復帰したエンデヴァーはステインの確保に向かう。
こうして保須市の事件は幕を閉じた。
キシノは連れていかれたステインをずっと見続けていた。
もうちっとだけ続くんじゃ…