ヒーロー世界の入り口に立ったといえ、学校らしく勉学は存在する。
一時間目は派手なDJみたいなプレゼント・マイクが担当する英語だ。
ただキシノは授業内容よりもプレゼント・マイクのハスキーボイスに耳がキンキンしたのはご愛嬌。
「何かあれだよな、思ったより普通というか。これぞヒーロー科!みたいな授業はあんまり無いよな」
「前の個性把握で時間かかってたりして。どんな授業をするべきかとか」
「あー……確かに。毎年生徒の個性が変わるんだから大変なのか」
クラスメイトの1人上鳴電気とだべるキシノ。
そこに峰田実が便乗する。
「オイラの個性は唯一無二の個性だから時間かかって当然だよな」
「類似する個性はいくらでもあるよ。確か前にチ………ゴールデンボールを操る個性の人がいたね」
「その話詳しく」
ゴールデンボールと聞いて食い気味に気になった峰田。
「ブドウ君みたいに体の一部を使った個性だよ。反撃で叩き壊したら悶絶して再起不能になったけど」
「あ〜、うん。そうだな」
なんとも言えない表情になる峰田と上鳴。
とりあえず2人はその個性の人に合唱した。
そして、
「わァ〜たァ〜しィ〜がァ〜、普通にドアから来たぁっ!!」
突如触角みたいな髪型の大男がヒーロースーツを着て入ってきた。
クラスメイト達はその人物をよく知っていた。
「うおお…!マジのオールマイトだ!本当に教師やってんだな!」
「気迫が凄すぎて画風まで違うぜ……!」
不動のNo. 1にして平和の象徴と呼ばれた男・オールマイト。
「テレビとか見てたけど直で見ると段違いだね」
「うん、オールマイトの授業を受けられるなんて多分世界でここだけだよ」
ヒーローオタクの緑谷が滑舌に話す。
ただキシノはというと、
(筋肉モリモリマッチョマンの変態だ)
仮にもNo. 1ヒーローに割と失礼な事を考えていた。
「早速だが今日はコレ!戦闘訓練だ!」
『BATTLE』と書かれたカードを出して高らかに宣言するオールマイト。
「戦闘訓練……!」
「ザ、ヒーロー科って感じのヤツ来たな」
「僕が主役の授業だね☆」
「万に一つそれはない」
「ひどい!!」
それぞれ戦闘訓練に想いを寄せる中、ひとり場違いな発言をした青山ウザ男(青山優雅だよ!?)をダメ出しした。
オールマイト曰く『形から入るのも大事だろう』とのことで、事前に要望を出しておいたヒーロースーツに着替えに行った。
とある町………を模した訓練所にて
「さぁ!始めようか有精卵共!!戦闘訓練のお時間だ!」
オールマイトの力の籠った催促の言葉で授業は始まった。
クラスメイトのみんなは自分の個性に合わせた専用の服を身に包んでおり、己の個性の短所や長所の向上、抑制等の考慮し求めた結果なのだろう。
中には違うベクトルで攻めた格好をしているのもいるが。
「あれ?キシノちゃんヒーロースーツそんなん?」
「お?なんだか騎士(ナイト)って感じでかっこいいな!」
キシノの格好は中世時代の騎士甲冑みたいな姿をしていた。
イメージとしては女騎士の第一形態みたいなものだ。
「そう?自分のイメージを考えた結果なんだけど」
「いやかっこいいと思うぜ俺も」
「う、うん。僕も」
「女騎士ってクールって感じ!」
「女騎士………くっころ………アリだな」
「僕が一番輝いてるけどね!」
「黙れウザ男」
「ひどい!」
上鳴、緑谷、芦田、峰田がそれぞれの感想を述べる中、約一名は場違いなので黙らせる。
「よし!敵チームとヒーローチームに分かれてくじを引くぞ!」
ルールは三人一組に分かれ、敵チームは何処かの階に隠した爆弾(ハリボテ)を守り、ヒーローを撃退。
ヒーローチームは爆弾回収もしくは敵チームを捕縛で勝利となる。
そして全員くじを引くと、
「2人ともよろしく」
「うむ」
「ケロッ」
キシノのチームメンバーは黒いマントを羽織った鳥人間とカエルみたいな格好の少女のようだ。
「早速だけどお互い何ができるか話し合わない?私の個性は体力測定で言ったけど基本身体能力増加みたいなものだし」
「私の個性は『カエル』。カエルのできることはなんでもできるわ」
「俺のは『闇影(ダークシャドウ)』。闇の世界で力を発揮する」
カエル少女と鳥人間の説明に、キシノは何故か謎のポーズをとる。
「ほぅ?ならば我が邪眼の出番が来たということか?」
しかも喋り方が厨二くさい。
それを鳥人間が察したように謎ポーズをとる。
「いや、貴様の手を借りずとも、我が力で攻略して見せよう」
「では行こうか。暗黒の宴を」
「血湧き肉躍る戦いへ」
「相性いいわね2人とも」
カエル少女は2人に対してドライに言った。
キシノ達ヒーローチームは指定されたビルへ配置についた。
「とりあえず、私が前衛、カエ…ごほん、梅雨ちゃんとヤミヤミは中衛で移動するよ」
カエル少女こと蛙吹梅雨は頷き、ヤミヤミこと常闇踏陰は感動を噛み締めるように目を瞑っている。
「ヤミヤミ、おいてくよ」
キシノに急かされてハッとなった後慌てて追いかける常闇。
建物内は薄暗く、ゲーマーな人からすればダンジョンみたいな構図だ。
「この暗さならば俺の力を十分に発揮できる」
と言う常闇の腹部から影の化け物が現れる。
「それがヤミヤミの個性なんだ。かっこいいじゃん」
キシノからかっこいいと言われ、照れくさそうにそっぽむく常闇。
個性のダークシャドウも何故か照れくさそうな仕草をしている。
「ケロッ爆弾を探す方法だけど」
「あ、それなら私にいい考えがあるよ」
自信ありげに語るキシノ。
蛙吹は何故か嫌な予感がした。
「それは?」
「『ひたすら虱潰しに走り回る』!」
「………それが作戦なのか?」
「キシノちゃんって結構体育系なのね」
さすがの常闇も唖然。
蛙吹は呆れ混じりにズバッとぶっちゃけた。
「どこに何があるのか調べるのが探索の基本だよ!」
「………そこは一理ある」
「そうね。仮に罠があったら私達がフォローしないと」
「早速探索!」
「オイっ!」
「キシノちゃん!?」
キシノはダッと体力測定で発揮した足の速さで走り回り、
「この階にはないから次行くよ」
「早いな!?」
「脱帽だわ」
その後2階を探索するも、こちらもスカ。
次に3階を探したが、こちらもいなかった。
「残りは4階と5階。敵と接敵してないからもう直ぐなはず」
「フォローは任せて」
「こっちも準備はできている」
「よーし。行ってみよっか!」
と言って4階までの道を進み…
ドガっ!「ふぎゃっ!」
「え?」
…出そうとして何かにぶつかった。
「みんな気をつけて!異変を感じる!」
「敵チームか?」
「何かがぶつかった感覚がしたの!………確か敵チームって透明の子がいたはず。きっと彼女がこの階に潜んでいるんだわ」
「あ」
「葉隠か。なら………蛙吹どうした?………あ」
あたりをキョロキョロ見渡し警戒するキシノ。
常闇も警戒するが、何故か蛙吹はキシノの足元を見て呆然としている。
つられて常闇も足元を見て呆然。
何故ならキシノの足元が地面から浮いていたからだ。
しかしキシノは警戒に集中しているため足元にいる敵役の葉隠に気づいちゃいなかった。
「全身透明化………油断したらこっちが酷い目にあってしまいそうだね」
「そ、そうね。(葉隠ちゃんが)酷い目にあってるわね」
「その上、目に見えないから何処から来るかわからないから事故ってしまいそう」
「………そうだな。(葉隠が)事故にあってるな」
「しかも何処からか呻き声が聞こえるし、私たちを油断させるに違いない」
「…どぉ………ぃ"………でぇ………」
「キシノ、恐らく彼女は最後のフロアまで逃げたはずだ」
「ケロッ敵は待ち構えているかもしれないけど今行くべきよ」
このままでは葉隠が危ないと感じた2人はキシノを進ませるよう急かす。
「…確かに、時間制限とかでモタモタしている場合じゃないもんね。行くよ2人とも」
了承したキシノは踏んだ相手など気づかずに4階へと向かう。
常闇と蛙吹は何もない場所に合唱した後キシノを追いかけた。
「………キシノちゃん………覚えてなさいよ………」
透明少女・葉隠透。
キシノに気づかれないどころか踏んだことにすら気にされなかったことに、恨み言の呟きは虚しく反響していった。
5階にて
「よくここまで来ましたわね」
推薦入学者の八百万百とマスクを身につけた複製腕の障子目蔵が立ちはだかった。
前には侵入を拒む防壁。後ろにはターゲットの爆弾がある。
「当然!ここまで『誰とも出会わなかった』し、こっちは準備万端だよ!」
((葉隠(ちゃん)を踏み潰してたの全く気づいてないな(わね)))
(見えないと言うのも考えものだな)
(後で葉隠さんを慰めてあげませんと………)
「?」
どうやらキシノは葉隠にぶつかって踏んづけた事を何も考えていなかったと言うか葉隠を認識していなかったため、キシノはずっと隠れていると思っていた。
「ま、まぁいいですわ。急拵えとはいえ、こちらの防御と迎撃は準備できています。このままタイムアップまで時間を稼がせていただきます!」
「そう言う事だ」
「これは攻略が難しそうケロッ」
「防壁はダークシャドウでいけるだろうが………」
お互いどう攻める守るか思考を巡らせる。
しかしここでもキシノが動く。
「なら武器を変えないとね」
キシノがリブラと盾を上に放り投げると、小さなサイコロみたいなキューブ状の物体に変化する。
「近づくのが難しいなら………」
そしてもう一つのキューブ状の物体を取り出すと、ある一つの武器へと変化する。
大きな金属製で10はある発射口がある凶悪な武器。
「近づかずに攻撃あるのみ!」
「み、ミニガン!?」
キシノが出したミニガンにギョッとする八百万。
「いっけぇぇぇぇぇ!!」
キシノの掛け声と共にミニガンが発射された。
チュドドドドドドドドドドドドド!!!
防壁どころか床、壁、柱など全部貫通しているが。
「ひぃいいい!!一体なんですのそれはぁっ!!?」
障子にギリギリ救助されながら叫ぶ八百万。
聞こえたキシノは律儀に答える。
「これ?友達が私のために作ってくれた武器なんだけどね!マグナム以上の攻撃力とスナイパー以上の貫通力を兼ね備えた遠距離武器の一つだよ!」
「そう言う意味ではありません!!私たちを殺すおつもりですの!?」
「大丈夫!なんでも非殺傷モードにすればたとえ撃たれても死ぬことはないって言ってたよ!まともに浴びても『気絶できないぐらい死ぬほど痛い』とも言ってたから安心だね!」
「「「「安心出来るかアアアアアアアァァァァァァァっ!!!!」」」」
八百万と障子、そして味方であるはずの常闇と蛙吹も全力でシャウトした。
ついでにモニターで見ていた他のA組とオールマイトもシャウトした。
「ついでに言うと相澤先生に許可もらいにいって『合理的ならよし』って言ってくれたよ!」
「「「「オォウ、マイ、ガァァァァァァァァァァァァァッットッ!!!!!」」」」
まさかの担任公認と言う追い討ちにキシノ(と下の階で動けない葉隠)以外は絶望の叫びをあげた。
「えっと、記憶によれば捕縛するか戦闘不能にさせれば勝ちだったっけ?」
撃ちながらルールを再確認するキシノ。
残念ながら爆弾を回収すると言うルールをすっかり忘れている。(それでも何故か爆弾はノーダメージ)
柱に隠れた八百万と障子は真っ青通り越して真っ白に顔が変色し始める。
「さてと、ではトドメと行きますか」
とキシノが敵チームにミニガンを向けようとしたところ、
『STAAAAAAAP!!!訓練中止!!繰り返す訓練中止!!これ以上はダメだよキシノ少女!!』
オールマイトによる中止宣言を受けてしまった。
火を吹くのをやめたキシノのミニガンはキュルルとなった後沈黙した。
「………やりすぎましたか」
穴だらけになった部屋を見てキシノは頭をかきながら反省した。
「あのねキシノ少女。出来れば私にも事前説明して欲しかったんだよね。サプライズも結構だけど次からは説明頼むよ?」
「はぁ。わかりました」
訓練中止となり、オールマイトに小言を言われているキシノ。
「………死ぬかと思った」
「生きた心地がしませんでしたわ………」
「すまん、俺たちが止めればよかったのだが…」
「私達も反省するべきね」
心の底から生還できたと安堵するあまり項垂れた八百万と障子。
常闇と蛙吹は2人を慰める。
ついでに見ていたクラスメイトも慰める。
(気絶しててよかった………)
ミニガン乱射に巻き込まれなかった葉隠は、表情が見えていれば複雑そうにしていたであろう心境だった。
「まあ、これを機にキシノ少女にどうするべきかの課題を出せるわけだが」
するとオールマイトはキシノ以外のクラスメイトに振り返る。
「諸君!キシノ少女を見て分かったことはあるかい!?」
(丸投げ?)
キシノがオールマイトに対してそんな感情を抱いていた中、1人の生徒が手を挙げる。
乱暴なクラスメイト(かっちゃん)を諌めようとしたメガネの少年・飯田だ。
「では俺が思った事を一つずつ。一つは『初めて訓練したにもかかわらず足運びに迷いがなかった事』。二つ、『剣をしまって機関銃らしきものを取り出したあれについて』。一言一句丁寧に答えていただきたい!」
彼の言葉に興味津々な目でキシノを見るクラスメイト。
キシノはため息吐きながら説明する。
「みんなには初めて見せるけど、私これ持ってるの」
と、キシノは金色の文字で『QUESTER』と書かれた銀色のカードを取り出した。
「クエスターカード!成程!キシノ少女はクエスターというわけか!」
オールマイトはカードを見て納得した様子だが、初めて見るクラスメイト達はちんぷんかんぷんである。
「クエスター?」
「なんだそれ?」
「小さな悩みから大きな事件まで幅広い課題(クエスト)をこなすエキスパートの総称だよ」
「知ってるのか緑谷?」
「ヒーローを調べてる時に目に入った程度だけど、元々ヒーロー不足を補う措置として設立されたらしくて、雄英含めた数々のヒーロー学校よりも入隊試験は軽めで、個性含め自分の得意を売り込むような職業で………(ブツブツ)」
「緑君長い。………要は擬似ヒーロー、もしくは冒険者と呼ばれているものよ」
緑谷が説明をすると途中で自分の世界に入ったのか話が長くなったのでキシノが簡潔に答え、皆納得した。
「じゃあそのカードはその?」
「そう。この銀色はシルバーランク。所謂『一人前』級ヒーローという事」
「マジか!!………で、それならなんでキシノがここに?」
「上司からの気遣いという事です。学校に行って勉学と友人を育みなさいって。だからクエスターは一時的にお休みです」
「うむ。戦闘経験があるゆえならば納得のいく動きだったわけだね」
クエスターと呼ばれる役職にオールマイトは顎をさすりながら納得したようだ。
「…で、二つ目だけどあれは君の友人がつくったやつかい?」
「ソヒっていうんだけど、私の友達で発明家なんだって。このインスタントボックスは物一つ登録しておけばいざって時に取り出せる代物なの。さっきのミニガンだけじゃなくて、弓とかライフル。あとチェーンソーもあるよ」
「「「「「「ヒーローが出していい武器じゃない!!!!?」」」」」」
キシノのインスタントボックスの実践と説明をしていると、クラスメイト達とオールマイトは『血だらけのチェーンソー』を見て絶叫する。
「あ、前のクジラの解体から洗ってなかったや」
「どっちにしろ怖えぇよ!!」
「よくそんなおっそろしいこと出来たな?」
「クジラの死体処理のクエストを受けた結果なんだけどな〜」
その時クラスメイト達のキシノに対する評価は『色んな意味で危ないやつ』であり、『初めに超えるべき壁』だった。
「…さて、いろいろ時間も押してるし早速2回戦目に行ってみよう!」
「雄英ってなんでも早速なんだね」
キシノの呟きにクラスメイト全員が思った。
こうしてクラスメイト全員の戦闘訓練が終了した。
一つ変化があるのは、緑谷と爆豪がバトルした際、緑谷がスマッシュ技を使った反動で右腕が変色するほどの怪我と爆豪と戦った怪我で現在保健室である。
評価の方はよく観察していた八百万が飯田を除いて辛口に答えていた。
(その割に爆弾魔君はメンタルにヒビが入ってるような表情だったけど多分立ち直るだろうね)
試合後爆豪は心ここに在らずな顔をしていたがキシノは他人事な気持ちでオールマイトの話を聞く。
「初めての訓練にしちゃみんな上出来だったぜ!」
「相澤先生の後だとなんだか拍子抜けだな」
「真っ当な授業もまた自由なんだぜ!それじゃ緑谷少年に評価を聞かせねば!」
そう言ってオールマイトは走り出す。
が、途中キシノが、
「ご指導ありがとうございました。筋肉モリモリマッチョマイトの変態先生」
ドッシャアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァン!!!
「「「「「「オ、オールマイトォォォォォォォォ!!!?」」」」」」
キシノの一言にオールマイトは頭から滑って消えていきました。
そして保健室に1人追加されたのはご愛嬌。
原作のガデテルガーディアンの性格と職業を合わせようとした結果、冒険者的なものが必要となったのでこうなった。