それでは、もう一作との同時投稿になりますがお楽しみいただければ幸いです。
第一話 遍く奇跡と運命を
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某日某時刻、連邦生徒会長の失踪を確認。
それにより、サンクトゥムタワーの行政制御権が喪失。
連邦生徒会を中心に三大校と他多数の学校の機能が著しく停滞。キヴォトス全土の交通網、商会網、交易網に大きな弊害的影響を確認。
連邦生徒会は、会長の残したメモに従い、キヴォトスの外の人間である、"先生"を連邦捜査部シャーレの顧問としてキヴォトスに招いた。
「以上がキヴォトスの現状です。ご理解いただけましたか、"先生"」
黒い長髪にメガネをかけた白い制服の"生徒"、七神リンは先生に問いかけ、彼もそれに答える。
[うん、よく分かったよ。私自身、曖昧なところは多数あるけど、細かな確認は後かな?]
「そうなりますね。ですが、今は取り敢えず執務室へ行きましょう」
キヴォトスの中枢であるサンクトゥムタワー。そのガラス張りの長い廊下を歩き、執務室への扉を開ける。中には、騒ぎ立てる四人の異なる制服の生徒と、それに対応する黄金の髪と桃色の髪の二人の女子生徒、そして、長身で白いスーツにワックスで固めた黒い短髪の男子生徒。
「会長はどこに行ったの!?」
「ですから、目下捜索中で……」
「各自地区だけでなく、D.Uの商業区等にも被害が……」
「交通網が麻痺してて上手いこといかないんだよ〜、もうちょっと待ってってば」
「自警団だけでは手に負えない状況です。早急に事態の沈静化を要請します」
「今はどこもかしこも手一杯なんだ、こちらも対応してはいる、落ち着いてくれ……あっ、リン!」
男子生徒が声をあげてリンと先生へ駆け寄る。同時に、四人の生徒達も後ろからリンへと苦言を呈する。
「ちょっと、会長1人いなくなって連邦生徒会が機能してないのは普段から会長に頼りすぎてる証拠なんじゃないかしら!?」
「早瀬さん落ち着いて……それについては返す言葉もないが、今リンが連れている彼こそが現状を打破する可能性なんだ」
「……どういうことでしょうか」
白い髪で自警団を名乗る生徒、スズミの問いに対してリンは端的に、先生が連邦生徒会長が選んだ頼れる"大人"であること、現在の混乱を沈静化するために必要な"あるもの"が新設されたばかりで機能していない、シャーレオフィスのビルにあることを説明する。
「ですが、現在シャーレオフィスは、九囚人の1人、"孤坂ワカモ"が率いる不良生徒達に占拠されている状態のようです」
「加えて、防衛室も殆ど出払ってて機能してない。最悪、私が直接鎮圧に向かうつもりです」
「なるほど……ならば、私達がその暴徒鎮圧に赴きましょう」
「しかし戦力が……」
[大丈夫、私が指揮をするよ。善は急げ、行こう]
先生が会話を割って終わらせ、リンはそれに応えるようにヘリポートへの道を案内する。不安気についていく四人は自己紹介を挟みながらその後をついていく。
「先生!」
[?]
パシッ
「インカムです!私は
[任せて!]
爽やかな笑顔でグッドサインを返す先生に深々と一礼し、ミカドは複数のパソコンの操作を同時に始める。
「……現会長代行、七神リンの一時不在により、各自治区の整理及び、主要都市のインフラ、公的機関への指示、暴徒鎮圧の要請を代わって私が行います。アユム、モモカ、リンには内緒ですが少し裏技を使います。かなり忙しくなりますよ」
「はいはい〜わかってるよ」
「が、頑張ります!」
ーーー
ヘリ内
[ユウカ、ハスミ、スズミ、チナツだね。よろしく]
にこりと笑いかける先生に各々が自己紹介を踏まえた挨拶を終え、移動の間にそれぞれは自らの愛銃達の調子を確かめながら会話する。
「先生、貴方はキヴォトスの生徒ではないので、銃弾にはくれぐれも細心の注意を」
[大丈夫、分かってるよ]
「しかし自ら赴くとは……先生は外の戦場の経験が?」
[ちょっとだけね、本職は教師と医療関係。まぁ、任せてよ]
「そろそろランデブーポイントへ到着します。着陸の準備を」
「それでは……行きましょう、皆さん。目標はシャーレオフィスの奪還及び、不良生徒達の撃退です」
[じゃあ、作戦開始!]
ヘリから降りると同時にスナイパーの射線を切るためにスモークグレネードを焚き、先生は状況把握のために近くの物陰にチナツとハスミと共に潜む。
[……敵影15!ユウカは正面からの敵を食い止めて!スズミは次の合図で閃光を、ハスミは440ヤード先の二人のスナイパーを牽制!無理に当てる必要は無い、狙われてる自覚をもたせれば良い!]
ヘリから降りてわずか10秒程度で先生は敵影の配置と状況を把握、的確かつ簡潔な指示に一瞬たじろぎながらも生徒達は応える。
「「「っ了解!」」」
[リン、ワカモって子はいる?]
「いえ、全員一般の不良生徒です」
銃撃戦が始まり、先生の指示に従いつつ生徒達は少数ながらも優勢を維持して鎮圧を進める。
[ハスミ、隙ができた。奥の子を狙撃!ユウカはスズミと連携して左右の子を一気に!]
「お任せを」
「はい!」
「承知しました!」
ダダダダダッ!!
「くっ!撤退だ!アタシらじゃ手に終えない!"アレ"を持ってきて移動しろ!」
「くっそー!早く逃げろ!」
激闘の末に勝利、一同は一息をつき、チナツが手当てを始める。リンと先生は今だ後方で物陰から様子をうかがう形になる。
「痛った……もう、あいつら違法JHP弾使ってたじゃない!」
「落ち着いてください、ユウカ。ホローポイント弾は違法ではないはずですよ」
「ウチでは違法になるの!傷跡が残るじゃない」
「……なにか変な感じがします。先生、まだ前線に出ないでください」
[うん。なにか……嫌な予感だ]
先生とリンの直感は正しかった。予感の正体が現れる。重厚な音を響かせながら歩き、ガトリングの主砲を中央に備え、二本の足と腕に見える部分には機関銃が4つ取り付けられた6メートル程の鉄の兵器。
【先生!直ちにシャーレオフィス内へ避難を!彼女達、とんでもないものを盗んでいました!】
[うん、見えてるよ!かなりまずいかも。何か手立てはある?]
【10……いや5分!私が直接、最速で向かっています、それまでの間どうか辛抱を!】
[了解!]
「何よアレぇ!?」
「アレは"ヴグロザ"!対暴徒鎮圧用兵器です、皆さん退避を!」
「なんですかそれ!?とにかく先生を安全なところへ!」
パキィンッ!!
リンの後方からの指示にスズミが閃光弾を投げると同時に、ユウカとハスミが牽制しながらシャーレの入り口を目指す。しかし、効き目が悪いのか、お構い無しに障害物を破壊しながら先生たちの元へ前進する。
「止まらない!先生、退避を!!」
ガチャッ!ドォンッ!!
「先生!!」
生身である先生の肉体に向かって放たれた数発のミサイル、それらをユウカとスズミが銃弾で弾き落とし、ヴグロザのカメラをハスミが狙撃して破壊すると、一度動きを止めて自己修復を始める。
[ミカドがこっちに向かってる!残り4分!皆耐えるよ!]
「「「はい!」」」
先生の指揮のもと、体制を立て直して再び迎撃する。
懸命に善戦するが、火力が足りずに苦戦を強いられたままの状況が続く。
「ユウカ、しゃがんでください!」
「うわっ!?」
パキィンッ!!
ハスミの狙撃が唯一の火力になるが、修復が先に間に合ってしまいギリギリの膠着状態が続く。
(あと一分……!まずい!)
[ユウカ危ない!!]
「あっーー」
ガァンッ!
ユウカの頭部へ瓦礫が直撃。倒れたユウカのヘイローが点滅し、意識を奪っていく。ヘイローの状態が意識に直結するのを知らないながら、それを視認した瞬間に先生は走ってユウカの救助へ向かう。
「先生!!危険ですおやめ下さい!」
(痛い……意識が……)
倒れるユウカを姫抱きにして離脱する先生にヴグロザが狙いを定める。
スズミとハスミが弾幕と狙撃で意識をそらそうとするが、背を向けたヴグロザの重圧な装甲に弾かれる。
「「「先生!!」」」
ドォンッッ!!!
上がった黒煙の中、二人の影はかき消される。
絶望しかけたその感情をかき消すように、一人の声が黒煙を晴らして響く。
「お待たせしました!"
「ミカド!」
総員の視線の先には先生とユウカがミカドの後ろに倒れており、多少の擦り傷はあるものの、ほぼ無傷なことから、ミカドが攻撃をその身に受けたのが見て取れる。
だというのに、彼は一切の弱さをを見せず威風堂々と立ち、宣言する。
「連邦生徒会長不在により、特攻室長の特権行使を宣言!敵を対暴徒鎮圧用兵器ヴグロザと認め、またその破壊を目的とした戦闘を行います!リン、破壊しますが構いませんね!?」
「許可します!皆さんシャーレへ避難を!」
「私達はサポートをっーー」
「駄目です、かえって彼の邪魔になります!早く退避を!」
「っ、承知しました。行きましょうスズミ」
「……分かりました」
「ユウカさんの手当てもします。中に入ったら安静にできる場所へ移動しましょう。苦しいですが、立てますか先生」
[うん、大丈夫。ミカド、くれぐれも気を付けて!]
「
彼の装備は先ほどの白スーツの上から戦闘用の装備を身に着け、左手にはARを装備。右腕には"
シャーレの入り口へと集まる6人をロックオンしたヴグロザをミカドがARで牽制、怯んだ瞬間に飛びかかって杭撃槍を脚に撃ち込む。
バギィッ!!
「
バォォンッッ!!!
杭撃槍は二段仕込みの槍。撃ち込む時に一度爆破して加速し外殻を破壊、撃ち込んでから杭先端内部の密閉空間でサーモバリック爆薬が再度爆破し、さらに加速して撃ち込み、熱と爆風で内部を破壊する物理兵器。撃ち込む時の性質上、身体が異常に頑丈かつ、使用を正しく判断できるミカドにしか使用を許されない対物兵器。
その破壊力は、既存の戦車の装甲を"正面"から破壊してみせる。皇帝を冠するその名と、ある一件で披露した圧倒的な撃滅力で母校の大地を焼土と化した彼につけられた畏名は、"
ーーー
「凄い音……彼、大丈夫なんですか?」
「問題ありません。特務攻撃室は二年前に新設されたばかりの新たな委員ですが、あげた功績は多くその全てが彼一人によるもの。戦闘能力において我々(連邦生徒会)が所持する兵器や人材を含めても現状、最高戦力です」
「先生、ユウカさんは気を失っているだけです。軽い脳震盪で頭部の血も傷は浅いので残りません。ご安心を」
[そっかぁ……良かったぁ……]
「……先生、こちらへ。申し訳ありませんが、皆さんは立ち入りを遠慮して下さい」
「……分かりました。入り口にて哨戒にあたります」
ユウカの治療を終え、リンに案内されるままに地下へと向かう。
「連邦生徒会が大事にしているもの……何か知りませんが壊さなければ……あら?」
(まさか、"災厄の狐"!既に内部にっ!?)
仮面をつけた銃剣仕様のライフルを持つ和装の生徒。リンが普段使うことのない拳銃を取り出そうとした瞬間、先生を見つめたワカモは慌てて飛び出し行った。
[あれ、君は……?]
「はわ……し、失礼しましたー!!!」
[??どうかしたのかな?彼女も生徒ならそのうち会えると良いなぁ。あれ、リンちゃんどうしたの?顔色悪いけど]
「……いえ、なんでもありません。こちらへ」
余計な情報を渡して混乱を招かぬように配慮したリンはそう言って地下室へと案内し、先生へとタブレットを渡す。
[タブレット……?]
「これは"シッテムの箱"。タブレット状に見えますが、実は正体のわからないもので、製造会社・OS・システム構造・動く仕組みの全てが不明で、自分たちには起動すらすることができませんでした。ですが、先生なら起動できると、会長が仰ったのです」
[……我々は望む、七つの嘆きを。……我々は覚えている、ジェリコの古則を。]
[……おはようございます、先生!]
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某時刻、某所にて"先生"による"シッテムの箱"の起動を確認。
これにより、サンクトゥムタワーの行政権が先生に移り回復。また同時刻、先生から連邦生徒会に行政権が移ったことを確認。
会長失踪による混乱は未だ収まっていないが、会長の信じた大人である"先生"による問題解決を願い、我々連邦生徒会はそれを全身全霊で支えていこうと思います。
以上を皇ミカドによる調査記録とします。
補遺 各校の武力的混乱は、作成者の私的な繋がりを通じて七割方収まりました。速く特攻室の人員を増やして下さい。過労死します。
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ゲヘナ風紀委員
「委員長、チナツの報告によれば、サンクトゥムタワーの制御権が戻り、収束しつつあるようです 」
「そう。三人共、普段の倍以上の書類と連絡、暴徒の鎮圧。大変だったろうに、ご苦労さま」
ゲヘナ風紀委員の行政官、アコの報告に風紀委員長である紫紺の瞳と大きな翼の小さな生徒、ヒナは実動部隊の銀の髪と褐色肌の銀鏡イオリと、黒と白のはっきり分かれたメッシュの髪型に右腕に装着された対物リストライフルと軽量化を重視したMGが特徴的で、イオリより高い目線を伏し目にし、片翼だけの翼を伏しながら疲れを見せる男子生徒。
「あ……ありがとう……。でも、私達二人含めても委員長一人の仕事量と同じくらいだけどね……」
「……ヒナ委員長もおつかれ様です。後の書類は俺達がやっておきますから、少しだけでも休んで下さい」
「……そう、なら甘えさせてもらうわ。1時間ほど仮眠を取ってくるから、ここは任せたわ」
ヒナはそう言うと小さく欠伸をかいて仮眠室へと向かい、それを三人が見届けた後、部屋で仕事を始める。
「了解です。じゃ、イオリ、アコ、始めようか」
「アオ」
「ん?どうし……あぁ、いつものか……」
「なっ!?いつものとはなんですか!?良いですか!貴方が前線で優秀に立ち回れてるのは私のバックアップあってのことなんですからね!貴方一人の力でヒナ委員長に並べるとは到底思わないことです!!多少仕事ができて冷静でゲヘナの抑止力に繋がっているからといってもいつもヒナ委員長の横に立っているのは私なんですからね!!」
「せめて褒めるのか貶すのかどっちかに振り切ってくれ。ていうか、別に俺は委員長の横に並ばなくていいよ、狙撃手なんだし」
ヒナを敬愛するアコの捲し立てるような言葉をさらりと躱しつつ仕事に戻るアオ。いつもの光景だからか、イオリは既に自身に割り振られた仕事を始めていた。
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ミレニアムサイエンススクール 工場区画
「終わり?おぉ、そうか。まぁ比較的ウチは犯罪者云々で問題は起こらない方だしな。よし、撤収だ。混乱は大方収まったってよ」
「えー、もう終わりー?じゃあ帰りにご飯食べてこうよリーダー!」
「報告終わってからな。カリン、アカネ、トモゼ、帰るぞ」
橙色に龍の描かれたスカジャンをメイド服の上からまとう小柄な生徒、美甘ネルと大型犬のような落ち着きのない金髪ロングの生徒、一ノ瀬アスナの二人は、今しがた殲滅を終えた犯罪者達を背にして撤退を他三人に指示する。
「了解、リーダー」
「了解です」
「おー、了解」
褐色の肌に巨大な対物ライフルの角楯カリン、メガネとセミロングに正統派なメイド服の室笠アカネは静かに応答する。
一方で、今回彼女達の任務に同行した赤いパーカーを制服の下に着込み、金髪にピアスを複数開け、ジャラジャラとチェーンをぶら下げながらポケットに手をいれるヤンキー風の男子生徒、
部活は別の所属ながらヘルプとしてあらゆる部活に顔を出しているため、見た目から想像しにくいが信頼は厚く、今回の件にも駆り出されていた。
「俺いる意味あったか?ほとんどネルパイセンが片付けてやんの」
「そう言うなって、どうせ暇だろ?」
「暇なら暇なりの過ごし方ってのがあんだよ。実験も途中だし。ま、飯の経費は下りるってんだから、それでチャラってことにしとくけどよ」
男子生徒の平均よりも高めの身長なため、ネルと話す際にかなり腰を折って話しながら道中を無駄話で潰して一同は帰っていく。
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トリニティ総合学園 ティーパーティーの集会
「えっと……ナギちゃん?」
真っ白な羽に桃色の髪。天真爛漫とも言える性格の彼女はパテル分派の現ホスト、聖園ミカ。その正面に座るのは彼女の幼馴染であり、同じく白い翼に透き通るブロンドの髪色、そして優雅さを備えるフィリウス分派の現ホスト、桐藤ナギサ。
そして、その横で紅茶を優雅な所作で淹れるのは、真っ黒な執事服に平均から大きく外れた長身に腰のレイピアとAR。顔には鴉を模した仮面をつけた彼は桐藤家統括執事長兼、ナギサ専属の護衛執事、
その二人にミカは不安気な顔で問いかける。
「何も問題は無いんだよね?一応、連邦生徒会とか他の学園とか大変みたいなんだけど……」
「ミヤビ、大丈夫ですよね?」
「勿論でごさいます、お嬢様。正義実現委員会の完璧な巡回、救護騎士団の献身的な救護、そして私の率いる"オルニス"による情報網を駆使した情報統制兼武力行使。トリニティはいつもと変わらない、美しき花園のままでございます」
「たそうです。何も問題はありませんよ」
「えぇ……」
「ふむ……ミカお嬢様は納得がいっていないご様子。であれば、私自らがトリニティ中を警邏してまいりましょう」
「あ、いいのいいの。そういうことじゃなくてね。なんていうか、いつも通りに……完璧すぎるなーって」
「身に余るお言葉。光栄にございます」
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百鬼夜行連合学院 怪螺の衆、鎮圧
赤と白を基調とした着物をまとった三人。眠そうな表情に熊耳の春日ツバキ、目を丸くして眼前の光景に驚く勇美カエデ、薄桃色の髪と大和撫子の振る舞いをした水羽ミモリ。
その三人の前には、同じく赤白の着物と右腰に挿した大小の刀。背にはグレネードランチャーを携えた男子生徒、
「えっと……マサムネ先輩、やり過ぎじゃない……?」
「うむ……烏合の衆、友にたるはあり得ず、斬るに値せぬ童なり。故、全て峰による打撃、致命に至らぬもの」
「……和解が難しかったので全て峰打ちで気絶させてるだけだそうです。って、マサムネ先輩、どこへ?」
「拙者、昼餉がまだ故、これにて失礼つかまつる」
「行っちゃったね〜、でも大丈夫。報告だけしておくから〜」
「えっと…」
「ミモリ。今日は主の作った飯が食べたい」
「先輩いつもミモリ先輩の作ったご飯しか食べないじゃん…」
首をかしげるカエデと、突飛な行動に戸惑いを見せるミモリに、欠伸をかきながらツバキは柔和な言葉遣いで歩いていく。
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アビドス高校 対策委員会
「なんか向こうの方忙しいみたいだけど、大丈夫なのかしら?」
「それについてはどうやら……キヴォトス外から来た大人の方が、多数の学校の生徒と協力して解決したとのことです」
「それって最近噂になってた"シャーレ"の顧問…いわゆる、先生ってやつでしょ」
猫耳と黒髪の生徒、黒見セリカとメガネをかけた優等生の奥空アヤネ、対策委員会室にて行われている二人の何気ない会話に、友人から頼まれ、商業区の暴徒鎮圧から戻った一人の男子生徒がその輪に入っていく。
右腕に装着した円形のバックラーと、古い型の一丁のウィンチェスター式のショットガン。青い髪の長い襟足を結び、アビドスの制服の上からコートを羽織る二年の男子生徒、
「おかえりなさい、先輩。どうでした?怪我はありませんか?」
「んーまぁ、消費はマガジン2丁分ってとこ。大した怪我はないよ。それより、ホシノちゃん達は?」
「皆さんパトロールです。でも、そろそろ帰る思いますよ。アビドスは良くも悪くも中枢都市の影響をあまり受けませんから」
「じゃあ、私達は今月の利子の返済計画を……」
「あ、今月は大丈夫だと思う。はいこれ見て見て」
彼はスマホを机上にスライドさせて二人の前に口座の画面を見せる。
「えっと……えぇ!!?」
「利子だけなら四カ月分くらいかなぁ。お金の管理は任せてるしアヤネちゃんに全部送るね。ごめんね、結果報酬だからもっと稼いでおきたかったんだけど、思ったより依頼地がバラけててさぁ……」
「送っ……全部!?」
「い、いやいや!充分すぎるから!?こんなことなら私も……!」
「ダメだって、弾丸の消費は最低限。こういう荒事なら俺のほうが慣れてるしさ。っとごめん、ちょっと寝るから、皆帰ってきたら起こして」
「は、はい。ごゆっくり」
(確かに無傷。いくら先輩の体でも、ここ最近の動きは流石に……)
肉体の疲労を隠しきれなかったハクヤは教室の隅で椅子に座り、そのまま眠り始めた。
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かくして、各地で広がり続けた波紋と、新たに起こり始める事件の火種。
連邦生徒会長の残した言葉。
キヴォトスの未来は"先生"が選択する遍く全ての奇跡の積み重ね、そしてそれを掴み取る為に奮起する生徒に、運命に委ねられた。
「………お疲れ様、先生。永いプロローグだったね」
大好きなスマホゲー、ブルアカ二次創作です。
前々から書きたかった作品で、何人かのキャラクターはイラストも制作中です。(友人が)
まだ一章しか書き終わってませんが、オリジナルストーリーもオリキャラも多く展開予定です。
気に入っていただけたら、モチベに繋がりますので、感想やお気に入り登録などよろしくお願いします。
捕捉 鬼方アオの見た目、最初から少しだけ変わってます。片方だけの翼がある設定なの忘れてました。