キャラの掘り下げや新キャラの匂わせ、新章の事前情報伏線と筆休めが主な目的です。
第一〜三話 恩返し
プロローグ
「この間のお礼をしに行きましょう!」
「そうですね、いい頃合いだと思います。シロコちゃんとハクヤ君の怪我も大分良くなりましたし」
「ん!んぅゔゔ!!」
[こらこら、シロコ動かないで。必要なことなんだから]
「シロコちゃん。俺だって何本もぶっ刺されたんだから観念しなよ。爆弾に比べりゃ痛くないでしょ」
「先輩言い方……」
「うへ~……平和だねぇ」
「でも6人で押しかけるのは少し邪魔になりそうですね。忙しい方ばかりですし」
「だったら俺が代表してホシノちゃんと行ってくるよ。男子が1人はいたほうが良いでしょ」
「あ、ではこうしましょう。先輩二人と、私達が1人ずつ着くということで。場所も丁度四カ所ですし」
「オッケ~。じゃあお土産準備しないとね、折角だから、アビドスに縁のあるものとかにしたいね」
[じゃあ、私は帰るから、何かあったら呼んでね]
ーーー
第一話
ゲヘナ風紀委員への恩返し
「と、言うわけで恩返しに来たよ〜!」
「いぇ~い」
「先輩達、テンションおかしくない?」
右腕と頭から右眼にかけて包帯を巻き、明らかに治りきっていない状態の彼は、隣ではにかむ件の主要人物、小鳥遊ホシノと付き添いの黒い猫耳の生徒、黒見セリカと共に風紀委員執務室前で迎えたアコへと元気に挨拶する。
「おや、先日はどうも。無事……とは言えないようですが、まぁ大事がなくて何よりです」
「おじさん含めて皆がお世話になったよ、ありがとう〜」
「あ、あの。これ、つまらないものだと思うけど」
セリカが袋に詰められた菓子折り達をアコに手渡す。
「ありがとうございます。この形……アビドスの名産ですか?」
「いや、それはハクヤ先輩が……」
「え?」
「その袋の菓子、皆で作ったんだよ。小判のクッキーがセリカちゃんで、魚のチョコがホシノちゃん。で、校章の饅頭が俺」
「……意外ですね。貴方お菓子とか作れたんですか」
「よく言われる。それと、アンタにはついでにこれ」
「これは……!?」
「ヒナちゃんの手縫い。好きなんだろ?アオから聞いた。手作りで悪いけど、いらなかったら捨てていいよ」
「っ……!貴方が作ったことは腹立たしいですが、ここまで巧妙に作られているヒナ委員長を捨てるわけにはいきません……!!」
「先輩、そんなの作ってたの……?」
「普通は作んないよ?アオに聞いたらこの人の趣味がヒナちゃんで一番喜ぶっていうから仕方なく。あんまりまじまじ見てるわけじゃないしハリボテの人形だけど」
「ハクヤが普段から女子生徒の人形作ってたら普通に気持ち悪いから安心したよ〜」
(アビドスの皆のは作ってるって言ったら怒られそうだな……)
「喜んでもらえたようで何より。それと、アオはどこにいんの?」
「今日は午前中にイオリとパトロールです。あと一時間もすれば戻りますが、待ちますか?」
「え、良いの?忙しいんじゃない?」
「この間一斉に摘発したばかりなので今日はまだマシなほうです。皆さんと話す時間くらいは取れますよ」
コンコンコンッ、ガチャッ
「委員長、アビドスの皆さんです」
「小鳥遊ホシノと……確かアオと戦ってた、ハクヤ。だったかしら」
「ヒナちゃん久し振り〜、この間はおじさんと後輩の皆がお世話になったよ。ありがとう」
「ありがとうございます」
「お世話になりました。あれ、アコちゃんに持たせてるのお礼の品物だから。時間ある時に食べて」
ヒナは書類を処理する手を止め、三人をソファへと誘導して座る。気を利かせたアコはコーヒーと客用のお茶を差し出し、ヒナの隣へ座る。
「改めて、お世話になりました。本当に助かったよ」
「気にしないで。昔はうちもそっちと交流があったし、先生からもお願いされたから」
「先生……なんか体張ったって聞いたけど何したの?」
「…………黙秘するわ」
ヒナは先日見てしまった光景を言うまいと口を閉じ、コーヒーを一口すする。その後にハクヤが口を開く。
「にしても、アイツもバカ真面目というか、一途だよなぁ。ヒナちゃん、返事いつするの?下手したらアイツ死ぬまで待つよ?」
「……」
「ハクヤさん。デリカシーを考えてください」
「いやいや、別に怒ってるわけじゃないけどさ、1年以上も返事待ってるアイツの気持ちも考えてやんなよ。友達として心配なわけよ」
「?」
「ハクヤ、何の話?」
「こっちの話。まぁ、強制はしないよ」
静かに語るうち、ヒナが口を開きかけるタイミングで、執務室の扉が開き、ある人物が部屋へ入ってくる。
ーーー
第二話
伏魔の猟犬
「ただいま~、って、アビドスの三人じゃないか。結構ボロボロだな……」
イオリだけがパトロールから戻ったようで、銃を担ぎながら三人の姿を見て挨拶する。
「君にもお世話になったね。色々と」
「あぁ……別に謝るつもりも、礼を受け取るつもりもないぞ。どちらも当たり前のことをしたまでだからな!」
「そう。じゃあそこに入ってるお菓子イオリちゃんの分だけ抜いといて良いよ」
「えっ!?いや、それは、その……」
「おじさん、素直なほうが良いと思うなぁ〜」
「それは、もらう……ありがとう……」
「あれ、もう1人いなかったっけ?1年生の……」
「あぁ、チナツなら今日は救急医学部の方に。手が足りていないようなので」
「そっかぁ。じゃあ、おじさん達はそろそろ御暇しようかね。忙しいだろうし、アオ君にはハクヤが直接お礼言っておいて」
「あら、もう行かれるのですか?」
「これからトリニティと連邦生徒会、あと便利屋にも行かないと」
「あぁ、だから早い時間だったの。じゃあ、お大事に。お菓子はありがたく皆で頂くわ」
「お邪魔しました」
「じゃあね〜、風紀委員長ちゃんも、あんまり根詰めすぎないようにね〜」
「何かあったら連絡を頂戴!なんでも力になるわ!」
三人を見送った後、イオリが業務連絡に口を開く。
「今日は不良生徒の喧嘩が12件、強盗が3件、食堂で謎の生物の騒動が1件。あと、アオが見回り範囲減らしてもいいかって、これ資料」
「広げた範囲、誰もいなかったんですね……」
「でも代わりに、ゲヘナ郊外近くに円形哨戒陣形試用の為、単独潜入許可を……」
「却下よ」
「……はい、委員長。でも……どうして私達をそこまで近づけたくないの?……"ヘルヴァヘル"だっけ」
「永遠に燃え続けるゲヘナの地獄……過去の話よ。特に、アオは絶対に近づけさせない」
ヒナは窓の外を眺めながら振り返らずにイオリへ言い放つ。
「別に違反者もいないだろうから行く気はないけど、なんでそこまで……」
「……イオリ、アオがゲヘナで一部の実力者達に何と呼ばれてるかはご存知ですか?」
「え、うん。"
「それは一般的に広まった理由です。元々、その名を呼び始めたのは、万魔殿のマコト議長。真の理由は……ゲヘナで最も鎖に繋いでおかなければいけない生徒だからです」
「繋ぐ……?」
「ヒナ委員長、ハクヤさんの言っていたことは気にしないで下さい。貴方は悪くありません」
「…………えぇ」
ヒナはアコのフォローに、小さく呟いた。
第三話
便利屋68への恩返し
「じゃ、次はアヤネちゃんの番ね。私これからバイトだから」
「うん、頑張って」
「頑張ってね、おじさん応援してるよ〜」
「拉致とか変な客には気をつけてね。変な勧誘とかには乗っちゃ駄目だよ?」
「わ、分かってるわよ!大丈夫!……多分!」
「あはは……それでは行きましょうか。この間部屋を借りれたらしいので、その座標へ」
一同は便利屋の事務所へと赴く。
「こんちゃー……どういう状況?」
扉を開けた先、目の前に広がっていたのはあらゆる書類の束を数人の男性方ロボットに突きつけられて白目を剥いているアルと、それをなだめる社員達の姿。
「ぉうおう、便利屋68さんよぉ。この間の依頼でうちのもん買ったんだから払えないとはいえねぇよなぁ!?払えなかったら、残念無念また来年だなぁ!」
「お、おかしいでしょ!?明らかに暴利じゃない!私達武器の整備と補充しただけよ!」
「おいおーっい、そうは問屋が卸さねぇぜ?この契約書が目に入んねぇのかぁ?ウチは泣く子は黙り、笑う子は泣いてバカには白目を剥かせる"ハイエナ商会"」
「ん?ハイエナ……」
「あぁ?お前等!見せもんじゃねぇぞ!」
「あ、あわわっ」
「ありゃりゃ。ちょっと荒事?おじさん達が手伝おっか?」
「う、でも今回は……」
「あ、思い出したわ。ハイエナ商会って
「あ?なんだテメェ。なんでボスの名前を……」
「ん?でも斑間はこんなことしないな?アイツ普通の金貸し屋だし……」
「何をごちゃごちゃ…… 」
「お前等アレか。斑間のカリスマに脳焼かれてなりふり構わず認めてもらいたい情けない奴らだな。昔一緒に仕事したけど、アイツこういうの嫌いだからやめな?」
「なんだか風向きが……」
「え……そうなのか……?てか、アンタ、何者だよ」
「はじめまして、アビドス高校二年、鷲ハクヤです。ブラマでは宵のガルダを名乗っていました、以後ヨロシク」
「!!?ガルダさん!?貴方が!?」
「うん。でもって、一身上の都合でお前等ぶちのめすわ。便利屋ちゃーん。手伝って〜」
「ま、任せて頂戴!」
戦闘ーーその後
「ず……ずびばぜんでじだ……」
「意外と弱かったね〜」
「事務所が……」
「どうせ引っ越したばかりで対して内装整えてないし、また模様替えしよー?」
「すいません……俺達、斑間さんに……喜んでほしくて……」
「うんうん。分かる分かる。アイツと仕事すると尽くしたくなるよな。でも、もうこんなことやめて全うに稼げよ」
「はい……これ、本当の契約書です……」
「これが本当に正規の価格ですか?」
「はい……それはボスへの提出用なので嘘じゃないです」
「どれどれ……ふーん。こんくらいなら俺払うわ。ほい、スマホ貸せ」
「へっ……なんで!?」
ピロンッ
「じゃあな、俺等あの子達に用あるから」
「は、はいぃ!」
男性方ロボは一目散に退散した。
「助けてくれたのは感謝してるけど……お金払ってもらうのはさすがに違うわよ」
「この間のお礼だから気にしないでよ、これ菓子折りね。それに、斑間には俺も恩義があるから俺にも得あって、ついでにメッセージ入れといた。アイツはアルちゃんみたいな人間大好きだからそのうち依頼来るんじゃない?」
「何から何まで……」
「言っとくけど、俺達にとっちゃまだまだ返し足りないよ」
「はい!また何かあれば頼って下さい。出来る限り力になります」
「ラーメンならおじさんも奢れるよ」
「そうね。だったら、これで私達は対等。そっちも何か困ったことがあったら、いつでも私達を頼りなさい!特別価格で引き受けてあげるわ!」
アルは得意げに胸に手を当てて宣言し、高飛車に笑った。