永い旅路を歩む春   作:レガシィ

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まぁ、薄々お気付きでしょうが、作者はこういう話が癖なので、苦手な人は薄目でお付き合いください。


番外編 一〜五話

 第一話 

 

 許しませんよ!!

 

 風紀委員執務室にて、アビドス生達のお菓子で昼食の後にコーヒーブレイクをする一同。しかし、1人の生徒が絶叫する。

 

「辛ぁぁっ!!?」

 

 アコの絶叫にビクリと肩を跳ねる一同。

 

「ど、どうしたのアコちゃん」

 

「ほほまんひゅう、ははい……!」

 

「?ハクヤの饅頭……あぁ、アイツ変わり種好きだからなぁ……。何入れたんだろ」

 

 アオが辛いと噂の饅頭を一口齧るが、次は別の意味で悶絶する。

 

「むぐぉっ……!?」

 

「アオ先輩、辛いの平気なんじゃ……」

 

「に……苦っ……」

 

「え、まさかこれ全部味違うの?ヒナ委員長、大丈夫?」

 

「私のはヨモギクリームかしら」 

 

「あ、私のは練乳苺ですね」

 

「えぇ……そこは普通なんだ」

 

「イオリのは?」

 

「私のは……つぶ餡とこし餡が半分ずつのやつ」

 

「一番普通じゃん。てか本当に無駄に器用だし凝ってるなアイツ」

 

「ていうか、アオのやつも苦いっていうけど、それ青汁じゃない?」

 

「俺苦いの駄目ってほどじゃないんだけど苦手なんだよ。アコの反応ほどじゃないけど」

 

「これもしかしてロシアンルーレット式?アコちゃん外れ引いたってこと?」

 

「ひゅ……ゆ……許しませんよ……(てんしょう)ハクヤぁぁ!!!」

 

 第二話

 

 お、お肉です。

 

 滅茶苦茶になってしまった事務所を片し終え、貰ったお菓子で休憩する便利屋一行。

 

 普段口にすることの少ない手作りの菓子に舌鼓を打っていた。

 

「あら美味しい。あの子たち皆器用なのね」

 

「皆っていうか、多分これ何個かはハクヤが教えたんじゃないかな。そんな感じの味がする」

 

「え、ハクヤ君料理できるんだ。そんな風に見えない」

 

「料理っていうか、逆に出来ないこと探すほうが難しいんじゃないかな。色々出来る中でも、お菓子とか小物は友達が喜ぶとかの理由だと思う」

 

「す……凄いですね……美味しいです、このクッキー……」

 

 ジリリリッ

 

 突然、事務所の黒電話が僅かに古風な音を鳴らす。個人の携帯ではないこの音が示すところは、"依頼"の合図。アルが受話器を手に取り、声色を神妙に変えて応対する。

 

「はい。便利屋68、陸八魔です」

 

「電話越しで失礼するよ。私は斑間、今日は部下が失礼したそうで、その謝礼をと思ってね」

 

「!貴方があの詐欺師達の親玉というわけね?」

 

「そう取られても仕方ない。こちらの管理不足だった。直にそちらへ赴こうとも思ったのだけれど、どうやら忙しい様子。というわけで、ささやかながら引っ越し祝いをしようと思ってね。事務所の扉を開けてみてくれないか?」

 

 アルは自らが開けようとするが、慎重にと念を押してハルカが構えながら扉を開ける。目の前には、一つの大きな段ボールが置いてあった。

 

「ちょっと、爆弾じゃないでしょうね」

 

「開けてみてくれ。きっと気に入る」 

 

 皆が構える中、ハルカが箱を開ける。すると、中に入っていたのは。

 

「お、お肉です……。沢山の……」

 

「へ?」

 

「新規事業の立ち上げでね。暑さに強く、水分が少ない土地で好んで過ごし、唐草やアロエ、サボテン等を好んで食べる特殊な牛の肉だ。一般家庭向きの調味料やレシピ本も入っていると思うんだが、それらを使って調理して、レポートを送ってほしい」

 

「え……何それ」

 

「勿論タダとは言わない。この回線は依頼用なんだろう?これも依頼で構わない。報酬は言い値で払おう」

 

「??」

 

「謝礼と同時に、こちらとしても助かる話なのだよ。何せ私は少食な上に調理など殆どしない。判断材料が無いのさ」

 

「わ、私達は嬉しいけど、そんなこと部下にやらせればいいじゃない……」

 

「ふむ……この際だから言ってしまうが、私は君達と長い付き合いになると思っている。無論、そのレポートの出来次第でもあるが。私の期待を、いい意味で裏切ることを期待しているよ、未来の一流アウトロー」

 

「ま……任せて頂戴!!文豪もびっくりのレポートを何十枚でも送ってあげるわ!!」

 

「流石だな。それじゃあ、とりあえず10枚、明後日まで頼むよ。内容はそちらに任せよう。それでは」

 

「へ?」

 

 プツッ

 

「……明後日?この量を……?」

 

「わぉ、お腹いっぱい食べられるね、アルちゃん」

 

「10キロはあるね、これ。目安は今日の夕食と明日で1人2キロくらい……?」

 

「ど……どうしましょう……カヨコぉ……」

 

「……誰かに助け頼む?アビドスの子とかこういうの好きじゃない?」

 

「そんなのアウトローじゃないわ!」 

 

「この依頼がそもそもアウトローじゃないんじゃない?ムツキちゃんはお腹いっぱい食べられるから別にいーけど〜」

 

「た、食べて役に立てるなら、私食べます!胃袋が破裂したら臓器は売ってください!」

 

「そこまで覚悟は決めなくていいいのよ!ぐぅ、考えてても仕方ないわ、とにかく料理するわよ!」

 

 行き当たりばったりの作戦で料理をした一同。

 

 しかし、空腹続きだったこととかなり美味しい肉だったらしく、レポートを書くだけの量を食べるのは意外と苦ではないらしかった。

 

 そして、100グラム辺りの値段を聞いて卒倒したという、情けない姿も晒してしまう、いつもの調子の便利屋だったようだ。

 

 第三話

 

 まるで映画のような

 

「ナギサ様、いつもお茶会にお招きいただいてありがとうございます!」

 

「いえ、こちらこそ有意義な時間を過ごせて感謝していますよ。しかし……私以外のご友人はいいのですか?何か他に用事があれば無理して来なくてもいいのですよ?」

 

「大丈夫です。私は好きで来ていますし、優先することがあれば、その時は勿論お伝えしますので」

 

 トリニティの一角、美しく手入れされている庭でナギサとヒフミが二人きりでお茶会をしている。

 

 その卓上には、アビドス生達の作っお菓子が並んでいる。

 

「ところでミヤビ、学校で少し噂になっていますが……」

 

「ハクヤ様のことでしょうか。トリニティでは珍しいお客様でしたので、普段男子生徒と触れ合う機会の少ない皆様方では少々刺激が強かったのかもしれませんね」

 

「……やはり、例の条約も迫っている今、共学制度の導入を真面目に考えるべきでしょうか。その場合、貴方が最初の入学生になりませんか?」

 

「お嬢様の懸念と心中はお察しします。しかし、私はあくまで貴方様の執事。命ならば従いますが……出来うる限りは貴方様のお側にありたいのです。立場を利用する浅ましい私めを、どうかお許しください」

 

「怒ってなどいませんよ。ですが、そうですね。何も急ぎではありませんし、今はよしましょうか」

 

 一口紅茶を口に運んだ後、アビドス生達のお菓子を口に含みながら、ミヤビへ返事する。

 

 その映画のような光景を見慣れていながらもヒフミは恍惚とした表情で見ている。

 

「はわぁ……お二人ともとても綺麗です……!」

 

「……あら、このお菓子美味しいですね。ほら、ミヤビも」

 

 クッキーを一つミヤビに向かって差し出すナギサだが、その所作をミヤビは静かに諌める。

 

「お嬢様……いくらヒフミ様の前とはいえ、そのような行為はお控えください。それに、私の仮面は生活を考えた作りをしておりません」

 

「……なら」

 

 バサァツ

 

「これで構いませんね?」

 

 ナギサは翼を広げてヒフミから顔を隠し、ミヤビの仮面を外してクッキーを口へと詰め込む。

 

「ふふ、美味しいでしょう?」

 

「……えぇ、全く」

 

 仮面を再び付け直して翼をしまい、無邪気な笑顔を見せる。同時にミヤビはクッキーを飲み込んで頭を下げる。

 

「ヒフミ様、申し訳ございません。使用人の身でありながらお客様の前で食してしまうなど……」

 

「い、いえいえ!良いんです、むしろこちらこそご馳走様といいますか……!」

 

「?……貴方様の気分を害されていないのであれば、何よりです。それでは、おもてなしを続けさせて頂きます」

 

 爽やかな風が吹く中、紅茶を淹れる心地よい音が澄み渡る。

 

 第四話

 

 束の間の休息

 

「リン、アユム、モモカ。休憩にしてください。微力にはなりますが私が今の業務を繋ぎます」

 

「ミカド先輩……ありがとうございます……」

 

「いいの〜?やったね。委員が違うのにいつもありがとう」

 

「この資料だけ……」

 

「貴方、そう言っていつも自分の休憩を後回しにするでしょう。先生が来て負担も減っているのだから、私のことももっと使ってくれ」  

 

 ミカドはリンから資料の紙を取り上げて内容を確認し、     自分の分も含めてコーヒーを淹れる。

 

 観念したリンはミカドに優先の資料を伝え、二人とソファに掛ける。

 

「おや、このお菓子は……?」

 

「アビドスの生徒達が作ったものらしい。三人には今回世話になってしまったね」

 

「んー、美味しい。でも、私は聞かれたことに答えただけだけどね〜」

 

「私も、それらしい資料を数枚用意しただけです……殆どハリボテでしたし」

 

「私も貴方の出動を許可しただけです。"杭"の使用許可も同じく」

 

「良いんだ。各々の役目を果たしてこそ組織は成り立つ。恥ずかしながら、私に出来ることは実地任務だけだがね」

 

「そんな……ミカド先輩がいなければ、九囚人も兵器も抑えられていません。ご自分を謙遜しないでください」

 

「しかし同時に、私が混沌を招いたことがあるのも事実だ……リン、私の手綱を離さないでくれよ」

 

「分かっています。ところでミカド、貴方は食べないのですか?」

 

「ん?私は後で頂くよ。気にせず君達は……むぐっ?」

 

「元々貴方へのお土産でしょう。弟子とやらの」

 

 リンは立ち上がって資料を整理するミカドの口へと饅頭を突っ込む。

 

 ミカドは一口にするには大きな饅頭を噛むことなく丸ごと飲み込んで薄く笑う。

 

「……せめて食べやすいものをくれないか?」

 

「失礼。クッキーやチョコなどでは資料や貴方の口が汚れると思ったので」

 

「なるほど、合理的だ。君らしい」

 

 ミカドは資料にの端をホチキスで止めてコーヒーを一口すすり、

 

「……人の気も知らないで……」

 

 ボソリと呟くミカドの言葉はきっと誰に伝える気もない漏言。当然、その場の誰の耳にも入ることはなく、ひとときの休息は続いていった。

 

 第五話

 

 ハイエナ商会会長、斑間オキナ

 

「ふぅ……これで今日の業務は終了だな。諸君も早くノルマをこなして帰りたまえ、時間は有限だぞ」

 

「「「はい、ボス!お疲れ様でした!」」」

 

 キリカのコートの模様とは反対の、白と黒が逆転しているコートを羽織り、ギザギザの歯に斑の耳、そして少し上背の小さい男、斑間オキナは歩いて彼女の従者であるキリカが停めている車に乗る。

 

「……主、お疲れ様です」

 

「すまないね、三十分ほど遅刻してしまった。待たせてしまったかな、ダーリン?」

 

「問題ありません、ハニー」

 

「はっはっはっ。昔に比べれば随分、私の冗談に付き合うようになってくれたね」

 

「……貴方がそう躾けたと、私は記憶していますが」

 

「ふふ……なら、そのわざとらしい無感情もその成果かな?」

 

 振り向いたキリカの頬を撫でながらオキナは妖しく嗤う。

 

「今日はどんな躾がいい?新事業が軌道に乗りそうで私は機嫌が良い、選ばせてあげよう。水かな?息かな?それとも……」

 

「……咀嚼が……良いです」

 

「!ふふ、仕方ないなぁ、なら、久方ぶりに行こうか。旧友のへ」




パヴァーヌ、読み返してみると本当に感動する…。
先生殆ど空気…。まぁ、この世界の先生はもっとアグレッシブですが。
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