永い旅路を歩む春   作:レガシィ

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バイオハザードは名作だよねって話。


第二話 冒険を始めましょう

 椅子に座る少女を認識したモモイ達は、ゆっくりと彼女へ近付く。

 

「……寝てる?」

 

「返事がない。ただの死体のようだ……」

 

「不謹慎なネタ言わないで!」

 

 トモゼは少女の脈を見ながら科学者の視点で観察を始め、モモイもその隣で考察を巡らせる。

 

「……マネキン……?いや肌がほとんど人そのものだな……機械特有の匂いもしない……」

 

「でも、寝てるってより、電源が入ってない感じじゃない?」

 

「だな。体温もなければ脈も呼吸もない。ん?何だこの番号……」

 

「アル……イズ……エー、エル……アイエス……?」

 

「アリス?」

 

「いや、よく見たらこれ全部アルファベットってわけじゃなくて……AL-1Sじゃない?」

 

「そう?いったいこの子は誰でここはどこ?」

 

「起きて話してくれたら楽なんだけど……取り敢えず可哀想だし服でも着せてあげよっか」

 

「用意周到だ……待て待て、俺と先生が後ろ向くまでその子立たせんな」

 

「あ、ごめん」

 

 [こういうところも直していかないとね……]

 

 トモゼと先生が後ろを向いたあと、後ろで二人が着替えさせ始める。下着の柄や胸の大きさなどを女子高生らしく話しているのを耳を塞いで紳士的に振る舞う二人。

 

 やがて着替えが終わり、予備の青を基調としたジャケットと指定のスカート姿、見慣れたミレニアムの生徒の姿へと変身する。

 

「うん。これでヨシ!」

 

「状態の変化を確認……接触許可対象を感知、休眠状態を解除します」

 

「!な、何!?何かやっちゃった!?」

 

「あ、起きた!」

 

 二人は機械の音声が聞こえた途端、前に出たトモゼの後ろに隠れながら起き上がった少女の様子を確認する。

 

「……状況把握、難航。説明を求めます」

 

「説明……そりゃこっちの台詞だ、なぁ先生」

 

「そうだね、接触許可対象の意味を教えてくれるかな?」

 

「回答不可、本機の深層意識による第一反応が発生したものと思われます」

 

「工場の地下に全裸の女の子、記憶喪失……良いこと思いついちゃった」

 

 ーーー

 

「で……2度目の展開だな。その子を連れてきたわけだが、何のつもりだ?」

 

「そうだよお姉ちゃん!どうするつもりなの!子猫を拾うのとはわけが違うんだよ!?」

 

「だって、危険ロボット達がいるのに放置するわけにはいかないじゃん!」

 

 [あっ、こらこら、コントローラーは食べちゃ駄目だって]

 

「……確かにな。でも、連邦生徒会か、少なくともリオには伝えるべきだろ」

 

「それは全部終わった後!ねぇお願いトモゼ先輩!隠すのに協力して!」

 

「…………まぁ、俺も共犯だしな。責任は持つか」

 

「さっすが!ありがとう!」

 

「もう……先輩はお姉ちゃんに甘い!」

 

「何言ってる。俺は後輩全員に甘い」

 

「誇らし気に言わないで下さい!」

 

「まぁまぁミドリ、いいじゃん数少ないオタクを理解してくれる友達なんだから。それより、名前が必要だから……アリスって呼ぼっか!」

 

 [アリス……うん、良いんじゃないかな?]

 

「確認……本機の名称はアリスです」

 

「お、なんか承認されたぞ」

 

「先生まで……もう。で、アリスちゃんを連れてきて結局どうするの?」

 

「そりゃアレだろ。わざわざ廃墟に行ったのは部の存続の為なんだから」

 

「?……え、まさか……!?」

 

「そう!アリス!私達の仲間になって!!」

 

「……肯定、アリスは仲間になります」

 

 たどたどしい言葉のまま、"アリス"は自分の名前と、ゲーム開発部に入る権利を得た。

 

「やったー!じゃあ、あとは学生証と武器だね。学生証は何とかしてくるから、皆はアリスに話し方を教えてあげて!」

 

「話し方?」

 

「だってこのままの状態でユウカに話したら確実にバレるし……」

 

「存外ミレニアムの連中は特殊なやつばっかだし平気じゃないか?」

 

「そんなわけないでしょ!あの冷酷な算術使いのことだから、『どうせエンジニア部辺りの仕業でしょう、私の目は誤魔化せないわよ、廃部!』なんていいかねない!」

 

「……半分はありえるな」

 

「でしょ!?そういうわけだから行ってくる!」

 

 モモイは扉を勢いよく走って学生証を作りに行ってしまい、残された四人はアリスの言葉遣いを直すための方法を探し始める。

 

「うーん……小学生用の教材とかあるのかな……」

 

「そもそも言葉なんて自然と覚えるものだからな。つか、"先生"ならこういうの得意なんじゃないのか?」

 

 [うーん……これは新しいパターンかな] 

 

 頭を抱えて唸る一同に、アリスは物珍しそうにゲーム機を手に取る。

 

「正体不明の物を発見。確認します」

 

「あ、それ……」

 

「TSCが乗ってる特集だな。クソゲーランキング1位の」

 

「そこは言わなくていいです……でも、そうだ。会話しながら、ゲーム、やってみる?」

 

「ここまでの言動の意図を把握しかねますが……肯定。アリス、ゲームをプレイします」

 

 ーーー

 

 ゲームを起動して数分後、学生証を作るのは明日だと戻ってきたモモイも加わり、伝説的なクソゲーをプレイし始める一同……。

 

 三十分後

 

「あ、そこは話しかけると……」

 

 デデーン!GAMEOVER

 

「!?不明、なぜ主人公は草に触っただけで死亡したのですか」

 

「その辺に生えてる草にもテキストがあった方が面白いじゃん!」

 

「……リブート。再開します」

 

 ーーー

 

 1時間後

 

 ガシャンッGAMEOVER

 

「!?何故、今主人公は仲間になった筈の盗賊から刺されたのでしょうか」

 

「盗賊がそんな簡単に仲間になるわけ無いもん!そいつは容赦なく斬り捨てなきゃ!」

 

 [そ、それにしたって、お使いクエスト5つも終えて持病の特効薬渡して囚われた親友まで救い出したのにこんな簡単に裏切るのは流石に人の心が無さすぎない……?]

 

「……リブート、再開します」

 

 ーーー

 

 2時間後

 

 [おい!料金が足りねぇぞ、さては泥棒だな!死ね!]

 

 バァンッ!GAMEOVER

 

「!?質問。何故、料金を払った筈なのに主人公は撃ち殺されたのですか」

 

「そいつ、さっき出てきた詐欺師の弟なんだよ。ほら、名前入れ替えると苗字が同じ。この店は優秀な武器が安く売ってるけど、アイテムの"虫眼鏡"を使うって値段を見ると五十倍の値段になってんだ。ひっでぇ初見殺しだよな」

 

「伝算処理完了……リブート……これがゲーム……アリス、ゲームを再開します」 

 

 ーーー

 

 3時間後

 

「……こ、ころ……して……」

 

「おー、すげぇ。全クリ既プレイヤーが三人とはいえ3時間でトゥルエンか。言葉遣いもなんだかんだ上手いこと人間味にあるよう感じるるな」

 

「やったね!そ、それでさ……面と向かって聞くのは恥ずかしいんだけど……どうだった?私達のゲーム!」

 

「…………今の感情に類似する言葉を検索……」

 

「悪口?」

 

「そんなわけないよ!……ないよね?」

 

「楽しい……もう一度……もう一度……やればやるほど、新しい世界が……」

 

 ポロッ……

 

 急にアリスは涙を溢れさせて言葉を止める。

 

「!?」

 

 [!?]

 

「ど、どうしたのアリスちゃん!?」

 

「決まってるじゃん!泣くほど感動したんだよ!早くユズにも共有しないと!」

 

「ぜ……全部見てた……」

 

 部室のロッカーが開き、中から出てきたのは赤い髪にかなりダボついたジャケットを着た1人の生徒。

 

「あっ、ユズ!紹介するね、ゲーム開発部の部長の花岡ユズ!」 

 

「ずっとロッカーにいたの……?だったらモモトークしてくれればよかったのに」

 

「ご、ごめん……でも、それより……ありがとう……もう一度とか……楽しいとか……そういう言葉が聞けて……嬉しい……!」

 

「……??……???」

 

 困惑するアリスをよそに、三人のゲーム開発部は次にオススメするゲームタイトルを羅列しはじめる。

 

「とにかく……次はロマンシング物語を……」

 

「ちょっと待って!次のタイトルは英雄神話だよ!」

 

「ゲーム初心者ならゼルナの伝説、夢見るアイランドが……!」

 

「俺としてはシャドウソウルズが……」

 

「「「それはダメ!!死にゲーは難しすぎる!」」」

 

「TSCも大概だろ……楽しいのに……」

 

「……期待。再びゲームをプレイします」

 

 1時間後……

 

「わっ凄っ!テキストが出るのと同時に読んでる!」

 

「次、つぎこれやろう!」

 

 2時間後……

 

 [ZZZ……]

 

「ふにゃ……」

 

「うーん……」

 

 ピッピッピッピッピッ

 

「クリア」

 

「おー凄いな、どんどん速くなる。なら次はこれやってみようぜ」

 

「……はい」

 

 ーーー

 

 1時間後

 

 ピッピッピッピッピ

 

「クリアです」

 

「いい話だったろ?王道だけど、ボスが主人公の父親。難易度もいい感じで不朽の名作だ」

 

「……これが王道?TSCでは……」

 

「あれは忘れろ。邪道中の邪道だ、いい意味でな。それより、次は俺と協力するやつやろうぜ。パンデミックハザード6。折角なら最高難易度で」

 

「協力プレイ……やります!」

 

 ーーー

 

 1時間後

 

「リオン編、クリア」

 

「凄いな、命中率98%……」

 

「トモゼも無駄のない動きでした!体術のタイミングや武器のリロードが速かったです!」

 

「まぁやり込んだしな。次はクリム編やろうぜ」

 

 ーーー

 

 1時間半後

 

「クリア……ですが、"ティアーズ"が……」

 

「いいストーリーだよなぁ。相棒が最後に華々しく散る。現実ならごめんだが、こういう地続きのゲームにはキャラに深みが出る」

 

「……アリスと、トモゼは相棒でしょうか?」

 

「まぁ、ゲームにおいてはそうかもな。いつかアリスにもリアルに親友が出来るだろ」

 

「親友……先ほどのゲームに出てきた幼馴染は、アリスの記憶には……」

 

「過ごした時間は関係ねぇよ。お前が好きで、お前のことが好きな奴を選べ」

 

「……トモゼは、アリスのことが好きではないのですか?」

 

「likeの方でな。さて、一緒にゲームすんの楽しかったぜ。俺はそろそろ戻るわ。夜も明けるし」

 

「……まだです」

 

「?」

 

「まだ、シェイクとジェリー編、レイダ編が残ってます!互いの組み合わせも変えてませんし、終わっていません!」

 

「……もう3時なんだが……?」

 

「まだ一緒に冒険しましょう!勇者には仲間が、主人公には相棒が必要です!」

 

「変なところで知恵をつけたな……まぁ、付き合うか。徹夜は得意だ」

 

 ーーー

 

 四時間半後

 

「……あっ!?今何時!?」

 

「おぉ、ようやく気がついたか。無事に目を覚ましたようで何よりだ」

 

「えっ……と、どう?言葉は覚えられた?」

 

「愚問ね、奴らの頭を吹っ飛ばすより楽な仕事だった」

 

「そのセリフ、確かパンデミのヒロインの……トモゼ先輩、あれやったんですか!?」

 

「あぁ、全部な。入れ替えも隠し要素も全部。でも、基本の喋り方はレトロゲーの方に寄ってるみたいだ」

 

 ガチャッ!

 

「おはよう!はい、アリスこれ!」

 

「?アリスは正体不明の書類を手に入れた!ドッグタグですか!?」

 

「ううん、似てるけどそれは学生証。ミレニアムの学籍にもヴェリタスに頼んでハッキ……登録してもらったし、これで正式に仲間だよ!」

 

「仲間……パンパカパーン!アリスが仲間に合流しました!」

 

「……共犯者が増えたな」

 

「じゃあ、残りは武器……!よし!折角だし案内するよ!私達の学校、ミレニアムを!!」




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