しかし、時系列的にはこの後エデン条約なんですよね。
エデン条約を先に書くか、パヴァーヌ2章を書き終えてしまうか。
原作がどちらから読んでも問題ないので迷いどころですね…。
とにかく、今回も楽しんでいただけたら幸いです。どうぞ、お楽しみください。
「ま、間に合ったー!!」
ミレニアムプライスへの作品応募がギリギリ間に合ったことで息を切らしながらゲーム開発部の四人は歓喜の声を上げる。
「あとは……三日後の結果発表を待つだけだね」
「でもさ、三日って結構長いじゃん? これ、先にWeb版のTSC2、アップしない?」
「ど、どうして?」
「三日も待てないよ! それに、審査員の評価より先にユーザーの反応を見たくない!?」
「……うん、賛成。審査員の為だけのゲームじゃないし、見て、遊んでくれる人がいるからゲームは完成する。私は……私たちで作ったこのゲームを、きちんと完成させたい」
「ユズちゃん……」
「全力で頑張ったから、どんな評価をもらっても大丈夫。きっと、受け止められる」
「それじゃあ! 早速アップロードー!」
「あ!? ま、待って心の準備が……!」
「完了! じゃ、あと2、3時間の休憩タイム!」
「アリス? 待っててもプレイにはまだ時間が……」
座ってコメントを待つアリスにまだコメントが来るには早いということを教えようとしたモモイ。しかし、その予測を裏切って、一通のコメントが届いた。
ピロンッ
「!? もう来た!?」
「え!? どれどれ!?」
「えっと、ユーザーネーム……Revenger……これって……!」
「……あはははっ!! はっや! 速すぎるよ! トモゼ先輩!」
画面に映ったコメントは一言。
【待ってた】
「流石トモゼです! きっと真っ先にクリアしてくれます!」
ピロンッ……! ピロンピロンピロンピロンピロン!!
「え!? なんで!? うわわわっ……なんでこんなに……!?」
「コメント……あー、なるほど。怖いもの見たさとかの類かなこれ。あと……うわ!? KingZが配信してる!」
「あの有名な配信者の? なんてコメントしてるの?」
「えっと……"未知が僕を呼んでいた。ありがとう"だって!」
「相変わらず意味分かんない文。でも、この人ゲームめっちゃ上手いんだよね。前に格ゲー配信の乱入でユズと引き分け手前までいったし」
「絶賛されてたよね、あの時」
「た、大変だった……ずっとDM来るし、なんなら今も来るし……」
ドゴォォンッ!!
「ひぃ!?」
[この音……カリンの対物ライフルだ]
「な、なんで!? って、鏡の件だろうし、申しわけないとは思ってたけど……!」
「ど、どうしよう!」
[落ち着いて、リロードしてるみたいだし、まずは外に出よう。皆、指揮は任せて]
「は、はい!」
戦闘用ドローンが廊下を覆う勢いで整列し、ゲーム開発部を射撃を開始する。
戦闘を切り抜け、カリンの狙撃コースを予測した先生の指示通りに部室から離れた一同、しかし、彼女が待ち構えていた。
[……危ない、ミドリ]
「え、うわぁっ!?」
ダダダダッ!
ミドリの肩を掴んで引き寄せ、暗闇からの銃撃を回避する。
「! へぇ……やるじゃねぇか……先生だったか? 判断といい夜目の効き方といい、アンタ……"普通"じゃねぇな?」
[ちょっとだけね。本業は先生と、医者だよ。それで、どういう要件かな。君の性格的にないとは思うけど、リベンジ? ]
「分かってんじゃねぇか。そんなくだらないことに拘らねぇよ。おい、そこのバカでかい武器持ってるあんた」
「……?」
「お前だよお前、C&Cに一発食らわせてくれたみたいじゃねえか。ちょっと面貸せよ」
「あ、アリス、このパターンは知っています。告白イベントですね。チビメイド様はアリスに惚れていると、スチル獲得です」
「ふ、ふざっけんな! この野郎! って、誰がチビメイドだ! ぶっ殺されてぇのか!?
「ひっ……!」
例に漏れずアリスは偏った知識で無意識にネルを煽ってしまう。他の生徒なら流す所だが、彼女の沸点は少々低く、しっかり怒りを顕にする。
「……なかなかイラつかせてくれるじゃねぇか。まぁ、さっき言った通り、復讐とかじゃねぇ。ただ、お前に興味が湧いただけだ。興味っつーか確認だな」
「確認……?」
「さぁ、ちょっくら相手してもらおうか。あたしに勝てたらこのまま大人しく引き下がる。一番手っ取り早く互いを理解できる方法だ。どうだ、難しい話じゃねえだろ?」
「……分かりました。一騎打ちのイベント戦闘……みたいなものですね、理解しました」
「イベ……何つった?」
「今のアリスは魔力充電百%……! 行きます! 光よ!!」
開幕の合図もなしに、アリスは百%の一撃を直前上の彼女に向かって放つ。
壁と廊下のガラスを破壊する威力、C&Cの三人も目を剥く破壊力、ゲーム開発部の一同も驚嘆する中、先生は瞬き一つせずにネルの動きを立ち上がった黒煙の揺らぎから目と感覚で追う。
「……やったか?」
「ちょっ、そのセリフはダメだって!」
[まだだよ、アリス]
ダダダッ!!
「うぁっ!」
「爆風に巻き込まれるから下手に引き金を引けねぇ上、照準も定まらない。そして、この間合いであたしに有利を取れるやつは、キヴォトス全体でも数えるほどしかいねぇ」
完全近距離戦においてアリスは不利。そして反対に有利な戦い。アリスも銃身を鈍器のように振り回して対応するが、身軽な彼女は天井や壁を走り回り、チェーンに括り付けられた2丁のサブマシンガンによる巧みな動きでアリスを翻弄する。
[皆、三歩下がって]
「照準は必要ありません、行きます……!」
「この状況で発射準備……? おい、まさかてめぇ!?」
「え……!?」
「! カリン、アスナ先輩、下がりましょう」
先生はアリスの視線から狙いに気づき、三人と向こう側にいる三人にもハンドサインで下がることを伝える。
「光よ!!」
ドカァァァンッツ!!
「煙が……!」
下がったことでみんなの被害をなくし、先生は階下まで崩れた中で見失わなかったアリスを運ぶため、瓦礫を身軽に飛び移って背負う。
[よっと……アリス、大丈夫? ]
「肉体損傷率48%、後退を望みます……」
[任せて。それと……ネル、また会おうね]
先生はネルの無事も爆炎の中で視認しており、一声かけた後にゲーム開発部と一緒に保健室へ走っていった。
「逃げられちゃいましたね」
「リーダーは無事なのか?」
「リーダーのちっちゃい身体じゃ、今頃ぺっちゃんこになってたりして〜?」
「だぁっ! 誰がチビだって!?」
瓦礫を蹴り飛ばしてネルはアスナの頭に拳骨を打つ。
「痛ったぁーっい!」
「はぁ……追撃はいい。一通り暴れてスッキリしたしな。にしても先生か……」
「見た感じですが、かなりの手練れですね。流れ弾の射線を読んで三人を気遣っていましたし、リーダーですら直前まで気付かなかった彼女の狙いにもすぐに気付いていました。救助の動きも早かったですし、リーダーの無事にも気付いていたようです」
「ふーん。ま、いいや。ラーメンでも食いに行こうぜ。動いたら腹減った」
「良いねー、いこいこー」
「……そう言えば、リーダーは成長期だった」
「チビ扱いすんな!! ったく……ん?」
ネルの視線の先は爆発した床。白衣に青い短髪、ゴーグルを顎にかけ、背にグレネードランチャーを背負った少し小柄な男子生徒。
「この焦げ跡……レールガン? そんなものを銃器のように扱う生徒がミレニアムに? そもそもそんな兵器……いやエンジニア部には可能か。しかし、機構と兵器の装甲を考えると重さは100、いや200キロは超える。そんなトモゼ先輩以上の膂力の持ち主が……? 未知だ……!!"未知"が……"満ち"ている!」
「あ……?誰だお前」
「メイド部……?あぁ、その銃、戦闘したのは君か!相手はどんな生徒だったんだ!? 男性か、女性か?兵器の形は?戦術は?是非に詳しく聞きたい!」
「あぁ? なぁ、アカネ、誰だアイツ」
「……一年生、
「! 噂の"全知"候補か」
「? ……無視しないでくれ! 些細な情報でも構わない。僕に未知を教えてくれ! 知らないことが不快でならないんだ!」
「あー? 悪いけど、そんなにペラペラ喋ることでもねぇ。自力で探せ」
「……分かった。ならば自力で探すよ」
「?」
ガシャゴン……ザザザッッ!
「??」
ネルが突っぱねた直後、ゼンイはポケットから出した何かのリモコンを操作する。すると、掌程の鼠型のロボットが彼の足元を這い回り、調査を始める。
「うわ……なんだあれ……?」
「鼠? 五十匹くらい?」
「万物調査ロボ、名を"
「……まぁ、好きにしろよ。ミレニアムには変わり者ばっかいるな。おら、行くぞ」
「あ、あぁ……」
「放っておいても害は無いでしょうしね、行きましょうか」
「私チャーシュー麺が良い〜!」
ガタガタガタ……
「これは人工の皮膚の欠片……医療用のナノマシンか? なるほど、正体は恐ろしく完成度の高い、人造人間(ヒューマノイド)だな……ふはっ……ふひひっ……! 未知だ……!! 未知への道が満ち満ちている!!」
その場を後にしたネル達の耳に、彼の不気味な笑い声が入っていった。
──ー
「ねーねー、アリス、これ見て!」
「ひっ……アリス、メイド服は暫く見たくありません!」
「元気で何より。ネル先輩と戦ってあの程度とは恐れ入るね。これ以上の治療は不要そうだから、私は失礼するよ」
「あ、ありがとうございました、鹿賀音先輩」
黒髪のウルフカット、ナース服を着崩して目に深い隈と、錠剤が沢山入ったアクリルケースとHGを持った生徒、鹿賀音ウズホ。彼女はアリスの容体を先生と共に診た後、完治まで付き添っていた。
「気にしないで、サボ……ちょっと休憩したい気分だったから。それと先生、非常に有意義な時間だったよ、またそのうち会おうね」
[うん。ありがとね]
「あ、そろそろ時間だよ、皆」
ネルとの戦闘から三日、今日はついにミレニアムプライスの結果発表の日。モニターの前でゲーム開発部の一同は固唾をのんで結果を見守る。
【これより、ミレニアムプライスを始めます! 司会及び進行を担当するのは私、コトリです!】
【今回はご存知の通り、成果が必要になった影響でしょう、過去最多の応募となりました!】
「あ、コトリちゃん達も無事だったんだ」
「元々実績の多い部活だし……でも、本当に良かった」
「うん、でも史上最多の応募かぁ。ちょっと困るなぁ……」
【昨年はノアさんの思い出の詩集が優勝。本来の意図とは少し違ったようですが、その形而上的な言葉の羅列が不眠症に対する治療法として評価されました。今回も、ネクタイがモバイルバッテリー、光学迷彩下着セット、気流操作装置理論資料、レトロゲーム、TSC2など! 3桁を超えるユニークな発明品の数々! 栄光の座を手に振るのはたったの7作品!】
コトリの司会進行に、ユズが生唾を飲む。
(ごくっ……!)
【それでは、7位から受賞作品を発表します!】
6位……5位……4位……
「うっ……まだ呼ばれない……!」
【3位は、空間理論開発部、トモゼさんの空間歪曲システム! 僅か5センチだけ超電磁パルスによって弾道が曲がり、使用者に当たらないいう超発明品!】
「なにそれ凄っ!?」
「そ、それが3位……?」
【残念ながら、実用するには莫大な電力が必要だということで、2ヶ月間の充電を経て起動時間は5分に満たないそうです。ですが、その理論を開発した実績から全審査員から高い評価で、3位に輝きました!】
「でも、入れてよかったね、トモゼ先輩も」
2位……
「い、いよいよ1位です……!」
【次なる1位はー……CMの後で!!】
「もう、焦らさないで……!」
CMで一呼吸おき、渇いたのどを潤しながらその瞬間を待つ。
【さぁ! 1位は、人工資源再現部──】
ダダダダッッッ!
「ちょ、お姉ちゃん、ディスプレイ撃たないで!」
「うゎぁぁんっっ!! どうせ全部持ってかれちゃうから関係ない! 今度こそ終わりだぁぁあ!」
「うぅ……結局、こうなっちゃうなんて……」
「……落ち着いて、お姉ちゃん。でも……」
「……わかってる。全部否定されたわけじゃない。ネットの評価も悪くなかったし、私達は成長していける。でも……」
「アリスは……皆と、いられないのですか? それに、ユズも……寮に戻ってしまうのですか?」
「私は……大丈夫。三人と、先生がいるから……」
[…………3、2、1……]
「? なんのカウント?」
ガチャッ!
「モモイ! ミドリ! アリスちゃん! ユズ!」
「ひいっ!? 先生酷い!!」
「お、ちゃんと起きてんな。寝てたらどうしようかと思ったぜ」
「生徒会に人の心とか……!」
「おめでとう!」
「おめでとさん。これ、お祝いな」
ユウカとトモゼは笑いながら四人を祝福する。
「「「「……?」」」」
「なんだ、この空気? クラッカーいる?」
パァンッ!
「うわっ、いきなり鳴らさないでくださいよ!」
「すまん。手が滑った。つか、お前等結果見てなかったのか?」
「……? 7位内に入れて無くて……」
ザザ……
先生が別のディスプレイにスマホを繋げ、LIVE映像を再び流す。
[皆、見てみて]
【ミレニアムプライスはこれまで、生徒達の才能と努力で作られた作品に対し、実用性を求め、より良い未来を実現していくという趣旨に基づいてきました】
【しかし今回、新しい角度から、実用性を感じさせてくれたもの……そう、ゲーム開発部の作ったTSC2が懐かしいかこをありありと思い出させ、未来への可能性を感じさせてくれたのです。よってこの度、ゲーム開発部に特別賞を授けようと思います】
「な……何が起きてるの……?」
【レトロ風という時代を超えたコンセプト、常識に縛られず、想像を超えていく展開、あらゆる時代が入り交じったストーリーに困惑の連続でしたが、絆と旅。それらを結び、体験しながら魔王を倒しに行く根本的な楽しさが、しっかり込められていた良い作品でした。おめでとうございます】
「え、あ……どういうこと?」
[異例の判断がされる。それだけ、良い作品だったってことだよ、おめでとう、信じてたよ]
「先生……!」
「本当におめでとう! 実は私もプレイしてみたんだけど……手放しに面白いとはちょっと言えないけど、良いゲームを遊んだ後の、独特な感覚が味わえたわ」
ガチャッ
「モモ! ミド! あたしもやったよ! すっごい面白かった! ネットの検索でも今トップだよ!」
マキが見せたコメントやネットの評価はかなり高く、賞賛するものが殆どで、部の廃部は保留となったことを知らされる。
「え、ほんと?」
「ってことは……廃部にならないんだよね!?」
「えぇ! でも、あくまで猶予で、保留なの。ほら、異例の賞だし、あ、後処理とか手続きは必要だから、後でセミナーに来て。それから……」
「?」
「冷たくしちゃってごめんなさい。貴方達のおかげで、小さい頃に新しい世界で旅する……あの感覚を、楽しさを感じられた。ありがとう」
「え……ど、どういたしまして……?」
「それじゃあ、また後で!」
ユウカはモモイ達に謝罪と感謝を伝え、退室する。
呆けるゲーム開発部一同に、トモゼとマキは再び笑いながら賞賛する。
「呆けてないで喜べよ。おめでとう」
「おめでとう!」
「や……やったぁぁぁあ!!」
「良かった……!」
「特別賞受賞だよ! 部室も、皆もこのまま!!」
「??? アリスは……皆といて良いのですか……?」
「「「うん!!」」」
「アリスも嬉しいです……!」
「アリスちゃん……!!」
「私達っ……!」
「これからも、ずっと一緒だよ!!」
「……はい!! よろしく……お願いします!」
涙と笑顔に溢れた部室内。しかし、不穏な影が彼女達の平穏に迫っていた。
『……Division……起動……アリス……私の……大切な……』
バァァンッッ!!
「「「!!!?」」」
「次は何だ?」
突然強い勢いで開け放たれた部室の扉。部室内へと一人の男子生徒、機努ゼンイが入室した。
当面の目標は色がつくこととお気に入り登録者百人を目指しております!
良ければ感想評価、よろしくお願いします!