永い旅路を歩む春   作:レガシィ

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ちょっと短めです。
そして前回行った時系列を辿る話。結局イベントで茶を濁すことにしました。
それでは、短いお話ですがお付き合いください。


第六話 学び始めましょう

 突然、勢いよく開け放たれた部室の扉。その前には興奮を隠しきれない機努ゼンイがいた。

 

「ぜ……ゼンイ!?」

 

「未知だ……!!異例の賞!クソゲー1位から一転して満開がごとく評価の花に、人造人間の生徒化!!!」

 

「何を言って……?」

 

「教えてくれ!!何が君達を変えた!?分岐点はどこだ!?やはり、天童アリスか!?シャーレの先生か!?」

 

「おい、落ち着けって」

 

「止めないでくれトモゼ君!!僕は今ミレニアムに入ってから3度目のエクスタシーを感じているんだ!!調べたいことや予測や憶測、未知が……!満ちている!!!」

 

 ゼンイは呆けるアリスの肩を掴んでゴーグルを装着し、彼女の身体の観察を始める。

 

「ひっ……」

 

「ちょっと変態!キモいよ離れて!!」

 

「うるさいなぁ、普通の生徒の肉体構造にはこれっぼまっちの興味もない。ほらこれあげるから、"コレ"を調べさせてくれ」

 

「酷い……!」

 

「コレって……!アリスちゃんはモノなんかじゃ……!」

 

「おい、ライン超えてんぞ」

 

 札束をぼとりとモモイの前に放り、アリスを強引に調べようとする。アリスをモノ扱いしたことに一同が困惑と同時に怒るがしかし、背筋が凍るほどの悪寒を、ゼンイ以外が感じ取る。

 

 [……ゼンイ]

 

「なんだよ、せんせ……い……?」 

 

 [座りなさい]

 

「……は……い……」

 

「……おい、ちびっ子たち、マキ、部屋出るぞ。俺の部室に来な」

 

「あ……うん……」

 

「は……はい……」

 

 嫌な気配を察知したトモゼは先生から一同を遠ざけるため、自らの部室へ案内する。

 

 トモゼ一人の為に用意された、小体育館規模の研究室。まさしく山脈のように連なったレポートと、いくつものDangerの張り紙。しかし、個人的なスペースも確保されており、画面の一つに映っていたのは。

 

「あ、TSC2じゃん!」

 

「まだ全クリじゃないけどな。もう少しだが、一旦休憩だ。マキ、お前もやってくだろ?」

 

「あ、ありがと。パーティーゲーもあるんだ」

 

「まぁな。それと……アリス」

 

「?」

 

 ポンポンとトモゼは胡座をかいて中央に座るように誘導し、アリスはすっぽりと大柄な彼の体躯にはまる。

 

 ゲームをカチカチとプレイしながら、少し重たい空気の中でトモゼが口を開く。

 

「ド変人だが悪いやつじゃない。俺もよくアレとかコレとか言われる。代わって謝るわけじゃないが、許してやってくれ。あいつもミレニアムの仲間だ」

 

「ん〜、私ゼンイ君のこと元々そんなに知らないけど、いい印象は無いかなぁ」

 

「……私、さっきのでアイツ嫌いになった」

 

「私も」

 

「う……私も、好きにはなれないかも……」

 

「……アリスも、あの人をパーティに入れたくありません」

 

「ははっ、そう言うなって」

 

「アリスは……アリスが物扱いされたことより、皆のことを蔑ろにされたことの方が許せません」

 

「……まぁ、あれはゼンイが全面的に悪い。でもな、人は失敗して学ぶんだ。あいつは天才だから、そういう失敗をしても、怒ってくれる奴がいなかったんだろう。でも、今は違う」

 

「……先生ですか?」

 

「そう。でも、怒る姿ってのは大人からすればあんまり子供に見せたいもんでもないはずだ。だからこうして連れ出してんだが、そのうちべそかいて謝りに来るさ。その時は素直に受け止めてやってくれ」

 

「……もし、謝ってこなかったら……?」

 

「お灸を据えてやれ。こんな風に」

 

 バキューンッ!

 

「あー!!1位独走してたのにー!?」

 

「はっはっは、背後をケアしてないお前のミスだぞモモイ!」

 

「うぐぅっ!ちょっ、ミドリまで甲羅投げないで!?今私の前にいるくせに!」

 

「この世は弱肉強食なんだよ、お姉ちゃん」

 

「ムキー!!」

 

「あはは……」

 

「代わってユズが1位の独走だね。じゃ、モモ、おっ先ー!」

 

「う、裏切り者ー!!」

 

「いつかはこんな風に仲良くゲームできるさ、だから気にするな。アリス」

 

「……はい!また嫌な気持ちになったら、こうしてトモゼの膝の上でゲームします!」

 

「おう、いつでも歓迎するぜ」

 

 ーーー

 

「ご……ごめ……ずびばぜんでした……」

 

 お祝いも兼ねたゲーム大会をした後、マキはヴェリタスへと戻り、部室へトモゼ達が戻る。 

 

 すると、そこには正座して予想通りにべそをかいているゼンイとそれを囲むユウカと、もう一人のセミナー、書紀をつとめるノアの姿。彼は土下座しながら一同に謝り倒し、先生はやり過ぎたと反省している。

 

「ゼンイ君の予算を半減します」

 

「はい……」

 

「その分ゲーム開発部に充てようかしら」

 

「はい"……ずびばぜん……」

 

 [ごめん……ユウカ、ノア……]

 

「いえ、先生が謝る必要はないですよ。今回の過失は彼にあります。まぁ、私達が止めなければちょっと行き過ぎた結果になり得ましたが……」

 

 [いやほんと……ごめんね、ゼンイ。ちょっと言い過ぎたね]

 

「うぐ……怒れる立場に……僕は……いぃ、な"いのでぇ……」

 

「うわぁ……ちょっと、土下座で鼻水床につけないでよ?」

 

「ごめんなさい……」

 

「あ、この状態は、SAN値が0というやつですね?」

 

「……合ってるかもな」

 

 暫く泣き続けた後、彼は真っ赤に目を腫らして再度謝罪する。

 

「改めて、申し訳ありませんでした。人道に欠けた言葉と、身勝手な理由での部室への侵入。反省します……」

 

「……」

 

「ほら、アリス。どうするんだっけ?」

 

「……アリスは、まだ暫く貴方のことを良い人だと思えません」

 

「……はい」

 

「ですから、信頼度アップのイベントを沢山こなしに来て下さい!」

 

「……毎日貢げってこと?」

 

 ゼンイは顔を上げ、言葉に疑問符をつけて返す。

 

「それはゲームだと最短ですが、私にとってはそうじゃありません!」

 

「??」

 

「まずは仲良くなりましょう!モモイにミドリにユズとも、並行して信頼度を上げて、初めて貴方をパーティに加えることを検討します!」

 

「……?んーと?」

 

「要するに、許してやるからたまに遊びに来いってよ。良かったな」

 

「いいの?アリスちゃん」

 

「はい!次に何か言ってきたら、アリスは戦闘イベントに発展するだけです!」

 

「それは……勘弁して下さい……」

 

 すっかりしおらしくなったゼンイに、ユウカとノアが補足する。

 

「ホントは接触禁止命令出そうとしたんだけど、アリスちゃんはそれでいいの?モモイ達も良いの?」

 

「まぁ、アリスが良いって言うなら……私もゲームで熱くなって物を投げる時あるし、それと似たようなものかなって」

 

「……そうですか。なら、ゼンイ君の処遇としては予算の減額とゲーム開発部への奉仕活動に致しましょう」

 

「それと、自分の活動も手を抜かないこと。貴方、一応今回のミレニアムプライスの優勝者なんだから」

 

「あぁ……あれ優勝してたんだ」 

 

「見てなかったの!?」

 

「だって評価とか実用性とか未来とか興味ないし……あの玩具だって僕が中学生の時に作ったものだし……」

 

「えぇ……私達あんなに評価のために頑張ったのに……」

 

「……アリスの好感度が下がりました」

 

「えぇっ!?なんで!?」

 

「当たり前だろ。お前はまず道徳を勉強しろ」

 

 トモゼに頭を叩かれ、不服そうなゼンイだったが仕方ないと受け止める。後日、改めて謝罪の品を持ってくるということで、この話は帰結したのだった。

 

 ーーー

 

「先生、ようやくのセーブポイントですね。今回のダイスはことさらに酷かった」

 

「お"ぇっ……!!」

 

「痛いですよね。見てるこっちも痛いですから」

 

 椅子に座った少女は、這いつくばって胃液を吐く先生を見下しながら冷徹に言い放つ。

 

「ハァッ……!だいじょぅぶ……!慣れで……ぎぁがら……!」

 

 しかしそれでも、先生は気丈に振る舞いながら笑ってみせる。ギリリと音を立てて少女は先生に再度、終わりを促す。

 

「……魂がすり減るような痛みを受けて、立つこともままならない、と。もう、さっさと、諦めたらいかがです?」

 

「い……やだ!!」

 

「……そうですか。ミレニアムの問題を解決したいのなら、次の扉はあちらです。少々幕間を挟み、時系列は辿れなくなりますが、問題はありません」

 

「あり……がとう……行ってくるね……!!」

 

 先生は次なる扉へとダイスを振って走り出した。

 

「…………願わくば、幕間だけでも穏やかに過ごしてください」




イベントは完全に自由に書けるから気が楽なんですよね。
色々考えたり伏線張ったり新キャラ出し放題だし。
というわけで、イベント二つくらい挟んで次の話に行こうと思います。
面白いと感じていただけましたら、評価や感想よろしくお願い致します。作者のモチベに繋がります!
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