永い旅路を歩む春   作:レガシィ

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第四話〜六話 仲直り

 第四話 制圧隊

 

「これで全部?」

 

 [みたいだね。お疲れ様、カナゼ。それと、メルも]

 

「最近噂のシャーレの先生?ふーん……ま、いいや。ありがとう」 

 

 リロードを済ませて荒れた自分のブースを整えながらメルは先生に感謝する。

 

 [ところで、メルはどうしてこの人達に絡まれてたの?]

 

「知らないよ。同志同志って、私達革命にそんなに積極的じゃないし。今の会長の座を狙うどっかの誰かの手下でしょ」

 

 [か、革命 ……?]

 

「あぁ、気にしないで先生。ここじゃ日常茶飯事だから。月1か週1くらいであるよ」

 

「……チェリノ……」

 

「大丈夫でしょ。どうせアンタがまた止めるんだし」

 

「……先生、急ごう。さっさとプリンを手に入れて仲直りして、クーデターを阻止する」

 

 [とても妹が大事なんだね]

 

「世界一だ。妹を狙う奴は、一人残らず撃ち抜いてやる」

 

「なにやら……忙しい事態になっていますね」

 

 黒い上着に白い肌と兎の耳。赤い瞳とオーバーサイズのサングラス。彼女は背中に燃料を積み、両の腰に火炎放射器を装備していた。

 

 [君は……?]

 

「通報を受けて参りました、赤兎(せきと)ユリカです。赤冬の革命制圧隊。通称、制圧隊の隊長を務めてます。貴方がシャーレの先生ですね?噂はかねがね。宜しくお願い致します」

 

 [うん、宜しくね。ユリカはどうしてここへ?]

 

「即売会で誰かが暴れてるとの通報がヤクモ……まぁ友人からタレコまれまして。あと、ついでにカナゼ君を探してたんです」

 

「何か用?」

 

「私がプライベートで貴方に干渉した時がありますか?お仕事ですよ、お仕事。違法な兵器工場と武装勢力を発見しました。貴方にはバックアップを……」

 

「行かない。今はもっと大事な用がある」  

 

 ユリカの言葉を聞ききらないままカナゼは断固として拒否する。その言葉でユリカはサングラスを頭にかけて目を合わせながら怒る。

 

「貴方ソレ何回目ですか!?私上司なんですけど!」

 

「勝手に入隊させてきたのはそっちだ。別に僕はいつ抜けたって良い」

 

「貴方さんざんこの名前好き勝手使ってきたでしょうが!!」

 

「家にある道具は好きに使うだろ。寄越してきたなら使うよ」 

 

 ボゥッ……!!

 

「どうやら……燃やされたいようですねぇ……!この距離なら私は強いですよ」

 

「やってみなよ、眉間に一発ぶち込まれて耐えられるなら褒めてあげる」

 

 パァンッ!!

 

「「!」」

 

 先生は一つ柏手を打つ。銃声にも聞き紛う大きな音は二人の熱を下げ、視線を集める。

 

 [はい終わり。二人とも落ち着いて]

 

「むぅ……。しかしですね、先生。狙撃手は彼一人なんです。頼みのシドウも連絡が取れる状況じゃないし、頼りになる人員が集まらないんですよ。兵器工場なんて放っておいて良いこともないですし」

 

 [困ったね。なら、こっちの用事が終わり次第合流するよ。今すぐじゃないんでしょ?]

 

「……決行は2時間後です。それまでなら」

 

 [よし。急ごう。プリンを手に入れて、合流して制圧。私も手伝うよ]

 

「え、プリンはともかく、うちの仕事もやるの?なんで?」

 

 [なんでって……生徒が困ってるのに放っておけないよ]

 

「「……変わってるね(ますね)」」

 

 [えぇ……?そうかなぁ]

 

 二人は声を揃えて先生を変人に見る。そして話がまとまったことで、二人には制限付きなものの時間が出来る。

 

「急ごう、先生。ってわけだから、プリンの情報ちょうだい」

 

「知るかバーカ!出版部にでも行ってこい!」

 

「ちぇっ……まぁいいや、ここから近いし。行こ」

 

 [オッケー!]

 

 第五話 プリンを求めて

 

 ー出版部ー

 

「なるほど……シャーレの先生と、カナゼさんですか。不思議な組み合わせだと思えばそんな事情が……」

 

「ごめんね、ヤクモ。何か無いかな?」

 

「う~ん、こちらも仕事ですからねぇ。タダというわけにはいきません」

 

「プリン見つかったら分けてあげる」

 

「んー、魅力的ですが、それよりも……シャーレの先生。貴方を記事にしたいです」

 

 [わたし?別にいいけど、面白くないとおもうよ?]

 

「何を言いますか。今キヴォトスで話題沸騰ですよ。あのミカドさんが認めた大人ですから」

 

「へぇ、ミカドが……納得。先生頼りになるし」

 

 [光栄なことだね。でも、取材くらいならいつでも受けるよ]

 

「先生、そういう時は黙って受けるんですよ。なんの為の交換条件ですか」

 

 [でも生徒の頼みだし……]

 

「どこまでも先生だね。じゃ、ヤクモ。そういうわけだから教えて」

 

「はいはい。貴方は相変わらずですねぇ。西に工場があるらしいですよ。一部の近隣住民からは甘い匂いもすると。限定プリンかどうかは知りませんが、今度取材に行こうかと思っていました」

 

「きっとそれだ。ありがとうヤクモ。手に入ったら分けてあげるよ」

 

「えぇ、どうも。それでは、お二人とも頑張ってください」

 

 二人は時間が迫る中、急いいで西の方へ向かっていく。

 

 森を突っ切る関係で、カナゼの得意な望遠は封じられているため、ヤクモの話にあった匂いを頼りにする。

 

「……暑いね」

 

 [早歩きだからね]

 

「あ、噂をすれば。甘い匂い。薄いけどこれだ。果物っぽいね。いかにも限定って感じ」

 

 [それにしては違和感がある……]

 

「プリンじゃないの。甘いもんでしょ?」

 

 カナゼは工場を目視すると不用心に入ろうと近付いて入り口を探し始める。

 

 [……カナゼ、止まって]

 

「むぐっ?」

 

 しかし先生はこの匂いに嗅ぎ覚えがあり、カナゼの口と鼻を塞いで呼吸を浅くする。

 

 [特有の花の香り……毒だ。命に危険は無いけど、強い睡眠効果がある。カナゼ、吸い込まないで、浅く息をして]

 

「……先生は……?」

 

 [私は毒全般に耐性がある。この程度の濃度なら問題ないよ。カナゼ、これは一歩間違えば大惨事になる危険なやり方だ。君を巻き込むわけにはいかない。連邦生徒会に連絡しよう]

 

「……うん、分かった」

 

『動くな!!』

 

 ジャキッ!

 

 二人が撤退を視野に入れていたところに、背後を取られていたようでガスマスクと武装した二人の哨戒兵に捕らえられてしまった。

 

『その白いフードとSR……連河カナゼだな。狙撃ポイントの偵察といったところか。こっちのやつは……まぁいい。来てもらうぞ』

 

 二人は後ろ手に縛られて工場内へ連れて行かれる。先生は耐性があり平気だが、カナゼは少し辛いようでふらふらと歩く。

 

 [カナゼ、しっかりして!]

 

「この程度なら……大丈夫……」

 

『ふん。ここでいい』

 

 二人はコポコポとあぶくのできる大きなタンクの前に椅子に縛られる。統率者などがいない反乱分子の集まりのようで、男子生徒と女子生徒が入り交じっている。

 

『通信機の類もなし。あるのは、そのガチャガチャしたパーツと、一丁のSR。ふん、舐められたものだな』

 

 [……君達は、何が狙いなの?]

 

『そんなものは決まっている。革命だ!!我等が開発した催眠ガス!これをG-68戦車の砲弾に詰め、撃ち込んで眠っている間に制圧する作戦だ!』

 

『バスや民間のドームから同志達が活動を始める予定だったが、阻止された報告があった。どうやら、貴様達の仕業のようだな』

 

 [わ、私達は何も知らなかったよ!全部偶然だったんだ!]

 

「僕達は限定プリンを探しにきただけなのに……」

 

『やはり知っているではないか!?この毒の名はゲイルテンティープディング!』

 

 [ゲイルテンティー……ゲンティー……限定……?]

 

「プディング……プディン……プリン……?」

 

「[はぁ……そんな言葉騙しだったなんて……]」

 

『?』

 

 流れる噂のうちに誤った言葉が広まったと理解してしまった二人は大きく溜息をつく。

 

「はぁ……先生、ごめん。僕の勘違いだったみたいだ」

 

 [いや、良いんだよ。気にしないでってのは、ちょっと難しいかもだけど、私は気にしてないから]

 

『なんの話をしているか知らんが、ここを見られた以上、無事で返すわけにはいかない!』

 

『……それでしたら、私めにこの者たちの処分をさせては頂けないでしょうか。連河カナゼには恨みがあります』

 

 一人のガスマスクをつけま男子生徒が、前に出て二人の処分を願い出る。先程まで得意に演説していた二人は彼に一任する。

 

『ははっ、同志よ!いいではないか!……姿形すら捉えられないまま狙撃される。狙われたら既に終わっているというとからついた異名、"終点"!その伝説も惨めに終わるというわけだ!同志よ、やってしまえ!』

 

『それでは……その前に。カナゼ、それとシャーレの先生』

 

「なに」

 

 [?]

 

「頭を下げることをオススメする。3秒だ」

 

「[えっ?]」

 

『?』

 

「2……1……0」

 

 チュドオォォォンッッ!!!

 

『『!!?』』

 

 カウント通りに頭を下げる二人。

 

 突然、工場の壁に戦車の砲弾が数発撃ち込まれて爆破され、吹きさらしになる。工場の外ではユリカ指導の砲撃部隊と制圧隊が並んでいる。

 

「全弾命中!シドウさんの報告通り、薬のタンクも破壊できてます!」

 

「装填急げ!!リツ、徹甲から榴弾に変えろ!その後の砲撃は任せる!」

 

「アイッサー!!やっべぇ超楽しくなってきたっすね!!」

 

「総員!ガスの心配はない!突撃、先生の指示に従え!!」

 

「「「ウラーー!!!!」」」

 

 工場内

 

「先生、カナゼ、こっちだ」

 

 二人の紐を混乱に乗じてほどいた男子生徒は二人を死角へ誘導しながらカナゼの武器を整備する。

 

 [き、君は……?]

 

「申し遅れた。頭間シドウ。コイツの観測手で、制圧隊の副隊長だ。主に偵察と潜伏を担当している。相棒が迷惑をかけたようですまない」

 

「……用事ってこれだったわけ?」

 

「いや……まぁ、半分は成り行きだ。計画そのものは前からあったが、お前が知らないのは一度も会議に参加してないからだ」

 

「……ごめん」

 

「まぁいい。それより、銃はこのままでいいか?狙撃ポイントはこの階段の上だ。先生、俺は観測手に集中する。指揮は任せる、ユリカが仲間達に伝えてある。制圧隊到着まで8秒だ」

 

 [私が?]

 

「貴方の能力を確かめる最も早い方法だ。俺は実力主義な人間なものでね」

 

 [それじゃあ、頑張らないとね]

 

「後方支援、始めるぞ」

 

「了解」

 

『クソぉぉお!!やるしかない!総員迎え撃てぇ!』

 

『うぅぁあああ!!!』

 

 第6話 天才スナイパー

 

 ー戦闘ー

 

 先生の卓越した指揮と、観測手がついて実力をフルに発揮したカナゼの狙撃。瞬く間に制圧を終え、改めて挨拶していた。

 

「まさか毒の名前を限定プリンと間違えるとは……」

 

 [いやー、なかなか愉快な勘違いだったね]

 

「先生、もっと危機感持ったほうが良いんじゃない?」

 

 [まぁ、結果的に助かったし良いじゃないか]

 

「全く……先生、巻き込んで申し訳なかった。そして、卓越した指揮、お見事でした」

 

「確かに素晴らしい指揮だった。流石です」

 

 [いやぁ、皆の動きも良かった。ありがとうね、見ず知らずの私を信じて動いてくれて] 

 

 ドカァンッ!

 

「!」

 

 完全に終わりの雰囲気の中、手榴弾が炸裂する音が響く。拘束を自爆して抜け出した生徒が、ヘリコプターに乗って脱走しようとしていた。

 

「すいません隊長……不意をつかれて……」

 

「バカ、動くな。医療班、手当てを!」 

 

 [……あのヘリ、さっきの毒ガス積んでるね。タンクの形が同じだ。自爆テロでもするつもり……?]

 

 先生は近くの生徒から双眼鏡を借りてヘリを観測し、冷静に状況を俯瞰する。

 

「カナゼ、狙えるな?」

 

「組み立ては終わってる。問題ないよ」

 

 その横で、カナゼは狙撃銃を組み立て終えて狙撃の体勢に入り、横でシドウは風と距離を測っている。

 

「距離3.5km、風速6、風向きは北東。まだだ」

 

 [3.5km……カナゼ、ポイントを移動したほうが……]

 

「問題ありません。二人は狙撃において他の追随を許さない天才。二人が揃い、カナゼがあの銃を使った際の狙撃の最大距離は……」

 

「……撃て」

 

 ガションッ!!

 

「8.1kmです」

 

 パリンッ

 

 風が止む瞬間を読み切った指示、遥か遠くでヘリの窓が割れる。操縦手に当たったことが、揺れる機体からはっきりと分かる。

 

「トドメは?」

 

「いらないな。酩酊してるだろうしあのままじゃ墜落することくらい本人にも分かる。学園まで飛べないからどこかで降りるだろう。そうだな……開けた場所ならあの辺りに伐採場があったはずだ。そこに行こう」

 

「よし、戦車班、並びに医療班と補給班は待機。事後処理と保安委員に報告を。確認は私達だけでいい」

 

「了解!」

 

 ーーー

 

「あ、いた」

 

『ぐ……くぅ……』

 

「何だ!?何か落ちたぞ!!」

 

「この声……まさかチェリノ会長……?」

 

 シドウの声に気づいたのか、カナゼの妹、小柄な体躯に付け髭が特徴的なチェリノと、秘書の桃髪にモコモコとしたストールの佐城トモエは先生達を発見して駆け寄ろうとする。

 

「チェリノ!?どうしてこんな所に……」

 

「お兄ちゃん!オイラは雪だるまを作ろうと……」

 

『チェリノ……会長……!!天啓!!今この場で権力者に鉄槌をぉぉ!!』

 

 フラフラとよろめいていた生徒が困惑するチェリノに襲いかかる瞬間、カナゼは的確に頭を撃ち抜くと、銃を放り捨てて近寄り彼女の無事にホッとする。

 

 ガションッ!!ドヂュンッ!

 

「チェリノ!!」

 

「お兄ちゃん……?」

 

「無事か!?怪我は!?そうだ、毒……!吸い込んでないか!?」

 

「落ち着けシスコン。どう見たって無事だろう」

 

「貴方は……シャーレの先生、ですか?」

 

 [うん。カナゼに呼ばれてね。ただ……やっぱり兄妹だ。考えてることは一緒みたいだね]

 

 先生の視線の先には、恐らくチェリノとカナゼを模したであろう雪だるまが作られていた。そして、当の二人は仲直りしたのか、チェリノを肩車していた。

 

「はぁ……心配して損した」

 

 [心配?……もしかしてシドウ。限定プリン探してた?]

 

「!」

 

 [それで、私達と同じ勘違いをして工場に……?潜入までして?]

 

「……アイツには黙っててくれ」

 

 [いいね、相棒って感じがする。懐かしいよ……]

 

「先生……いや、何でもない」

 

 [ふふ、聡いね。隠してるわけでもない、知りたくなったらいつでもおいで]

 

 シドウとユリカは少し憂いの残ったような先生の顔から、過去を聞こうとしたが、次の言葉を飲み込む。

 

「暫くないだろう。それより……カナゼ!」

 

「なーにー?」

 

「限定のプリンとやらは残念だったが、代わりのものは手に入った。少し遠いが、DUでスイーツフェスなるものがあるらしくてな、そこのチケットだ。二枚ある。二人で行ってこい」

 

「おぉ!良いのか、シドウ副隊長!」

 

「……シドウは来ないの?」

 

「兄妹水入らずだろ。それに、俺は甘いものは苦手だ」

 

「そっか。じゃあ、今度激辛の料理食べに行こうよ。シドウ好きでしょ」

 

「また今度な。さて、ユリカ。俺達は後始末をしよう」

 

「はぁ……相変わらずカナゼに甘いな、シドウ」

 

 ユリカは苦笑しながらシドウと共に先生に一礼して工場へ戻っていく。ご機嫌な二人は雪遊びをして疲れ切った後、眠ってしまったチェリノを背負って学園へと帰ったた。

 

 ーーー

 

「先生、改めてありがとう。それとごめん、危険に巻き込んだ」

 

 [大丈夫。色々赤冬を回れて楽しかったし、何より、二人が仲直り出来て良かった] 

 

「……先生、今度お礼するよ。いつでも呼んで。基本的に僕は暇だし、どこにでも駆けつけるよ」

 

 [本当?じゃあ、カナゼもいつで呼んでね。面倒ごと厄介事、楽しいことやイベント、大歓迎だから]

 

「うん。約束。じゃあね、先生。帰り、気を付けて」

 

 先生はカナゼに見送られて帰路につく。

 

 暫く歩き、学園も見えなくなった頃。一服しようとお気に入りのタバコを取り出すと、スマホが鳴る。

 

 [ふぅ……ん?]

 

【右手を挙げて】

 

 意図を理解した先生は振り向くこともせず、煙草を見やすい位置まであげる。

 

 ーーッヂュンッ!

 

 銃弾が絶妙に先を壊さない程度に掠めて熱を持つ。その間に口へ運び、煙を立てる。

 

 先生は左手を振って感謝し、そのまま歩いていった。

 

 遥か遠くへ甘いお届けを〜完〜




次はいよいよ第二章パヴァーヌの投稿を始めます!
ただ、リアルがマジ滅茶苦茶忙しいので少々お待ちを…
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