永い旅路を歩む春   作:レガシィ

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第五〜八話 桜舞い散る夜もすがら

 第5話 剣洸会

 

 修行部三人が巡回のための準備を済ませ、菊里通りを目指して歩いている途中、人気が少なくなったと思いきや、能面を被った集団に取り囲まれる。

 

 その中の代表であろう、一人の男子生徒。

 

 腰に一刀とAR。顔を半分隠した喜怒哀楽の分からない能面越しに声をかける。

 

「通してください。百鬼夜行修行部の者です」

 

『知っている。我々は剣洸会。御三方、ご同行願おう』 

 

「もし、断れば?」

 

『力づくだ』

 

 能面達はそれぞれ銃を向けて脅しをかける。しかし、修行部の戦闘能力は陰陽部のお墨付き、一切怯むことなくツバキを中心に前に出て戦闘を開始した。

 

 戦闘終了

 

『うぐっ……!数だ!数で押せ!!相手は所詮三人の小娘!』

 

「ミモリ先輩!すごい集まってくる!」

 

(いくらなんでも私達だけじゃ……!)

 

「ミモリ、一度撤退して、マサムネを呼ぼう〜。流石にこの数は……」

 

 ドォンッ!

 

「わぁっ!!?」

 

「カエデちゃ──ッ!!」

 

 バチンッ!

 

 ツバキの盾をすり抜けた手榴弾がカエデの足元で爆発し、それに気を取られたミモリのこめかみに狙撃銃の弾丸が炸裂して二人の気がそれる。

 

「「ミモリ(先輩)!!」」

 

『統制が崩れた!今だ!!』

 

 カチカチカチカチッ……カチン!!

 

 一瞬の隙、一気に形勢が逆転する。数倍以上はあろうかという数に押される三人。しかし、突然拍子木の音が鳴り響き、追撃の手が止まる。

 

『何だこの音……』

 

『あいつはっ……!?』

 

「犯罪者の皆々様方、お天道様が燦々照りゆく中で多勢に無勢、ご機嫌いかがと存じやす。あっし、警邏部が部長、姓は曲烏、名はカルラとぬかしやす。手前勝手なぬかし込みと部活動の一環により、そちらのお嬢さん方の手助け改め、おめぇがたを逮捕させていただきやす。御用覚悟はよござんすか」

 

『ッ!あの服、警邏部だ!!』

 

「皆さんこっちです!」

 

 腰を低く構え、右手を前に出して声をが鳴らせながら注目を集めたカルラが参戦する。そしてそれを囮に、屋根を伝って走ってきたイズナが三人の前に煙幕を焚いて離脱する。

 

『くっ……!追え!逃がすな!!』

 

 煙幕の中、十手を使った体術で次々と剣洸会のメンバーを伸していく。

 

「イズナ、まずは3人を逃がせ!ここは俺が引き受けた!」

 

「了解です!」

 

 カルラは地面を踏み鳴らして十手を一振り、剣洸会を引きつけてイズナを中心に3人を逃がす。

 

「見せてやんぜ!男、曲烏の名に恥じぬ、警邏部部長の心意気!!悪党共、覚悟しやがれ!!」

 

『ッ!やれ!我ら剣洸会の力を見せてやれ!!』

 

『『『うぉぉ!!』』』

 

 戦闘終了

 

『くっ……!"大天狗"相手は分が悪い!退くぞ!!』

 

「……へっ、雑魚どもが,所詮は烏合の衆か」

 

 ──ー

 

「イズナさん、助かりました。ありがとうございます」

 

「いえいえ、困った時はお互い様です!あの数を相手にあの善戦、お見事です!」

 

「そういえば、何故イズナさんは?」

 

「あっ、そうです!菊里通りの廃墟でさっきの人達と同じ格好をした集団がいたんです!確か……国取りをすると!」

 

「不審者の話、本当だったんだ!」

 

「う~ん……となると、なんで私達を狙ったのかな?」

 

「やはり人質でしょうか。マサムネ先輩を相手にするなら悪手も悪手ですが……」

 

「ともかく、マサムネ先輩呼ぼうよ。あの人一人で全部終わるんだし」

 

「それが……さっきから連絡してるんですが、どうやら持ってないみたいで……」

 

「普段からスマホ使わないからねぇ……」

 

「こういう時困るから持たせてるのにぃ!」

 

「……あっ!部長から連絡です……そっ、そんな!?」

 

「ど、どうしたんですか?」

 

 恐る恐るイズナはスマホの画面を見せると、そこには後ろ手を縄で縛られたミチルとツクヨの姿が映っていた。

 

 ──ー

 

 第6話 宝泉亭 江戸彼岸桜クッキー

 

 洋風の建物ながら、中はしっかりと和風の様相。隠れ家といった感じのお店で、テーブルの真ん中に盛られたクッキーを頬張っていた。

 

「うむ……これもまた美味い。焼き菓子でありながらかように量もあるとは」

 

 [お持ち帰りもできるみたいだし、修行部の皆と食べたらどうかな?]

 

「名案だ。店主、二袋ほど包んでくれ」

 

 マサムネと先生は修行部達が大変なことになっているのも露知らず、4軒目のお茶を堪能していた。

 

 [いやぁ、いよいよあと一つだね!]

 

「うむ……すたんぷもしっかり集まった。さて、最後の店は……菊里通りか、少し遠いな。人力車を使うか?」

 

 [腹ごなしにのんびり歩こうよ。陽もまだ高いし、予定は無いんでしょ?]

 

「ふむ……それもそうか」

 

 店主から包まれたクッキーを受け取り、水面下で大きな事件が起きていることを知らぬまま、二人は店を出て次の目的地へ向かう

 

 ──ー

 

「どどどっ、どうしましょう!?お二人が捕まってしまいました!!」

 

「落ち着いてくださいイズナさん。落ち着いて……」

 

 慌てるイズナを宥め、ミモリは静かに深く呼吸して落ち着く。

 

「まずは……犯人の要求を聞きましょう」

 

 ゆっくりと添付されたメールを開く。そこにあったのは、人質がミチルとツクヨ、そして女子生徒の三人いるということ。要求は、"宮本マサムネ"の刀。猶予は1時間。

 

「マサムネ君の刀……?」

 

「……あっ、確かあいつら剣洸会って言ってたっけ。何人か刀使ってたし」

 

「コレクター集団……?」

 

「……命より大切な刀を、マサムネ君が手放すかなぁ」

 

「「「「……」」」」

 

「とにもかくにも、まずはマサムネ君と連絡を取りましょうか。百花繚乱に頼めればそれが一番良かったのですが……」

 

 四人が話し合っている中、戦闘を終えたカルラが合流して会話に参加する。

 

「無いものを当てにしたって疲れるだけだ。それにあの程度の集団、戦闘力でいやぁ中の中。マサムネさんがいなくてもまぁ何とかなる。だがなぁ……」

 

「何か問題でも?」

 

「報告したらニヤが放置でいいって言ってたんだ。なんか仕込んでる気がする」

 

「ニヤさんが?」

 

「きな臭いね〜……」

 

 ──ー

 

 剣洸会

 

『役立たず共が。たかだか三人のガキにやられただぁ?』

 

『申し訳ありません。"大天狗"の参戦は予想外でした』

 

『……ちっ、まぁいい。こっちにゃ人質がいるんだ。要求を飲めばそれでよし。飲まなければ、宮本マサムネを"社会的"に殺す……完璧だ』

 

『……ですね』

 

(ふん、馬鹿な駄犬。精々私が成り上がるための糧になってくださいな)

 

「ど……どうなるんでしょう私たち……」

 

「何とかなりますよ〜、それよりお饅頭いかがです?」

 

「君……えぇと……」

 

 捕まってるミチルとツクヨ。それともう1人の生徒。黒黄の簪を差し、今は没収されているがバヨネット(銃剣)がついた黒い桜模様のワークスマンライフル。厚手のアレンジした羽織を制服の上から着ている。

 

「フゥちゃんって呼んでください。隠れ家、風々館の看板生徒でーす」

 

「お……お気楽すぎない?」

 

 ──ー

 

「む……?」

 

 [どうしたの?]

 

「……灯りが無い。人の気配も殆ど無いな」

 

 最後のお店、風々館を前にしてマサムネは違和感を覚える。

 

 つられて先制も確認するがやはりお店をやっているような気配はない。

 

 [あれ、鍵空いてる]

 

 先生がドアを空けて不用意に中に入る。瞬間、飛び込んできたのはむせるような煙の香りと悪い視界。毒性こそないものの、嗅ぎ覚えのある臭いに先生は警戒を強める。

 

「先生、下がっておれ」

 

 バォンツ!!!

 

 マサムネは納刀した状態で煙を払い、味を確かめるように舌なめずりする。

 

「……襲撃だ。店主、おらんか!」

 

 レジ前まで二人が歩くと、倒れた男性ロボットを発見する。店主のようで、銃撃された後が見て取れる。

 

 [大変だ。今救急車を呼びますから]

 

「う……うぅ……バイトの子が……拐われて……」

 

「人拐い……犯人の人相は分かるか?」

 

「能面を……被っていました。1時間程度前のことです……煙幕弾が爆発したと思ったら、一瞬で……」

 

「うむ、委細承知した。任せよ、店主殿」

 

 救急に連絡を終え、二人は店を出て菊里通りを歩く。

 

 [アテはあるの?]

 

「ツバキか警邏部に連絡すればすぐだろうて。連絡を……すまぬ先生、頼めるか?スマホを忘れた」

 

 [オッケー、ちょっと待ってて……あ、いやその必要は無さそうだね]

 

 数歩歩いた所で二人は、手紙が付いている風車を発見し、直感的にそれは自分達に当てられたものだと理解する。

 

 ハイキョ、ヒトジチアリ

 

「……廃墟か。人質もとは……許せん。かような不貞者は斬ってくれよう」

 

 [皆は呼ばないの?]

 

「卑劣な罠を扱う者共、かような魔窟に皆を巻き込むわけにはいかん」

 

 [優しいね、君は]

 

「男なら当然のことよ」

 

 第7話 

 

 意図せぬ合流

 

「結局、マサムネさんは呼べなかったか。スマホ忘れんだろうな」

 

「もう、あの人は……!」

 

「ミモリ、そんなにカリカリしないで〜」

 

「約束の時間まで後少し。なんとか交渉しないといけません。こちらに敵対の意思が無いことを伝えつつ、マサムネ君を何とかして呼ばないと……」

 

「……行くか。最悪のケースだけは避けるため、ここら一帯は警邏部で包囲しておいた」

 

「ありがとうございます、カルラ君」

 

 指定された場所へ、大きな扉を開けて5人で乗り込む。3階建ての廃旅館、3階の大広間へ行く最中、BM崩れの傭兵や刀を差した不良生徒達が歩く5人を睨見つける。

 

「……貴方が、彼らのリーダーですか」 

 

『修行部とカルラに、こいつらのお仲間か』

 

 後ろ手に縛られた3人に目を向けながら、大太刀を背負った獣人は5人を睨みつける。

 

『名乗らせてもらうぜ。俺は犬八、天下無敵の大剣豪よぉ』

 

「天下無敵……?マサムネ先輩の真似?」

 

『ちげぇ!!アイツが俺様の真似をしてんだ!!!』

 

 カエデの不用意な発言に犬八が声を荒げ、そのままの勢いで話し始める。

 

『1年前!!アイツが現れるまで剣豪と言えば俺だった!!なのに……!なのに!!あの小僧が卑怯な手で俺を負かしてから全部狂った!!』

 

「卑怯な手……?マサムネ君が?」

 

「……マサムネさんが?」

 

「しないでしょぉ……」

 

(……そもそも犬八って人知らないし……)

 

『お前らは知らないだけだ、あの妖刀……!かの"花鳥風月部"が残したと言われる負の遺産!!使い手のレベルに関係なく最強まで押し上げる力!あの刀で俺はこの百鬼夜行の頂点に立つ!!』

 

「「「「「…………」」」」」

 

 絶句する一同。その会話の真偽が確かでないながら、交渉を開始する。

 

「……貴方の事情は分かりました。刀に関して……マサムネ先輩はなんとか説得します。先に三人を解放してくれませんか」

 

『駄目だ、交換は同時。安心しろよ、約束は守る。ついでに、警邏部や陰陽部が何かしようってんなら、こいつらの無事は保証しない』

 

「……チッ」

 

 包囲が完成していることを気取られ、膠着状態が始まろうとする。しかし

 

 ……パタンッ

 

 斬り開かれた大広間の襖。静かに、草履と革靴の音が鳴る。真正面から、堂々と、彼らは現れた。

 

「マサムネ君!?」

 

「なんで!?」

 

「……ニヤの野郎……」

 

「なんと、皆既に居ったのか。となると何故階下の者らは誰も倒れておらなんだ?」

 

 [あれっ、皆いる!?]

 

 先生とマサムネは5人がいるところまで歩みより、現在の状況を把握する。

 

「うむ……貴様が不貞者の頭か」

 

『おうおうおう!久し振りだなマサムネぇ……!!テメェに会うのを楽しみに──』

 

「誰だ。貴様なぞ知らん」

 

 バッサリと言葉を斬り捨てるマサムネに、再び場は静まり返る。

 

「あ、あのマサムネ君。一応、貴方にやられた方らしいんですけど……」

 

「はて……誰だったか……?」

 

『こ……この野郎……!!』

 

『……はじめまして、マサムネさん。それと、お噂はかねがね、シャーレの先生』

 

 [うん、はじめまして。名前は聞かせてくれないのかな?]

 

『私は"ノウメン"と呼んでいただければそれで。こちらの方は大剣豪、犬八さんです』

 

『ふっ、おうともよ。天下無敵の大剣豪。大太刀使いの犬八とは俺のことだ』 

 

「ほう。が、この際それは置いておこう。で……人質を取った狼藉、自らを武士と呼ぶその志。拙者に斬られる覚悟はできておろうな?」

 

 刀に手をかけたマサムネから剣気とも呼べる気迫が漏れ出す。それを認識した一同に緊張が走るが、ノウメンが口を開く。

 

『おっと。その前に取引です。人質は返します。なので貴方のその刀をこちらに渡していただきたい』

 

 [え!?]

 

「……なに?」

 

『妖刀、太刀"満開"、小太刀"徒花"。かの花鳥風月部の負の遺産。使用者の力をまさしく最強にまで押し上げる──』

 

「よかろう」

 

 [……へ?]

 

「「「「「え?」」」」」

 

『……は?は?本当に?』

 

「うむ。この刀と引き換えにそこの3人を解放するのであろう?命は刀に代えられん。さっさと解放してやれ」

 

 マサムネは腰から外してノウメンに手渡し、呆けている二人を差し置いて人質3人の縄を解く。

 

「あ……ありがと」

 

「ありがとうございます……」

 

「ありがと〜宮本君、お饅頭食べる?」

 

「後で頂こう」

 

「えっ!?はぁ!?マサムネさんあんた何やってんだ!?」

 

「マサムネ先輩!?今口上を挙げられたりでもしたらどうすんの!?」

 

『全くもって馬鹿ですねぇ!犬八さん、今です』

 

『ハハハ!!!酔狂な奴だぜ宮本マサムネ!!これで俺が最強だ!!我、流派大犬流、犬八!宮本マサムネに試合を挑む!』

 

「良かろう」

 

 [マサムネ、駄目だよ!せめて武器を……!]

 

「いや、駄目なんだ……!"マサムネ規定"で試合を断ることはできない!」

 

 [なにそれ!?]

 

「マサムネの為だけにある、百鬼夜行のルール……これを破れば停学ものの罰則を受けちゃうんだよ」

 

 マサムネ規定六ヶ条

 

 一つ、宮本マサムネは、修行部、陰陽部の許可なくして試合、指定の場所以外での抜刀を禁ずる。

 

 一つ、宮本マサムネは、いかなる状況でも挑戦を断ってはならない。

 

 一つ、口上を挙げた戦いに、当人達以外の参戦を禁ずる。

 

 一つ、宮本マサムネは、いかなる状況でも相手に致命に至る傷を負わせてはならない。

 

 一つ、宮本マサムネに勝利することがあれば、いかなる罪にも問わず、百鬼夜行は当人を擁護するものとする。また、敗北した者の処遇はマサムネが決めるものとする。

 

 一つ、宮本マサムネは、負けてはならない。

 

 [何その目茶苦茶なルール!?シャーレの権限でも無視できないの!?]

 

「駄目だよぉ〜……百鬼夜行全部を敵に回すことになっちゃう」

 

 [そんな……!]

 

「案ずるな、皆のもの。このような下郎。話になどならん」

 

 焦る一同とは真逆に、マサムネは口上を挙げて戦いに臨む。

 

「拙者、修行部三年が宮本マサムネ。廻天我流(かいてんがりゅう)、天下無双の侍なり。腕に名のある蛙者(かわずもの)、無刀によりて、拙者の拳に血染めの桜を舞わせてみせよう。いざ、尋常に」

 

『勝負ぅぅ!!!』

 

 ──ー

 

 第7話 語りなし

 

「ほらな、話にならなかった」

 

 1秒に満たない試合。床には鼻が潰れた犬八がピクピクと痙攣しながら倒れ伏していた。

 

「……つよ」

 

「心配するだけ無駄だったね……」

 

「え?え……?何が起きたの……?」

 

「あぁ……弱ぇわけねぇか……」

 

「刀の話、嘘っぱちってこと?」

 

「返してもらうぞ」

 

 血に塗れた右手の拳を刀拭きで拭うと腰に二振りを差し直し、マサムネは次に逃げようとしていたノウメンに剣気を向ける。

 

 ギンッ……!

 

『かはっ……!』

 

 息をするのすら憚られる圧に思考と呼吸が停止し、ノウメンも顔面から倒れる。

 

「おっと、やりすぎたか」

 

 [マサムネ、大丈夫?]

 

「全くもって問題はござらん。それより……やけに記憶に強い味がすると思えば、貴殿の仕込みか、コタロウ」

 

「コタロウ……?」

 

「あらら、バレちゃった」

 

 制服のスカートをひらひらと舞わせてフゥちゃんは小さな闇に紛れる。瞬間、先生の真後ろに移動して黒い羽織を脱ぎ、スカートからズボンに履き替えて笑う。

 

 [うぉわっ!?]

 

「貴方は一体……」

 

「どうも〜。改めて、風磨コタロウでーす。陰陽部直属の密偵で、こう見えて男だよ〜」

 

 ミモリの問いかけの後、違和感が毛ほどもない中性的な声で自己紹介を終え、その場の一部の生徒を除いて瞬間移動とも見紛う足運びに絶句しながらも、コタロウは言葉を続ける。

 

「そんなに警戒しないで〜、多分できてないと思うけど。僕の任務はそこのノウメン君の捕縛。予定外はあったけど、概ね予定通り。ってわけで、あんまりペラペラ外で僕のことは喋んないでね?」

 

「な……何が何だか……」

 

「部長!あの方も忍者なのでしょうか……!?流れるような体捌き、イズナ感激です!」

 

(コタロウ……?知らねぇ、なんだコイツ……)

 

「別に必要以上にかかわる気はござらん。カルラもいることだ、拙者達はこれにて失礼つかまつる。風々館に用があるのでな……む?捕まったのはお主か?」

 

「ん?あぁスタンプのこと?はい、これでいい?」

 

 ポンッ

 

「待て」

 

「まだ何か?」

 

「饅頭もよこさんか。まだ制覇しておらんぞ」

 

「……ほんっと、強い奴ってこんなんばっか……」

 

 桜饅頭をマサムネに放りなげ、呆れた顔でノウメンを縛り、先生にウィンクをして去っていった。

 

「まぁなんだ、解決ってことでいいな。ご丁寧に"試合"も行われた。こいつ、ヴァルキューレで良いだろ?」

 

「無論。興味はござらん」

 

「はぁ……私達も帰りましょうか。ところで、マサムネ君はどうしてこちらに?そしてさっきのスタンプは……?」

 

「む……そ……それは……その……」

 

『ガァァッ!!』

 

「「「!」」」

 

 突然息を吹き返したのように身体をビクリと震わせて犬八が起き上がり、白目を剥きながら怒号を散らす。

 

『おっ……おぉれが一番強いんだ!天下無敵のこのオレに!妖刀は応えるハズなんだぁぁ!!』

 

 半狂乱といった様子で大太刀を構える犬八に、マサムネは正面から立ちはだかる。

 

「哀れな……ミモリ、抜刀の許可を」

 

「身体は斬っちゃ駄目ですよ?」

 

「案ずるな」

 

 犬八の目の前に立ったマサムネは居合の構えをとって笑う。

 

『ォォオオオ!!!』

 

 キンッ

 

 大太刀の刀身を半分に斬り捨て、返す刀で首元に寸止めし、2度目の敗北を悟らせる。膝から崩れ落ちる犬八に、マサムネは言葉を投げかけた。

 

「無敵など、つまらんことをぬかすな。世には敵がいるから面白く、拙者の名が意を成すのだ」

 

 ──ー

 

 第8話 桜は散ってしまうけど

 

 [色々あったけど一件落着だね]

 

「うむ。がしかし、結局、百鬼夜行の内輪もめに巻き込んですまなんだ」

 

 [良いんだよ、何事もなければ。それより、どさくさにスタンプゲットしてたけど、今から交換に?]

 

「その通りだ。後始末は警邏部に頼んでおいたし、修行部は部室に戻って報告書を書くと言う話だった。今からいけば夕餉には間に合うだろう」

 

 [そっか。じゃあここらで御暇しようかな]

 

「先生、飯は食っていかんのか?」

 

 [悪いよ。それに……意外とお腹いっぱいなんだよね]

 

 困り顔でお腹をさする先生に、くすりと笑うマサムネ。

 

「そうか、ひと時の旅であったがまこと楽しき時間であった。桜が地に散る程に速い時……先生、また誘えば来てくれるか?」

 

 [もちろん、いつでも行くよ!]

 

「ハッハッ……!あっぱれ!主には勝てる気がせんな」

 

 ──ー

 

 夕刻、晩ご飯を準備しているミモリの元へ、例の湯飲みを不器用にラッピングして持っていく。

 

「えっと……?マサムネ君、これは……」

 

「……以前、桜が好きだと言っていただろう。拙者は使わん。茶所巡りで偶然手に入ったものだ」

 

「偶然……ですか?」

 

 ミモリは明らかにお店のものではないラッピングがされている湯飲みとマサムネの言葉に疑問を抱き、僅かに背の高い彼の瞳を、顔を上げて見つめる。

 

「「…………」」

 

「……参った。ミモリ、お主の為だ、これで良かろう」

 

 頬を赤く染め、照れ隠しにミモリの髪を少し乱暴にくしゃくしゃと撫で、そっぽをむいて茶の間へと歩き去る。

 

「土産の茶菓子もある。食後に振る舞おう」

 

「ふふっ……ありがとうございます。マサムネ君」

 

「……ん……」

 

 ──ー

 

 陰陽部が管理する百鬼夜行の牢屋。そこで手錠をかけられたノウメンと、口元を隠したコタロウが会話する。

 

「さてさーってと……んで君、ノウメン君だっけ?何がしたかったわけ?」

 

「……別に……ただ宮本マサムネを……」

 

「あぁ、またそういう。いいや、分かったし。君の心覗いてもつまんなそうだ」

 

「は……?」

 

「こっちの話。じゃ、しばらく牢屋で反省してな。ちっぽけな犯罪者君……そこの君も、良い子は眠る時間だよ」

 

 イベント

 

 天下無双、桜舞う茶と食の旅 完……?

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