第5話 フォルセティ往和学館
「よしッ!大丈夫か!?」
「大丈夫……だけど、あの、彼女たちは……?」
「気にするな!悪は淘汰されるだけだぜ!」
大きく開いた瞳で当然だと語る彼に、5人は一種の不安感を覚えるが、助けてもらった事実は変わらずになるべく刺激しないようにとアイコンタクトをとる。
「ん?お前は知ってるゼ!」
「わっ私ですか!?」
「確か……自警団の宇沢!俺の学校じゃ有名だゼ!」
「えぇ!本当ですか!?」
「……今さらだけど、貴方の学校って……」
「おっと、名乗り遅れた!俺はフォルセティ往和学館、理想正義部、三年の
「先輩だったんですか?失礼しましたっ!」
「気にしなくて良いゼ!俺は堅苦しいのは苦手だからな!」
「フォルセティ……?」
「確か、中高一貫の男子校だね。私達トリニティとは殆ど真逆の学校だと噂には聞く」
ナツの補足の合間にレイサはセントと打ち解けたらしく、半分にしたドーナッツで談笑していた。
「悪い人じゃないのかも?」
「やりすぎるきらいがあるけど……」
「悪は裁かれるべきだゼ!一々審問にかけてちゃあ時間も人員もかかる、その間に怯える市民がかわいそうだゼ!」
「素晴らしい考えです!私も日々活動しています!」
真っ直ぐな二人の発言や思想は相性が良いのか、4人を差し置いて話しているうちに、レイサは話題選びを誤ってしまう。
「中学の頃から、私は伝説的な不良……キャスパリーグを目標にしてきたんです!」
「目標か!よし、ソイツは何処にいるんだ?俺も協力するぜ!」
「いえ、それには及びません……今はもう普通の女子高生でした。友達とスイーツを食べて談笑して、私を輪に入れてくれるような……」
「……別に、ただタイミングが良かっただけだし」
「カズサちゃん、照れてる」
「おやおや、ウチの凶暴な猫ちゃんの照れ顔を引き出すとは、やるじゃないか宇沢女史」
「ん……?となると、お前が"キャスパリーグ"なのか?」
「元ですよ元。今は足を──」
ブゥゥゥンッ!!
「危ねぇ!!」
「はっ──ー」
バゴォ゙ンッ!!
突然セントの左腕がエンジン音を鳴らしてカズサに襲いかかる。反応が遅れた彼女をかばうように特殊な形の盾とユウタが間に挟まり、僅かに衝撃が柔らいで吹き飛ぶ。
「カズサちゃん!」
「ちょっと!?」
「は……?」
「杏山カズサ!?」
『ん?何者だお前!』
「痛った……って、アンタ確か……」
「SRTっす!怪我は!?」
「特には。っていうか何が起こったの?」
「話は後。まずは離れて」
ユウタの指示でカズサとスイーツ部、レイサをレイトが守るように前に出て合流し、セントと向かい合う。
『SRT!!正義を謳うお前達がなんで邪魔をするんだゼ!?』
「市民を守んのが俺たちの仕事だ……。どう見たってただのJKだろうが……」
「いきなり殴りかかるとか信じらんない!何よアンタ!」
『良いゼ、もう一度名乗ってやる!俺は和望セント!悪を挫く正義の味方!!』
「だから、なんでだよ!悪の基準がわかんねぇって!」
苛立ったユウタが口にした疑問の言葉に、当然といった様子で答える。
『一度でも悪事を行えばそれ即ち悪!!清算されてこそだゼ!!』
「すっごい自分勝手!アンタに関係ないでしょ!?」
「カズサちゃんは普通の女の子で私達の友達です!やめてください!」
「黙って見ているほど私達スイーツ部は薄情じゃない」
「そ、そうです!もう杏山カズサは悪人じゃありません!」
「自力で足洗って今は穏やか〜に高校生活満喫してるやつでも?大体、キリないじゃんかよそんなことしてちゃ」
『そうやって怠惰を貪るのか!!だったら!お前達も悪!!庇ったお前らも悪だゼ!』
「ひぃっ!」
「そうかよ!じゃあ市民の味方、正義のSRTが相手になってやる!いくぜレイトぉ!」
「応……!」
『望むところだゼ!正義の名の元に、お前達をぶち殺すゼ!!』
第6話 完全超悪
矯正局
尾刀カンナの足運びは重く、しかし明確な目的を持った速足だった。後ろに連れた数人の部下とヒサギと共に一人のヴァルキューレ生の前に立つ。
「な……何か……御用で……」
「フォルセティ往和学館、
「……知ら……」
「三日前、AM7:20。一週間前、AM7:20さらにその前にも同様の時間に、部屋の電気を全て遮断した上で外部連絡。どの日付の翌日も、確実に同じ相手へ連絡していますね」
「なっ……なんの根拠があって……」
「根拠ですか。うーん、これでいかがです?」
ヒサギはパソコンを開いてデータ化された資料を見せる。おびただしい量の規則性を持ったデータ。出勤、業務連絡、時間、電気代や休憩時間まで細かく割られた表に、詰められている生徒の名前もあった。
「三週間前からの記録を正しく整理すれば、歪みは見つけられると思いませんか?」
「……くっ……ここまでか……」
「いいや、始まりだ。聴取を開始する。連れて行け」
カンナの指示で拘束された生徒はうなだれた様子で尋問室へ連れて行かれる。
「助かった、ヒサギ。相変わらず迅速だな」
「いえ。ただ、今日明日は休みをもらいますよ。流石に疲れましたからね……」
「受理しておこう。ゆっくり休め」
内通者と思われる人物を捕らえ、犯人の影を掴んだ頃、公安局に予期せぬ来客、マスクをつけて咳をしながら、スネーク小隊隊長、蛇尾フブメが現れた。
「ゴホッゴホッ……あ"ぁ"……局長殿はいるか……?」
「局長は私だが……その制服、SRTか?」
「スネークゴホッ、小隊ゴホッ……隊長の
「だ、大丈夫か……?」
「特に何かをしにきたわけじゃない……ただ、部下と連絡が取れなくてな。FOX小隊がこの任務を引き継ゴッフォ……と」
「あの二人でしたら、自分たちなりのやり方があると」
「はぁ"?……クソが……」
小声で口の悪くなったフブメの言葉に場が静まり返る。
出口に向かって踵を返す。
「どこへ?」
「……探しに行って、一度シバく。俺の部下だ」
「お待ちを。その誰が見ても万全ではない身体で行くのは流石に見過ごせません」
「問題ない、連れ戻すだけだ。そちらの手を煩わせはしない」
「そういう問題ではありませんが……仕方ありません。私も行きます」
「…………分かった。だが、そちらも疲れているだろう。俺のやり方についてこれなければ置いていくぞ」
「ご安心を。体力には自信がありますので」
カンナは簡潔に部下たちに指示を飛ばし、フブメの後を追う。問題ないと口にした彼だが、足取りは重く、明らかに体調に問題があるのは見て明らか。しかし、それでもなお、彼の足取りに淀みはない。
(これだけ弱っているのに隙がないな……)
「……ガスの残り香を感じる。何処かでブースターが使われたな」
「?そんな臭いはしませんが……」
「気にするな、俺の鼻が良いだけだ」
「に局長殿、今回の犯人に目星はついているのか。先程一段落ついた様子だったが」
「あぁ、恐らくだが。しかし聴取が済んでいないから私の推測になる」
「
「では改めて。かつてゲヘナの大規模な不良グループと一人で真っ向から対峙し、敗北したものの巻き込まれた街は半壊、未だ復興中。本人の意図は正義の執行……しかし、あまりに巻き込んだ被害の多さから矯正局へ収容。フォルセティ往和学館。三年、"完全超悪"和望セント」
「……キヴォトスの連中は皮肉るのが好きだな。不良グループのリーダーは俺達が捕らえたからよく覚えてる」
「そちらも厄介だが、もし今回の件に関与したのが奴なら直接的な被害は明らかにこちらの方が大きい」
「違いない、たしか奴の左手にはブースターがついていたな……ん、まずいな、雨が降る」
「え?」
カラリとした空からは一滴も雨粒などなく、カンナは疑問符を浮かべる。しかし、確信した様子でフブメは行動を速め始める。
「僅かな痕跡だが逃せない。局長殿、急ぐぞ。リミットは二十分だ」
(……本当に今更だが、歳下だよな、彼)
──ー
第7話 SRTの意地
『オラァ!!』
「スネーク3、焚灯!!レイト!」
「コードネームで呼べ……!」
バキンッ!
『正義の前に小細工は無駄だゼ!』
ユウタのフラッシュシールドで視界を奪い、レイトの狙撃銃で中距離から攻撃を仕掛ける。
同時に爆薬を腹に取り付けて爆破し、近くの物置小屋へと吹き飛ばす。
「よし、逃げ……いや無理だ、消耗戦に切り替えよう」
「みたいだな、了解」
ガァンッ!!
廃材を吹き飛ばしてセントは立ち上がる。目に見えている傷もないかのように彼は銃と共に二人へ向かう。
スイーツ部の逃走を促すための時間稼ぎだが、セントの追跡優先度がその場から逃走する生徒に移るのを短時間で見抜いたレイトが消耗戦を提案した。
「ごめん皆!ヴァルキューレ来るまでもう少し耐えて!」
「加勢した方がいいのかな……」
「わっ私も……!」
「やめときなよ、守る手数増える方がしんどいタイプだよアレ。見境ないし、狙う順番が目茶苦茶」
「えっ……くぅ……」
(……どう見ても無鉄砲なタイプ……でも何か違和感が……)
カズサと盾を持つナツが4人の前に立ち、常に迎撃出来るように総員で銃を構える。しかし、流石のSRT。迅速な連携で決定打はないものの持久戦で増援を待つ。
ブゥゥンッッ!!
『正義ッ!執ッ行だゼェ!!』
「避けろ、スネーク3!」
「もちろ……!?俺じゃねぇ!避けろ!!」
火を吹いたブースター。先程まで暴れるような戦闘スタイルだった彼の狙いをユウタだと予想したレイトが死角に回り込む。しかし、予想と反してレイトに飛んできたのは、大型ショットガンの散弾。
ヴァギュゥンッ!!
「ガハッ……!?」
「しまっ──」
『執ッ行!!』
ドガァンッ!!
「ァガッ……」
続いて視線を奪われたユウタへ拳骨の形でブースターによって加速した拳が撃ち込まれる。
それによって鼻血を吹き出しながら地面へ倒れる。
「は……マジで……?」
『浅いゼ、戦闘経験が空っぽだ!SRTも大したことないな!』
二人は1年生、確かに実践の経験は浅く、セントの戦闘経験とは天地の差があった。加えて、司令塔が居らず、ポイントマンと狙撃手というアンバランスも、彼らの敗北の要因の一つだった。
『さて……次はお前たちだゼ!キャスパリーグと、それに与する悪達!』
「ひっ……!」
「……させないよ、私が相手」
「カズサ!?」
「ナツ、4人を流れ弾から守って」
「うぅん……わかったよ、任された」
「危険です杏山カズサ!私も……!」
「言ったでしょ、少数じゃないとしんどい相手だって。アンタ守りながら私は戦えないよ」
一歩前に出たカズサがセントの前に立って引き金に指をかける。
『どんな悪も!正義のま──んがぁっ!?』
ガァンッ!!
「こういう時は、言葉より暴力の方が遥かに雄弁だよ」
セントの口上を無視して顎をマシンガンの先端で殴り飛ばす。さらに体格差を利用して姿勢を低くして動き、セントの視界から外れる動きで翻弄する。
『うぉおっ!?このォ!』
(やっぱり、極端に下と左の動きが遅い。体格差と、あのブースターが重いんだ)
「す……凄い……!」
ガチッ……!
『おぉっ!?』
(チャンス!)
ショットガンが弾づまり(ジャム)を起こして自手が止まり、その隙にカズサはレイトの盾を投げつける。
反撃に殴りつけた盾のフラッシュが起動し、正面から閃光を食らって一瞬酩酊する。
『邪魔だぜ!!あぁっ!?』
さらに瞬間、ブースターのホースをちぎって飛び退く。
(よしっ!後は撃って起爆──)
バギィっ!!
「ヴッ……!?」
視野の回復が早かっか、それとも単なる勘か、セントの蹴りがカズサの腹に撃ち込まれる。
辛うじて腕のガードが間に合うも、痛みで銃を手放し地面を転がる。
「カズサちゃん!!」
真っ先に駆けつけたアイリ、しかしセントの拳が既に追撃の準備を整え、振り被られていた。
ガァンッ!!
「重っ……!!」
刹那の隙、ナツの盾でレイサとヨシミの三人がかりで押さえて一撃を防ぐ。
『丁度いいゼ!!全員まとめて!正義の鉄槌を下すゼ!!』
(次は防げない!!)
(飛び退く!?反撃する!?どっちも無理!!)
「うわぁぁぁ!!」
ドゴッ!!ブゥンッ!!
横からの衝撃で狙いが逸れたセント。左には、鼻がつぶれながら突撃したであろうユウタがいた。
「見やがれ……!!これがSRTの意地だぁぁっ!!」
EXスキル
焼炎弾、着火!
「今だスネーク2!起爆しろ!!」
「応!!」
ジュッ……ボォォンッ!!
捨て身のタックルでセントの左腕に爆薬を取り付け、レイトが狙撃して爆発させる。同時にばら撒いた焼炎弾でセントを火の海に閉じ込める。
「これで酸欠か全身火傷かで動けねぇだろ……!」
「アイツの耐久力なら死にはしない……さぁ、今のうちに……」
「ッ!駄目です!ナツさん盾を!!」
「っ!?」
レイサの合図で反射的にナツは前に出て盾を構える。
直後、火の中からショットガンの弾丸と共に熱を持った廃材が飛び出し、抑えきれなかったナツ、レイサと共に二人が後ろへ吹き飛ぶ。
「ナツ!!」
『正義は……!!不滅だゼぇぇ!!!』
「は……嘘だろ……バケモンかよこいつ……」
頭から血を流したレイトと同様の状態で状況を見て絶望したユウタが肩を落とす。アイリの肩を借りてカズサが立ち上がり、最後の交渉とも呼べない懇願に望みをかける。
「もういいじゃん……!!充分痛い目にあったし!!そもそも私だけでしょ!?もうっ……もういいでしょ!?」
『駄目だゼ!悪は徹底的にだゼ!!そのためには、一度死すら生ぬるいバツが必要だゼ!!』
セントは壊れたブースターを放り投げて左手を天に掲げて宣言する。
対するカズサも、怒りを顕に青筋を首に浮かべて銃を握る。
『正義の名の元に、お前達をぶち殺すゼ!!』
「やってみなよ……皆に指一本でも触れたら噛み殺してやるから……!」
『正義ッ執ッ行!!』
ポッ……ザァァ……
降り始めた雨の中、二人のタイマンが始まった。
第8話 蛇尾に付す
ピー!!!
向かい合って覚悟を決めた二人、それを打ち消すように突然警笛が鳴って場を支配する。
『ヴァルキューレ!!』
「和望セント!!貴様は包囲されている!!直ちに抵抗をやめ、手を後ろにして降伏しろ!!」
犯人を照らす多数のライトとメガホンを持ったカンナ、加えて、ゴホゴホと咳をするフブメが静かに歩いて近づく。その姿をみた二人の隊員は安堵で涙を流して抱き合う。
『なんだゼ!?』
「このバカ共が。余計な体力を使わせやがって」
「「たっ、た、た、隊長〜!!」」
「えっ、はっ、誰!?」
『何だ!?お前も悪か!?なら執行だゼ!!』
「うるさい少し黙れ、頭に響く……」
シュルッ、ブゥンッ!
『!?』
雨の中、照らされる中で悠然と現れたSRTの生徒。
ジェットを装着せずとも、見て分かるであろう剛力をものともせずに片手で受け流し、気怠げな表情で周囲を見回して現状を確認する。
「……あぁ、思い出した。お前キャスパリーグか」
「はぁ!?何いきなり……って、その声、アンタまさか……ガラガラヘルメット団のヒュドラー……?」
「昔の名前だ。もう捨てた」
「私もだから!?」
「そうか、お互い変わったな」
「カ、カズサちゃん、知り合い?」
「えっと……って、後ろ!」
パァンッ!
『なっ……!?』
カズサの掛け声、殴りかかったセントの拳をフブメは脱力してしならせた腕でいなして顎にカウンターを打ち込み、脳が揺れたセントは膝から崩れる。
「色々言いたいことはあるが、まぁ……SRTとしての使命感は感じられた。成長したな、お前達」
「「隊長……!」」
「だが、俺の連絡を無視した挙句FOX小隊に任せなかった結果、俺とヴァルキューレ、公安局の手を余計に煩わせた。よってプラマイ−だ。バカども」
「「隊長……」」
『さっきから!俺を無視するんじゃあないゼ!!』
「あ"?立てるのか。俺は今体調が最悪なんだ。3秒やる。地を這って大人しく豚小屋へぶち込まれろ、うすらトンカチノッポ野郎」
「口悪っ……てか、余計に刺激するなってば!」
『目の前の悪に罰を!正義を執行するのが俺のやり方だゼ!!正義執行の邪魔をするお前も悪だゼ!!』
「隊長!!」
「どっちもうるせぇ」
くいんっ、バゴォンッ!!
『あ"ぇ"……?』
いなされた腕が矛先を変えてセント自らの顔面を破壊する。いなした瞬間、相手の拳を加速させる技術による一撃でセントの残りの体力を奪うには十分な程の一撃が与えられる。
「馬鹿が」
ギリリッ……!!
『あっ……!ゴァッ……!』
飛びかかってフロントネックで頚椎を締め上げ、抵抗するセントを痛みで押さえつける。
しかし、セントは締め上げられたまま起き上がり、フブメを自分ごと叩きつけようと身体を振るう。
『最後に勝つのは……!いつだって正義なんだゼ!!!』
しゅるんっ……
『あぁっ!?』
フブメは全身を脱力し、一瞬のうちにセントの股下をすり抜けて背後に立ち、後ろの襟首を掴んでセントの言葉を肯定する。
「そりゃそうだろ。いつだって"勝者"が正義だからな」
『うぉぉっ!!?』
バゴォ゙ォンッッ!!!
膝裏を蹴り飛ばして体勢を崩してそのまま捻り、背負投げの要領で自分より遥かに大きな体躯のセントを地面に投げ叩きつける。
「うっわ痛そ……」
頭が埋まったセントはピクピクと痙攣した後に気絶して動かなくなり、ヴァルキューレの生徒達は一瞬呆気に取られていたものの即座に拘束しにかかる。
「はぁ"、余計な体力を使った……」
(明らかにあの二人とレベルが違う。最悪な体調で、二人の尽力で弱っているとはいえ、九囚人の一人をこうもあっさりと……!)
蛇尾フブメ、SRTスネーク小隊の隊長。
過去、皇ミカドによる大規模ヘルメット団鎮圧作戦時に降伏と共に懇願、そのままSRT所属となる。
基本的には隠密、偵察が主軸となる部隊だが、フブメは彼の特性ゆえ単独作戦が多く、彼単独での作戦成功率、驚異の100%
「何はともあれ、これで解決だな。後日改めて……何をしてるんだ?」
「俺が良いと言うまで腕を上げ続けろ」
「はい……あの……俺達頑張って……痛くて……」
「あ"?今口答えしたか?」
「め、めめめ滅相もございません!」
カンナが労おうとした二人はフブメによって罰を受け続ける。小隊内のことに関与しないようにとカンナはスイーツ部達の方に話を聞きに行く。
「無事とはいい難いが……もう少し待ってくれ、救急隊が到する」
「あ、ありがと……」
「はぁ……疲れた……」
「私は無傷です、それよりナツちゃんとカズサちゃんを……!」
「分かっている。詳しい話は終わってから聞こう」
『正義……正義を……!』
ひとまずといった様子で5人の無事を確認する。
セントは捕らえられ、可能な限り厳重な拘束を行われたうえで護送車が到着する。運ばれる中でもうわ言のように呟く彼にある意味で関心しながら彼は運ばれていった。
第9話
[皆大変だったみたいだね]
「ほんとにね」
数日後、怪我と疲労で保護された5人は少しの検査を受け、問題ないと解放された。そして今日はその騒ぎを聞きつけた先生の奢りでスイーツを食べるレイサ含むスイーツ部の一行。
「結局、なんだったのよアイツ」
「九囚人の一人だってさ。情報に疎過ぎるのも考えものだね」
「そっちもそうだけど、あの人よ。あのやたら強かったSRT。最後は一人で片付けちゃった」
[私も会ったのは一度だけだからね。詳しくは直接聞いてみれば良いんじゃないかな?]
先生はそう言って椅子を軽く引いて、気配を消していた彼を席へ促す。
「……貴方、何者なんだ?」
「うわ出た」
「失礼だな、杏山カズサ。あぁ、俺はコーヒーを、砂糖は二つでミルクは一つ」
座った彼は店員に注文して当然のように座る。
「何で座ってんの?」
「駄目か?」
「……まぁいいけどさ」
やがて運ばれてきたコーヒーを啜りながら、フブメは口を開く。
「さて、改めて一応個人的な謝罪を。すまなかった。我々の行動の遅さが招いた不始末だ」
「は?今そんな雰囲気だった?」
「そうじゃなかったとしても、俺には謝罪の義務がある。実際に俺の部下の不手際だったわけだ。あの二人には厳罰と、俺には今回の件を全て解決せよとの任務が下った」
「解決……?したんじゃないの?」
「詳しくは話せないが、後ろに何かいる。何か情報はないか?何でもいい。奴は何か言ってなかったか?例えば所属や、人名。信念でもいい」
「信念って、アイツ正義ってしか言ってないし」
「うぅん、あの時は皆必死だったからね」
「……あ、"理想正義部"って言ってたかも……?」
アイリの自信なさ気に呟いた言葉に、フブメは顔を曇らせて呟く。
「…………あ"ぁ"やっぱりか……はぁ"……クソが……」
「なに、なんかあるの?」
「いや……言うわけにはいかん。お前達が首を突っ込むような質ではないだろうが、余計にこと広げるものでもない」
「まぁそうね。興味ないし」
「あまり関わりあいにはなりたくないね」
「うん……ちょっと私もごめんかも」
「だろう。だから、今回の件は忘れろ。覚えておくとすれば、少しは世間の情報に敏感になっておけ」
「アンタは?」
「俺はSRTだぞ。身を粉にしてでもお前達を守るのが役目だ」
「ふ~ん……不良潰しまわってた頃から随分変わったじゃん」
「ふん、お前もな。随分可愛らしくなった」
「はぁ!?」
「この程度の言葉で照れんな。それじゃあな。先生も、あまり根を詰めないようにしてください」
不意のフブメの言葉にカズサは声を荒げたが、フブメは自然な仕草で席を立ち、机の中央の伝票をひらひらと振りながらレジへ歩いていった。
「あ、お会計……」
[えぇ!?私が払うよフブメー!]
先生の言葉を聞こえないふりをして迅速に会計を済ませて彼は外へ行ってしまった。
「行っちゃった」
「……まぁ、これもSRTからの謝罪ということなんだろう。甘えようじゃないか」
──ー
(あいつらお嬢様校だったな……高っけぇ……)
フブメは財布をしまって落ち込みながらも人目を避けて路地裏から建物の屋上へとパルクールの要領で壁を蹴って呟き、上司へと報告する。
「理想正義部……木更津キョウヤか……。面倒くさい相手だな……」
【こちらスネーク1、例の事件についての足取りが掴めました】
【ご苦労。引き続き単独で任務を進めてくれ。例の条約も近い……可能な限り、最短で頼む】
【了解。武装の為に一度拠点へ戻ります。早くて三日後に作戦を開始します】
【了解だ、武運を】
「さて……始めるか」
──ー
フォルセティ往和学館、執行部部室
「諸君。同胞、セントが捕まってしまった……実に不安で、嘆かわしく、悲劇で……幸運だ!」
壇上でスタンドマイクを振り回して大げさな仕草で演説をする、金髪に刈り上げた紙、大きな赤いマントを翻す男。
理想正義部部長、木更津キョウヤ
「偽物の平和をもたらすヴァルキューレ、SRT、皇ミカド、そして……斑間オキナ!!!」
ダンダンダンッ!
ハンドガンで口にした名前の生徒たちの写真を撃ち抜き、スタンドマイクを放り投げる。
「表も裏もあるから世界は壊れてしまう!!なればこそ……我々が一度全てを平らにならしてしまおう!全ては、理想の正義の為に!戦争だ!!」
ォォォオオオ!!
男子校故の男子生徒達の決起集会。掲げられた左腕には、五芒星の上からバツマークが描かれていた。
──ー
ハイエナ商会、執務室
【と、言うわけですが、いかがします?】
【いかがかぁ……放置でいいよ】
決起集会に潜入していた一人の部下が斑間に報告し、机に積まれた書類を片付けながら話を聞く。
【よろしいので?】
【構わないとも。それよりご苦労だったね。今日はもう帰って休むといい。渡り廊下から出た所に抜け穴がある】
【は、はい】
「木更津キョウヤね……懐かしい名前だ。覚える価値もないと思っていたが、リリースした小魚はいずれ大魚となるものだね」
「良いのですか?大魚と言う程の人間を放っても」
「良いんだ。私の"眼"がそう判断した。さ、準備しようか。上手いこといってくれるといいんだがね」
「……留守はお任せください」
「頼りにしているとも、私の可愛い家族達。各自地区のリーダー達への共有、ヴァルキューレへの内部潜入、やることが山積みだ。だが、やらねばならない……キヴォトスの平和の為に、ね」
"BMの覇者"斑間オキナ、キヴォトス全土の裏の支配者。
正義と言う名のデモニッション〜tobeContinued〜
和望セント君。
モデルは某仮面ライダーです。中身は全く違いますが。
兄からオススメされて最近一緒に全話見ました。面白かったです。