準備を整え、一同はアビドス砂漠へと向かう。
未だ全快ではないハクヤ、各校の協力に保留を繰り返されたこと。しかし、覚悟の決まった皆は一抹の不安を抱えつつも、アビドス砂漠のカイザーPMC基地の前へとフル装備で立つ。
「あそこに……ホシノ先輩が……!」
「取り返しましょう!」
「やってやるわ!」
「……あぁ。頑張ろう、皆」
重厚な扉の前に続々と集まるカイザーの私兵。この間の暴れっぷりを見たからか、増員され装備もさらに堅牢になっている。
「……
「かかってきなさいよ!」
先生の指揮とアヤネの支援。最高の援護を受けつつもダンクであるホシノが欠けた5人は苦戦を強いられる。
「やれ!あの
「白髪《しらが》じゃなくて
バガァンッ!!
ホシノの代わりを務めるハクヤだが、
それを4人は支えつつ、どんどんカイザー基地の中枢へと向かっていく。重厚なゲートが開き、事態の進展を願っていることを皆は察し、基地内にて迎撃する兵士達を薙ぎ倒していく。
ーーー
基地内、制御室
「あの忌々しいアビドスのガキ共め……!!!」
「い、いかがしますか……」
「基地内の全兵力、全兵器を動員!!アビドス自治区に建てている秘匿兵器工場からも兵力、兵器を動員!!こうなったら全身全霊で奴らを捻り潰せ!!!」
「了解しましたぁ!!」
ーーー
ガコン!!
「……何!?」
基地内にて続々と現れる兵士達と、街で戦った巨大な新兵器が何十台という数の姿を現す。
「あの兵器、昨日の……!!」
「待ってくれよぉ〜、その数は反則だろって……」
[やり切るしかないよ、皆!]
気合を入れ直し、生徒達は正面突破を試みる中、撃破と増援が間に合わずにどんどん劣勢へと追い込まれていく。
「くっ……!」
「ハクヤ君!」
「囲まれた!」
「シロコちゃん、正面突破の許可くれ。皆だけでも……」
「駄目。今のハクヤじゃ耐えられない。別の方法を……っ!」
「フハハハハッ!街中ならまだしも、基地内にてたった六人の無力なガキと先生に負けるものか!!まとめて、消し飛べぇ!!」
理事の怒号がアナウンスから流れ、主砲がアビドス生に向けてチャージされる。絶対絶命という言葉が脳裏をよぎる中、状況が覆る。
ドォンッ!ドドドォンッ!!
ボガァァンッ!!
「何!?」
「今のは……!?」
突然の榴弾砲による爆撃。並んでいた兵士達と兵器を数台破壊し、チャージを妨害したことにより最新兵器が一台暴発して爆発する。
「わ、私です……!」
防壁の上には、5の番号が書かれているいつかに見た袋をかぶった生徒と、金色の丸い瞳に真っ白な嘴の鳥の仮面をつけ、胸元がはだけたトリニティの制服と、耳に着けた大きな丸いイヤリング、手に持った指揮棒とSGが特徴的なもう一人の生徒の姿。皆がそれを認識した瞬間、袋の生徒は慌ただしく言い訳を始める。
「ヒフ……」
「はわわわ!私はファウストです!阿慈谷ヒフミじゃありませんし!今の砲撃は"
「……無理があるでしょ」
「ほ、ほんとに違うんです〜!!」
「んー。可愛いねぇファウストちゃん♡お姉さんに任せなさい。隊長も今頃頑張ってるから」
銃口を向けられながらもファウストを抱きしめ、頬ずりしながら余裕を見せる荷渡。
さらに事態は続いて好転の兆しを見せる。
「くっ!質量戦だ!詰めて押し潰せ!」
突撃しようとする兵器の先駆けを駆けつけたイオリが飛び蹴りを食らわせる。
「ふんっ。詰めたら勝てるとでも?」
「皆さん!無事ですか!」
「風紀委員の皆さん!」
「あら、ハクヤさん。随分と素敵な格好ですね」
「……お陰様で。助かりましたよ、行政官」
「ほんっと後輩のくせに可愛くないですね貴方」
「そりゃ失敬。そういうのはアオに言ってくれ」
「アオは今別件よ。アビドス校、間に合ったようね」
[皆!来てくれたんだね!!]
膝をついて呆けるハクヤに手を差し伸べて皮肉を言うアコに、そっぽを向きながらぶっきらぼうに礼を言うハクヤ。しかし、どんどん集まる兵力にしばしの狼狽えを見せる。
「風紀委員に謎の兵力の追加……だからなんだ!アレを見ろ!!」
理事のスピーカー越しの声に、一瞬方向を見失う生徒達は、やがて空を見上げる。
一基の巨大な飛行船が基地へ近づいていた。
「なんでもアリだなおい」
「フハハハ!!見よ!これが総資産1.5兆円をかけた最新兵器輸送空艇!む、通信が入ったぞ。折角だ、貴様らにも聞かせてやろう、現場で備えている我が兵士達の声を!こちら基地本部、どうした!」
理事が繋げたスピーカー。固唾をのむアビドス生達は次の声を聞いて素っ頓狂な声をあげる。
【ぜ、全滅でず……】
「……は?」
【兵器工場、1号はゲヘナ風紀委員1人に制圧……二号は鴉の仮面を被った執事服の男に壊滅……三号は……連邦生徒会の1人に壊滅後、既に出発した飛行艇に侵入、内部の製造レーンも機材もデータも壊滅状態です……!】
「?……??は?待て……待て待て待て!!!!たった三人に 我が社の兵器工場が全て落とされたのか!!!??」
【全滅です……】
プルルルッ
「アオ、お疲れ様。悪かったわね、謹慎中に」
【気にしないでください委員長。大したことじゃありませんから】
「……とんでもないサプライズだな……」
「隊長はこの後いかがなさいます?」
【勿論そちらへ。負傷者の皆様の救護へ向かいます。荷渡はそのまま援護を続けてください】
「承知しましたわ♡」
「あの執事、やっぱり強かった」
「……え、じゃああの飛行艇どうなってるの!?」
[大丈夫。彼が来たんだ]
ヒュルル……ドンガジャァァッッン!!!
生徒達が見上げる飛行艇は徐々に傾き、避難した兵士達が守っていた第2ゲートを圧倒的な質量で破壊する。
ゲートの先へと生徒達は向かい、本部の前へと到達する。
そして、完全に墜落した飛行艇が上げた砂煙の中から、こほこほと少し咳き込みながら、完全装備のミカドが姿を現す。
「連邦生徒会。特務攻撃室室長、皇ミカド、着任しました。お待たせ致しました、先生」
[ミカド!来てくれると思ったよ!]
「少々手こずりましたが、友人達の手伝いで手早く済みました。それと……久し振りです、ヒナ、アコ」
「……えぇ」
「…………」
「え、知り合い……?」
「連邦生徒会ぃ!なんの権限があって我が基地へ来た!?」
理事が痺れを切らし、先日の最新兵器へ搭乗して直接姿を現し、ミカドへ銃口を向ける。投げかけた疑問をミカドは用意していた書類をばら撒いて淡々と処理して答える。
「アビドス校への借金はキヴォトスの金銭消費貸借契約、総量規制、貸金業法。それら全てに違法しています。無論、財務室長扇喜アオイに確認済み。また、砂漠での活動に関する業務報告書に関する偽造、先程墜とした飛行艇を含めた兵器製造規定の違反。交通室長由良木モモカにも確認したところ確実に違反です。そもそも製造記録も残ってませんでしたから、業務情報提出規定にも違反していました……もっと必要ですか?貴方をしょっぴくのには、充分な量の罪状かと思いますが」
「グゥゥッ!!ふざけるなこの、所詮社会の部品である小僧如きがぁ!!!」
「危ない!連邦生徒会の人!」
「……ふざけるな?」
ジュヴッ……バジュゥゥゥツッッ!!!
主砲をミカドに向けて発射するが、ミカドはその場から一歩も動くことなくその一撃をその身に受ける。
「フハハハ!!……ハァ!?」
バサァッ!
直撃し、完全にミカドを倒したと思い込んで高笑いをあげる理事を嘲笑うかのように、彼はそこにたなびく白いコートと共に先程と変わらず、僅かな傷で立っていた。
「それはコチラの台詞だ、カイザー理事。彼女達の眩く透き通るような美しい青に、お前のような程度が低く汚い黒が土足で踏み入るんじゃない」
ダダダンッ!!!
「今度は何だ!?」
「待たせたわね、アビドス!」
「便利屋!!」
[やっぱり来てくれたんだ!ありがとう!]
「……ミカドもいるんだね。過剰戦力……って、わけでもなさそうか」
突然の銃撃の後、便利屋達が颯爽と登場する。カヨコはボソリと呟く中、アルは戦闘に立ってアビドス生達に言い放つ。
「ここは私達に任せて先に行きなさい!!」
「わぁ、アルちゃん、それは惚れちゃうよ〜」
「恩に着る、ありがとう!行こうみんな!」
便利屋、トリニティの精鋭、風紀委員達が援護しながら先生とアビドス生達を本部へ送り届けようとする。
「ぐぅッ!!いかせん!行かせんぞォ!!」
「くっ!」
「ハクヤ、止まるな!!!」
「ッ、ミカドさん!」
兵器達を総動員し、主砲をアビドス達に向ける理事の機体を蹴り飛ばすミカド。それに応えながらハクヤは前衛となりながら本部への侵入に成功する。
「くぅぅ!!本部内全兵!出逢え!!」
「特攻室長の特権行使を宣言。敵をカイザーPMCの兵器、及び私兵と認め、またその破壊、鎮圧を目的とした戦闘を行います」
「やってやるわよ皆!!」
「急ぎなさい、アビドス……!」
「はわわっ……頑張りますー!!」
PMC基地内
「ぐゎあー!」
「こっちじゃない!?多分こっち!」
[セリカ、こっちだよ!]
道に迷いながらも先生はアロナに頼んでいた本部内マップのルーシ指示に従って皆を誘導する。
[あの扉の先だ!]
ズダダダッッ!!
「硬い!?爆薬まだ残ってますか!?」
「んなもんいらねぇ!!」
EXスキル
ー
「開かぬと不平を嘆くよりぃ!!」
「え、先輩!?」
ハクヤは一発ショットガンを自らのバックラーに撃った後、バックラーを前にして皆の銃撃の前に飛び出す。
「進んで扉を開きましょぉぉう!!どりゃぁぁああ!!!」
「やばい、皆離れて!!」
ガィィィンッッ……
[不発……?]
「違います!もっと離れて下さい皆さん!先生は私達の後ろへ!!」
「えっえっ?何が起きるの!?」
「あわわわわっ!?」
キィンッーヂュドォォォォンッッッツ!!!
急いで道の角まで走り離れた5人。バックラーに仕込まれた特殊な配合の改造サーモバリック爆薬、衝撃を加えることで収縮する形状記憶超合金のバックラーの中で爆ぜ、瞬間的に開くバックラーの隙間から大爆発を引き起こして前方に大きな衝撃を加える。その原理で自爆しながら扉を無理矢理破壊し、ハクヤはボロボロの状態でアドレナリンによるトリップ感覚で大笑いしながら瓦礫を蹴り飛ばす。
「シャァアアア!!開いたぁあああ!!!」
「馬鹿!!本当に馬鹿!!でもありがとう先輩!」
「ん、ハクヤ、帰ったら怒る」
「お説教が二人に増えちゃいました!」
「先輩すいません!ありがとうございます!」
[目……目がイってる……]
開けた扉の先には、光学的な戦が走る機械的な部屋。
その中央には、黒い糸で縛られているホシノ。しかし、やはり不本意だったのか彼女の口には猿轡がされており抵抗したのか縛られている手首には痛々しい跡がついている。
「ホシノ先輩!!」
「んむむぁ!!」
ボォンッ!!
[!?]
「爆発!?道が……!」
「シロコォ!!歯ァ食いしばれぇ!!」
ハクヤの合図と同時にシロコもそれを察してハクヤのバックラーに飛び乗り、ホシノの元まで全力で飛ぶ。
ビギィッ
「ンンンッッ!!」
反動で腕の骨が完全に折れ、ハクヤは痛みで絶叫を噛み締めながらも視線はそらさない。その間にシロコはホシノを縛る黒い糸を斬り離してホシノを助ける。
「皆やっぱり来てーー」
「ごめんホシノ先輩、それは後で」
「うへっ!?」
「先生!!ハクヤはもうダメだからお願い!」
[任せて]
念の為に持ってきていたロープをホシノのドローンに括り付けて飛ばし、二人はそのロープを掴んで破壊された橋へ飛び出す。
「ホシノ先輩!シロコちゃん!!」
「二人とも、速く!」
「先輩方!!」
「間に合う!!」
「ホシノ!シロコ!!飛び込んできて!!」
PMC基地
「他に、怪我をされた方はいらっしゃいませんね」
先程合流したミヤビは怪我をした生徒やPMCの兵士達に治療を施して回り、ついでに来たアオは本部の方を確認している。
「敵まで手当てする必要があるのか?トリニティのえっと……ミヤビだっけ」
「そうですね……私は愛とは与え、還り、巡るものだと考えています。要してしまえば、自己満足のようなものです」
「隊長も飽きないわね〜♡そんなことより、可愛い子ちゃん達を愛でましょう?こんなに沢山の学校の子達がいるんですもの」
「私は遠慮させていただきます。……そろそろでしょうか」
「……お、来た来た!アビドスがホシノさん連れて脱出してる!」
アオの状況確認に、協力した皆は胸をなで下ろして息をついた。
ーーー
その後、後日に改めてお礼する旨を伝えてその場を離れたアビドス生。
ミカドは理事を自身の持つ権限で完全ではないものの法的に裁くことを約束。
風紀委員とトリニティの生徒達は皆、静かにその場を跡にしていた。
アビドス砂漠
「皆……助けに来てくれたんだね……」
「当たり前。先輩が無事でよかった」
「先輩おかえりぃぃ!!」
「あ!ずるいですセリカちゃん!恥ずかしいって言ってたのに真っ先に〜!」
「うぅるさいわね!」
「はは……おかえり、ホシノちゃん」
「おかえりなさい、ホシノ先輩!」
「おかえり……ホシノ先輩」
「おかえりなさい!ホシノ先輩★」
「ホシノ……おかえり!」
「……これは、もしかしておじさん、あの台詞を求められてるのかな〜?」
「分かってるなら早く早く!」
「うへへぇ……皆……ただいま!」
先生とアビドス生達が微笑ましくホシノの帰還を喜ぶ中、それを面白く思わない人物が遥かな遠方から失敗を噛み締めていた。
『終わらせませんよ……本番はここからです!!さぁーー』
ドブヂュグッ!!
『ガボッ……!?貴方は……炎……帝……!!』
タキシードの胸を、ミカドの杭撃槍の先端が貫通する。
「聞いてなかったか?土足で踏み込むなと。どうせ"義体"のくせに痛がるふりはやめろ。不愉快極まりない」
『フ……フッフフ……ごぶっ……分かりました、今回は……諦めましょう……次をたのしーー』
バァンッ!!
言い切る前に頭を杭撃槍で殴って吹き飛ばし、サラサラと砂のように壊れ散るタキシードを見届け、ミカドはその場を去った。
対策委員会編第二章 黎明を迎えにー解決ー
「こうして、アビドスの生徒達は小鳥遊ホシノという太陽を…黎明を迎えたのでした、めでたしめでたし。先生、お見事でした。しかし…その有り様を見て、私は万事解決だったなどと思えません」
真っ白の空間。異空間と言えばそうかもしれない。現実とも思える。しかし、どこか夢現の先生は胸を抑えて膝をつき、肩で息をしながら頭を地面に擦り付け、何度も叩きつけながら狂気を抑え痛みに悶えている。
「先生が今回振ったダイスは300回以上。いくら壊れないとはいえ、その精神性には文字通りに正気を疑います」
目の前の少女は銃を撫でながら、どこか遠い目で先生を直視することなく言葉を淡々と紡ぐ。
「ぁ"あ"っ…!」
「良かったですね。先生が望んだハッピーエンドですよ。まだ一幕目ですが」
「ぐぅ…!」
苦しみながら、悶えながらも先生は立ち上がる。
「もういい加減にやめませんか?これだけやって、救えたのはたったの6人。疲れたでしょう?苦しいでしょう?辛いでしょう?これからもこんなことが無限に続いてくんですよ?奇跡を作ることがいかに難しいか理解ったでしょう?でも、抜け出すのは簡単なことなんですよ、貴方が、賽を振らなければ良い。たったそれだけ。それだけで、先生は自分を含めて全ての生徒をーー」
「ぞれだと…!!ぎみ"を!!す"ぐぇ"なぃ!!」
「……」
「もゔ…ずごし…待っでて…!」
「……どうせ記録になど残りません。どうぞ、次のお話へ。扉は向こうです」
「ハァッ…!必ず…助けるから…!!」
ギィィッ…バタンッ!
「……出来れば、もうこないで下さい…先生…」
椅子のの上で蹲る彼女の瞳に伝う涙。歪な旅路を先生は送っている。その全ての根源に、歪みきってしまった彼女の神秘があった。