コングの挑戦   作:マウスブン

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フランス戦5

コングのアシストから千切が叩き込んだ劇的な同点ゴール。イングランドの選手たちとサポーターが歓喜に沸く一方で、フランス『P・X・G』の選手たちの間には、重苦しい沈黙と、隠しきれない動揺が広がっていた。リードを奪いながら追いつかれ、絶対的エースの凛は負傷交代から戻ったばかりで本調子とは言い難い。さらに、守備の要であり、ピッチ上のまとめ役でもあった烏までもが疲労で交代。チームは明らかに混乱し、脆さを見せ始めていた。

 

交代で入ったばかりのボランチ二人は、まだ試合の激しい流れとイングランドの嵐のようなプレスに翻弄されており、効果的なプレーができていない。士道も凛も相変わらず自由奔放で、チームの状況などお構いなしといった様子だ。このままイングランドの勢いに飲み込まれてしまうのか…。選手たちの顔に、そんな不安の色が浮かび始めていた。

 

しかし、その混乱の中心、中盤で静かに戦況を見つめる一人の選手だけは、全く異なる感情を抱いていた。司令塔、シャルル・シュヴァリエ。彼の表情からは、試合序盤に見られたような退屈の色は完全に消え去っていた。むしろ、その透き通るような瞳は、目の前で繰り広げられる混沌とした状況を分析し、何か面白いパズルを解くかのように、生き生きとした輝きを放っていた。口元には、かすかな笑みさえ浮かんでいる。

 

(面白い…実に面白い、マンシャイン・シティ。そしてクリス)

 

シャルルの頭脳は、この状況を冷静に分析していた。イングランドの戦術変更は見事だった。プランAのリトリートでフランスの体力を奪い、油断させたところで、プランBのストーミングで一気に畳みかける。効果的な戦術だ。特に中盤の要であり、守備の潤滑油でもあった烏がいなくなったことで、フランスの守備組織は明らかに機能不全を起こしている。

 

(だが…)

 

シャルルの思考は、天邪鬼で悲観的には傾かない。

 

(この混乱、このカオス…悪くない。むしろ教科書通りの綺麗なサッカーより、よっぽど僕好みだ)

 

彼は、混乱している味方の動き、勢いに乗って前がかりになるイングランドのプレスの僅かな隙間、そして予測不能な動きをする凛や士道といった「個」の力の中に、ある種の規則性、あるいは利用可能なバグのようなものを見出し始めていた。

 

(凛と士道はボルテージを上げて、あの二人の破壊力は健在だ。交代選手はまだ戸惑っているが、フレッシュな足はある。そして、イングランドのあの激しいプレス…この終盤に全員が長くは続かない、必ずどこかに致命的なスペースが生まれるはずだ…)

 

シャルルの頭の中で、バラバラに見えるピースが組み合わさり、新たな勝利への道筋、逆転のシナリオが形作られ始めていた。彼の表情が、単なる分析的な興味から、ゲームを支配するという確信へと変わっていく。彼は静かに息を吸い込み、次のプレーに備える。

 

 

 

同点に追いつき、勢いに乗るイングランドは攻撃の手を緩めない。プランB「ストーミング」を継続し、敵陣でボールを奪ってはフランスゴールへと襲いかかる。フィールドの至る所で激しいボールの奪い合いが繰り広げられ、中でもコングと凛のマッチアップは、互いに一歩も譲らない、まさに凶悪なまでの激しさを保っていた。攻守が入れ替わるたびに二人はぶつかり、意地とエゴを燃え上がらせていた。

 

イングランドの波状攻撃。玲王からのスルーパスを受けたアギが、ペナルティエリア手前から右足を振り抜く!ゴール隅を捉えたかに見えた強烈なシュート!

 

しかし、そのシュートコースに飛び込んできたのは、士道!彼はいつの間にか自陣深くまで戻っており、野生の勘とも言うべき反応速度でシュートコースに入ると、体を張ってボールをブロックしたのだ!攻撃だけでなく、守備でも予測不能なプレーを見せる。

 

「ちっ!」アギが舌打ちする。

 

こぼれ球に、最も早く反応したのは凪だった。彼がボールを拾えば、再び決定的なチャンスが生まれるかもしれない。凪もボール確保を確信していた。

 

しかし、それよりも一瞬早く、スッと影のように現れたシャルルが、凪の足元からボールを掻っ攫うように奪い取った!司令塔でありながら、この守備への貢献と反応の速さ。

 

ボールを奪われたことに気づいた千切が、すぐさまシャルルへプレスをかける。しかし、試合終盤、ストーミングによる激しいアップダウンを繰り返した彼の足は鉛のように重く、プレスへの反応が一歩遅れてしまっていた。

 

シャルルは迫る千切を一瞥すると、慌てる素振りも見せず、まるで時間稼ぎのクリアかのように、前線、イングランドDFラインの裏にある広大なスペースへ向けて、大きくボールを蹴り出した。力みのない、なんてことはないロングボールに見えた。

 

イングランドのDFは、その高く上がったボールの落下地点を予測し、余裕を持って対処しようと動き出す。

 

だが、次の瞬間、イングランドDFは信じられない光景を目にする。ボールが地面に落ちる寸前、その挙動が明らかにおかしかった。ボールには尋常ではないほどの強烈なバックスピンがかかっていた。芝生に着地したボールは、まるで意志を持っているかのように急激にブレーキがかかり、予測不能な角度で高く、そしてDFの頭上を越えるように跳ね上がった!

 

「なっ…!?」

 

イングランドDFは完全に意表を突かれ、裏を取られた!ボールは彼の頭上を軽々と越え、がら空きとなった背後のスペースへと転がっていく。シャルル・シュヴァリエが放った、一見平凡なクリアに見せかけた、恐ろしく計算され尽くした「魔球」。それが、一瞬にしてフランスに絶好のカウンターチャンスをもたらした。

 

 

 

シャルル・シュヴァリエが放った、魔法のような回転のかかったロングパス。それはイングランドDFの頭上を越え、がら空きのスペースへと転がっていった。そのボールに誰よりも早く反応し、猛然と走り込んだのは、フランスが誇るスピードスター、斬鉄だった!

 

完全に裏へ抜け出した斬鉄。他の選手たちは、攻守両面で必死にゴール前へと走り込んでいるが、斬鉄のスピードには到底追いつけない。彼はボールを拾うと、タッチライン際を駆け上がり、追いすがるイングランドDFを自慢の快足で置き去りにしていく。そして、ペナルティエリア内へと侵入した。

 

しかし、ゴールまでの角度はほとんど残されていなかった。斬鉄はそれでも、ニアサイドを狙って強引に右足を振り抜く!鋭いシュートがゴールを襲う!

 

だが、イングランドのゴールキーパーも冷静だった。しっかりとコースを読み、鋭い反応で横っ飛びし、そのシュートを両手で弾き出す!ファインセーブ!イングランド、最大のピンチを凌いだかに見えた。

 

しかし、GKが弾いたボールは、ゴール正面やや右、ペナルティエリア内へとこぼれた。そこに走り込んできたのは、途中出場でフレッシュなフランスMF、七星だった!彼はこぼれ球を拾うと、すぐにシュートは撃たず、一度落ち着いてボールをキープしようとする。

 

だが、イングランドDFもすぐさま七星へ厳しいプレッシャーをかける。シュートコースは完全に消され、パスコースも限定されている。その時、ゴール前まで猛然と上がってきた糸師 凛が、厳しい声で叫んだ。

 

「七星!こっちへ出せ!」

 

凛のすぐ横にはコングがぴったりと張り付き、自由を与えない構えだ。厳しいマークを受けている凛へパスを出すのはリスクが高い。しかし、プレッシャーを受けていた七星は、エースの要求に応えるように、凛へ向けてグラウンダーのパスを出した。

 

パスは凛の足元へ届く。しかし、受けた瞬間、コングが激しく体を寄せ、ボールを奪いに来る!試合での疲労に加え、試合終盤で踏み荒らされたピッチの芝生の影響もあったのか、凛の繊細なボールコントロールが一瞬乱れ、ボールがわずかに足元からこぼれてしまった!

 

コングとの激しい競り合いの中で、ボールは再びルーズボールとなる。ゴール前の混戦。

 

そして、まるでそこにボールがこぼれてくることを予期していたかのように、そのボールを拾ったのは、またしてもこの男、シャルル・シュヴァリエだった!攻撃の起点となったパスを出した後、彼もまたゴール前まで上がり、この混戦の状況を冷静に観察していた。

 

再びフランスの司令塔が、ゴール前でボールを持つ。周囲には敵も味方も密集している。イングランドDFは必死に体勢を立て直そうとする。シャルルは冷静に顔を上げ、このカオスの中から、勝利を手繰り寄せるための、次の一手を探し始めた。

 

 

 

ゴール前、ペナルティエリア角付近でボールを持ったシャルル・シュヴァリエ。イングランドの選手たちが必死に戻り、彼の周囲を囲もうとする。すぐさま玲王が鋭いプレスをかけ、自由を与えない構えだ。ニアサイドにはコングに厳しくマークされた凛、ファーサイドではアギと士道が激しいポジション争いを繰り広げている。パスコースは極めて限定されていた。

 

絶体絶命かと思われたその状況で、シャルルは冷静だった。彼は一瞬ゴールに視線を送ると、まるでファーサイドで競り合っている士道へパスを出すかのように、右足でボールを柔らかく、しかし速い弾道でゴール前へと送り出した。高く美しい軌道を描くクロスボール。

 

ファーサイドでは、士道とアギが互いに体をぶつけ合い、落下点に入ろうと必死に競り合っていた。イングランドGKも、ファーサイドへのクロスを警戒し、そちらへ意識を集中させる。

 

しかし、ボールがゴールへ近づくにつれて、その軌道は誰もが予想しない変化を見せ始めた。

 

シャルルが蹴ったボールには、再び強烈なカーブがかかっていた!ゴール前を横切るかと思われたボールは、急激に、そして鋭くゴール方向へと巻き込むように曲がり始めた!

 

「なっ!?」

 

ニアサイドにいた凛も、ファーサイドで競り合っていた士道とアギも、そしてゴールを守るイングランドGKも、その異常なボールの軌道に完全に意表を突かれた。GKは慌てて体勢を変え、逆方向へ飛ぼうとするが、あまりにもボールの変化が急激すぎる!

 

それはクロスではなかった。あるいは、クロスに見せかけた、ゴールを直接狙う魔球だったのか。

 

ボールは、誰の体にも触れることなく、まるで生きているかのようにゴールへ向かい、GKの手がわずかに届かない絶妙なコース、ゴールサイドネットへと吸い込まれていった――。

 

ゴォォォォォォォォル!!!!

 

静寂の後、スタジアムが爆発的な歓声に包まれる。3点目!フランス、勝ち越し!そして、これが決勝点となった!

 

ピィィィィィーーーーーッ!!

 

ゴールネットが揺れるのとほぼ同時に、試合終了を告げる主審の長いホイッスルが鳴り響いた。

 

スコアは フランス 3 - 2 イングランド。

 

フランスの選手たちが、信じられないといった表情でゴールを決めたシャルルのもとへ駆け寄り、歓喜の輪を作る。シャルル本人は、軽く肩をすくめ、「まあ、こんなものかな」とでも言いたげな、クールな表情を崩さない。しかしその瞳の奥には、このカオスなゲームを制したことへの確かな満足感が宿っていた。

 

一方、イングランドの選手たちは、力なくピッチに崩れ落ちた。コングも、玲王も、千切も、アギも、誰もが呆然とし、信じられないものを見たという表情で立ち尽くす。プランBで猛攻を仕掛け、同点に追いつき、あと一歩まで迫りながら、最後の最後で、フランスの司令塔が見せた魔法のような一撃に沈んだ。

 

激闘、死闘の末、勝利の女神が微笑んだのはフランス『P・X・G』。シャルル・シュヴァリエの放った、誰も予想しなかった一撃が、この壮絶な試合の全てを決着させた。

 

 

 

試合終了のホイッスルが鳴り響き、長かった死闘はようやく幕を閉じた。フランス『P・X・G』の選手たちは、劇的な勝利の喜びに沸き、互いを称え合っている。一方、イングランド『マンシャイン・シティ』の選手たちは、あと一歩及ばなかった悔しさに、あるいは極度の疲労から、ピッチに座り込んだり、呆然と立ち尽くしたりしていた。

 

コングもまた、悔しさを滲ませながら、相手チームの選手たちと形式的な握手を交わしていた。全力を出し切ったという感覚はある。しかし、結果は敗北。特に、最後のシャルルのゴール、そして凛との激しいマッチアップの記憶は、彼の心に強く刻み込まれていた。

 

そんなコングの前に、ふわりとした、掴みどころのない雰囲気で、今日の決勝点を挙げた張本人、シャルル・シュヴァリエが近づいてきた。彼の表情は、試合中と変わらずクールなままだった。

 

「Salut ! Kong, c'est ça ?(やあ、コング、だったかな?)」

シャルルはまるでゲームの感想を言うかのように、軽い口調で話しかける。

「Tes mouvements sont plutôt intéressants. Particulièrement ton physique... c'est comme un bug. Si le jeu d'aujourd'hui n'était pas ennuyeux, c'est sans doute aussi un peu grâce à toi.

(君、なかなか面白い動きをするね。特にあのフィジカルは…バグみたいだ。今日のゲームが退屈にならなかったのは、君のおかげもあるかな)」

 

彼はコングの反応を窺うように、少し意地悪な質問を付け加えた。

「À propos du but égalisateur... cette passe lobée, tu avais bien vu Chigiri (qui était démarqué) ? Ou bien tu as juste balancé le ballon devant le but et c'était un coup de chance ?

(同点ゴールの場面だけど。あのロブパス、ちゃんと彼(フリーの千切)が見えてた? それとも、ただゴール前に蹴り込んだだけの、偶然の産物だったのかな?)」

 

コングは、シャルルの言葉の意味を完全には理解できなかったかもしれない。だが、目の前の男が、自分たちの想像を超えるプレーで試合を決めた存在であることは理解していた。彼はシャルルをじっと見つめ返し、片言ながらも、強い意志を込めて答えた。

 

「……見えてた。アンタ、すごい。パスも、ゴールも。でも…次は、オレ、負けない」

 

その答えに、シャルルは「ふふ」と楽しそうに笑みを漏らした。

「Oui, j'ai hâte. On se refait une partie intéressante, d'accord ?

(そう、期待してるよ。また面白いゲームをしようじゃないか)」

そう言って、彼はひらりと身を翻し、チームメイトの輪へと戻っていった。

 

シャルルが去ったのと入れ替わるように、今度は別の、刺々しく研ぎ澄まされたオーラを放つ人物がコングの前に立ちはだかった。糸師 凛だ。治療を受けた彼の足は、本当に問題ないようだ。そしてその瞳に宿る闘志は、試合中よりもむしろ増しているように見えた。

 

「おい、猿」

 

凛の声は低く、抑えきれない敵意が滲んでいる。

 

「今日のところは、結果的に俺の勝ちだ。だがな…」

彼はコングを真正面から睨みつけ、言葉を続ける。

「お前を完全に潰せたわけじゃねぇ。あのふざけたフィジカルも、見て技を盗む猿真似も、気に食わねぇんだよ」

 

そして、彼は宣告するように言い放った。

 

「次は、容赦しねぇ。お前のそのデカいだけの体も、小賢しい学習能力も、全部まとめて、俺が完全に、ぐちゃぐちゃに潰してやる。せいぜい楽しみに待ってろ」

 

それは、明確な宣戦布告だった。凛は、コングを単なる邪魔な存在ではなく、打ち倒すべき明確な敵として認識したのだ。

 

その剥き出しの殺気と闘争心を受けて、しかし、コングは怯まなかった。むしろ、彼の口元には、挑戦を受けることを喜ぶかのような、獰猛な笑みが浮かんでいた。

 

「……おう」

コングは、力強く頷き返す。

「次、楽しみだ。オレも、お前、潰す」

 

互いのエゴが、再び激しくぶつかり合う。凛はフンと鼻を鳴らし、コングに背を向けて去っていった。

 

シャルルと凛。フランスが誇る二人の天才との邂逅。敗戦の悔しさとともに、コングの中には、次こそは必ず勝つ、そして彼らを乗り越える、という新たな、そしてより強烈な闘争心が燃え上がっていた。彼の成長は、まだ止まらない。

 

 

 

イングランド『マンシャイン・シティ』対フランス『P・X・G』の激闘が幕を閉じると、その熱気はすぐにスタジアムの外、そしてインターネットの世界へと広がっていった。SNS上では、「#ブルーロック」「#ネオ・エゴイストリーグ」といったハッシュタグが瞬く間にトレンドを席巻。中でも、この試合で強烈なインパクトを残したコングに関する投稿が、爆発的に増加していた。

 

「コングの同点ヘッドやばすぎ!烏がマークについてたのに、完全にパワーでねじ伏せたぞ!」

「あのフィジカルはマジで反則レベルだろ…スタミナも無限かよ」

「凛とのマッチアップ、バチバチで最高だったな!意地の張り合いがエグい」

「つーか、コング、あのアシストのロブパス何気に上手くね?ちゃんと周り見えてるじゃん」

「今日のMVPは凛かもしれんが、一番会場沸かせたのは間違いなくコング」

「ドイツ戦からどんだけ成長してんだよ…学習能力おかしすぎ」

「スプリント回数とかデュエル勝率とか、データ見てもヤバいらしいぞ」

「でも、まだテクニックは荒削りだよなー。そこが伸びれば手が付けられん」

「頼むから日本語もっと頑張ってくれw インタビュー何言ってるか分からんw」

 

称賛、驚き、期待、そして少しのイジり。様々な声が飛び交い、コングという存在が、ブルーロック、そして世界のサッカーファンの注目を急速に集めていることを示していた。

 

その注目は、ファンだけにとどまらない。世界各国のプロサッカークラブのスカウトや強化担当者たちも、コングのパフォーマンスを固唾を飲んで見守っていた。試合後、彼らの間で交わされる評価は、概ね以下のようなものだった。

 

「コング…やはり規格外だ。あのフィジカル(パワー、スピード、持久力)は、欧州のトップリーグでも十分に通用する。特に、試合終盤でも落ちないスプリント能力と、対人戦での圧倒的な強さ(デュエル勝率)は驚異的だ」

 

「ドイツ戦で見せた学習能力は本物だったな。クリスやノアの動きを即座に模倣し、今回のフランス戦では凛の基本テクニックさえ吸収しようとしていた。あの成長速度は計り知れない」

 

「MF(ボランチ)での起用も機能していた。守備範囲の広さ、ボール奪取能力は目覚ましいものがある。ゴール、アシストと結果を出した点も評価できる」

 

「しかし、課題が多いのも事実だ。ボールコントロールの精度、パスの判断、戦術理解度、周囲との連携…まだまだトップレベルとは言い難い。特に、あの強引なフィジカル頼みのプレーは、よりレベルの高い相手や老獪なDFには通用しない場面も出てくるだろう。コミュニケーションの問題も無視できない」

 

「どのポジションが最適なのかも、まだ見極めが必要だ。SB、CB、ボランチ、あるいはFWとして起用するのか…育成方針が重要になる」

 

「獲得には大きなリスクが伴うだろう。だが、それ以上に大きなリターンが期待できる『怪物』だ。育て方次第では、数年後には世界最高の選手の一人になっているかもしれない。争奪戦は避けられないだろうな…」

 

様々な評価、期待、そして懸念。それらが交錯する中で、ネオ・エゴイストリーグのシステムによって算出され、コングに提示された新たなオファー額は、前回の額を大きく上回り、5000万円という破格の数字に達していた。

 

それは、彼の現在の実力以上に、その計り知れないポテンシャルと、世界中の注目を集める話題性に対する、プロの世界からの明確な「投資」の意思表示だった。コング本人は、その金額の持つ意味をまだ完全には理解できていないかもしれないが、自分が世界から注目され、評価されているという事実は、彼のさらなる成長への渇望を、より一層強く掻き立てるのだった。

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