コングの挑戦   作:マウスブン

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イタリア戦4

クリス・プリンスの劇的なフリーキックが決まり、スコアは【イングランド 2 - 2 イタリア】。土壇場で追いついたイングランドの選手たちが歓喜に沸き、スタジアムのボルテージは最高潮に達した。試合は完全に振り出しに戻り、3点目を奪ったチームが勝利するという、真のサドンデスへと突入した。

 

しかし、その興奮も冷めやらぬうちに、場内に非情なアナウンスが響き渡った。ネオ・エゴイストリーグの特別ルールに基づき、途中出場したマスタープレイヤーの出場可能時間が、規定の3分を経過したというのだ。これにより、イングランドのクリスと、イタリアのスナッフィーは、両者ともにピッチを離れなければならない。

 

「えっ、もう終わりかよ!?」

「一番いいところだったのに!」

 

選手たちからも、観客からも、驚きと残念がる声が上がる。投入からわずか3分。しかし、その短い時間で、二人のマスターはそれぞれゴールという結果を残し、試合の流れを大きく変えてみせた。彼らの存在感は絶大だった。

 

ルールには逆らえない。クリスとスナッフィーは、互いに軽く視線を交わすと、それぞれのベンチへとゆっくりと歩き始めた。その道すがら、二人の稀代のマスターが、短い言葉を交わす。

 

先に口を開いたのはクリスだった。彼は試合の状況を楽しみ、そしてこれからの展開に期待するかのように、悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。

 

「Well, that showtime flew by, didn't it? But hey, now the stage is perfectly set. Alright, this is where the real football begins... No, scratch that. This is the beginning of an unpredictable, supremely exciting battle where the ultimate egoists try to crush one another!

(やれやれ、あっという間のショータイムだったね。だが、これで舞台は完璧に整ったじゃないか。さぁ、ここからが本当のフットボール…いや、最高のエゴイストたちが繰り広げる、予測不能で、最高にエキサイティングな潰し合いの始まりだよ)」

 

その言葉に対し、スナッフィーは表情一つ変えず、しかしわずかな皮肉と、あるいは冷めた諦観を込めて応じた。

 

「Mh... Ti riferisci a uno scontro dove ragione e tattica vengono meno? Se è questo che chiami 'football' e ti diverti a considerarlo uno spettacolo, allora complimenti anche a te, Chris.

(フン…理性も戦術も失われる戦いのことをか?それをフットボールと呼び、ショーとして楽しむなら、君も大概だな、クリス)」

 

選手個々のエゴの爆発と、予測不能な展開にエンターテイメント性を見出すクリス。あくまで戦術と理性を重んじ、それが失われた戦いを冷ややかに見るスナッフィー。二人のサッカー哲学の違いが、その短い会話の中に凝縮されていた。

 

彼らはそれ以上言葉を交わすことなく、静かにそれぞれのベンチへと戻っていく。ピッチに残された選手たちは、その背中を、疲労困憊の体で見送っていた。頼れるマスターはいなくなった。ここからは、本当に自分たちの力だけで、この死闘に決着をつけなければならない。

 

体力は限界に近い。思考力も鈍っているかもしれない。だが、勝利への渇望、ゴールへのエゴは、まだ消えていない。最後の力を振り絞り、運命の3点目を奪い取るのは、果たしてどちらのチームか。本当の意味でのサバイバルゲームが、今、始まろうとしていた。

 

 

 

 

クリスとスナッフィー、両チームの絶対的な支柱であったマスターがピッチを去り、試合が再開された。スコアは2-2の同点。どちらかが3点目を奪えば勝利という、究極のサドンデス状況。スタジアムのボルテージは依然として高いままだったが、ピッチ上の空気は、先ほどまでとは明らかに異なっていた。

 

イングランドボールでプレーが始まる。司令塔の玲王がボールを受け、前線へ繋ごうとする。しかし、普段ならば狂いもなく通るであろうパスが、わずかにコースを逸れてしまう。受け手の千切も、そのパスに反応しきれず、トラップしたボールが足元からこぼれてしまった。イタリアボールへ。

 

だが、ボールを奪ったイタリアも、決して良い状態ではなかった。中盤の底である二子が、味方の動き出しを見誤ったのか、あるいはキックの精度を欠いたのか、展開しようとしたパスは大きくずれ、あっけなくタッチラインを割ってしまう。ドリブルで打開を図ろうとするも、足がもつれたかのようにバランスを崩し、寄せてもいない相手選手にボールを奪われる。イタリアDFからのパスも、タイミングがずれて繋がらない。

 

ピッチ上で繰り広げられているのは、先ほどまでの技巧と戦術がぶつかり合うハイレベルな攻防とは、まるで別物の光景だった。パスミス、トラップミス、判断の遅れ、単純なボールロスト…。両チームともに、信じられないような簡単なミスが頻発し始めたのだ。

 

それも無理はなかったのかもしれない。試合開始から続いた、息詰まるような頭脳戦と、魂を削り合うかのような激しいフィジカルコンタクト。特に、両マスターが投入されてからの数分間は、選手たちの集中力と身体能力は、文字通り限界まで引き上げられていた。しかし、その絶対的な存在がピッチから去り、試合の異常なまでのテンションが一旦「平常」へと戻ったことで、それまでアドレナリンで抑え込まれていた心身の疲労が一気に噴出したのだ。

 

ゴールチャンスを待つ馬狼と、偶のポストプレー以外で動きが極端に減少した凪は体力が温存されており例外だが、多くの選手は思考は鈍り、視界は狭まり、体は鉛のように重い。たとえ頭では理解していても、体がイメージ通りに動かない。簡単なはずのプレーが、今の彼らにとっては、とてつもなく難しいものになっていた。

 

ボールの所有権は目まぐるしく入れ替わるが、どちらのチームも決定的なチャンスを作り出すには至らない。攻守の切り替えは依然として速いが、それは前向きな勢いというより、互いのミスによって強制的に引き起こされているかのようだった。消耗戦の果てに訪れた、泥仕合の様相。

 

このミスの応酬の中で、先に集中力を取り戻し、相手のミスを確実に突くことができるのはどちらのチームか。あるいは、疲労という名の重りを引きずりながらも、最後の力を振り絞ってゴールをこじ開ける「何か」が生まれるのか。予測不能な、しかしある意味で最も過酷な最終盤が、静かに続いていた。

 

 

 

そんな試合展開とは無関係に、この二人はまだ闘争を続けていた。コングとロレンツォの、互いを潰し合うかのような壮絶な消耗戦。どちらが先に根負けするか、あるいは一瞬の隙が生まれるか。ピッチ上の誰もが固唾を飲んで見守る中、先に相手を出し抜いたのは、イタリアの"エースイーター"だった。

 

ロレンツォは、コングとの激しいフィジカルコンタクトの直後、ほんの一瞬だけ生まれた間隙を見逃さなかった。巧みなボディフェイクでコングの重心をずらすと、その裏のスペースへと抜け出し、近くにいた愛空からのパスを呼び込む!

 

ボールを受けたロレンツォは、守備的な選手とは思えないほどの鋭さで、すぐさまイタリアのカウンターを発動させた!イングランド陣内へと、驚くべきスピードでドリブルを開始する!

 

「しまった!」

 

裏を取られたコングも、即座に反応する。信じられないほどの速さでターンし、猛然とロレンツォを追いかける!怪物とエースイーターの追走劇が始まった。

 

しかし、ロレンツォのドリブルは巧みだった。彼はコングの追撃を背中で感じながらも、巧みなステップワークと緩急をつけたボールコントロールで、疲労で足が止まりかけていたイングランドの中盤の選手を一人、また一人とかわしていく。ゴールが刻一刻と近づいてくる!

 

このままペナルティエリア内への侵入を許せば、決定的なシュート、あるいはラストパスに繋がってしまう。イングランドにとって最大のピンチ!

 

その危機的状況を救ったのは、イングランドの玲王だった。彼はロレンツォのドリブルコースを読み切り、ペナルティエリアに侵入される直前、その進路上に立ちはだかった。そして、チームを救うために、イエローカード覚悟で、体を投げ出すようにしてロレンツォをファウルで止めたのだ!戦術的ファウル!

 

ピィィッ! 主審の笛が鋭く鳴り響き、プレーが止まる。審判は迷わず玲王に駆け寄り、イエローカードを提示した。しかし、玲王のこのファウルによって、イングランドは決定的な失点の危機を免れた。

 

だが、代償は大きかった。イタリアに、ゴール正面やや右、約25メートルほどの絶好の位置からのフリーキックが与えられたのだ。体力はほとんど残されていない。これが、この死闘の勝敗を決する、最後のプレーになるかもしれない。

 

イタリアの選手たちが、期待を込めてフリーキックスポットへと集まってくる。ボールの前には、このチャンスを作り出した立役者であるロレンツォと、そして常にゴールを狙う「王様」、馬狼 照英の姿があった。

 

二人は視線を交わし、短い言葉で何かを話し合っている。その表情からは、互いに譲らない強い意志が感じられる。周りの選手たちも、どちらが蹴るのか、あるいは何か特別なサインプレーがあるのか、固唾を飲んでその様子を見守っている。

 

ロレンツォがそのテクニックで直接狙うのか? それとも、馬狼が王様たる所以を示す、強烈な一撃を放つのか? あるいは、全く別の、意表を突く作戦があるのか?

 

イングランドの選手たちは必死に壁を作り、GKも全神経を集中させてキッカーを睨みつける。スタジアム全体が静まり返り、イタリアのラストチャンスとなるであろう、このフリーキックの行方に、全ての視線が注がれていた――。

 

 

 

イタリアに与えられた、ゴール正面絶好の位置からのフリーキック。時間はほとんど残されていない。これが試合を決めるラストプレーになるかもしれない。スタジアム全体が息をのみ、ピッチ上の選手たちの緊張感は最高潮に達していた。

 

ボールの前には、このチャンスを作り出したロレンツォと、常にゴールを狙う「王様」馬狼が立っている。イングランドはコングやアギといった長身選手も含めて高い壁を作り、GKも全神経を集中させてキッカーを睨みつける。

 

ピィッ! 主審がキックを許可する笛を吹いた。

 

まず動いたのは馬狼だった。彼が力強い助走から、得意の強烈なシュートを放つのか――誰もがそう思った瞬間、馬狼はボールに触れることなく、そのままボールの横を走り抜けていった!フェイントだ!

 

その動きに、イングランドの壁が一瞬、ほんの一瞬だけ意識をそらされた。

 

その刹那の隙を見逃さず、ボールのそばにいたロレンツォが動いた。彼は直接ゴールを狙うのではなく、右足で、ふわりとした、しかし完璧に計算された軌道のロブパスを、イングランドの壁の上を越えてゴール前のスペースへと送った!

 

そのパスの落下地点には、誰がいるのか? 壁の選手たち、そしてGKが慌てて視線を送る。そこには、フェイントの動きから素早く反転し、壁の裏のフリースペースへと走り込んでいた馬狼の姿があった!ロレンツォからの完璧なタイミングでのピンポイントパス!

 

イングランド守備陣は完全に裏をかかれた!馬狼がフリーの状態で、至近距離からボールを受ければ、もはやゴールは決まったも同然だ。イングランド、万事休すか――!?

 

その絶望的な瞬間。

 

壁の後方、あるいは少し離れた位置で守備についていたコングが、信じられない反応を見せた。彼はロレンツォのキックの瞬間、そしてボールの軌道、さらに走り込む馬狼の動きを、その野生的な勘で読み切っていたのかもしれない。あるいは、ただゴールを守るという本能だけで動いたのか。

 

コングは、最後の力を振り絞り、その巨大な体を地面すれすれに投げ出した!まるでゴールを守る最後の砦となるかのように。

 

伸ばされた彼の足先が、馬狼の元へと落ちていこうとするボールに、ほんのわずかに触れた!

 

ワンタッチ!

 

ボールの軌道がわずかに変わり、馬狼の足元へと正確に届くはずだったパスは、その精度を失い、コントロールできない形で逸れていく!

 

「なっ!?」

 

馬狼も、そしてロレンツォも、信じられないものを見たという表情で目を見開く。

 

危なかった!! イングランド、コングの決死のダイビングブロックによって、土壇場の、そして絶対的とも思われた失点の危機を、紙一重で回避したのだ!ボールはゴールラインを割らずにGKが慌てて抑える。

 

ピッチ上の選手たちの動きが止まる。イタリアの選手たちは天を仰ぎ、イングランドの選手たちは安堵の息をつく。コングは汚れたままピッチに倒れ込み、荒い息をついていた。

 

 

 

コングの決死のブロックにより、イタリアの決定的なフリーキックを防いだイングランド。GKが素早くボールを拾い上げ、ゴールキックで試合が再開された。次にゴールを決めたチームが、この死闘の勝者となる。ヒーローとなる。

 

しかしそれを理解しながら相も変わらずピッチ上の選手たちの多くは、もはや限界寸前だった。足は鉛のように重く、呼吸は荒く、思考も鈍麻している。先ほどまでのハイインテンシティな攻防が、彼らの体力を容赦なく削り取っていたのだ。

 

だが、イングランドは前線へボールを繋ごうとする。中盤でコングが、味方からの少し乱れたパスを、その長いリーチとフィジカルで強引に収めた。

 

その瞬間、待っていましたとばかりにロレンツォがコングに襲いかかる!他の選手たちが反応するよりも早く、ピッチの中央付近で、再びこの二人の1対1の状況が生まれた。観客も、ベンチも、固唾をのんでこのマッチアップを見守る。

 

ボールを持ったコングは、パスコースを探すよりも先に、目の前の壁(ロレンツォ)を突破することを選んだ。彼は、その2メートル近い巨体からは想像もつかないような、素早いステップとアジリティを見せると同時に、大きなストライドを活かしたパワフルなドリブルを開始!力と速さで、ロレンツォを真正面からねじ伏せようとする、あまりにも強引な突破!

 

しかし、対峙するのは世界最高のDF、ロレンツォだ。彼はコングの直線的なパワープレーに対し、決して力で対抗しようとはしない。冷静にコングの動き、ボールのタッチ、体の軸のブレを観察し、完璧なタイミングを待つ。そして、コングがドリブルでわずかにボールを足元から離した瞬間、あるいは強引な方向転換で体勢がわずかに崩れた瞬間を見逃さなかった。

 

スッ、とロレンツォの右足が伸びる。それは、コングのパワーを受け止めるのではなく、ボールだけを正確に、そしてクリーンに刈り取る、熟練の技術が凝縮されたタックルだった。

 

ボールはロレンツォの足元へと収まる。経験と技術が、再び怪物のパワーを封じ込めた瞬間だった。

 

だが、ロレンツォは守備だけで終わる男ではない。彼はボールを奪うと同時に、すぐさま顔を上げ、前方のスペースを確認した。そして、イングランドの守備陣がまだ完全に戻りきれていないことを見て取り、すぐさまイタリアのカウンターを仕掛けようと、ドリブルを開始した!

 

攻守がまたしても一瞬で入れ替わる!ボールを奪われたコングも、悔しがる間もなく即座に反転し、カウンターを仕掛けるロレンツォを追いかける!

 

試合終了の笛が鳴るまで、この二人の壮絶な潰し合いは終わらないのかもしれない。フィールドの支配権を巡る、最後の戦いが続く――!

 

 

 

ロレンツォがコングからボールを奪い、イタリアのカウンターが始まったかに見えた。世界最高のDFが攻撃の起点となり、イングランドゴールへと迫る。誰もがイタリアの決勝ゴールを予感した。

 

しかし、ボールを奪われたばかりのコングは、決して諦めていなかった。彼は一瞬たりとも下を向かず、すぐさま反転すると、猛獣が獲物を追うかのような凄まじい勢いでロレンツォを猛追し始めた!そのスピードは、ドリブルで前進するロレンツォに勝るとも劣らない。みるみるうちに距離が縮まっていく。

 

ついにコングがロレンツォの真横、あるいはわずかに後方まで追いついた!ロレンツォも背後に迫るプレッシャーを感じ、ドリブルのコースを変え、コングを振り切ろうと試みる。

 

その瞬間、コングは動いた。しかし、それはいつものような、相手ごと吹き飛ばさんばかりの力任せのタックルではなかった。彼の脳裏には、ほんの数秒前に自分が受けた、ロレンツォのあのプレーが鮮明に焼き付いていた。ボールだけを正確に、クリーンに奪い取る、あの洗練された動き。

 

(こう……だったか!)

 

コングはロレンツォの動きの先を読み、ボールがわずかにロレンツォの足元から離れた瞬間を完璧に見極めた。そして、長い足をスッと伸ばし、ロレンツォの体ではなく、ボールそのものだけを的確に捉えたのだ!それは、先ほど自分が受けたロレンツォのディフェンスを、驚くべき精度で模倣したかのような、クリーンなボール奪取だった。

 

ボールの感触が足元から消え、予想外のタイミングでボールを奪われたロレンツォは、体勢を崩し、そのままピッチに転がってしまう。

 

すぐに起き上がり、再びボールを奪い返そうとするロレンツォ。だが試合開始からコングと繰り広げてきた壮絶なまでの消耗戦は、彼の鉄のような肉体にも、確実に疲労を蓄積させていた。立ち上がろうとした体が、わずかに、しかし明らかによろける。一瞬の、しかしこの土壇場では致命的ともいえる隙が生まれた。

 

その隙を、コングが見逃すはずがなかった。彼は奪い返したボールをしっかりとコントロール下に置くと、すぐさま顔を上げ、前方を向いた。そして、まだピッチに手をついているロレンツォを置き去りにして、今度はイングランドがカウンター返しを開始!

 

攻守が再び逆転!イタリアの選手たちは、カウンターに出ようとしていたため、守備の陣形が整っていない!コングがボールを持ち、がら空きに近いイタリア陣内へと突き進んでいく!イングランドにとって、そしてコングにとって、試合を決める最大のチャンスが、今、訪れた!

 

 

 

ロレンツォからボールを奪い返し、カウンターに出たコング!攻守が劇的に入れ替わり、イングランドに試合を決める最大のチャンスが訪れた!コングは、ロレンツォを置き去りにして、イタリア陣内へと力強く突き進んでいく!

 

イタリアの中盤の選手たちは、度重なる激しい攻防で完全に足が止まっていた。彼らはコングの力強いドリブルを、ただ目で追うことしかできない。後方からは、ロレンツォが必死の形相でコングを追いかけてくるが、その差は簡単には縮まらない。

 

このままゴールまで独走を許すわけにはいかない!イタリアの砦として立ちはだかったのは、MFの二子だった。彼はコングのドリブルコースを予測し、ファウル覚悟で、その足元へ鋭いスライディングタックルを敢行した!チームを救うための決死のプレー!

 

しかし、今のコングは止まらない!彼は二子のタックルを、まるで意に介さないかのように、強靭な体幹と驚異的なバランスで耐え抜いた!タックルを仕掛けた二子の方が、逆にピッチで横たわる。コングはファウルを受けてもなお、二子をも置き去りにしてさらに前進!

 

ペナルティエリア手前まで侵入したコング。後方からはロレンツォが猛追してくる。シュートを撃つか? コングは一瞬ゴールを見たが、次の瞬間、彼はゴール前で競り合う味方へ、ふわりとした、しかし正確なロブパスを選択した!

 

ペナルティエリア内、ボールの落下点では、凪とイタリアの長身DF蟻生が激しく競り合う!競り合いの中でわずかにコースが変わったボールは、ゴール前で体を張っていたアギの元へ!

 

アギの背後には、イタリア守備の要、愛空がぴったりとマークについている!アギはシュートを撃てない!しかし、彼は冷静だった。愛空を背負いながら、巧みにボールをコントロールすると、ゴール前中央へと走り込んでくる巨大な影――コングへ向けて、ヘディングでの完璧なリターンパスを送った!最高のポストプレー!

 

コングが走り込む!後方からはロレンツォも最後の力を振り絞って追いつこうとしている!だが、コングの方がわずかに早い!彼はボールの落下点に完璧なタイミングで入り込むと、追走するロレンツォを体でブロックするようにしながら、高く跳躍!

 

そして、全ての力を込め、ボールを頭でゴールへと叩きつけた!

 

ヘディングシュートは、イタリアGKが懸命に伸ばした手の先をかすめ、ゴールネットへと突き刺さる!

 

ゴォォォォォォォォル!!!!

 

イングランド、決勝点!!! スコアは【イングランド 3 - 2 イタリア】!!!

 

ゴールが決まった瞬間、主審の試合終了を告げる長く、そして高らかなホイッスルがスタジアムに鳴り響いた!

 

激闘、死闘の末、イングランド『マンシャイン・シティ』が、イタリア『ユーヴァース』を下し、劇的な勝利を掴み取ったのだ!

 

イングランドの選手たちは、ピッチになだれ込むように駆け寄り、決勝ゴールを決めたコングを中心に、歓喜の輪を作った!抱き合い、叫び、勝利の喜びを爆発させる。コングもまた、チームメイトにもみくちゃにされながら、雄叫びを上げていた。

 

一方、イタリアの選手たちは、力尽きたようにピッチに崩れ落ちた。ロレンツォも、コングとの長い、長い戦いに、ついに敗れたことを悟り、悔しさを滲ませながら天を仰いでいた。

 

戦術と野性、組織と個、エースイーターと怪物。様々な要素がぶつかり合った壮絶な一戦は、コングという規格外の存在が成長し、最後に試合を決めるという形で、劇的な幕切れを迎えたのだった。

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