コングの挑戦   作:マウスブン

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ハーフタイム~後半5分

U-20日本代表のロッカールームは、重苦しい沈黙に支配されていた。前半、ブルーロックに見せつけられた圧倒的な個の力と連携。そして、1-3という敗北濃厚なスコア。選手たちは皆、俯き、ロッカールームの床の一点を見つめているか、あるいは悔しさに唇を噛み締めている。U20監督も、厳しい表情で腕を組み、壁に寄りかかっていた。

 

そんな中、糸師冴だけは別だった。彼は一人、パイプ椅子に座り、冷静に、あるいは冷ややかにチームメイトたちの様子を眺めていた。そして、おもむろに立ち上がると、自分のバッグを手に取った。

 

「おい、冴、どこへ行く気だ?」

キャプテンの愛空が訝しげに問いかける。

 

冴は肩をすくめ、冷淡な声で言った。

「帰るんだよ。賭けはお前の負けだ、愛空。お前の集めたこのU-20とかいうガラクタじゃ、ブルーロックには勝てねぇ。正直、期待外れもいいところだ。こんな不良品どもと、これ以上付き合ってやる義理はねぇ」

 

その言葉に、ロッカールームの空気が凍りつく。何人かの選手が顔を上げ、怒りや戸惑いの表情を浮かべるが、冴の圧倒的な存在感と、前半の内容を考えれば、強く反論できる者はいなかった。

 

冴が出口へ向かおうとした、その時だった。

 

ガシッ!

 

力強い手に、冴の腕が掴まれた。振り返ると、そこには先ほどまで絶望に打ちひしがれていたはずのコングが、鬼のような形相で立っていた。

 

「…!」

冴は少し驚いた表情を見せる。

 

コングは、掴んだ冴の腕にさらに力を込め、片言だが、腹の底から絞り出すような声で言った。

「マダ…! オワッテナイ…!」

「…離せ、デカブツ」

「マケル…イヤだ…! オレ… PK…ミス…シタ…! ダカラ…オレ…トリカエス…!」

 

コングの目には、涙こそ浮かんでいないが、PKを献上した深い悔恨と、それでもなお燃え盛る闘志の炎が宿っていた。その真っ直ぐな瞳が、冴を射抜く。

 

そのやり取りを見ていたU20監督が、静かに口を開いた。

「…後半、カードを切る。FW、士道を投入する」

 

その名前に、何人かの選手が息を呑む。規格外のエゴと得点能力を持つ、予測不能なストライカー。彼が起爆剤となるかもしれない。

 

冴は掴まれた自分の腕と、コングの必死な顔を交互に見る。そして士道投入という新たな要素にも思考を巡らせる。しばしの沈黙の後、冴はフンと鼻を鳴らした。

 

「…まあいいだろう。少しは面白くなってきたかもしれねぇ。後半マシなものを見せてみろよ。特にそこのデカブツ、お前がどう『取り返す』のか、見せてもらおうじゃねぇか」

 

冴は掴まれていた腕を振りほどき、再び自分の席へと戻った。彼の言葉と、士道投入の決定、そして何よりコングの魂の叫びが、重く沈んでいたロッカールームの空気をわずかに変えた。絶望だけではない。反撃への、わずかな光が見え始めた瞬間だった。

 

後半、U-20は生まれ変わることができるのか。新たなエゴの投入と、覚醒の兆しを見せるジャングルの守護神。そして、全てを操る司令塔、糸師冴。反撃の準備は、静かに、しかし確実に始まろうとしていた。

 

ロッカールームにわずかながら反撃の意志が灯った中、監督が後半に向けた具体的な戦術指示を始めていた。士道の投入に伴うフォーメーションの変更、ブルーロックへの対策…。選手たちは真剣な表情で耳を傾けている。

 

その議論の最中、糸師冴が静かに口を開いた。彼の言葉は、再びロッカールームの注目を集めた。

 

「監督、一つ提案がある」

「…なんだ」

「そこのデカブツ…コングは、後半からボランチで使う」

 

「はあっ!?」「ボランチだと!?」

冴の突然の提案に、周りの選手たちから驚きの声が上がる。コング自身も、自分の名前と聞き慣れないポジション名に、キョトンとした表情を浮かべている。サイドバックとしてプレーしていた選手を、いきなり中盤の底(ボランチ)へコンバートするというのだ。あまりにも大胆すぎる提案だった。

 

愛空が問いかける。

「正気か、冴? コングは中盤の経験なんて…」

「だからいいんだろうが」

冴は愛空の言葉を遮る。

「サイドバックじゃ遠すぎて、俺の指示がきちんと届かん。俺の近くに置く。俺の言う通りに動けばいい。それで十分だ」

 

傲岸不遜な物言い。だが、彼のプレーを見れば、その言葉に有無を言わせぬ説得力があった。冴はコングの方へ向き直る。

 

「おい、デカブツ。よく聞け。お前の後半の仕事はシンプルだ」

「…? シゴト…?」

「そうだ。とにかく走り続けろ。攻撃になったら前へ、守備になったら後ろへ。相手のボールを奪い、味方に繋げ。それだけだ。いわゆる『ボックストゥボックス』ってやつだ。フィールドの端から端まで、お前のその有り余るスタミナで動き回れ。いいな?」

 

「ボランチ…? ボックス…トゥ…ボックス…?」

コングは困惑した表情で、冴の言葉を繰り返す。専門用語の意味など、半分も理解できていないだろう。攻守にわたって広範囲をカバーする、極めて重要な役割。それをいきなりやれというのだ。

 

だが、コングは迷わなかった。目の前の司令塔の真剣な(というより命令的な)眼差し。そして、何より「おれが取り返す」と誓った自身の言葉。意味はよくわからなくても、やるべきことは明確だった。冴の指示に従い、走り回り、ボールを奪い、勝利に貢献する。

 

コングは、力強く頷いた。

「…ワカッタ…! ヤル…! オレ…ハシル…!」

 

その返事に、冴はわずかに口元を緩めたようにも見えた。

「フン、景気のいい返事だけは一人前だな」

 

他の選手たちは、この奇策とも言えるコンバートに不安と期待の入り混じった表情を浮かべていた。ジャングルの野生児が、中盤のダイナモへ。糸師冴が描く後半のゲームプランの中心に、コングが据えられた。

 

「よし、配置は決まったな。各自、後半に向けて準備しろ! 必ずひっくり返すぞ!」

監督の檄が飛ぶ。

 

選手たちは立ち上がり、ロッカールームの扉へ向かう。コングも、新たなポジションへの戸惑いと、試合への決意を胸に、その後に続いた。後半、ピッチの中央で巨躯が暴れまわることになるだろう。それが吉と出るか、凶と出るか、まだ誰にも分からなかった。

 

 

 

短いようで長かったハーフタイムが終わり、両チームの選手たちが再びピッチへと姿を現す。後半戦開始のホイッスルが、スタジアムに鳴り響いた。

 

ブルーロックの選手たちは、前半のリードにも油断することなく、集中した表情でそれぞれのポジションにつく。しかし、U-20側の布陣を見て、何人かの選手が眉をひそめた。

 

「ん…? なんだ、あれ…」

最初に違和感に気づいたのは、常にピッチ全体を俯瞰している潔世一だったかもしれない。彼の視線は、フィールド中央に向けられていた。

 

前半、右サイドバックとして立ちはだかっていた、あの規格外の巨躯を持つ男、コング。彼が、サイドではなく、フィールドのど真ん中、ボランチの位置に陣取っているのだ。

 

「おい、あのデカブツ…ポジション変えてきたぞ!」

「ボランチか? 本気かよ…?」

ブルーロックの選手たちの間に、驚きと戸惑いの声が広がる。サイドでの圧倒的なフィジカルは脅威だったが、中盤でのプレーは未知数だ。何を狙っているのか?

 

さらに、U-20の前線には、後半から投入されたであろう、見慣れない顔があった。悪魔的な雰囲気を漂わせる、士道。彼の存在もまた、ブルーロックにとって新たな警戒対象となる。

 

(コングをボランチに、そしてあのFW…後半、U-20はかなり変えてきたな。)

糸師凛は、兄・冴の意図を探るように、冷静に相手の布陣を分析する。

 

潔もまた、「超越視界(メタ・ビジョン)」を駆使し、変化したU-20の狙いと、そこから生まれる新たな脅威、そして勝機を探り始めていた。コングのボランチ起用は奇策に見えるが、あの糸師冴が絡んでいる以上、何か狙いがあるはずだ。

 

ブルーロックの選手たちは、改めて気を引き締める。リードはしているが、油断は禁物だ。U-20が仕掛けてきた変化に、どう対応するか。

 

ピーーッ!

 

主審の笛と共に、ブルーロックのキックオフで後半戦の火蓋が切られた。フィールド中央に立つコングは、冴からの指示を胸に(完全には理解していないながらも)、新たな戦場での役割を果たそうと、鋭い視線をボールへと向けていた。波乱の後半戦が、今、始まる。

 

 

後半開始のホイッスルと共に、ブルーロックボールで試合が再開された。彼らは前半同様、流れるようなパスワークでU-20陣内へと侵入を図る。ボールは中盤、蜂楽廻へと渡った。

 

「さーて、後半も楽しんじゃおっかな!」

蜂楽がいつものようにトリッキーなドリブルを開始しようとした瞬間、その目の前に巨大な影が立ちはだかった。

 

「!?」

 

コングだ。ボランチの位置から、驚くべきスピードで蜂楽に詰め寄っていた。サイドバックの時とは違う、中盤での強烈なプレッシャー。蜂楽は咄嗟にフェイントでかわそうとするが、コングは愚直なまでにボールへ向かってくる。

 

(うわっ、圧がすごい!)

 

蜂楽はなんとかボールをキープし、近くの潔へとパス。しかし、ボールを受けた潔にも、すぐにコングが襲いかかる。

 

「させるか!」

コングは冴の指示を忠実に実行していた。「相手のボールを奪う」。その一点に集中し、有り余るパワーと瞬発力で、ブルーロックの中盤の選手たちに次々とプレッシャーをかけていく。ポジショニングやカバーリングといった細かな動きはまだぎこちない。だが、その圧倒的なフィジカルと、フィールドを縦横無尽に走り回る運動量は、ブルーロックにとって新たな脅威となっていた。

 

「なんだコイツ、どこにでも出てくるぞ!」

「中盤にいる方が、ある意味厄介かもしれん…!」

ブルーロックの選手たちは、予想外の場所に出現するコングの存在に戸惑いを隠せない。

 

そして、ついにコングがボール奪取に成功する。ブルーロックのパス交換の瞬間を狙い、長い脚を伸ばしてボールをカット。奪ったボールを、近くにいた糸師冴へと繋いだ。

 

「それだ、デカブツ!」

冴の声が飛ぶ。U-20の反撃開始だ。冴は前線を見る。そこには、後半から投入された士道が、まるで獲物を狙う獣のように、ブルーロックのDFラインの間をうろついていた。

 

冴から士道へ、鋭い縦パスが送られる。士道は予測不能な動きでDFのマークを外し、ボールを受けると、強引とも思えるドリブルでゴールへ迫る。シュートは惜しくもDFにブロックされたが、その破壊力と意外性は、ブルーロック守備陣に新たな緊張感を与えた。

 

そして、攻撃が終わると、コングは再び驚異的なスピードで自陣へと戻っていく。攻撃に参加したかと思えば、次の瞬間には守備に戻っている。まさに「ボックストゥボックス」。冴の指示通り、フィールドの端から端まで、その巨躯を動かし続けているのだ。

 

(コイツ…マジで走り続けてる…バケモンかよ…)

ブルーロックの選手たちは、コングの無尽蔵のスタミナと、忠実にタスクをこなす姿に驚愕する。

 

後半立ち上がり、U-20は明らかに前半とは違う顔を見せていた。コングのボランチ起用、士道の投入、そしてそれを操る糸師冴。ブルーロックのリードはまだ2点あるが、試合の流れは決して一方的ではなくなってきた。U-20の反撃の狼煙は、確かに上がったのだ。

 

 

 

コングのボール奪取から始まったU-20の攻撃。士道のシュートは阻まれたものの、U-20はすぐにボールを奪い返し、再びブルーロック陣内へと攻め込む。ピッチ中央、ボランチの位置でボールを受けた糸師冴は、まるでオーケストラの指揮者のように、冷静に周囲を見渡し、ゲームを組み立てていく。

 

その冴から、再びコングへ無言の指示が飛ぶ。アイコンタクト。今度は前へ行け、という合図だ。

 

(マエ…!イク…!)

 

コングは即座に反応する。ボールは受けていないが、彼は全力で前線へと走り出した。中盤の底から、相手ペナルティエリア近くまで、その巨躯が猛然と突き進む。ブルーロックのMFが対応しようとするが、コングの爆発的な推進力は止められない。

 

冴はその動きを見逃さない。コングが作り出したスペースと、彼のランニングに合わせて、完璧なタイミングでパスを送る。コングは走りながらボールを受け、さらに前進。ペナルティエリア手前で、DFを引きつけながら、ゴール前の閃堂へラストパスを試みる!

 

パスはやや強引だったが、閃堂がなんとかボールに追いつき、反転からシュート!しかし、これはブルーロックDFの決死のスライディングにブロックされる!

 

だがU-20の攻撃は終わらない。こぼれ球を拾い、再びサイドからクロス。ゴール前では士道がアクロバティックなボレーシュートを狙うが、惜しくも枠を捉えきれない。立て続けにブルーロックゴールを脅かすU-20。

 

そして、注目すべきは攻撃が終わった後のコングの動きだった。シュートが外れた瞬間、彼は誰よりも早く踵を返し、自陣のボランチの位置へと猛ダッシュで戻っていく。ブルーロックがカウンターを仕掛けようとしても、既に中盤にはコングの巨躯が立ちはだかっている。

 

(コイツ、マジでスタミナどうなってんだ…!?)

ブルーロックの選手たちは、コングの異常なまでの運動量と、攻守の切り替えの速さに舌を巻く。冴の指示通り、「ボックストゥボックス」の役割を、文字通り体現しているのだ。

 

ブルーロックも黙ってはいない。潔は「超越視界(メタ・ビジョン)」をさらに研ぎ澄ませ、コングの動き、そして彼を操る冴の意図を読み解こうとする。糸師凛も、時には中盤まで下がり、コングに直接プレッシャーをかけ、自由を与えないように動き始めた。

 

ピッチ中央での主導権争いは、後半に入り、さらに激しさを増していた。コングという予測不能な駒を得たU-20が、冴の指揮の下、確実に試合の流れを引き寄せようとしている。ブルーロックは、この新たな脅威にどう対応していくのか。両チームの戦術とエゴがぶつかり合い、スタジアムの熱気は高まる一方だった。

 

 

 

後半5分。激しい主導権争いが続く中、ブルーロックが一瞬の隙を突いてボールを奪い、カウンターへと繋げる。ボールは素早く前線、快足を持つ乙夜影汰へと渡った!

 

「もらった!」

 

乙夜はトップスピードに乗る。彼の俊足はU-20のDF陣にとって悪夢だ。ドリブルで中央を切り裂き、がら空きになったゴールへと迫る。U-20のDFが必死に追いすがるが、その差は開くばかり。ブルーロックに追加点のチャンスかと思われた。

 

だが、その時。後方から、地響きのような足音と共に、巨大な影が猛烈な勢いで乙夜に迫っていた。ボランチの位置から、信じられないスピードでスプリントしてきたコングだ!

 

(なんだ、あのデカブツ!? もう来たのかよ!)

 

乙夜が驚愕する間もなく、コングは乙夜の横に追いつき、並走する。そして、一切の躊躇なく、強引に体をぶつけ、バランスを崩させた!

 

「うおっ!」

 

乙夜が体勢を立て直そうとする隙に、コングは長い足を伸ばし、ボールをかっさらう。スピードスターのカウンターを、フィジカルモンスターが力ずくで阻止したのだ。その守備範囲の広さと圧倒的なパワーに、スタジアムがどよめく。

 

ボールを奪ったコングは、即座に近くにいた糸師冴へとボールを預ける。一瞬にして攻守が逆転。今度はU-20のカウンター返し!

 

冴はボールを受けると、流れるようなドリブルでブルーロック陣内へと切れ込んでいく。ブルーロックの守備陣が慌てて対応に戻るが、冴の動きは止められない。そして、冴は前線で動き出す悪魔、士道の姿を捉えた。

 

冴の視線と士道の動きが一瞬でシンクロする。冴の左足から、ブルーロックのDFラインの心臓部を貫くような、神がかり的なスルーパスが放たれた。数人のDFの間を、糸を通すように抜けていく、芸術的なキラーパス。

 

そのパスに、士道が爆発的な加速で反応した。予測不能なステップでDFのマークを剥がし、オフサイドラインぎりぎりでパスに追いつく。完全にフリーの状態で、GKと1対1!

 

「爆発(ドーン)だァ!!」

 

士道はGKの位置を冷静に見極めると、ゴール右上隅へと強烈なシュートを叩き込んだ!ボールはGKの手をかすめることもなく、ゴールネットに突き刺さる!

 

ゴォォォォォォォォォォル!!!

 

U-20、待望の反撃の狼煙となる2点目!スコアは2-3!ついに1点差!

 

コングのスーパーな守備から始まり、冴の魔法のようなパス、そして士道の悪魔的な決定力。まさにスーパープレイの連続が生んだゴールに、U-20ベンチ、そしてサポーターは総立ちで歓喜の声を上げる!

 

ゴールを決めた士道は、コーナーフラッグ付近で奇妙なダンスを踊りながら喜びを爆発させている。パスを出した冴は、いつも通りクールな表情だが、わずかに満足そうな色を浮かべていた。そして、起点となったコングも、拳を握りしめ、雄叫びを上げていた。自分のプレーが、失点を取り返すゴールに繋がったのだ。

 

1点差に詰め寄られ、ブルーロック側には焦りの色が浮かび始める。特に、カウンターを阻止された乙夜は悔しさを隠せない。

 

後半開始わずか5分で試合は再び大きく動いた。勢いに乗るU-20。追いつめられるブルーロック。試合の行方は、まったく分からなくなった。

 

 

 

1点差に詰め寄られ、勢いを増すU-20。フィールド中央ではボランチに入ったコングが暴れまわり、前線では士道が予測不能な動きで脅威となっている。ブルーロックはリードこそ保っているものの、明らかに流れはU-20に傾き始めていた。

 

ブルーロックベンチ。ヘッドホンをつけたエゴイスト、絵心甚八は、モニターに映る戦況を冷静に見つめていた。

「フン…攻撃が停滞してきたな。テコ入れが必要か」

 

絵心の指示が飛ぶ。テクニカルエリアでは、交代ボードが掲げられた。

 

OUT:二子

OUT:千切

 

IN :御影

IN :氷織

 

ピッチサイドで交代の準備が進む。フィールドを去るのは、戦術眼で貢献した二子と、爆発的なスピードで何度もサイドを切り裂いた千切。二子は冷静な表情でベンチへ下がるが、その額には大量の汗が浮かんでいる。一方、千切は悔しさと疲労の色を隠せない。肩で大きく息をし、足取りも少し重そうだ。後半に入ってからの激しい攻防で、両者とも体力的に限界を迎えていたのだろう。

 

代わってピッチに入ったのは、御影と氷織。

 

玲王は自信に満ちた表情でフィールドを見渡す。彼の視線は、ピッチ中央でマイペースに佇む相棒、凪誠士郎へと向けられた。二人のコンビネーションが再び火を噴くか。その万能性は、中盤に新たなダイナミズムをもたらすだろう。

 

氷織は、玲王とは対照的に静かな闘志を湛えていた。彼は冷静にピッチ全体の状況を把握し、自分の役割を理解している。彼の正確無比なパスは、ブルーロックの攻撃に新たな精度と選択肢を加えるはずだ。

 

「さあ、俺たちの時間だ」

「落ち着いていきましょか」

 

二人の投入により、ブルーロックは中盤の構成を変え、再び試合の主導権を握り返そうとしていた。玲王の展開力と、氷織のゲームメイク能力。新たなタレントが加わったブルーロックが、U-20の勢いを止め、再び突き放すことができるのか。

 

交代が完了し、主審の笛で試合が再開される。フレッシュな選手が入ったブルーロック。勢いに乗るU-20。試合は新たな局面を迎える。

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