「クソッ!おい、この船は攻撃されないよな!」
誰かの慌てる声が聞こえる。
「分かんねえぞ!? ティターンズの連中も乗ってるんだ!」
船の外では既に所属不明のMSと船に搭載されていたボールがにらみ合っているらしい。
何で転生して初の実戦が絶望的な状況なの!? ねえ、ナンデ!?!?
「交渉は決裂した! MS隊、少しでも時間を稼いでくれ!!」
艦長の声を聞きながらMSの発進準備を進める。
「敵のMSは!」
僕は艦長に問い合わせる。
ここで相手がゲルググMとかMA系のなんかを出して来たら終わりだ。
「ジムⅡが2機、それに…照合不能の機体が1機の計3機だ!」
あっ… わりぃ、俺死んだ。
いやいやいやいや、無理。うん、無理です。
「行けるな! よし、行けッ!」
は? 操縦桿を撫でながら、今までの出来事を振り返る。
まず、俺はガンダムの世界に転生した。
よくある、気が付いたらこっちの世界に居たというやつだ。
こっちの世界での名前はヨハン・アーレというらしい。階級は中尉だ。
そして一番大事な所なのだが…
なぜか俺は一年戦争では無くZの舞台であるグリプス戦役に転生している…
これじゃ、君は生き延びることができるか?じゃないのよ。君は何時まで生き残れるかなぁ~^^なんだよ(半ギレ)
「敵はジオン残党って話じゃなかったのかよ!」
俺の僚機のアジャン・ルーカス中尉が文句を言ってるけど、その気持ち分かるよ。
だいたい、俺たちのMSはジム改という時点で勝負にならない。
「MS隊、発艦準備完了!」
最早、絶望しか感じていない俺たちに無情にも出撃命令が下される。
転生して開始5分で死亡とかRTAの類ですやん。
「ええい、ままよ! ヨハン・アーレ、ジム改出ます!」
カタパルトがMSを押しているのを感じながら、俺は初めて宙へと飛び出した。
とんでもないGがかかるな…素人の俺がこのGに耐えたのは奇跡と言ってもいいだろう。
「敵は…あそこか!」
敵の小隊長格らしい機体がこちらを向く。
あれは…リックディアス?! もうダメじゃん…(絶望)
「おい、そこのMSども」
突然、無線から聞きなれない声が響く。
どうやら敵がこちらの周波数に合わせてきたらしい。
「大人しくフリッツ中佐をこちらに受け渡せば、手荒な真似はしない。…君達も死にたくはないだろう?」
本来、敵との交信は情報漏洩などの観点から固く禁じられている。
だが、1秒でも長く時間を稼がねばならない今の状況だ。通信で多少時間は稼げるはず。
「こちらは地球連邦軍所属輸送艦"シェレン"MS隊のヨハン・アーレ中尉だ。そちらは?」
僅かな沈黙の時間。
「こちらは"エゥーゴ"所属のグラン・スケープ大尉だ」
やっぱりエゥーゴかぁ… 正直エゥーゴに今入った方が生き残れる確率は高いだろう。
だけど後ろにアジャンのジムがいるので寝返りは出来ませんね、はい。
「グラン大尉、要望を聴きましょう」
「先ほど伝えたとおりだ。我々はフリッツ中佐の身柄引き渡しを求める」
フリッツ中佐って誰だよ。そう思った瞬間、俺の頭の中に情報が流れ込んでくる。
情報によると、フリッツ中佐というのはティターンズ所属の士官で現在は負傷して後送中らしい。
「なぜ…エゥーゴが彼の身柄を欲しがる?」
フッという笑いが聞こえる。
「なぜか? 我々エゥーゴは宇宙移民排斥活動を行うティターンズ打倒を目的としている!」
これで分からないか?と言わんばかりにグラン大尉が威張っている。
まあ少なくともここではエゥーゴの戦力の方が多いからこちらは強気に出れない。
「しかし…我々としてもタダで、しかも何をするかも分からない人に士官を引き渡す訳にはいかない」
エゥーゴの皆さん早く帰って…
俺の胃は限界に近づいているよ。
「貴様ら…もし断ればどうなるか分からないか?」
あー、ごめんなさい艦長さん。
もうこれ以上は持ちそうにないです。
「最後の警告だぞ、エゥーゴのMS隊。我々を撃って何になる?」
「警告? 笑わせるなよ、たかが田舎の無知な愚か者が!」
完全に相手殺る気になってるじゃねえか!
「散開しろ!」
お互いが同時に動き始める。
最初に一撃を決めたのはエゥーゴのジムⅡだった。ビーム・ライフルが仲間のボールを直撃する。
「このぉ!」
俺も戦場の絆で培ったスキルを活かして立ち回ろうとするが、当然の如く弄ばれていた。
これじゃあ唯の虐殺じゃないか!
「さっきまでの威勢はどうした?ティターンズの犬が!」
時たま入る煽りが俺の冷静さを失わせる。
だいたいジム改じゃ分が悪すぎんだよッ!!
「一発でも!」
当たれ、と願いながら撃ったバズーカの弾を軽々とリックディアスが避ける。
お返しと言わんばかりにリックディアスがビーム・ライフルを放つ。
「クソがっ!」
何とかその粒子の固まりをシールドで防ぎ、すかさず一撃を加えようとバズーカを構える。
その瞬間、コクピットの中で警報がけたたましく鳴る。
ロックオンされた? どこからー
「…上か!!」
足のバーニアを吹かせて、機体を回転させる。
一見すると"溺れている"様に見えるが、ギリギリの所でビームをシールドで防ぎきっていた。
「次はどこから?!」
加速性能の差を見せつけるように俺のロックオンからリックディアスが外れる。
忌々しいほどに性能差がありすぎる。
「そこか!」
機体を急加速させながら捻ってビームを回避する。
俺は漸くこの機体に慣れてきていた。
「何とか一発だけでも!」
俺もビーム・ライフルを撃ち返す。
刹那、俺のジム改の腕が吹っ飛んだ。
「なにっ!?」
目の前のリックディアスではない。ならばー
「気を付けろヨハン! 敵のスナイパーが何処かにいる!」
遅れてアジャンから通信が入る。
「田舎の部隊相手にどんだけ使ってんだよ!」
俺は思わず叫んでしまう。
既にシールドは使い物にならなくなっている。その上、バズーカの弾も切れかかっていた。
「このぉ!」
必死にビーム・ライフルとバズーカを撃ち続ける。
後ろでは船が僅かな対空火器を使いながら、最大船速で逃げようとしているのが見えている。
「…もうここまでか」
どれ程の時間が経ったのだろうか?
ゆっくりと、噛み締めるように俺は一人呟く。
残っていたボールも既に藻屑となり、アジャンのジムも使い物にならなくなっている。
かく言う俺のジムも酷い有様だ。既にビーム・ライフルは撃ち過ぎもあってオーバーヒートしている。
まともに使えるのはバルカンとビーム・サーベルだけだ。
「ヨハン!!助けてくれ!」
艦から砂嵐に混じりの通信が入る。
俺はゆっくりとジムを反転させて艦を見る。
「そんな…!」
素人目に見ても致命傷と分かる爆発、そして排出される脱出用ボート。
既に俺が帰るべき船は原型を留めてすらいなかった。
「おいヨハン!戦闘はもう…何をする気だ!」
艦長からは停戦など聞かされていないが、どうやら傷病者を乗せたボートから先に出発させたらしい。
だが、ボートの側面に描かれた十字のマークなど気にしないかの如くMSが近づきー
「な、何をッ! そんなッ!条約違反じゃないか!」
張り付いたエゥーゴのジムが一撃でボートを破壊する。
生存者はいない事など一目瞭然だ。
「なっ! この!このぉぉぉー!!!」
怒りに駆られ、俺は残された推進剤を使ってジムに急接近する。
ワンテンポ遅れてエゥーゴのジムが反応するが回避するには遅すぎた。
「何てことをッ!堕ちろぉぉッ!!」
ビーム・ライフルを投げ、ライフルを狙ってバルカンを連射する。
エネルギーを失いかけていたライフルが、小さく爆発する。
「これでも食らえッ!」
爆発に怯んで動きが止まった隙にサーベルでジムⅡのコクピットを一刀両断する。
コクピットを潰され、パイロットの後を追うようにジムが爆散する。
「お前の罪の重さが分かったか!」
そんな言葉を吐いた俺はジムに当たる残骸の音を聞きながら、覚悟を決めた。
仲間の仇は取った。エゥーゴのMS隊を全滅させられなかったのは残念だが、1機撃墜なら良い方だろう。
リックディアスが遠くで見守る中、ジムⅡがこちらへ近づいてくるのがモニターに映し出される。
推進剤は切れている。死ぬまでに後20秒も無いだろう。
「…最後の瞬間ぐらいは見ておくか」
目を見開き、ジムⅡのビーム・ライフルがこちらへ向くのを見る。
俺はゆっくりと息を吸って、その瞬間を待つ。
ビーム・ライフルの銃口に粒子の粒が集まっているのを感じ、覚悟を決める。
「爪痕…残せたかな」
遂に、ビームが放たれー
「…え?」
目の前でジムⅡが爆散する。
いったい何が…? 俺は困惑してモニターを見る。
「あれは…!?」
呆然とする俺の目の前を駆けて往ったのは
蒼いガンダムだった。
初めまして、SW好きのガノタと申します。
実は筆者がティターンズのMS好きということもあって見切り発車してしまいました…
不定期ですが、長く続けていきたいと思っております。
評価・感想くれると嬉しいです。