「艦隊の増強か…」
アレクサンダーが俺に話しかけてくる。
話題は当然のことながら新たな遊撃艦隊についてだ。
「まぁ、多分やる事は変わりませんよ」
笑いながらも、俺は頭の中で次のイベントについて考えていた。
エゥーゴは既に結成されているから…Mk-Ⅱ強奪まで後1年ぐらいか…
「だといいけどな…」
アレクサンダーはやや不安そうだ。
当然だろう。
今まで一つのサイドに留まっていた部隊が突然宇宙を駆けまわることになるのだから。
「お前たち、装備のチェックは済んだか?」
ブルクハルトが俺たちの方へ飛びながら話す。
「はい、何時でも出れます」
モニターへ目を向けながら、報告する。
ハイザックのOS更新も終わり、システム的にかなり軽くなっていた気がする。
「そういえば、増援の艦隊はいつ来るんですか?」
俺の質問にブルクハルトは顔色一つ変えずに答える。
「10分後、我々と交差する軌道に待機中だ。緊急時には第2小隊が対応する」
ティターンズといえども貴重なヘリウム3などを無限に使う事は出来ない。
その影響は、特に木星からの補給が殆ど手に入らないムーアで顕著に表れている。
だから非常時のみMS隊を発艦させるのだ。
「艦隊はアレキサンドリア級1隻とサラミスが2隻だ。合流後、封鎖線を張る」
直ぐにその時はやってきた。
俺たちの艦、ラ・グロワールが前方に居る3隻の船に近づく。
「もう間もなくだ。第1小隊は発艦の準備を進めるぞ」
合流時までは第2小隊が対応し、そこから先の作戦行動では第1小隊が行う事になっている。
横を見ると、サイラスのアッシマーが発艦の手筈を整えて待機している。
「"フルガダ"からの連絡、1個小隊を前に出すそうだ」
通信手から報告を受ける。
事前の情報によれば敵はムサイが1隻のようだ。
「簡単な仕事だ…」
思わず口から本音が洩れる。
増援のアレキサンドリア級が居なくとも対処可能な任務だろう。
「…以後、この艦はティターンズ第一遊撃艦隊の旗艦として行動する」
艦長から、無事に合流したことと艦隊の旗艦となることが伝えられる。
ここからが本番だ。
「そういえば…グロワールが旗艦になるんだな」
アレクサンダーが疑問を口にする。
確かにそうだ。
本来ならアレキサンドリアでも問題は無いはずだ。
「ああ、"フルガダ"の乗組員はまだ若いからな」
ブルクハルトがその疑問に答える。
成程、どうやらアレキサンドリア級の乗組員たちは士官学校を卒業したてのようだ。
確かに若い乗組員よりも経験豊富なグロワールの方が安心はできるだろう。
「あのハイマン准将が指揮を執られるそうだからな。…失敗は許されない」
ハイマン将軍?
ジャミトフの親戚か何かですか?
「一年戦争でアフリカ平定を成功させたハイマン将軍のご子息だ…知らないのか?」
ブルクハルトが意外という顔で俺を見る。
確かにハイマン将軍なら聞いたことがあるが、息子がいたとは…
「よし、我々は出撃後"フルガダ"の小隊と共に前衛を担当する」
俺はブルクハルトの言葉に頷いて、モニターを眺める。
綺麗な宙が広がっているが、その先に待っているのは"死"だ。
「第1小隊、出撃せよ」
オペレーターを通じて、命令が下される。
すぐさまブルクハルトのアドバンスド・アレックスが飛び出していく。
「サイラス・キング、アッシマー出ます!」
続けてもう一つのカタパルトからサイラスのアッシマーが射出される。
先に発艦した2機は俺たちの小隊の中でも特に速度に優れている。
「俺たちも出ようぜ。…アレクサンダー・ゾーイ、ハイザックカスタム出るぞ!」
ブルクハルトが十分な距離を取ったのを見て、アレクサンダーが出撃する。
俺も暗い宙をゆっくりと睨み、覚悟を決める。
「ヨハン・アーレ、ハイザック・HWS仕様出ます!」
その瞬間、カタパルトで機体が一気に加速する。
何度やっても慣れないな…
心の中で俺は呟く
「よし、第1小隊は全機発艦したな。合流ポイントまで行くぞ」
ブルクハルトを先頭に、機体を加速させて合流地点まで進む。
幸い、合流地点はすぐ近くだった。
「こちら"ラ・グロワール"所属第1小隊長のブルクハルトだ」
「あっ、はいッ! こちらは"フルガダ"のスルーズ隊の隊長、オルトリンデです!」
若いな…
俺が言うのもなんだが、小隊長にしては若すぎる声に違和感を抱く。
「…兎に角、敵は間もなく出てくる。我々がMSを、そちらが敵の主力艦を」
「分かりました!」
ブルクハルトの言葉に大きく返事をして、オルトリンデと乗機のMSが離れる。
「…ってエンゲージガンダム!?」
思わず言葉がこぼれる。
居ない筈のMSが目の前を動いていることに驚いていた。
「それに濃紺の塗装…なぜ?!」
そこまで言ってから、慌てて通信機がオフになっていることを確かめる。
流石に機密であろうMSの名前を俺が知っていたら問題だ。
「ガンダムが2機、連中にとっては脅威だろうな」
ブルクハルトの冷静な声で何とか自分を落ち着ける。
それでも俺の心臓は高鳴っているのだが。
「あのガンダムはどっから取ってきたんですか?」
アレクサンダーが興味深そうに聞く。
「さあな。後でグロワールに来たら聞けばいいんじゃないか」
「…グロワール所属になるんですか?」
驚いた声でアレクサンダーが叫ぶ。
確かにグロワールには2個小隊しか所属していない。
「ああ」
何でもない事のようにブルクハルトは喋っているが、かなり重大なことだ。
今までは第1と第2が交互に担当していたせいで休憩も限られていた。
そこに第3の小隊が加わるのだ。戦力アップ以外にも与える影響が大きい。
「見たところ、戦力はウチ以上に揃っているが…」
ブルクハルトの呟きに反応して、俺も画面を見る。
確かにMSの質はグロワール以上だろう。
「まさか…ガードカスタム?…ってホワイトライダーまで…!?」
明らかにおかしい。
ガードカスタムはまだ入手できるかもしれないが、ホワイトライダーは不可能だろう。
そもそもペイルライダーが失われて以降、連邦はHADES搭載機を保持していない筈だ。
「ティターンズが…いや、"誰か"が隠していた?」
ティターンズの部隊も確かにペイルライダーを保有していたことはある。
だがそれは"デュラハン"だ。HADESは有していない。
「後ろは艦隊が封鎖線を張った。MS隊は前で敵艦を捕捉する」
ブルクハルトがMS隊へ通達する。
前線に出るMS隊全体を統括するのはブルクハルトと事前に決まっていた。
「了解」
回線を一瞬だけ開いて短く言葉を発する。
だが俺の頭の中はホワイトライダーの事でいっぱいだった。
「流石にHADESが暴走とかは…ないよな」
頭の中で浮かんだ嫌な想像を慌てて消す。
戦場で"負け"を連想させる語は自分の命を失う原因になりかねない。
「出てきたぞ!」
アレクサンダーの声が敵の到来を伝える。
「MSが3機…ドムタイプが2機とゲルググ1機だ!」
数でも質でも勝っている。
俺たちの敵ではないだろう。
「了解。アレクサンダーはここで狙撃を、それ以外は前に出るぞ」
「こちらも前に出ます!」
ブルクハルトとオルトリンデがそれぞれ部隊に指示を出す。
「さてと、少し…ん?」
直感が何かおかしいと伝えてくる。
俺は思わずMSを減速させた。
「ヨハン?…どうした?」
ブルクハルトが俺の行動に気が付いて声を掛ける。
だが、ブルクハルトの問いに答えずに画面を睨む。
「何だ…!この感覚は…!?」
画面の先の暗闇から感じる敵意に身を震わす。
敵のMSから放たれるものではない。
その敵意はムサイの更に後ろから放たれていた。
「何かが居る?」
無線機に飛び込んだ声でサイラスの方を見る。
どうやら彼も何かを感じたようだ。
「敵機来るぞ!」
アレクサンダーの悲鳴にも似た声で慌ててハイザックを動かす。
マズイな… 自分の今の精神状態ではまともに戦えない事が分かる。
「…ッ!」
無意識的に力を込めた指がトリガーを押し、ウインチ・キャノンが放たれる。
その場に居た誰もが予期していない攻撃。
遠くでオルトリンデの小隊と戦っているドムの腹を貫いていた。
「見える…いや!感じるんだよ!」
その瞬間、俺は再び強烈な敵意を感じた。
「おいっ!待てっ、サイラス!」
横で戦っていた筈のサイラスがMA形態に変形して飛び出す。
突然の事に誰も対応できていない。
俺も、小隊の仲間も、ジオン残党すらも思わず動きを止めていた。
「危ないッ!」
俺の脳に数秒先に起きる出来事が流れ込む。
だがー
「うっ…」
サイラスのアッシマーを一筋のビームの光線が貫いた。
「誰だ…誰が撃ったんだ!?」
ブルクハルトの慌てる声が聞こえる。
「…友軍の信号。恐らく後方から接近していたハイザック…」
報告したアレクサンダーの声も震えている。
「そのハイザック、何を狙ったんだ!」
「…サイラスのアッシマーに平行するようにシャトルが。それを狙ったものか…?」
アレクサンダーが小さな声でレーダーから得られた情報を伝える。
ジオン残党は帰投するようだ。
「ヨハン…救出に向かうぞ」
アレクサンダーと共に機体を加速させる。
「くそっ!…友軍機がなぜ?!」
俺もその言葉に深く頷きたい気分だった。
既にティターンズの暴走は始まっている。
俺は改めてその事実を突きつけられて呆然としていたー
どうも、SW好きのガノタと申します。
投稿遅くなってしまい申し訳ありません…
3000文字くらい書いてたデータが吹っ飛んでました。。。