「…サイラスの容態は安定しているそうだ」
医務室からの連絡を受けたブルクハルトが俺たちに話しかける。
その場に居た全員が若干落ち着くのを肌で感じた。
「それと…サイラスは正式にウチの艦所属になる。あの状態じゃ…欲しがらなかった」
サイラスの所属がこちらに移ったことも併せてブルクハルトが知らせる。
「欲しがらなかった…?どういう事です?」
俺とアレクサンダーは顔を見合わせる。
サイラスがまるで物のような扱いだ。
「うむ、詳しくは分からないが…」
ブルクハルトの顔が曇るのを見て、俺は何かを察した。
恐らくはニタ研あたりが失敗作の評価を下したんだろう。
「グリプスの奴ら、困らないんですかね?」
アレクサンダーが疑問を口にする。
確かにサイラスは元々グリプス隊所属のパイロットだった。
あれ程優秀なパイロットだ、何処でも欲しがると俺は思っていた。
「グリプスの事は俺もよく分からん。…後、ヨハンもウチに所属が決定した」
思い出したかのようにブルクハルトが俺の所属を伝える。
今まではあくまでティターンズ(仮)だったが、ここからは言い訳ができない。
「…ハッ!全力を尽くす所存であります!」
ブルクハルトとアレクサンダーが呆気にとられた顔をする。
「フ、フフッ!…そう緊張しなくてもいいだろう」
ブルクハルトが呆れたように笑う。
無論、アレクサンダーもだ。
「おっと」
アレクサンダーの言葉と共に全員が服を整える。
プシューという空気の音と共に艦長がやってくるのが見えたからだ。
「よろしい。…今から言う事は口外しないように」
艦長の顔がいつになく緊張している様に見えた。
作戦内容などが他言無用なのは当然だが、艦長の言葉には今までとは違う重さを感じた。
「サイラスの件は不慮の事故だった。分かったな?」
思わず口が開く。
つまり、上層部はあの作戦を何としてでも秘匿したいという訳だ。
「それから当時、あの宙域には友軍はいなかった。いいな」
本格的にマズイ状況になってきた。
思ったよりもティターンズの暴走は進んでいる。
「…すまない。これが私のできる精一杯だった…!」
艦長が言葉を漏らす。
別に俺も艦長を責める気はない。
恐らく本来なら俺たちは纏めて物理的に闇に葬られていただろう。
「…ハッ」
ブルクハルトが小隊全員の気持ちを代弁するように言葉を捻りだす。
誰も納得はしていない。だが、するしかないのだ。
「ハイマン准将が入られます」
副長の声が休憩室の外から聞こえる。
すぐさま艦長を筆頭に迎え入れる体勢を取る。
「どうぞ」
ドアが開き、ゆっくりと人影が室内に入ってくる。
思ったよりも若い…
それが俺がハイマン准将に抱いた第一印象だった。
「ハイマンだ。先の戦闘では…不運な事があったが今後も職務に励んでほしい」
「ハッ!」
全員が敬礼をする。
「それと…"フルガダ"から連れてきた小隊のメンバーだ」
ハイマン准将の合図に合わせて3名のパイロットが部屋に入ってくる。
「小隊長のオルトリンデです…!」
黒髪の若い女性が口を開く。
戦闘前の通信の時も若いとは思ったがここまでとは…
俺は内心驚く。
「スルーズ隊のメンバーは…まあ後々知ることになるだろう」
ハイマン准将が意味ありげに笑う。
ティターンズの上層部の士官が連れてきた小隊だ。
当然何か抱えているのは分かる。
「…スルーズ隊のゴンドゥルです。よろしく」
素っ気ない挨拶で金髪の女性が挨拶をする。
「同じくスルーズ隊のエイルです。よろしくお願いします」
残りの一人も軽く頭を下げて挨拶をした。
黒髪、金髪、茶髪と髪の色は違ったが、全員若いなと俺は思った。
「さてと。私は自室に行くから、艦長殿?…」
「ハッ、ご案内致します」
艦長にハイマン准将が付いていく。
残された俺たちMSパイロットの間に何とも言えない空気が流れて始める。
(こういうの、得意じゃないんだよな…)
俺は心の中でつぶやく。
「あー、オルトリンデ小隊長?」
誰も何も言わない空気感に耐えられなくなったのか、アレクサンダーが話を振る。
恐らく一番話しやすいであろうオルトリンデに話を振ったのに、俺はガッツポーズしていた。
「ハッ、ハイ!何でしょう?!」
オルトリンデが慌てて答えようとする。
「あー、ええと、その…小隊長殿のMSは…」
「ガ、ガンダムですッ!ハイ!」
食い気味にオルトリンデが返答する。
しかしやっぱりエンゲージか…
俺の予想通りだったことを喜びつつ同時に不安な部分もあるのは事実だ。
「やはりガンダムですか…!」
アレクサンダーが感激したように言う。
正直、エンゲージガンダムが何でここにあるのかは聞きたくもない。
「ヨハン中尉、ですよね?」
突然、ゴンドゥルが話しかけてくる。
「…何処かでお見かけしたことが?」
何故か俺の名前を知っている彼女に、思わず背筋が凍る。
そんな様子の俺を見て、彼女はフッと笑って答える。
「いえ…その、そういう風に"感じた"ので」
彼女が何を言っているのかさっぱり分からないが、とりあえず愛想笑いをしておく。
「それで、話が?」
彼女がコクっと頷いて、俺に話しかける。
「あの時、何で撃てたんですか?」
何の脈絡も無しに聞かれた疑問に、俺の思考は固まる。
「あー、ええと、いつの話で…」
「先ほどの戦闘です。あれ程離れていたのに、一撃で…」
成程、確かにそれはそうだ。
とは言え、俺も何と答えるべきか分からない。
「何というか…見えるんです」
「…見える?」
彼女の語尾は疑問形だが、一方で何か納得したという顔だ。
「もしかして…あの白いMSのパイロットは?」
「ええ、私ですが」
だとしたら彼女は…強化人間の可能性が高い。
正直、サイラスを抱えている所に更に強化人間を持ち込むなど手一杯もいいところだ。
「あのMS、よく扱えるな…」
「え?」
慌てて俺は目線を逸らす。
ホワイトライダーの事は触れてはいけない。
「いや、あのMS見た感じだと扱いづらい機体だと思ってな」
彼女は俺の言葉に納得したように頷いて、次の言葉を言おうとした。
だがー
「総員、戦闘配置。MS隊は全部隊ハンガーで待機せよ」
突然、敵機の襲来を伝える警報が鳴る。
ブルクハルトとオルトリンデが軽く目配せした後、俺たちは一気に駆けだす。
「一息すらつけないのか…」
思わず俺の口から漏れる。
だが、次の瞬間には俺は頭を振る。
ブルクハルトが先頭を走りながら俺たちに言う。
「さあ、始まるぞ。…気を抜くなよ」
お久しぶりです、SW好きのガノタです。
ホントに久しぶり過ぎて書き方忘れてました…