クソリプ飛ばしのイマジナリーフレンド   作:ゴンザレス

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アッシュ→ルークのクソリプ集を見返していて思いついた一発ネタ。
整合性を求められるとブリッジに戻ります、ご容赦ください。


突然のクソリプ

 

 

「……ッたりーなぁ。」

 

オールドラントにおける二大大国キムラスカ、首都バチカルにほど近い場所に位置するファブレ公爵家の邸宅。

花咲きみだれる中庭の隅で、小柄な少年が気配を殺すように蹲っていた。

 

麦のような金の髪に青い瞳、普通にしていれば少年らしい可愛らしさのある顔は不機嫌そうに歪められている。今はルーク…自分の主人も公爵に連れられて外に出ているため居ないし、主人と一緒に居ない彼を探しに来るような物好きは古い付き合いのペール爺さんぐらいしか居ない。そのペールも買い出しに出たっきりまだ帰っていない。

詰まるところ少年は…ガイは、サボっていたのだった。

 

(街の音機関市場、行きたかったな…。)

 

先日の買い出しの時にチラシを見て以来ずっと密かな楽しみだった譜業市、その為に休暇も貰っていたのだが…主人に剣を教えているあの男が急用で来れなくなって、ちょいとばかり剣が使えるガイが代わりのお相手に駆り出され、仕方なく準備していたら主人の方も急用が入って公爵と共に公務に出ていった。予定はパァになってしまった。

齢12と少しのガイにとっては許し難い蛮行である。おのれファブレ家、おのれルーク。

街の音機関専門店の爺さんに取り置きしてもらっていた射影機に思いを馳せている間にも、やけに早い雲が夕暮れの空を駆けてゆく。今晩は風が強そうだ、雨戸をちゃんと閉めなきゃ。

 

(……本格的に使用人根性が染み付いたな、俺も。)

 

バッカみてぇ、と毒づくガイに言葉を返す者は居ない。

 

5歳の時に家族を皆殺しにされ故郷から追われて以来、自分が元々は仮にも貴族だったという自覚は年々遠いものになってゆく。かしずかれていた記憶なんてとっくにどこかに行ってしまっているし、今残っているものと言えば姉に厳しく叩き込まれたマナーの形式ばっかりだ。

 

『……お前は⬛︎⬛︎⬛︎ィオス家の⬛︎取り⬛︎⬛︎⬛︎から……』

 

「…ダメだ、やっぱりなんも思い出せねぇ。」

姉の芯のある声に引きずられて、抜けた記憶が戻ってくるのを願ったが叶わなかった。

家族も、故郷も、あまつさえ一部の記憶も奪われた仇なのに、なんで奉公人みたいな真似をしているのか。復讐のためだ、逆にそれ以外何がある?心を込めて御奉仕なんてしていたら、それこそ人格破綻者みたいじゃないか。

 

思春期に差し掛かり、ガイの情緒は乱高下激しい不安定となり、女性恐怖症も悪化の一途を辿っていた。

早く仇を取りたいのに自分にはその力が無い。ペールに『今はその時ではありませぬ』と何度も諭され、思い直す度にまた焦燥感に襲われる。

あの男が唱える『世界への復讐』なんてのも大局的すぎて気後れする、そもそも詳細を何も教えて貰えない。なんなんだホドを復活させるって、それってほんとに俺たちの故郷と言えるのか?

悪い事が起きるとだいたいファブレ家のせいにする事で何とか保っていたガイの冷静な部分も、最近は熱暴走しっぱなしだ。

どいつもこいつもぶっ壊れちまえ、お年頃に訪れがちな破壊衝動は彼の複雑なバックボーンも合わさって形容しがたい何かになりつつあった。

 

とにかく今のところ無力なガイにできるのは、やってもやってもやっても終わらない洗濯物の責務から脱出した先で不貞腐れるぐらいだ。

何時までもこんな風なら、おかしくなってしまいそうだ。あるいはもうおかしいのかもしれない。毎日父親の形見を見上げながら、仇に頭を下げて暮らすなんて。

 

 

そんなことをずっとぐるぐる考えていたからだろうか。

全身の毛穴がぶわっと開くような寒気と酷い頭痛が唐突にガイを襲った。

 

「!!い、痛い…気持ち悪い…」

 

石畳に膝と手を着いて四つん這いの格好になっても、視界の揺れは収まらない。

何かが自分の中に入り込もうとしている気がする。元々別のものを無理やり接合されるような感覚。ああ気持ち悪い、吐き気がする、勘弁してくれ、俺が何したって言うんだ。

ここまで耐えてきたのに、あとは機会を伺うだけなのに。

…まだ何も成せていないのに!

 

 

 

 

『やぁ、死の覚悟をキメてるところ悪いが。アンタは死なないよ。』

 

ふとそんな声がして、呪いのように染み付いていた痛みと寒気が嘘のように消えた。

弾けるように立ち上がったガイは四方八方振り返って謎の声の主を探すが、あいにく庭には自分以外誰の人影も無かった。ヒマしてそうな白光騎士団だって一人もいやしない。

 

『アンタ、そんなキョロキョロしてるとお登りの田舎モンだと思われるぜ。ホドは田舎だったんかい、ええ?』

「失礼なことを言うな!!…待て、お前は誰だ。どこから話しかけてる!」

『そう大声出さんでも聞こえてんぜぃ。あとアンタ、傍から見たら突然叫び出した奇人だからその辺にしときなよ。俺はアンタの考えてること分かるから、わざわざ声出さなくてもイイよ。』

 

…信じ難い事だが。この妙に腹の立つ、自分と同じ声は頭の中からしているようだ。なんて事だ、俺は狂ってしまった、医者に行けば治るのか?ガイの頭は一瞬にして大混乱となった。

 

『可哀想だけどさ、アンタの頭がおかしくなった訳でもないから気にするなよ。オレとアンタは…グーゼン、そう、グーゼン繋がっちまってね。テレパシーで会話出来るようになったのさ。以後宜しく、シクヨロ。』

「は、はぁ!?!?」

 

声に出さなくても伝わると言われたばかりだが声に出てしまった。出もするだろうこんなこと、有り得なさすぎる。

世の中多重人格というものがあるとは聞くが、それにしたってこんなに急に現れて…人格が入れ替わるでもなく、勝手に脳の片隅に陣取るような事があるんだろうか。ますます意味不明だ、夢であってくれコンチクショウ。

 

(気持ち悪い、さっさと出てってくれ!)

『そいつは無理な話だね。1回繋がっちまったもんはもう断ち切る事は出来ないんだよ。オレから通話は切れるけどアンタからは切られない、オレはまだ切るつもりが無い…OK?』

(OKな訳あるか!!!)

『カリカリすんなよ、ハゲるぜ。』

(俺は!まだ!!12だよ!!!)

『なんだってぇ、俺はつい先日生まれたばっかのベイビーだが?…ジョーダンだよ、そんならこんなに話せる訳が無い!』

(大体お前誰だよ。)

『オレはアンタだよ。冗談はさておきオレはオレとしか言えねぇなぁ。』

(ふざけやがって…名前ぐらいあるだろ。言えよ。)

『無いよ。』

(言わないつもりなら…お前のこと、ナナシって呼ぶぞ。)

『ナナシ…ナナシねぇ、いいじゃないか。今から俺はナナシだよ。ゴンベェとかじゃなくって良かった!』

 

平坦で無機質さを感じる声が少し喜色を孕んだ、キモイ!

いっその事ならゴンベェとかの格好つかない名前にしとけば良かったな…とガイは後悔した。ちょっとでもいい感じの名前にしたい、彼はそういう意味でもお年頃だった。

 

(だいたいなんで俺なんかの頭の中に入ってきたんだ。もっと面白そうなヤツ、いくらでもいるだろ。)

『お生憎様、オレも選んで入った訳じゃないしなぁ…それにあんた、なんかストレス溜まってるし。話し相手になってやろうか?今なら安くしとくぜ。』

 

姿かたちもないのに、片手で銭のハンドサインをしてニヤケているナナシの顔だけ思い浮かんで無性にイラッとした。俺の声でそんなふざけたことを言ってくれるなとガイは祈る。

 

(…独り言言うのと変わらないからいいけどさ。俺ホントに頭おかしくなっちまったんだな…お許しください姉上、ガイラルディアは貧弱な男です。)

『まぁそう気を落としなさんな。さっきいじけてたのはどうしてか教えてくれよ。』

 

どう足掻いてもこいつは出ていかないし、答えなかったところで答えるまで延々と話しかけてくるんだろうな…ということを短期間で察したガイは、諦めて先程自分がいじけるまでの過程を思い出した。考えてることが分かるんならこれぐらいくみ取れ、という意趣返し込で。

 

『ほぉ…ふーん…かわいそ!』

 

半笑いで帰ってきた。余計に腹が立った。

 

『アンタ色々考えすぎなんだよ。1回なんも考えずに、ニコーッとしてハイハイ言ってみたら?‪顔に出ないようにしたらだいぶ変わるぜソレ。』

(…ヤだよ。なんで俺がそんなこと)

『仮にも…なんだっけ?復讐?のために潜入してるんなら、そういうの上手くないとダメなんじゃねぇの?向いてないよアンタ。』

 

痛いところを刺された。思わず胸を抑えるが、内側からの痛みはとんと収まる気配もない。

 

『今は雌伏の時だってわかってんなら、それ相応の立ち振る舞いをみにつけるんだな。…なーんて、真面目にアドバイスしちゃうナナシくんなのでした。ちゃんちゃん!』

 

最後までふざけた声色だったが、言ってることはそれなりに筋が通っている…気がする。

仇の前でヘラヘラしておけ、なんて普通の子供に押し付けるには荷が重すぎるが、その時まで待つことを決めているガイにとっては当たり前に出来なければならない事だった。

 

…そうだ、信頼を勝ち取ってから、ドン底まで落としてやらないと。

 

やろうとしている事を思えば当たり前のことのはずなのに、なんだかガイにとっては新鮮だった。

復讐者って感じだ、俺よりコイツの方が色々わかってそうだし。もしかして、復讐の先輩なのだろうか。

 

(お前、誰かに復讐した事あるのか。)

『無いけど…なんで?』

(なんかアドバイスが手馴れてたから、やったことあるのかと。)

『ふはははー、年の功ってやつかも?』

(俺が悪かった、黙ってくれ。)

 

笑い声は響いて痛いことを学んだ。これからも強制接続してくるつもりなら、なるたけコイツを爆笑させないようにしないと。

 

『何事も実践あるのみだぜ、ガイ。まずはもう暫くしたら帰ってくるアンタのご主人に向かって実演だなァ!』

(なんで俺の名前を知ってるのかってのは聞くだけヤボなんだろうな。)

 

瞳の中の暗殺者、頭の中の変質者。

一時の気の迷いと言えなくもない気まぐれで、コレの話に耳を傾けた事を後年のガイは時々後悔することになる。

 

なにせ、預言には一切読まれていない事象だったのだから。

ヴァンデスデルカの『ぶっ壊せ★預言中毒のオールドクソラント』の思想が引き起こした奇跡…と言えなくもない、のかもしれない。

 

 

 

 

───────────────────

 

 

 

<在りし日のルーク・フォン・ファブレ(現在は焔の光の燃えカス)視点>

 

 

 

父上の公務に付き添っていたら、いつの間にやら日が沈んで帰りが随分と遅くなってしまった。

夕食は食べる気が起きなくて断わり、父上からも何も言われずに開放されたルークが向かったのは、使用人のガイが寝泊まりしている部屋だった。

 

今日はヴァン先生が急用で来られなくなって、ガイに剣の稽古相手をして欲しいと願い続けてやっと叶った日なのに唐突な予定でそれをすっぽがしてしまったのだ。典型的キムラスカ貴族坊やのルークもさすがに申し訳なく思っていた。

ガイはのほほんとした所のある優しい男だからきっとそう根に持ったりはしないだろう、と他の使用人に口々に言われてはいたが、ルークはそうは思えなかった。普段温厚な人間ほど怒ると怖いものであり、ガイはその上温厚なだけのお人好しではないと感じていた。

……小さい頃1度酷いことをして、同じく小さかったガイに向けられた怒りや悲しみ、恨みの籠った睨む目を思い出してちょっと身震いをした。

分かりにくいが、ルークはこれでも後悔とかはちゃんとするタイプだ。

 

しかし直前にてビビってしまい、部屋のノッカーを握ったまま動けなくなっているのが今のルークだ。

日は沈みきって月が出ている、落ち落ちしていたら別の使用人に見つかってお小言の後部屋に強制送還される。

 

ナムサン、当たって砕けよ、貴様それでもファブレ家子息か。

思いつく限りの鼓舞を奮ってみるがダメみたいです、ルークはしっかりしているとはいえまだ8つだった。

 

万事休すか、と思ったところに急な衝撃。

ペタンと尻もちをついたルークが見上げると、ぽかんとした顔のガイその人が扉を開けて固まっていた。もう部屋に戻って寝間着まで着ていたらしい。

 

「…だ、だ、大丈夫か!?すまない、ほんとに、部屋の前で固まってるなんて思ってなくて」

 

慌てて手を取って助け起こしてくるのはいつものガイだった。

この少し年上の世話係は、表情が顔に出やすい所がある。メイドたちに褒められるとデレデレしたり(それでも接触されると絶叫する)、剣の稽古終わりはそこはかとなく機嫌がよくて1割増にこやかだったり、嫌味な執事長やファブレ公爵が現れると顔を背けて歯茎を剥いたり。

そんな奴がこんな焦った顔をしているのだから、心配は嘘では無いのだろう。

 

「ほら、痛い所はないか?…いつ帰ってきたのかは知らないけど、早く部屋に帰った方がいいんじゃない。」

「それは…そうなんだが…」

「?どうしたんだルーク、そんな歯切れ悪く。」

 

貴族たるもの、そう簡単に謝ってはならない。

何度も教えられてきたし、彼自身も全くその通りだと思っている…だけど、ここまできて何も言わないのもみっともない。どうせ準備をして待っていてくれたであろうこのガイに、申し訳が立たない。

 

「………どうせ暇してたんだろうが…結局、鍛錬の約束を違えた。悪く思え。」

 

残念ながらこの時のルークに年相応の可愛らしい謝り方の語彙なんて装備されてなかった、なのでこんな回りくどい言い方になったのだ。

 

押し黙るガイをチラチラと横目で見るルーク。

難しい顔をしたり、眉間に皺を寄せたりで一人百面相をする姿はそこそこ君が悪かったが、ポンと手を叩いたガイが「なんだそんなことか」と一蹴したことでそれは終わりを告げた。

 

「そんなこととはなんだ、そんなこととは。」

「別にお前がやろうとしてやった訳でも無いし、そもそも俺使用人だし。気にするなよ。

でも、態々来てくれてサンキュな。部屋まで送るよ。」

 

そう言ってにへらと笑い歩き出したガイに慌てて着いていくルーク。

普段なら「気にするなよ、じゃあな!」と扉を締められてそうなものだが今日はなんというか…いつもと違う?

 

「お前、俺のいない間に変なものでも食べたのか?」

「変なものは食べてねぇなあ。」

 

全く気にした様子のないガイを見ていて、さっきまでグルグルしていた自分がアホに見えてきたルークだった。やっぱり腹が黒いんじゃないのかガイの野郎。

 

 

いつもの妙に壁のある態度と違い、ほんの少しだけ心を開かれたような心地になって気分が良かったのはルークだけの秘密だ。

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

 

 

『なーんだ、あの坊ちゃん素直じゃないだけでだいぶアンタのこと好きじゃねぇか。』

(よせよ気色悪い。……あのルークがごめんなさい、なんて言うとはね。これまでも気づいてなかっただけで案外言ってたりして。)

『これからはオレが解説してやるから見逃し不要だぜ。泰○解説祭は得意なんだ。』

(………)

『おーなんということだ、オレをほっといて寝るだって!?』

(………)

『おやすみ。』





大して歴史は良い方向に変わらないけどちょっとやかましい同居人が増えるゾ
ほんとにそれだけ、目指せアビス的鬱

GGGとナナシのこれから

  • 地の文多め
  • 会話多め
  • ナナシとは何者なのか
  • 目指せ譜業マスター
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