2024/4/10 3000字ほど入浴シーンを追記しました
ウルザのおごりによって、この世界にきてようやくまともなご飯にありつけたランス一行。食べ終わり、少し落ち着いた雰囲気になった。
「ウルザさん。本当にごちそうさまでした! 大変おいしかったです」
「いえいえ。このくらい、ランスさんたちにしていただいたこと考えれば当然ですよ」
ウルザはニコニコと、シィルの言葉に答えている。
「でもそれにしてもちょっと……。ウルザさんほんとに大丈夫なの?」
かなみは心配そうな声をあげている。四人が頼んだ量、しかもランスが意図的に高い料理を注文したため、価格は2万円を超えていた。
「ええ。この世界ではそれなりにお金を得る手段はありますし、お陰様で貯金もありますから」
ウルザの表情に全く揺るぎはなかった。それなりに溜め込んでいるようである。
「そう……。ならいいけど。本当にありがと」
「なんだかなみ、俺様へのあてつけでそんなこといってんのか?」
ランスはやや不機嫌な表情でかなみに尋ねた。
「だってランスが一番無茶苦茶な量頼んでたじゃないの」
「フン。俺様は戦士でグルメだからな。目についたもので躊躇はしないのだ」
ランスはそう言ってがははと笑って見せる。
「全くもう……遠慮ってものがないんだから」
「ウルザちゃんが言うならまだしも、お前は奢られた身分だろが」
ランスはニヤニヤと笑いながらかなみを追撃する。
「いや……。まあ、それはそうだけど、でも」
「フフ……。お二人は相変わらず、賑やかでいらっしゃいますね。こちらに来てからも変わっていなさそうです」
ウルザは微笑ましく二人の会話をみていた。
「そうだな。かなみがいつもドジ踏むから俺様がいつも尻拭いを」
「適当な事いわないでよ! ニビだけでなく、道中でもかわいい子見つけたら。言い寄りまくるもんだから、こっちが毎回毎回どれだけ必死に止めているか」
かなみは頭を抱えながら話す。
「あははは……」
シィルはピカチュウの頭を撫でながら。二人の会話を見ていた。
「そういえば、そのピカチュウはどこで見つけられたのですか?」
喧嘩になりそうな気配を察したからか、ウルザはピカチュウに話題を移した。
「おう、かなみがドジを踏んでボール滑り落としたらまんまと捕まったんだ。飼い主に似てドジなやつだ」
「なんてこと言うのよ! この子はケガしてたのよ。捕まっちゃうのもしょうがないじゃない」
かなみはやや強い口調でピカチュウを庇い立てる、
「なるほど……。体力が落ちていたんでしょうね。ポケモンを捕獲する場合は体力が少ないほうがより成功率が上がりますから」
「あれは必ず捕まるもんじゃないのかよ」
ランスが少し興味を持った風に尋ねる。
「ええ。もし元気な状態だったならばボールから出て逃げてしまう可能性のほうが高いですよ。もちろんボールの種類によっても違ってきますが。状況から考えると、そのピカチュウはトキワの森で捕まえられたってことですよね。あのへんでは出現率低いですし、むしろお手柄ですよ」
ウルザはかなみに対して評価するような視線を投げた。
「そういえば案内図にも見つけられたら凄いってかいてあったわね……へへ、お手柄かぁ」
かなみは素直に喜んでニタニタと笑っている。
「おい、かなみをあんまり甘やかすなよ。付け上がるから」
「ランスさんが厳しすぎるんですよ。それでかなみさん、ボールはどこに手に入れられたのですか?」
「え? 確か、男の子が落としていったのをそのまま」
かなみは思い出しながら応える。
「なるほど……。成り行きに近い状況だったのは分かりました。あれからボールには入れてない感じですよね。シィルさんの様子を見た限りですと」
ウルザは相変わらずピカチュウを抱っこし続けているシィルを見て言う。
「そうですね。私の考えすぎかもしれませんが、ボールに入れるのはどうしてもかわいそうに思えてしまって」
シィルはウルザの手前からか、少し申し訳無さそうに言う。
「やっぱりボールには入れたほうがいいのかしら……?」
「シィルさんはトレーナーではありませんし、この世界では入れずに放し飼いしてる人も珍しくありませんからそのままで良いと思いますよ」
シィルはその言葉にホッと一息をついた。
「そういや、ウルザちゃんは俺様が騙り野郎と戦ってた時、なんであん時、パッと出てこれたんだ?」
「あれは騙りじゃなくてただの同名だと思いますが……。トキワシティに向かっていたんですよ」
「トキワ?」
かなみが聞いたことない地名だったからか、ウルザに尋ねた。
「グレンタウンでカツラ氏と戦って、先ほど言った調査を済ませた後、一度ハナダの洞窟の入口へ向かい、そのまま修行がてら最後のジムがあるトキワシティに向かっていたんです。その道中でランスさんたちに会ったのですよ」
ウルザはタウンマップを開いて行程を説明した。
「先ほど話していた調査結果も割と最近のことだったんですね……」
シィルはうなずきながら納得した。
「てことは、私達はウルザさんの邪魔をしちゃったってこと……?」
「いえ……。正直な所迷っていたんです。正規の入口に入る資格をもらうためにポケモンリーグに行き、そのために最後のバッジを貰うか、それとも別の手段でハナダの洞窟へ向かうべきか……」
ウルザは当時を思い起こしながら話す。
「ウルザさんならば、正攻法で行っても良いと思いますけど……」
シィルもウルザが相当な実力の持ち主であることは理解していた。
「いえ。ランスさんたちに会って考えが固まりました。やはりこの世界にこれ以上いてはダメだと、強く思ったのです」
「なるほど。ウルザちゃんは俺様と一緒に元の世界へ帰りたいってことか。がははは」
ランスは相変わらずの脳天気な態度で高笑いをした。ランスの言葉を無視してウルザは冷静に続ける。
「正攻法で行くとしても、すぐにとは行きません。8番目のジムは相当な難関ですし、そのさきのポケモンリーグの四天王やチャンピオンと戦うとなると、うまくいっても1ヶ月、下手をすれば数ヶ月は時間を要するでしょう。もう私がここに来て半年です……、それまで私の意思が今のまま帰りたいと思えるか。自信が持てなかったんですよ」
ウルザは切実な声と表情でそう語った。
「そうよね……。いくらウルザさんでもこの先もトントンでいけるとは限らないし……」
「それもありますし、今のポケモンたちとの関係もあります。長期化すればするほど、別れが辛くなる一方です。まだ思いが強い内に、決断を下すべきではないかと、そう思っていた所に皆さんと会えたのです」
「つまりは俺様がウルザちゃんを変えたってことか」
ランスがニヤつきながらウルザに言う。
「ええ……。そうですね。またもランスさんに助けられてしまいました。これでもそれなりに感謝はしているんですよ?」
「感謝っていうなら、俺様がおっぱいのひとつ揉んでも殴らずにあんあんいってほしいんだがな」
「まだゲンコツが足りないんですか?」
ウルザは微笑みながらランスに言う。
「いや……いい……」
ランスはさすがに地雷に近づきすぎたかと、そこは一歩ひいた。
「とにかく、皆さんのおかげで私自身踏ん切りがつきました。そこは本当に感謝しています。皆さんと出会い、会話をすることで、私にとっての目的は、元の世界へ帰ること。ここでの未来と生活を営むことではないと、改めて認識できました」
ウルザは深々と3人へ頭を下げた。
「私達はともかく、ウルザさんはこの世界でも十分やっていけると思うし、大変なゼスに戻るよりも、このままこうしてたほうが……」
かなみは純粋な心情からそう提案した。ゼス国内がカミーラダークの傷跡が深く、立て直しには多大な時間と労力がかかることはリーザスの忍者としての客観からよく理解していた。
「いいえ。それは……ダメなんです。それは負けて、この世界に逃げたのと同じです。私は、あの時にもう負けないと決めたのですから」
ウルザは拳を握りしめてそう語った。
「まあそうだな。どっちみちかなみだけじゃ頼りないし、ウルザちゃんもいないと帰還なんて無理だろ」
「……」
かなみが目を見開いてランスを見ている。
「なんだかなみ。そんな顔して」
「いや、こういう時いつもなら俺様ならなんとかするとか、言いそうなのに意外だなって」
「バカか。俺様の手足としての話をしてんだ」
そう言ってランスはかなみの頭をひっぱたいた。
「いっ……もう」
「ふふふ……、さて、そろそろ部屋に帰りましょうか。もう良い時間ですし」
ウルザはすっと席を立ち上がり、他の面々も続いた。
「えっと確か私達は3階の部屋だったわよね。シィルちゃん」
「はい。そうですね。ルームキーにかいてあります」
シィルはウルザから渡されたルームキーをかなみに見せた。
「むふふ。今日はウルザちゃんも加えて4P」
「何言ってるんですか? 私は別棟の部屋です。それでは皆さん、おやすみなさい」
ウルザはやや申し訳無さげにそう言い、スタスタと足早く三人と別れた。
「な、なんだとー! おいシィル、今からウルザちゃんのルームナンバーみてこい!」
「無理ですよぉ。もうカバンにしまってしまいましたし……」
そういうわけで三人と一人は別々の部屋に泊まった。
―ランスたちの部屋―
「ぐがー。ふごごごごご……」
ウルザを抱けなかった鬱憤晴らしにと、シィルとかなみにいつも以上に激しく責めたランスは満足そうに熟睡していた。
「全くもう……ほんっとに、加減ってものをしらないんだから」
ランスとの性交を終え、ようやく落ち着いたかなみは服を着ながらランスに半ば怒りのような視線を向けていた。
「かなみさん。いつもいつも本当にすみません……」
シィルはランスの代わりにとばかりにペコペコ謝っていた。ピカチュウもよくわかっていないが、ついでに一緒に謝っていた。性交時は邪魔をされるとランスが何をするかわからないというので、バスルームに避難させている。
「シィルちゃんが謝ることじゃないわよ……。どうせ言っても止まるような理性もっちゃいないんだから」
かなみはため息をついて、ようやく服を全部着終えた。
「ふぅ……。それにしても、ベタベタと汗かいちゃったわね。シィルちゃん」
「何でしょうか?」
ピカチュウをあやしていたシィルは、ぱっとかなみを見上げる。
「その……。ここ、サービスが良いのか大きい浴場があるみたいなんだけど、行ってみない? 結構汗だくになっちゃったし」
かなみは少し様子をうかがうような声でシィルに提案する。あまり自分からそういうのに誘うのは慣れていないようだ。
「良いですね! ウルザさんから少しお金もいただきましたし……」
何かあったときの為にと、ランスが席を立っているタイミングで、シィルとかなみにはウルザよりねぎらいもこめていくらかこの世界のお金が渡されていた。シィルは内心ランスを一人で置いていくことに一抹の不安を覚えてはいたが、しばらくはおきなさそうなので大丈夫だろうと判断する。
「よし。それじゃあ、いってみよっか」
かなみは言葉以上に嬉しそうに、シィルを連れて部屋を出ていった。ピカチュウもついてきている。
―大浴場―
二人は大浴場のある場所へ、行きいくらか料金を払って女湯へ入っていった。宿泊自体は無料でもさすがにそこはシビアである。
脱衣所で服を脱ぎ、かけ湯と軽く身体を洗って中央にある大きな湯船に浸かる。
さすがに時刻も遅いからか、他にほとんど客もおらず、ゆったりと広い空間があった。ポケモンの出入りに関してはよほど大きいものでない限りは許されているらしく、ピカチュウも一緒に脱衣場までは入っている。ただ、電気ポケモンに関しては感電を防ぐためか入浴は厳禁となっている。
「ふーーー。生き返る……」
かなみは肩までつかって開口一番口を開いた。
「あったまりますねえ……。命の洗濯って感じがしますぅ……」
シィルは身体の力を抜いて遠い目をしながら言った。
「ふふ。シィルちゃんおじさんみたい」
「かなみさんだって、生き返るっていったじゃないですか」
二人はわらいあいながら、そう軽口を叩きあう。リーザス陥落で本格的に同行するようになってからの仲とはいえ、二人の間には友情か、はたまた姉妹かそれによく似た、心地よい関係が形成されている。
その声に気付いたのか、一人の女性が近づいてきた。
「お二人共、リラックスされているようで、何よりです」
「ウルザさん! 今回はどうも、ありがとうございます」
離れた場所にいたウルザが話しかけ、シィルはまっさきに礼を言う。かなみもそれに続いた。
「いいえ。お二人がこれまでされてきた事を思えば、当たり前のことをしているだけですよ」
ウルザは心底思っていることを、二人に告げている。彼女らが居なければランスはもっと取り返しのつかないことをしていただろうと、彼女なりに理解してるからだ。
「あいつへの牽制なら、ウルザさんのほうがよっぽどしっかり出来ていると思うけどね……」
かなみは自分にはまずできない容赦のない鉄拳制裁を思い起こしながら、ウルザに言った。
「私はお二人より付き合いが短いですし、だから強く出れるだけですよ」
ウルザはお湯をすくって白い肩にかけながら、そう口にする。彼女の白魚のような手と、お湯の光沢が、キメ細やかさを際立たせており、ふとかなみはそこに着目した。
「それにしても、ウルザさんってほんと……きれいよねえ。肌も白いし、スタイルも……すっごくいいし」
かなみは自分の姿と見比べながら言った。決して悪くはない方という自覚はあるにはあったが、ウルザを見てしまうと少しだけ気後れしてしまう感覚を持っていた。
「ふふ……。急にそんなに褒めても、何も出ませんよ?」
「あ。それ絶対言われ慣れてる反応だ……。余裕あるなあ」
かなみは益々ウルザに対して敬意か、はたまたかなわないといったような感情を抱く。
「私も初めてお会いした時からそう思ってました! 普段の姿も見ていて時々、うっとりしちゃいますけど。こうしてみると本当におとぎ話から出てきた人でも見てるようですぅ」
「ねー……。同性で言っちゃうのも変な感じだけど、ランスがあれだけ執心なのもちょっと分かっちゃうかも……」
シィルの言葉にかなみも共感した。
「……、お二人もつい先程までその”執心”のはけ口にされたのではないですか?」
ウルザは少しだけ意地悪な笑みを浮かべながらそう返した。
「えっ。嘘!? まだ匂いとかついてたり」
「うぅ……」
かなみは即座に反応して、立ち上がって自分の身体を触ったり、匂いを確かめる。シィルは恥ずかしがって、口までお湯につけていた。
「ふふ。ランスさんのことですから、これだけ魅力的なお二人が同じ部屋に居て、制御がきくわけありませんからね」
ウルザはにこやかに笑ってもう一度肩にお湯をかける。
かなみはその反応を見て、彼女なりのからかいであったことに気づき、再度湯船に浸かった。
「あーもう……。ウルザさんってば」
かなみは彼女にはかなわないといった表情を浮かべながらウルザを見ている。
「……。内心、本当は申し訳ないと思ってるんですよ。お二人に押し付けるような真似をしてしまって」
ウルザは少し謝罪の意味をこめた視線を、二人に送った。
「いえいえ押し付けるなんてそんな」
シィルは慌てて両手をウルザの前に見せて否定した。
「う……うん。こんなこと、ウルザさんに限らず巻き込んでいいことではないから」
かなみなりの本心であった。
ウルザは二人の反応を見て、すこし逡巡したような間を空けて、口を開いた
「お二人の前ですし、本音をいいますが……。別に私はランスさんと……その、すること自体はそこまで嫌ではないんです。ただ、もっと場の空気やムードなどをもっと読むというか、作るというか……」
ウルザは少し赤くなりながらぽつりぽつりと説明した。入浴しているからというだけではないのは明らかだった。
「そんなのランスに求めるだけ無茶よ……。さかりのついたわんわんやパワーゴリラなんかよりもっと始末に負えないんだから」
「分かっているんです。いるんですけどね……。それに今日は、別れをはっきり口にしただけあって、自分でしっかり気持ちの整理をする時間が欲しかったんです。どちらかといえばそちらの方が理由としては大きくて」
ウルザは二人の目を見据えてはっきりと言う。その眼から、シィルとかなみはウルザの本音であることを理解した。
「ウルザさん……」
「さて……。そろそろお湯から出ましょうか。あまり長く入っていると、のぼせてしまいますよ」
ウルザは気持ちを切り替えて、二人にお湯から出ることを提案した。
「そうね……。明日も大変なのは目に見えてるし、少しでも寝ておかないと。シィルちゃんは?」
「私も出ます。ランス様がもし起きておられたら、それはそれで……」
かなみに続き、シィルも立ち上がり、それを見てウルザもゆっくりお湯から出る。
「明日からは、帰還に向けて本格的に動きます。短い時間しかありませんが、どうかそれまでしっかりと身体を休めてくださいね」
「はい!」
ウルザの言葉にシィルとかなみもしっかりと答え、三人は共に大浴場を後にする。
―別れへの決意 ハナダシティ北方探索へ続く―