こんだけのガスであんな動き出来るわけないだろ! 作:山崎春のご飯まつり
曇らせってなんなんですかね。
Sideアルミン
エレンが岩を塞いだ後、僕とミカサは巨人が近づく前にエレンをうなじから引っ張り出そうとしていた。だがエレンにくっついている肉は兵団服を着ていなければ軽く火傷を負っていた程に高熱だった。
「信じられないくらい高熱だ!ミカサも手伝ってくれ!」
「わかった!」
ミカサが僕を後ろから引っ張ってくれる。だがミカサの力が加わって踏ん張っても片手しか抜け出せなかった。早くしなければ大量の巨人が来てしまう!
「アルミン!私が時間を稼ぐからそのうちに早く!」
「ダメだミカサ!例え君でもあの量の巨人では致命傷は免れない!現に僕一人でも抜けない今、君の時間稼ぎが徒労で終わってしまう!」
それを聞いたミカサは巨人達の方を見て、焦りで下唇を噛みながらエレンの抜き出しを再開する。今まで以上に必死に力を入れても片手1本という非情な現実を突きつけられてしまう。
このままでは間に合わない…!ミカサがエレンをそのままにしておく訳が無い、僕を信じてくれた2人を死なせてしまうっ……また僕は信頼を返すことができないのか?どうすればいいんだ…セラス…僕は、どうすれば…
そう考えてながらも、手よりも接着幅が大きい腰の部分を抜くため力を入れている。左半分は僕が、右半分はミカサが力を入れて引き抜いている。ミカサの方は僕より順調に剥がせているがそれでも間に合わない……すぐそこまで巨人が来ている…
ガスの音が聞こえ誰かが近づいて来るのがわかる。
「アルミン!ミカサ!今どういう状況!」
馴染みのある声が聞こえる。その安心感から声の方向を見ると、彼の右腕の上腕が兵団服越しでも分かるぐらい血で濡れていた、固まっていないことからまだ流れているのだろう。
その顔は冷や汗をかいて無理をしているように見え、つい力を緩めて容態を心配してしまう。
「セラス!み、右腕が血だらけじゃないか!」
「アルミン!今はエレンを巨人の体から抜くのが先!」
「っ!!」
隣からの怒声に現状を再認識し力を入れながら負傷しているセラスに話そうとした時、グダついてるのが気になったのかリコ班長が降りて来た。
「お前たち何をやっている!」
2人にエレンが巨人の体から剥ぐことができないことを話す。セラスとリコ班長は話している今も尚近づいくる巨人に焦りを覚えていた、リコ班長は咄嗟の判断で言う
「ならば切るしかない!」
そう言って自身の鞘からブレードを取り出し斬ろうとする、突然の物騒な発言と行動に制止の声を上げる。
「ま、待ってください!」
だが班長は決意が固かったようで、ブレードが肉に近づき、触れる。
だがブレードは肉に弾かれ、近くで見ると少ししか切れてなかった。
「っな!」
どういうことだ?ミカサなら、けどっ…ミカサでも多少は時間がかかる強度だ…巨人がもう目の前なのに…!
僕含め皆が焦り、限られた時間でエレンを救い出そうと奮闘する中、ただ一人の発する声に言葉を失う。
「……ミカサ、俺が巨人らを相手する。お前がどうにかその肉を切ってエレンを連れてアルミン達と壁を登れ」
彼の声だった。今、彼が言った言葉の意味がよく分からなかった。いや、言葉は通じる、けど僕の方がその意味を理解したがらなかった。
だが、張り詰められた状況下でどうにか情報を収集したい気持ちが、少しづつ、発せられた言葉の意味を紐解き理解させてくる。そしてふつふつと怒りが湧き上がり声を張り上げてしまう。
「っ!な、何を馬鹿なことを言ってるんだ君は!」
ミカサでも苦戦するような量を君一人で?しかもそんな血を流した状態で?無理に決まっている。
「…貴方はどうするの?」
隣でミカサが眉を顰めて聞く、彼女も僕同様の考えらしく、その発言には気がかりなようだ。その質問に彼はまるで想定してたかのように返答する。
「エレンが巨人の届かない高度まで上がったら隙をついて逃げる。さっき助けてくれたお詫びだ、尻拭いだけでもさせて欲しい」
ミカサは心当たりがあるような顔をして目を細める。そして覚悟を決めて鞘からブレードを抜く。
「まっ…」
待って
発した言葉が意味をなされる前にセラスは巨人の方に行ってしまう。伸ばした手は何も掴めなかった。
まだ…話し合ってないじゃないか、いかないでくれセラス、僕の無力さでまた、君を傷つけてしまう。
僕はあの頃からちっとも変わっていない。今だって、対等と思えた君が来なかったら何も進まなかった。僕は…僕はっ──「アルミン!!」
「アルミンしっかりして!今はエレンを剥がして安全な高度まで壁を登るのが先!」
「っ!ミカサはセラスが心配じゃないのか!」
「心配に決まっている!けど止める術がない以上、セラスのやろうとしていることに意味を持たせるのは私達にかかってる!」
「っ……」
ミカサの言い分に納得してしまった。今ここで嘆くだけであれば、何も得られず二度と彼に返してあげられない。ただ行動を起こせば、彼の行動に意味を持たせることが出来る、それが僕にできる彼へのお返しだと。
「……やろうミカサ、彼の行為に報いるために」
「…うん、」
ようやくエレンを剥がし終わり、ミカサとリコ班長に周りを警戒してもらいながら壁を登ろうとする。今も尚後ろからけたたましい肉を裂く音が聞こえてくる。恐らく彼だろう。急いで壁を登り始める。
終始続く後ろからのブレードによる轟音が僕にとって、現状唯一彼の生死が分かる判断材料となっている。
『ハァッッア"ァ"ッ!』
瞬間、今までの斬撃音ではなく、咆哮とも絶叫ともつかぬ声が背中から響く。
視線は上に、壁に向かうべきだった。なのに、
ほんの一瞬だけ、下を見た。見てしまった、彼の戦い方を。
セラスの戦い方は、訓練の時しか見てこなかったけど、すごい場馴れした動きのように見えた。ガスの噴射を含めても強いだろうなって。
けど、どこか制限をしているようにも見えた。彼ならここはこうしそうな時に、少し弱めに動いたり。だから今回の動きを見て、僕の感じたことが本当だと理解した。
彼は本当に、恐らく、今この瞬間だけなら、この壁の中の誰よりも強いのだと。
巨人との距離感、立体機動の噴かし方の加減、そして何よりも彼自身の今まで見てこなかった本来の身体能力、それらはどれをとっても今僕が見てる中では桁違いな練度だった。
巨人を目から潰し、視界を奪ってからの確実なうなじへの速攻。
明確な意味を持った斬撃で巨人の体勢をおのがままにする無駄のない動き。
そしてその全てを常時考えているであろう、集中力と知識力。その姿に新兵の面影は全くなく、歴戦の兵士にまで錯覚した程だった。
だが、気づいてしまった。あの動きをずっとできるのか、という不審な考えで注目してしまった。
彼が一つ動作をする度に、遅くなっている。
足がつく度に、その足を上げる速度が遅くなっている。
斬撃を入れるため肉にブレードを刺す時に手の震えの幅が大きくなることに。
極めつけに体の節々から増える赤い染み、そして儚げに落ちていく血液。
彼は、自傷しながら戦っている。僕達を守るために、自分の命なんて最初からどうでもいいみたいに。
僕はそれを壁から見ていることしか出来なかった。対等な友人が僕達のために壊れていく姿を、目に焼き付けることしか出来なかった。
壁の半分ぐらいまで登った時だった。
下から何かが落ちる音がした。
怖くなって振り返る。
そこには、体が血まみれのセラスが血を吐いて蹲っていた。
「セラス!!」
僕の声に気づかないのか、咳をするように血を勢いよく飛ばしている。
その直後、歪に曲がった足で立ち上がる。だが急にブレードを離して胸を強く抑えて血を吐く。
「セラス!!もう辞めてくれ!!僕達はもう大丈夫な高さまで来た!!逃げてくれ!!」
それでも尚、声が届いてないかのように落としたブレードを片手だけ拾い、もう片方は胸に抑える。だがブレードを拾った手はダランと伸びて、指先から血がタラタラ落ちている。
すぐ目の前に、仕留め損ねた巨人が2体、彼を見ている。これまで出したことの無い大声で叫ぶ。
「セラス!!早く逃げて!!」
今度は届いたのか、こちらを向かって。僕らを見たその顔は、笑っていた。
さっきの墜落で頭を損傷させたのか、血を流して片目を閉じている。
開いている片目からは、安心が伝わっていくるほどに、優しい目をしていた。
息遣いを荒くしながら、自身のガスボンベをコンコンと叩き、鼻で笑っていた。
そんな…嘘……だろ?
やめてくれ、そんな諦めた目をしないでくれ…
嫌だ、いやだ…僕はまた、目の前で友人を、初めて対等に思えた君を失ってしまう………
「やめてくれ…セラス…いかないでくれ…」
堪えていた涙が、頬を伝って落ちていくのを止められなかった。心がちぎれそうになった。
あぁ、あ…ぁ…やめてくれ、お願いします、やめてください
「セラスーーー!!!!」
瞬間、ふたつの斬撃が重なったように聞こえ、2体の巨人がうなじから血液を噴射させて倒れていく。
そこに現れたのは、緑のマントを肩に被った自由の翼。調査兵団の兵士長、リヴァイ兵士長がいた。
彼が助かった事実に安心する。すぐにミカサにエレンの体を預け、セラスの元へ壁を伝っておりていく。
「セラス!!」
「…おいそこのおかっぱ、こいつの同期か?運ぶぞ、手伝え」
「は、はい!」
そう言ってリヴァイ兵士長と共に、エレン共々壁の上に運んだ。
「彼は…無事なんですか?」
彼に巻かれている包帯が赤く滲んでいる様子を眺めながら言う。
「さぁな、死んだ奴らのほとんどは巨人の攻撃による外傷だ。内側からの傷なんざ、精々足の捻りか打撲ぐらいだ」
「これは一体どういう状況なんだ、何故壁が破壊されてる、そして何故その破壊された壁がクソでけぇ大岩で塞がれているんだ?」
事情を話し、兵士長は黙る。そして口を開いて、
「ガキの戯言としか聞こえねぇぐらいには信じらんねぇ出来事だな…だが、そこにいるガキが蒸気を体から出してるのも不可解だ」
指さす方向にはエレンがいて、確かに未だ湯気を出して眠っている。
大量の足音が近づいてくるのが聞こえる、その方向を見ると多数の駐屯兵団と、少数の調査兵団が駆け寄ってきた。
「こいつの身柄は一旦は憲兵団に渡るだろう」
エレンの方からセラスの方へ顔を向け、言う
「このクソガキにも言ってやりたいことがあるんだ、死なれちゃ困る」
そして2人は駐屯兵団に運ばれ、リヴァイ兵士長を除いた僕達3人も、その重役達からの情報収集を受け、その日が終わった。
今でも彼のあの姿が瞼の裏でイメージされる。
血だらけの兵団服
歪に曲がった足と腕
口元から溢れ出る鮮血
まるで呪いのように延々と、あの風景が浮かびなかなか寝付けられなかった。
対等な彼が死んでしまったら、またあの頃の何も出来ないアルミンに逆戻りだ。
もし僕にもっと力があったら、
もし僕がもっと賢かったら、
もし僕がもっと早く、冷静に、誰よりも考えて動いていたら、
彼は、あんな体にならなかったのかもしれない。
そう考えただけで、自身の無力さに改めて吐き気を催す。
セラス、僕は強くなるよ。
強くなって、君を今度こそ助けられるように。
これ以上、君を壊さないために。
少しベクトル大きすぎた自覚はあります。
オレは、頭がめちゃくちゃになっちまった…曇らせの重さは、その対象の潜在的な心の弱さに比例する。だから、仕方なかったんだ…
多分もう少し幕間続きます。
感想と評価よろしくお願いします!
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