こんだけのガスであんな動き出来るわけないだろ!   作:山崎春のご飯まつり

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心情描写ってこんなに書くのキツいんですね。
曇らせなのか湿らせなのか、それとも依らせなのかもう僕にはわからないです。
※依らせ=依存させ


幕間 sideクリスタ

 

Sideクリスタ

 

土ぼこりが舞う訓練場。

私は馬の背から投げ出されて地面に転がる訓練兵を目に留めた。

 

(…まただ)

 

何度も何度も、彼は馬に振り落とされていた。

それでも諦めずに、手網を握ろうと必死になっているのが遠目からでも分かった。

 

──気づけば、足が動いていた。

 

「………大丈夫?」

 

声をかけると、彼──セラスは、驚いたようにこちらを見た。

 

顔に土がついていて、所々に擦り傷もあって痛そうだ。

 

「馬に嫌われちゃっただけだよ」

 

そう言って、そっと馬に手を伸ばす。

大きな身体に臆せず、優しく撫でた。

 

馬はすぐに落ち着きを取り戻した。

セラスは、呆然とした顔でその様子を見つめている。

 

「ふふっ」

 

少しだけ可笑しかった。

 

「ほら、ゆっくり近づいて」

 

促すと、彼は恐る恐る馬に手を伸ばした。

指先が震えている。

 

あんなに失敗したんだ、馬に苦手意識を持つのは仕方ないよね。──けど、克服しようとしてる、現状に抗おうとしてる、私と違って。

 

そんな見当違いなことを思いながら、私は背中を押すように微笑む。

 

ようやく馬に触れられた彼に、「良かったね」と声をかけた。

 

「ありがとう、クリスタ」

 

「ううん、セラスの頑張りのおかげだよ」

 

いつものように、ただ、優しいクリスタを演じるだけ──

そのはずなのに。

 

彼の感謝の声と一緒に浮かんだ表情。

嬉しいとか、安心したとか、もちろんあった。

 

けど悲しみ、憐れみといった機微もあった。

 

まるで今私がしていることに気づいてるかのように。

 

まだ、違和感としか言えないし、確信はない。

 

ただ、もしそうだとしたら、彼はどう思うのかな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、一緒に遊びに行かない?」

 

 

解散式当日。

今日は夜まで何も無いから、この前の訓練で無くした髪留めの替えを買いに出かけようとしたらセラスに呼び止められ、突拍子もなく誘われた。

 

「?よく分からないけど、私も見たいものがあったんだ。よろしくね」

 

突然のお誘いに驚きながら、それを隠すように声色を変えずに微笑むだけの仮面を被る。

 

(……嬉しい)

それが最初に出てきた感情だった。

 

けれど、その後にやってきたのは、強烈な恐れだった。

 

私の中身を知られてしまう気がした。

 

幸いにも、ユミルを誘ってくれるようで安心した。

来るかどうかは分からないけど。

 

クリスタとして見てくれるのなら、それでいい。

だけど、もし……ヒストリアとして見ていたら。

演じてる私の奥にある、形のない、冷たくて、愛されなかった本当の私を見ていたら。

 

私は多分、もう私を認められなくなる。

クリスタとしても、ヒストリアとしても。

 

なのに───

こんなに怖いのに、どうして断らなかったんだろう。

 

どうして、ほんの少しだけ、この人になら…なんて思ってしまったんだろうか。

 

本当の私は、存在してもいいって、認めて欲しかったのかな。

 

自問自答の末に出たヒントに、少し胸がぎゅっと締め付けられ、笑顔の形を保つのが難しくなる。

 

背中を向けて崩れかける笑顔を隠す。

彼に2人きりで見られていると、何もかも吐き出してしまいそうになるから。

 

 

 

 

───

 

 

 

 

ユミルの半ば無理やりな方向転換で雑貨屋に着いた、当の本人は違うところ行っちゃったけど。

 

つまり今はセラスと2人きり。

さっきの考えもあってか、余計に緊張する。

 

けど、目的のものは買わないと。

そう言って入っていく雑貨屋の中はこじんまりとしてて、ほんのり木の香りがする。

 

(髪留め、髪留め…っと、あった)

棚を探して、お手頃で一輪の花が付いた髪留めを見つける。

 

(うん、これでいいかな)

 

 

その時、ふと視界に入った。

棚の隅、色あせたガラスの向こうに見える青を基調とした花が五輪付いている装飾の髪飾りが。

 

認識した時には、足が動いていた。

 

ガラスに手を触れ、その髪飾りの花を見る。

 

綺麗。

 

───懐かしい

 

何かは、分からないけど。

すごく大切な気がする。

 

値札を見て、思わず手を引っ込める。

 

(高い……)

訓練兵の少ない給料では、手が届かない額だった。

 

そっと髪飾りを棚に戻す。

心に空いてしまった何かをそこに残して、先程の髪留めを選ぶ。

 

会計に持っていく時、先程見た髪飾りが目に映る。

 

(…仕方ないよね)

無理して買ったって、どうせすぐ壊れるかもしれない。

 

自分には、そういう運命が似合っている───そんな考えが自然と浮かび上がる。

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

雑貨屋で買うものが終わり、ユミルとも合流して帰り道。

 

夕日の光が、帰路に3つの長い影をつくる。

 

さっき買った髪留めが入った小包を胸の前にそっと抱きしめる。

 

(これでよかったんだ)

私なんかより、よっぽど似合う人がいるはずだから。

 

 

その時、その思考を中断させるかのように、セラスが振り返り止まる。

そして私とユミルにさっき雑貨屋で買ったであろう、私と同じ大きさの小包を渡してくる。

 

「クリスタは勿論、ユミルにも一応助けてもらったことがあったからね。はいこれ、お礼。」

 

受け取った小包は、ほんのり重みがあり、何が入ってるのか検討がつかなかった。

 

ユミルのからかいを制して、彼に今開けていいか許可を取る。

 

恐る恐る中を覗くと、最初に見えたのは青い花びらだった。

 

 

 

 

「───ぇ」

 

不意に声が出てしまう、それほどまでに驚きがあった。

続け様にその正体を表していく。

 

「これ…さっき見てた髪飾り…」

五輪の花びらの装飾が付いている、現実の自分を受け入れるために諦めた髪飾り。

 

「気づいてたんだ……」

自分で発した言葉に、嬉しさと恐ろしさが帯びてるのを感じる。

気づかれてしまったのではないか、と。

 

 

付きっぱの値札を見る。

うん、所持金じゃ絶対に足りない金額が書かれている。

 

「けど、これすごく高かったし、それに…私はそこまで大したことしてないよ」

 

見れば見るほど、その金額に見合ったことをしたのか、過去の自分を振り返って自己嫌悪に陥る。

 

 

「死んだら金なんてただの金属に成れ果てるんだ、生きてるうちに使った方がいいだろ?それに馬術は俺にとっては必要なものだった、使えなければ死活問題だったからすごく助かったんだ」

 

 

あくまでお礼として、彼は言う。

そこに物の価値だったり、行動の度合いを気にする様子は一切感じなかった。

ただ単純に、まっすぐな感謝が伝わってくる。

 

「…でも…私よりできる人も沢山いたし、そ、それに最後まで頑張ったのはセラス自身だよ」

 

 

 

「あの時クリスタが声をかけてくれなかったら今の俺はいなかった、あの時声をかけてくれた君だから恩返しをしたかったんだ」

 

 

 

その言葉に、奥底にしまい込んだ気持ちを、不意に引っ張り出してしまった。

 

「っ…あなたは、私の事そう思ってくれるんだ…」

心が揺れた。

抑えてた何かが、音を立てて崩れていくように。

 

──ずるいよ。

あの目をする貴方だからこそ、

あの憐れみの顔を向けてくる貴方だからこそ、

 

(少し…期待しちゃうよ)

 

 

「………あっ、ご、ごめん!別に嫌ってわけじゃないの!ただお礼をされる覚えがなかったから気になっただけで…」

 

無意識のうちに出てしまった(ヒストリア)を引っ込め、ひび割れの仮面(クリスタ)を被る。

取り繕うように慌ててる私を、彼は微笑みながら自分も悪かったと言う。

 

すごく優しくて…心に染みる。

 

髪飾りを手に乗せる。

花の形は、幼いころに見た――大切な誰かの髪に挿されていたものとよく似ていた。

 

「…この髪飾りの花、小さい頃に誰かと一緒に採ったのを思い出して…懐かしくて」

 

自分でも気づかないうちに、言葉が零れる。

さっき引っ込めた私が漏れ出るように。

 

「気に入ってくれた?」

 

「うん、ありがとう、セラス。今までで一番嬉しい!」

 

言葉より先に、笑顔が出た。

本物の笑顔。

自分でも驚く程に、自然と顔に咲いた。

 

───あ

今の私、演じてなかった。

 

気づいた時には、遅くて。

周りの目が怖くて、

だけど貴方に見られてることが、何より嬉しくて。

 

だから

 

 

(君だけには……見られても、いいのかもしれない)

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

壁が破られ、

ユミルとの支援を要求して、先に内地に戻る。

 

夕方になると、続々と見知った人たちが疲れ果てた様子でベンチや壁にもたれかかっていた。

 

同じくベンチの机に肘をついてる黒髪の子、ミーナを見かけた。

彼女から、あの後トロスト区内で何があったのかを聞き、ことの深刻さを理解した。

 

同時に彼──セラスに対しての惚気を言ってきた。

どうやらミーナはセラスに助けられたらしい、抱きしめられて、密着して。

 

(私はないのに……)

モヤッとした気持ちが心を埋め尽くす。

 

あの出来事から、少し気になっていた彼を探す。

けど、見渡す限り見当たらなかった。

 

嫌な予感がした。

ライナーを見つけ、駆け寄る。

 

「ライナー!セラス見なかった?!」

自分でも驚くぐらい声が出た。

 

その反応にライナーは少し困惑し、渋りながら言う。

 

「ク、クリスタ?…いや、今はセラスか……そういやこっち着いてから見てねぇな」

 

「ちゃんと生きてるよね?」

 

「あ、あぁ…あいつの戦い方はバカそのものだが、戦闘力だけならミカサと同等だからな」

 

「壁の中で死ぬなんてありえないだろう」と付け加え、一旦安心する。

 

何か言いたげなライナーを気にも止めず、周囲の人から情報を集めて、彼の行き先を探した。

 

 

 

 

 

 

大通りから外れた、薄暗い道。

その道の先を覗いた瞬間、

見覚えのある背中が、そこにはあった。

 

(……いた)

だけど、少し思い詰めてる様子に見える。

 

(近づいていいのかな…)

 

けど、近づいて、私は何を言えばいいの?

なんて顔して接すればいいの?

 

(また、いい子(クリスタ)の顔をしなくちゃいけないの?)

 

(それとも……)

 

足音に気づいたのか、こちらを向いてきた。

 

「セラス、ここにいたんだ」

 

緊張で震える喉で、精一杯いつものような声を出す。

 

振り向いた彼のシャツに、ひとつ違和感がある。

 

「ねえセラス、シャツの胸らへんに人の顔みたいな濡れ跡あるけどどうしたの?」

 

うっすらと滲んだ涙の跡が見えた。

しかも2つ。

 

セラスから話を聞いた。

2人とも、助けられてつい抱きついてしまったらしい。

彼女達が本当の所どう思ってるのかは分からないけど。

 

(嫌だな……)

そんなこと思う資格なんてないのに、

ただ、羨ましかった。

 

芽生えた感情を自覚した。

笑えない。目が笑ってないのが、自分でもわかる。

 

私の違和感に気づいて彼は何気なく質問する。

 

 

「……なんで俺と2人きりだとやめるの?」

 

 

その言葉に胸が締め付けられる。

やっぱり気づいてた

全部見透かされてた。

ユミルと同じ目で、セラスも、私を見ていた。

 

自暴自棄となりつい吐露してしまう。

その言葉に、彼は涙を流して頭を撫でてくる。

 

 

「クリスタ、少しずつでいい、俺の前で演じないで欲しい。もっと本当の君を知りたいから」

 

 

 

 

 

─────なに、それ。

 

今まで、貴方を騙してたのに。

それを知ってた癖に。

なんで優しくできるの?

 

救われたい。

けど、こんな偽善者が救われていいはずがない。

(クリスタ)で得た優しさで、嬉しくなってる自分が、

そんな温かい優しさを、貰っていいはずがない。

 

見つけて欲しい。

けど、都合のいい仮面(クリスタ)を、みんなが求めてる。

脱いだ素顔は正反対な(ヒストリア)

周りから求められない現実が怖い。

 

 

その思いが、差し伸べてくれた手を払って、自分の思いの丈を路地裏いっぱいに響くように吐き出してしまう。

 

 

冷静になって体の芯が冷える感覚を覚える。

 

やっちゃった。

やっちゃった。

やっちゃった。

 

 

もう、誰も(ヒストリア)を、認めてくれない。

 

また、奥でひとりぼっちだ。

 

 

 

 

 

 

 

「そんな前提必要ない、俺が欲しいのは君の心からの笑顔だ、君の幸せそうな笑顔を見たいんだ」

 

 

 

───ぇ

 

 

 

「……なんで…」

 

 

…貴方は私を赦すの?

酷いこと言ったのに。

突き放すようなこと言ったのに。

 

なんで、それでも貴方は本当の私(ヒストリア)を求めるの?

 

 

 

 

 

背を向けた。

走り出した。

逃げた。

 

 

けど、足が止まった。

さっきの彼の言葉が頭から離れない。

 

『俺が欲しいのは君の心からの笑顔だ』

 

 

心が泣いていた。

だけど、ずっと見て見ぬふりをしてた。

本当はずっと気づいて欲しかった。

本当はずっと見つけて欲しかった。

 

セラスの言葉は、私の深い所まで触れていた。

それは、私の中の(ヒストリア)を引きずり出そうとした。

 

 

───私は、本当は、救われたかったんだ。

 

 

 

振り返る。

今更、演じる余裕はない。

それに、演じる必要も無い。

 

涙がこぼれてくる。

 

顔が歪む。

でも、止められない。

止めたくない。

 

 

 

「なんで貴方は…(ヒストリア)を見つけようとしてくれるのっ…」

 

問いかけながら、一歩ずつ近づいていく。

 

「なんで…貴方は私を…(ヒストリア)のままにさせてくれるのっ」

 

足元が覚束ない。

震えで今にも倒れそうだ。

 

「なんでっ………こんなっ…いい子のクリスタじゃないと何も無い(ヒストリア)なのに…?こんなにいらない子なのにっ…?」

 

怖くて逃げたくて、それでももう、背を向けられなかった。

 

 

「生まれて来る子に罪は無い。それに、何もないと思うのならこれから是が非でも見つけてみせるよ」

 

 

 

身体が勝手に動いた。

勢い良く、彼の胸に抱きついていた。

自分でも驚くほど強く、しがみつくように。

それをただ、優しく受け止めてくれた。

 

──あたたかい。

 

あの日、抱きついた母に押し飛ばされ、叶わなかった温もり。

吐露できなかった涙を、受け止めて欲しかったあの頃。

それを今、取り戻した気がする。

 

「………ひっ、く……ぁ…あなたは…私を見てくれるの…?…必要としてくれるの…?」

 

上を向き、顔を伺う。

悲痛な顔とは打って変わって、安心した顔でこちらを向き、縦に振る。

 

その表情で、何もかも、崩れていく。

私はもう、(クリスタ)じゃない。

(ヒストリア)のまま、この人に、見られている。

 

 

「…っ!…ぅん……!…うん!見せるよ…貴方(セラス)には」

 

 

ようやく、私を見つけられた。

心と体が、繋がった気がした。

 

 

 

「……だからセラス…私がいることに…私が生まれたことに…一緒に意味を……」

 

 

 

 

 

やっと、生まれてきてよかった、って思えた。

 

 

 






なお、ヒストリアは王政復興まで依存体質が抜けないものとする。

自問自答Q&A

Q、なぜ主人公はそんなに金があるの?
A、人格者な貴族を助けたら骨董品を貰って、それを内地にある質屋で買い取ってもらったから。

Q、ライナーは好きですか?
A、ケツにブレードを刺したいぐらいには好きです。

Q、ジャンは?
A、ミカサ?そんな女より俺とつるもうぜ。

Q、昔のリミッター関連の大怪我で後遺症とか残らなかったの?
A、昔から妙に治りが早いんですよね、彼。

以下怪文書




ヒストリアを依存させて、自分にしか出さなかった本音交じりがいつの間にか主人公に全部見せてしまって、唯一の理解者っていう立場を奪われそうになるユミルが見てぇぇー。
自分の立場を取り戻すために、初めて他人の為に生きた人生に自分の為っていう行動原理が強く刻み込まれるんだよね。
そしていずれヒストリアを守るため、じゃなくて自分を守るために取り変わる瞬間の気持ちと、それに気付いて自己嫌悪するユミルが見てぇぇー。クリスタを鏡として過去の自分を見てたはずなのに、いつの間にかその鏡が歪曲して自分を映さなくなったら、焦るよねぇ?是が非でもその鏡を直そうとするよねぇ?おめでとうユミル!その利己的な気持ちが芽生えることで初めて、君は自身の人生を自分の為だけに使ったことになる!君の願いは叶うよ?これまで欲しがってた自分だけの人生だもんねぇぇ??喜べよ?

ま、そんな残酷なこと書かないんですけどね。ユミルは悲惨な人生歩んでるってのは百も承知なんで、主人公の目的にはユミルも含まれています、是が非でもユミルを笑わせて見せます。タイムリミットは近いんで構想練らないと( つ・∇・)つこねこね

ヒロインって誰がメジャー?

  • ヒストリア
  • アニ
  • サシャ
  • ジャン
  • ミーナ
  • ライナー
  • アルミン
  • リコ
  • オルオ
  • (大穴)女型の巨人
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