こんだけのガスであんな動き出来るわけないだろ!   作:山崎春のご飯まつり

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連休が終わり、忙しい日々が戻ってきました。
これまでのペースだと内容が支離滅裂になる気しかしないため、気長に待って頂けると幸いです。

誤字報告、感想、評価、いつもありがとうございます。

ではどうぞ



19、

 

 

Side エレン

 

入団式が終わって班の先輩達と城に戻ったが、セラスのやつは戻ってしばらくして雑巾を持って部屋の掃除を始めた。

 

 

「お前、最近いつも掃除してるよな。そんなに掃除が好きなのか?」

 

興味本位で聞いてみるが、返ってきた答えに顔を引き攣ってしまった。

 

 

「いや、なんかさ…掃除してないとあの人の目が怖く感じてきてさ…なんか、やらかしたのかもしれない…」

 

心做しか周りを気にしてる気がする。

確かにあの城の大掃除以来、リヴァイ兵長のセラスに向ける目が変わったように思える。こう…観察してるというか、感心…?してる気がする。

 

 

「確かに目つきは怖いけどよ、掃除なら寧ろよく思って貰えてんじゃねぇか?」

 

この数日一緒に過ごして、あのリヴァイ兵長のことを幾分か知れた。あの人は重度な綺麗好きだ、オレが几帳面にやった箇所も何度もやり直しさせられて嫌でも理解した。

あの人は巨人だけに留まらず、ホコリとチリの一片たりとも残さないんだ、ってな。

 

 

「俺も最初はそう思ってめちゃくちゃ頑張って掃除してる所を見せつけたよ。けどさ…余計目つけられたんだよぉ…」

 

 

 

(なんでそうなるんだよ)

 

(けどそういやコイツ…一発でリヴァイ兵長のチェックをクリアしてたな…いい掃除してるって点で目付けられてんじゃねぇか?)

 

 

「な、なら辞めたらどうだ?自分から目をつけられることしてんだからよ、やらなくなれば兵長だって見なくなるだろ」

 

 

「とっくにやったよ…やったけどさ…そしたらあの人なんて言ったと思う?

 

"いつもの掃除は辞めたのか?"

 

だぜ?しかも怖い顔で。もうどうしようもないよ…」

 

 

そういって悲しげな様子で雑巾を濡らしに外に行った。同時にリヴァイ兵長が部屋に入ってきて椅子に座る。

 

「おいエレン、あのクソガキはどうした」

 

 

「え?あ、セラスなら雑巾濡らしに外の井戸に行きましたけど…」

 

 

「そうか…ならいい」

 

 

 

───えっ…

 

 

(い、今っ…リヴァイ兵長が…笑った!?)

 

(あの仏頂面のリヴァイ兵長を笑わせるなんて…セラス…あいつ本当に何者なんだ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の夕方、特別作戦班の先輩方と遠征の確認をしていた。

 

「オレたち特別作戦班はここだ。5列中央待機」

 

 

指をさされた場所を見ると、陣形の後方の中央だった。

 

「随分と後ろなんですね」

 

オレの質問に答えるようにグンタさんが話す。

 

 

「この布陣の中で最も安全な配置だろう、支援物資を乗せた荷馬車よりも手厚い待遇だ。」

 

「この壁外遠征が極めて短いのもお前をシガンシナ区に送るための試運転みたいなものだからな、とりあえず"行って帰ってくる"のが今回の目標だ」

 

 

 

(オレを…守るための配置)

 

思い出すのはトロスト区の壁を塞いだ時、皆が命を犠牲にしてまで守ったあの一幕。オレのせいで、沢山の人が死んだ。

 

「…あの……オレにはこの力をどうすればいいのか分からないのに、事をこんなに進めて大丈夫なのでしょうか……」

 

 

グンタさんは少し間を置き、質問してくる。

 

「お前…あの時の団長の質問の意図がわかったか?」

 

 

「え?」

 

実験体の巨人が殺された現場にいた時に言われた団長からの問いかけを思い出す。

 

 

「先輩方にはわかったんですか?」

 

 

「さぁな」

「いいや」

「いいえ」

「俺もさっぱり分からなかったぞ」

 

 

各々が否定する。

 

 

「もしかしたらこの作戦には"行って帰ってくる"以外に何か意味があるのかもしれん。」

 

「そうだとしたら団長はそれを兵に知らせるべきでないと判断した、ならばオレたちは"行って帰ってくる"ということに終始すべきだ。団長を信じろ」

 

 

「………はい…」

 

 

 

 

(信頼…か)

 

 

(オレも信頼関係を築けるのだろうか)

 

 

(オレにも…心の底から信頼出来る仲間が…)

 

 

 

目線の端から多数の人影が目に映る。

後ろを振り向くと馴染みのある顔がぞろぞろといた。

 

 

(……あいつら)

 

 

(昨日は誰が残ったまでは分からなかったけど…セラス以外に、本当に調査兵団に…)

 

 

帰路に立っているオルオさんに声をかけ、接触の許可を貰ってアルミン達の方に行く。

 

 

 

「オーイ!」

 

 

「!!」

 

ミカサとアルミンがオレの声にビクッと体を震わせてこちらを振り返る。

 

 

「エレン!」

 

 

「よぉアルミン、しばらく振りにあった気がするぞ」

 

 

「何か…酷いことをされなかったの?体の隅々まで調べ尽くされたとか、精神的苦痛を受けたとか…」

 

服を掴んでこっちを心配してくるが、至って見当違いな事ばかり言われてるので否定する。

 

 

「……あのチビは調子に乗りすぎた。いつか私が然るべき報いを…」

 

 

「…お前まさかリヴァイ兵長のこと言ってるのか?」

 

 

 

「エレン!」

 

オレらの声が聞こえたのか、同期の奴らも寄ってきた。

 

 

「!お前らも調査兵になったのか?」

 

 

(今目の前に居ない奴を考えると…)

 

「ってことは憲兵団に行ったのはアニとジャンとマルコだけで、ほかの奴らは皆駐屯兵かそれ以外ってことか」

 

 

「マルコは死んだ」

 

 

隣からジャンが出てくる。

 

「ジャン!なんでお前がっ…って今なんつった?マルコが………死んだって言ったのか?」

 

 

「誰しも劇的に死ねるとは限らねぇようだ。どんな最期だったのかもわかんねぇよ、立体機動装置も外れてたしな」

 

 

正面に向かって顔を近づけてくる。

 

「お前、巨人になった時ミカサを殺そうとしたらしいな?それは一体どういうことだ?」

 

 

記憶にない。だから、ただ周りから貰った情報を頼りに考えると…

 

「本当らしい…巨人になったオレはミカサを殺そうとした」

 

 

「……お前ら聞いたかよ、これが現状らしいぞ」

 

「このために、オレ達はマルコのようにエレンが知らないうちに死ぬんだろうな」

 

 

(もし、オレがこのままだったら…そうなっちまう。いや、そうさせちまう…)

 

 

「ジャン…今ここでエレンを追い詰めることに一体なんの意味があるの?」

 

 

「……あのなミカサ、誰しもお前みたいにエレンのために無償で死ねる訳じゃないし、アイツ(セラス)みたいに体ぶっ壊してまで時間稼ぎをできる精神力も、身体能力もないんだ」

 

「オレたちはエレンに見返りを求めている、きっちり値踏みさせてくれよ…自分の命に見合うのかどうかをな」

 

 

肩を掴んで揺さぶってくる。

 

「だから…エレン。お前、本当に……頼むぞ?」

 

 

 

(…オレが、しっかりしねぇと、皆が無駄死になる)

 

 

(オレが……やり遂げねぇと、こいつらに見合う"何か"を渡せてやれない)

 

 

(オレがっ………)

 

 

「……あぁ」

 

 

 

やらねぇと、こいつらは先に進めない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと……ところで、セラスは何処にいるの?エレンと同じ班って聞いたけど」

 

 

張り詰めた緊張を解すように、クリスタが声をだす。それに合わせるようにライナーが周りを見渡すと、

 

 

「そういや見てねぇな。エレン、あいつとは別行動なのか?」

 

 

「あ、あぁ、アイツなら別途で作戦を聞いてるらしいからな。けど今なら……」

 

(確かこの時間だったら……)

 

 

「リヴァイ兵長と紅茶飲みながら雑談してんな」

 

 

 

「「「「は?」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブェェェェックシュイ!!……っあ"あ"あぁ」

最近多いな…くしゃみ。

 

 

「ッチ…汚ぇな。……おいクソガキ、ライフハックの話は中断だ、箒と雑巾を持て、くしゃみの原因の埃を一片残らず狩り尽くすぞ」

 

 

 

「あ、………はい…」

 

またかよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side out

 

 

やっと終わったよ…兵長との掃除付き合い。ご近所付き合いなら聞いた事あるけど…掃除付き合いは兵長が初めてだ、二度としたくねぇ。

 

「やっと終わりましたね……」

 

一応声をかけるが、兵長はチェックに集中してるようだ。

棚を木目に沿って指でなぞっていく。満足したのか、少し口角をあげる。不気味なんだよそれ。

 

「相変わらずやるじゃねぇかクソガキ、日頃の掃除の面では褒めてやるよ」

 

 

今更そんなんで有頂天になれねぇよ。

こちとら濡れ雑巾持ちすぎで両手シワシワなんだよ、勘弁してくれ。

 

 

「もうこんな時間か…てめぇのライフハックの話は悪くなかった、機会があったらまた聞いてやるよ」

 

 

そう言って踵を返して扉を開ける。その途中、言い忘れたのか口を挟んでくる。

 

「そういや今日は入団したガキ共が来る日だ、てめぇの同期もいるかもしれねぇ」

 

 

「…それだけだ」と言ったのを最後に扉を閉じる音が部屋に残り、空間には静寂が訪れる。

 

 

「もうそんな時期か…」

 

今日はもうやることはないし、消灯時間まで自由時間か…

 

 

「馬と戯れてくるか」

 

 

馬小屋に行こ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

馬小屋に着くと先客がいた。

金髪で小柄な女の子の見た目と、その子より頭1つデカい茶髪の女性───

 

「ってクリスタとユミルかよ」

 

 

声が届いたのか、こちらを振り向いては歩いて近づいてくる。

 

「あっ、セラス」

 

「よぉ、久しぶりだな」

 

 

「点検の時以来か、何してたの?」

 

 

質問に答えるように、ヒストリアは馬の方に指を指す。

 

「この子達を見に来たんだ」

 

「私はクリスタの付き添いだよ…ったく、他の奴には相変わらずお人好しが出ちまうんだからな、追い払うのが大変だったぜ?」

 

 

 

少し思い詰めた様子で下を向き、呟く。

 

「仕方ないでしょ……失望されるのが…まだ、怖いんだから…」

 

 

それを聞き、ユミルと目を合わせる。毎度俺がやっても仕方ないので、ユミルに向けて顎をクイッとして任せた。

 

 

「…はぁ、クリスタお前、コイツには本当の顔見せてんだろ?ズルいよ、私には見せたことないクセに……」

 

突然の口撃に図星だったのか、一瞬ヒストリアの肩が震える。

その様子を見たユミルはそれでも構わず続け様に話す

 

 

「けどさ、セラスが特別って思うのは別にいいよ。コイツはいつも人が気にしてる所にズケズケと入ってきては、ぐちゃぐちゃに乱して帰っちまうような奴だ。」

 

「だがコイツなりにお前を見てるし、それでお前が自分を隠さないってんなら、それがお前にとっての救いなんだろうな」

 

 

 

 

「でも、それで終わるのは違ぇだろ」

 

 

「…え?」

 

下に俯いてたヒストリアが、思わぬことを言われたように顔をあげてユミルを見る

 

 

「他人に失望されるのが怖いのは分かる。けどよ、お前が"本当の自分"として生きたいなら、セラスの前だけじゃ足りねぇんだよ」

 

「コイツもコイツでお人好しだからな、きっとお前を切り離すことはできねぇよきっと。だからお前はずっと、コイツに甘えるようになっちまう」

 

ユミルがこちらを向いて、すぐヒストリアの方に向き直す。

 

 

「だからさ…頼るだけじゃなくて、ちゃんと、自分の足で立ってみろよ。じゃなきゃ、お前の"居場所"ってやつは、いつまで経っても他人任せだ」

 

 

「………うん」

 

 

思うところがあったのか、ヒストリアは再び俯き、小さく頷く。

 

「話は終わりだ。ほら、メソメソしてねぇでさっさと戻るぞ」

 

 

「ち、ちょっと待ってよユミル!あ、セラス、最後に少しいい?」

 

そう言って、こちらの返答を待たずに抱きついて胸に頭をスリスリしてくる。

 

 

「……よし。じゃあねセラス」

 

満足したのか、離れて手を振りながらユミルの方へ戻っていく。なんの意味があるのやら。

 

 

 

 

なんか色々疲れたし…戯れんのはまた明日でいっか。なんかすごい目で馬たちがこっち見てきたけど、気のせいか。

 

なんか人っぽい馬もいたけど……

…いや、馬っぽい人か?

どっちでもいいけど、気のせいか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────

~30日後

 

 

 

 

カラネス区の大門が開かれる。

前方にはリヴァイ班の人達とそれを囲うようにエレンがそれぞれ馬に乗って、自由の翼の刺繍がされた緑色のマントを纏っている。

 

 

思い出すのは9歳の頃、気になって見た大通りを大きな列で進行してる緑のポンチョを着た集団達

 

この世界がなんなのかを明確に理解した瞬間。そして、まだ信じたくない気持ちで溢れていた時だった。

 

 

「なんだお前、緊張してんのか?フッ、まだまだガキだッブフゥゥゥ!」

 

隣から舌噛みおじさん(19才)が話しかけてくる。

俺を気遣っての行動だろう、左手を上げて大丈夫だとジェスチャーする。それを察したのか、オルオさんは不満げになりながら自前のハンカチで口元を抑えて列に戻っていく。

 

 

 

 

包帯で巻かれた左手を見て、昨日の内地で巻き込まれた事件を思い出す。

 

 

『……ごめん、セラス』

 

 

事件が終息した後の、去り際にアニが言ってきた言葉が頭から離れない。

 

その謝罪が何を示しているのか、終ぞ分からなかった。

 

俺と敵対することか?

それとも、罪悪感を減らしたかったからか?

考えれば考えるほど、思考の海に沈んでいく感覚に陥る。

 

 

 

 

……何にせよ、俺の今回の遠征での最優先事項は、原作軸からの大きなズレの対処と、リヴァイ班の生存、………そしてアニが殺す人数の削減だ。

 

 

 

 

 

アニ、お前にこれ以上人を殺させないからな。

 

 

 

 




ちなみにミーナは駐屯兵団に行きました。
裏話だと、奪還作戦でミーナは巨人に近づかれた時漏らしてしまい、私には無理なんだな、と察して駐屯兵を選びました。対峙した巨人はミカサが倒した。

駐屯兵団との絡みもあると思うので、その時にミーナを出そうと思います。

感想、評価、よろしくお願いします!
それではバイバイ

閑話何読みたい?

  • ライナーとの兵士ごっこ
  • ヒストリアとの馬術訓練
  • アルミンのシャウト事件
  • アニとのハンカチ
  • アニとの対人格闘訓練
  • 外伝Wall sina goodbye
  • ジャンとコニーとのガス吹き訓練
  • サシャとの狩猟体験
  • ユミルとの秘密の取引
  • リコイアンミタビの奢り飯
  • リヴァイとの掃除道具発明日記
  • 主人公の周りからの評価+α
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