こんだけのガスであんな動き出来るわけないだろ!   作:山崎春のご飯まつり

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ここら辺は結構エレンの描写が重要だと判断しちゃいまして、結構エレン視点が多いです。

ではどうぞ




20、

 

 

旧市街地を出るとそこには一面に広がる草原。陽の光が眩しく、片手で日陰を作って目を明るさに慣れさせる。視界を遮るのは壁外では自殺行為だが、空を飛ぶ巨人など聞いたことも見た事もない、だから許して欲しい。

 

 

雲ひとつない晴天。こんないい天気の日にはピクニックにでも行きたいところだが、人類が置かれているこの惨状がそうさせてくれないのは何とも世知辛い。

 

 

 

『長距離索敵陣形!展開!』

 

 

 

エルヴィン団長の指示と共に、中列から離れるように左右の兵達がお互いに広がっていき、索敵の幅を拡げていく。

 

 

俺ことセラス含む特別作戦班の6人は陣形の後ろ真ん中、つまり5列中央待機にいる。

 

年中人員不足な調査兵団のため、皆は一人一人が離れていてかつ責任重大だろうから神経ピリピリして辛いに違いない。この点については兵長に拾われて良かったのかもしれない。

 

 

「アイツら…」

 

 

前からエレンの心配の声がか細く聞こえる。団長のあの入団式の演説を聴いたのだから仕方ない、新兵の初の壁外調査での生存確率は50%、つまりその通りにいくと必ず俺達の知ってる誰かが死ぬ計算になる。

 

 

「大丈夫だよエレン。セラスから聞いた話だと、ほとんどの子が上位10名だったんでしょ?」

 

「ペトラの言う通りだ。それにお前が今すべきことは、自分自身を守ることだ。お前が死んでしまえば、同期が調査兵団に入った意義のほとんどを奪うことになる。気張れよ」

 

「っ…はい!」

 

 

ペトラさんとエルドさんが話かけ、エレンの顔にあった曇りが薄くなっていく。流石ベテラン、腕前だけでなく新兵の子守りとメンタルケアもバッチリだ。

 

 

「ふぅ……にしても平和だなぁ」

 

 

「当然だ、前にも言ったがここは陣形の中で最も安全な位置だ。そうそう巨人に見舞われることなんて無いはずだ」

 

 

つい呟いてしまった独り言を拾われてしまい、少し恥ずかしい。流石真面目なグンタさん、どんな些事にもしっかり受け答えするその姿勢リスペクトっす。

 

 

 

 

 

『口頭伝達です!!』

 

 

 

突然の大声に今まで心にあった平穏が一瞬にして崩れ去り、右翼側から近寄ってくる1人の兵士の知らせに耳を傾ける。

 

 

 

『右翼索敵壊滅的打撃!右翼索敵一部機能せず!!以上の伝達を左に回してください!!』

 

 

「聞いたかペトラ、行け」

 

「ハイッ!」

 

 

ペトラさんが班から離れ、左翼へ向かっていく。

 

……やはりこうなったか。俺の影響がいい方向に向かうと1度でも思ったのが間違いだった。今はジャン達が心配だ、原作以上にやられてないといいが…

 

 

右後ろから煙弾の音がして振り向く。放たれた色は"黒"。

 

緑は進行方向決め

 

赤は通常種発見

 

紫は緊急事態

 

黄は作戦中止

 

そして黒は"奇行種"、今回だとアイツ(アニ)だ。

 

 

「おいエレン、お前が撃て」

 

「ハイッ!」

 

 

馬に備え付けられた黒色のマークが記された煙弾を装填し、真上に向かって発射する。

 

 

「ッチ、何てザマだ。やけに陣形の深くまで侵入させちまったようだな」

 

 

 

ほんとそう、しかもその上巨人を引き連れてくるとかオタサーの姫かよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideエレン

 

 

 

しばらく走っていると前方に見えてきたのは巨大樹の森。

 

ウォールマリア突破前は観光地として整備されてたらしいが今では草木が鬱蒼としていると作戦班の先輩達越しに聞いた。

 

その森に我々は今まさに入っている最中だった。

 

 

「兵長!リヴァイ兵長!!」

 

「………なんだ」

 

「なんだじゃないですよ!ここ森ですよ!?これじゃ巨人の接近はおろか、荷馬車班の防衛すらできません!」

 

 

(周りは森で視界が不明瞭、いつ如何なる時に巨人が目の前に現れるのか分からない。そんな危険な状況に自ら入るなんて…団長と兵長は何を考えているんだ?)

 

 

「分かりきったことをピーピー喚くな。んなもんとっくに出来るわけねぇだろ」

 

「は?!な、なぜそんな…」

 

「周りをよく見ろ、無駄にクソでけぇ木で囲まれている、立体機動装置の機能を十分に生かす絶好の環境だ。そして考えろ、死にたくなきゃ必死に頭回せ」

 

兵長はまるで切り捨てるかのように会話を遮断する。

 

 

(………そうか、オレはまだ新兵だから状況を把握してないだけで、簡単に教えてくれないのも自分で学ぶ必要があるからか)

 

(先輩達もきっとこうやって戦場のいろはを学んできたに違いな───)

 

 

オルオさんを見る。

 

 

「なんだよこれ………ふざけんなよ…!…なにこれ……」

 

 

(は?……っまさか!)

 

 

嫌な予感を感じ、他の人達の様子も見る。

ペトラさんも、エルドさんも、グンタさんも…

──皆の雰囲気が緊張に包まれている

 

(誰も…この状況を把握してない!?)

 

 

先輩達の反応を見て次に思い浮かんだのは同じ班で同期の様子だった。

 

(セ、セラスは大丈夫なのか!?)

 

 

ふと隣にいるはずの同期の様子を首を回して見る。けどそこには"いつも"のアイツはいなかった。

 

そこにいたのは既に両方の刃を抜いた状態で後ろを静かに見つめる、"兵士"としてのセラスだった。

 

 

ドッドッドッドッ!!

 

 

「な、なんの音だ!」

 

 

突如として大きくなる地鳴りに動揺してしまう。

 

 

 

「お前らも剣を抜け。それが現れるとしたら…」

 

 

 

一瞬だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドッドッドッドッドッドッ!!

 

 

出てきた瞬間を目視できぬ程に突如として現れた金髪の巨人。

 

 

明らかに他の巨人とは違う、走る姿勢を知っている走り方だった。

 

 

こちらを見る。

目を見開き、口角を上げて加速を開始する。

 

 

「この森じゃ事前に回避のしようがない!」

 

「早い!!追いつかれる!!」

 

「兵長!!立体機動に移りましょう!!」

 

 

その声と同時に後ろから2人の増援が女型を追うように近づく。

 

 

 

一瞬だった。

 

 

1人は木にタックルされぺちゃんこに、

1人は強く握られ、木に叩き潰された。

 

 

 

「「「「!!」」」」

 

(ベテランの人たちが…一瞬で…)

 

 

「兵長!!アイツは危険です!早く指示を!!」

 

「兵長!!オレたちが殺るべきです!!」

 

「ズタボロにしてやるっ!」

 

 

先輩達が戦闘体制に入る。

 

(馬鹿め!自分から地獄にきやがった!お前が追いかけてんのは歴戦の巨人殺しの達人集団だ、お前もここで終わりだ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

(………なんでまだ指示が来ないんだ…兵長?!何を考えているんだ!)

 

「リヴァイ兵長!?」

 

「指示をください!!」

 

 

兵長は滑らかな動作で馬装の衣嚢からあるものを取り出し、銃に取り付けて真上に向ける。

 

 

「全員耳を塞げ」

 

 

 

キィィィィィンッ!!!

 

 

 

 

(こ、これはっ……!)

 

「音響弾!?」

 

 

 

「お前らの仕事はなんだ?その時々の感情に身を任せるのか?」

 

「そうじゃなかったはずだ。この班の使命は、そこのガキに傷一つ付けないよう尽くすことだ…命の限り、な」

 

 

「なっ!?」

 

(オレを監視するためじゃないのか!?)

 

 

 

「オレ達はこのまま馬で駆ける。いいな?」

 

「っ…了解です!」

 

 

(ま、待てよ!まだ後ろで戦ってる人がっ!)

 

 

「っ増援です!早く援護しなければやられます!」

 

「前を向けエレン!!」

 

(グンタさんっ!?)

 

 

 

「歩調を乱すな!最高速度を保て!」

 

(エルドさん!!)

 

 

 

「今ならまだ間に合う!早く!!」

 

 

 

「エレン!前を向いて走りなさい!」

 

(っ!ペトラさんまで!)

 

「戦いから目を背けろと!?仲間を見殺しにして逃げろと言うんですか!!」

 

「………えぇ!そうよ!兵長の指示に従いなさい!」

 

「っ…!なぜです!!見殺しにする理由が分かりません!それを説明しない理由も分かりません!」

 

 

「兵長が説明すべきでないと判断したからだ!それを分からないようじゃまだまだヒヨっ子なんだよ!分かったらとっとと従え!!」

 

(オルオさん!!)

 

 

 

後ろを振り返る。3人が今戦ってる。

無力なあまり、血が流れていない(守られている)自身の体を見るように右手を見る。

 

噛み跡が残された(巨人化になれる形跡)右手を。

 

 

─────あ

 

 

 

 

オレは…なんでこの人たちに力を仰いでるんだ。

 

オレには、力があるじゃないか。

 

なんでオレは人の力に頼ってんだよ、自分(巨人)で戦えばいいだろ。

 

この手を噛み切れば(巨人化すれば)、オレは戦える。

 

オレがたたか────

 

 

 

 

「何やってるのエレン!!」

 

 

ペトラさんが止めに言葉を言い放ち、少しだけ動きを止める。だが相変わらず根拠の無い言葉に、再び噛もうとすると

 

 

 

『お前は間違ってない。やりたきゃやれ』

 

リヴァイ兵長からそう言われた。

 

 

 

 

「お前とオレ達との判断の相違は経験則に基づくものだ。だがな、そんなものアテにしなくていい」

 

自分を信じるか、それともオレたち調査兵団を信じるか。」

 

「オレには分からない。自分を信じても、仲間の選択を信じても、結果は誰にも分からなかった。だから…まぁ…せいぜい悔いが残らない方を選べ」

 

 

 

 

 

後ろを見る。まだ戦っている。

 

 

目的はある、なら巨人化はできるはず。

 

 

振り返る向きにペトラさんがいた。

 

 

 

 

「……信じて」

 

手綱を持っている手には噛み跡(信じてくれた証)が残っていた。

 

 

 

 

 

『私達は貴方を頼るし、私達を頼って欲しい』

 

『私達を、信じて』

 

 

 

 

 

 

後ろを見る。今に殺されそうな人が目の前にいる。

 

「うぅっ!」

 

 

 

「遅い!さっさと決めろ!」

 

 

(ちきしょう!ちきしょう!オレはっ、オレはっ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「進みます!!」「兵長」

 

 

 

 

──────っ!

 

 

瞬間

オレの声と被さるように

その言葉の続きが決して同じ意見で被さってないとわかっているのに

それを切り出した同期(セラス)が、今、この時だけ堪らなく頼もしく、そして羨ましく感じてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side out

 

目の前で知り合いが知り合いを殺してるのは正直限界だ。

 

「兵長」

 

エレンと被ってしまい、少し奇怪なものを見る目で見つめられてるがこの際どうでもいい。

 

 

 

「……チッ、だからテメェはいつまでたってもクソガキなんだよ。勝手にしろ」

 

 

その返答に次は班の人達が困惑し、声を張り上げる。

 

「な、何をするつもりなのセラス!」

「兵長の指示を無視するのか!」

「オレたちを信じてないのか?!」

「馬鹿なことしてねぇで前向け!」

 

 

 

 

貴方たちを信用しかしてないからこそ、この選択肢を取れると思ってます。

信頼してたら俺もエレンと同じ選択肢を取ってただろうから

 

この選択が、貴方たちにとっての最善(生きる道)なんだと思います。

 

だから、俺は(この選択)を信じます。

 

例え嫌われたとしても

 

 

 

 

 

「ま、待てよセラスっ」

 

エレンの制止を最後に、ガスを噴かして馬から飛び立つ。

 

 

 

 

 

眼前にいるのはスプリンター並の速さで迫ってくる女型。そしてそれを追うように3人の兵士が居る

 

 

 

 

女型の巨人、1回戦目だ。

 

 





少し調子に乗らせすぎたか?と考えましたが、この主人公君は身を粉にして助けるのがコンセプトなので、ヘイト貰っても構わず助けるだろうという結論に達しました。故に彼には自分の道を行く選択肢、つまり仲間からの信頼を振り払って自分を信じるルートに進ませました。

軽傷で済ませて女型最終戦に入れたいけど、どうなるのやら。

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