こんだけのガスであんな動き出来るわけないだろ!   作:山崎春のご飯まつり

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前回のアンケートありがとうございました。結果としては低スパンでチビチビやるのと高スパンでドカンとやることにつきましては、

えー、作者の気分次第、という結果に落ち着きました。
仕方なかったんだっ…!あんなに拮抗するとは思わなんだ!普通数十点差とか数百点差とか、差が広がると思うやん!なんで点差が10点以上広がらないねん!

しかも入れてくれた人の数が数だからどっちの味方をするとどっちの味方をしなくなる事になるんだ…心の衛宮切嗣が叫んでおります。
よって思いついた第3の選択肢。そう、気分次第。
態々アンケートしてくれて申し訳ないですが、ほぼ1対1の票差で片方選ぶのは流石に酷なんで勘弁してください…よろしくお願いします…


21、

 

 

目の前の女型を捉える。

勿論目の前で知り合いが死なれるのは嫌だが、それだけじゃない。アニに自身の脅威を再確認させるためだ。こちらにヘイトが向けばリヴァイ班へのダメージが減り、生存率が上がると予想したからだ。

 

女型の戦闘スタイルは格闘術を駆使した蹂躙。

単なる蹴りやパンチ、タックルは避けはできる。だが掴まれるのだけは絶対に回避しなければならない。よってアンカーは刺さず、木を蹴りながらのガス噴射での移動をメインで足止めをする。

 

方針は決まった。

後ろで調査兵団が罠で待ち構えているであろうポイントまで誘いながら、他の兵士を殺されないようにする。そして極力体力を減らして、後の第二戦を楽に進めるようにしたい。

 

 

思考を止め、目の前の出来事に注視する。

女型の後ろから1人の兵士がうなじに向かっていく。

「このっ!」

 

だが肉に向けて射出したアンカーを避けられ、体勢を崩されて木に激突する。

隙を逃さない女型は木ごとタックルしに行く。

 

間一髪でガスを大量噴射して兵を攫って離れる。

 

「大丈夫ですか!」

「あ、あぁ...っ痛!」

 

こちらを悲痛な顔をして見ている。おそらく先程の木との衝突で体に強い打撃を受けたのだろう

 

「...先輩は退避してください」

「っ...!新兵が何を言っているんだ!」

「今の貴方の状態では居てもいなくてもあの女型にとっては何の脅威にもなりません、兵団の利益を考えてください」

「...それでも!」

「気を引くのが目的なら貴方がするより俺が適任です。だから...無駄死にしないでください」

「っ......不甲斐なくて済まない、頼む!」

 

どうやら言いたい事が伝わったようで、後ろに退避していった。

 

 

ブォン!!

 

「っぶな!」

ガスで上昇し、体をくの字に曲げて何とか女型のパンチを回避する。ソニックブームとまでは行かないにしても下から強風とともに轟音が通過するのが分かる。

 

あ~のパーカーマニア...完全に吹っ切れてやがる、もう少し手心加えろよ。

 

 

だが残酷にも都合よく物事は上手く行かないようで、女型は次の攻撃をするために拳を素早く自身の方に仕舞い、こちらを見定めている。

 

女型の腕が動き、警戒するがその手の行先はこちらに来ず横に振り切られる。その方向を見ると、もう1人の兵士が射出したのであろうワイヤーを握って今にも振り回すために速度をつけていた。

 

「不味い!」

ガスの消費を気にもせず、掴まれたワイヤーに向かって斬撃を入れて分断する。幸いにもその掴まれた兵士はワイヤーの長さもあって速度が乗らずに地面に叩きつけられる前にガスで上昇し、こちらに近づいてくる。

 

「緊急事態とはいえワイヤーの件...すいません!」

「いやっ、助かった...だがこれじゃただの足手まといになっちまう...新兵に悪いが一時撤退して援軍を呼んでくる。せめてこれを…君に託す!」

 

 

そう言って渡されたのはブレード一式だった。

 

「っ、ありがとうございます!」

「頼りない先輩で済まない!援軍が来るまで耐えてくれ!」

 

 

全くもって頼りないなんて思うわけがない。頼りないのは寧ろ、もっとスマートな助け方があるかもしれないのに切断しか思いつかなかった俺の方だ。

 

 

そんなことない、そう否定する前に不安定な飛行で高く飛び、女型が届かないようにしながら森の外に向かっていく。

 

 

少し目を離した隙に女型が速度を上げてくる。

今まであった距離が一気に縮まり、振り上げられた拳を避けきれず頬が切れてしまった。

 

「っ...クソッタレが!」

目の前を上から下へと横切る拳に斬撃を入れ、少し怯ませる。

 

それを好機とみなしたのか、最後の1人の兵士が頭上からうなじに刃を向ける。

 

だが女型は当然のようにもう片方の手で掴み、手の筋が浮き彫りになっていく。

 

「あ"、あ"ぁ"っ!!」

「っ...!やめろ!!」

ボキボキ、と関節の音と共に響く叫び声に、

反射で女型の目に向かって刃を投げる。

 

 

手の掌握が躊躇われ、その隙に指を切断して重力に従って落ちていく調査兵をキャッチし、前方にガス噴射で後退する。

 

「無事ですか?!」

「う...うぅ...っくぅ...」

 

 

服越しでも分かる先輩兵士の体の歪な曲がり方につい顔を歪めてしまう。自己撤退できるかを聞く。

 

「立体機動は操縦できそうですか!?」

「あ、あぁ......な、何とかな…だがっ...」

 

痛みに抵抗するように腕の中で微かに身動ぎする。

 

「...っ、そんな体で対抗しても無意味です!俺が引き付けます。信じてください!」

 

「......っくそ.........分かった。新兵で辛い役回りをさせることになって申し訳ないっ…頼んだ!!」

 

 

そう言って腕から離れて森に入っていき、女型が進行してる道から外れた。

 

 

 

 

「ふぅ...やっと2人きりだな」

 

 

 

こちらを警戒している。だが逃げ出す様子は見えない、今この機会以外にエレンを捕獲するチャンスはないと考えているのだろう。

 

今この瞬間も、下手に攻撃を仕掛けてこないのも俺の戦い方を知っているからに違いない。

 

さっき後退した時にガスメーターをチラ見したら、既に半分が無くなってた。おそらくアニはこれが狙いだろう、短期決戦では分が悪いから長期戦で機を伺う。冷静沈着なアニらしい考えだ。

 

だがそれを含めても予想通りだ。後の二戦目で

 

『ガス残量が少なく厄介なやつを真っ先に始末する。』

 

彼女の脳内はこの理論が構築されているはずだ。昨日の事件での推理もピカイチだったことを加味して、私情を挟まないのならその思考に辿り着くに違いない。......そう、私情が挟まらなければ。

 

 

そろそろ一時捕獲地点だろうか。

 

気を抜いたと思われたのか、全速力で再び接近されるが一定速度で後退を続ける。

 

 

 

 

その直後、道の左右から調査兵団の集団が待ち構えているのが目に移ったのと同時に、団長の合図とともに莫大な光と音が女型を襲う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side アニ

 

 

「やっぱアンタが来るんだね」

 

女型のうなじの中で一人の少女...ではなく、戦士のなり損ないが呟く。

 

故郷にいる父のため、今の想い人に拳を向ける。

この決断がどれほど彼女を迷わせ、苦しませたのかは計り知れないものであった。

 

(昨日あれだけ決心が付いたと思ったのに...)

 

結局彼に伸ばした拳は当たらず、ただ強風で靡くマントだけが結果を如実に表していた。

 

あの速さの回避なら普段の彼女だったら追撃を入れていた、だがしなかった...無意識に、止めてしまったのだ。

 

(...っ、私みたいな人殺しでも情が移ったんだね。よりにもよってアンタに.......いや、アンタだからか...)

 

 

先程トドメを刺そうとした調査兵を助けた彼の動きは、正直厄介としか言えなかった。

ガス噴射による高速移動、的確な方向への細かい軌道修正、極めつけにアンカーを刺してこないその警戒心の強さ。

 

「敵になるとこうも面倒な相手になるとは思わなかったよ」

 

本心だ。

相手はそれに加えこちらの動きの癖も理解してる、こちらも相手の動きの癖は理解してるつもりだが...それが現状の膠着状態を作り出していた。

 

(この状態を打破するには第三者の乱入、もしくはアイツのガス切れを狙うしかない)

 

後者は最終手段だ。あの様子じゃまだまだ余裕があるように見える、もし長引かせでもしたらエレンを取り逃がす可能性が高い。

 

思考に浸かりながら隣の木にアンカーが刺さるのに気づく。その刺されたアンカーを木から抜き、引っ張って地面に叩き潰そうとするのを、アイツはワイヤーごと切って再び阻止する。

 

(っち...本当に厄介だよ...アンタはつくづく私に人殺しを許容させてくれないんだね...)

 

少しほっとした気持ちと、やっている行動との整合性がとれず複雑な気持ちになる。

 

「誰が好き好んで人殺しなんてするもんだよっ....!」

 

 

(こんな使命なんてなければ....アンタと....)

 

 

 

いつか見た....大切な父と、隣でこちらに微笑んでくるアイツとの3人で囲む食卓

そんな、夢のように幸せな光景

 

 

(そんな資格ないのに....他人から奪ったのに.....今更そんな乙女じみた夢見るなんて....)

 

 

 

(巨人も、使命も、自分の運命を縛るしがらみが何も無いままで........)

 

「アンタに会いたかったよ、セラス....」

 

 

 

ただの少女になりたかった戦士の独白は、誰にも届かない

 

 

 

 

 

 

 

 

Side out

 

どうやら罠にかかったらしい。

少し安堵した様子で木の枝に乗っかってその様子を見てると、後ろから立体機動で兵長が隣に来た。

 

 

「言いてぇことがいくつかあるが....それは後だ」

 

「リヴァイ」

 

お叱り宣告を受けて少し意気消沈になるが、その隙を与えないように団長が近づいてきた。

 

「よくこのポイントまで誘導してくれた」

「後列のアイツらと、このクソガキの時間稼ぎのお陰だ、オレは何もしてない」

 

団長がこちらを見る。

 

「一時は作戦が台無しになるところだったが…君のお陰で人員の損害が最低限で済んだ。ありがとう」

「は、はい...」

「今回は結果的にテメェの選択は間違ってなかったようだな...クソガキ」

 

横から割って入ってくるように皮肉混じりの褒め言葉を食らう。

 

 

「あの中にエレンと同じく巨人化出来るやつが入ってるんだな...」

 

鋭い眼光で女型を見る。

 

「今からお前とミケで、あの女型のうなじを隠している両手に攻撃を仕掛けてくれ」

「了解した」

 

そう言って兵長はミケさんと一緒に空中に飛び上がり、女型の両手に向かって斬撃を加える。

だが刃が入る直前、今まで暖色じみた肌色から一変して、光を反射する水晶のような材質に変化した。

 

2人のブレードは無惨にも粉々に破損してしまい、攻撃を断念して団長の所へ戻ってきた。

 

「どうなってやがる...報告書だとエレンはあんなこと出来なかったぞ」

「...分からない、ハンジの反応からして我々にとっては未知な情報なのだろう...引き続き反応を観察するぞ」

 

それを聞いた兵長は険しい表情になりながら女型の頭上に乗り、見下ろしながら何かを言って踏みつけている。

 

 

 

女型と目が合う...瞳孔にも釘が刺さっているから本当に見ているのか分からないが、そんな気がする。

 

だがその後、口から独特の呼吸音が聞こえる。

「っ!早く耳を閉じて!!」

 

だが遅かったようで、女型の絶叫が森全体に響き、その近くにいた兵士たちの耳を暫く使えなくする。

 

すぐにその絶叫は止み、一人一人の耳の調子が良くなってきた所で、ミケさんが冷や汗をかきながら団長に報告する。

 

「エルヴィン!匂うぞ!」

「方角は?」

「全方位から多数!同時にだ!」

「っ!発破の用意を急げ!」

「先に東から来る!すぐそこだ!」

 

ミケさんが見てる方角を見ると、三体のまばらな体格の巨人が女型に向かって走ってくる。

 

「荷馬車護衛班!迎え撃て!」

 

指示に従い、3人の調査兵が迎え撃つが三体の巨人はその調査兵に目もくれず女型に向かっていく。

 

 

「チッ!」

舌打ちとともに女型の頭上にいた兵長が飛び降り、一瞬にして2体の巨人のうなじを削いでいく。

 

 

「っ!全員戦闘準備!女型の巨人を死守せよ!」

 

戸惑いの目が多数見えたが、皆が従って巨人を狩っていく。

 

削ぎ、倒す。

削ぎ、倒す。

削ぎ、倒す。

 

削いでも削いでも出てくる光景はさながら、わんこ巨人といったところか.........くだらな。

 

取りこぼした数体は女型の肉を喰らい、腕を引きちぎり、骨を砕く。

 

「っ......全員一時撤退!」

 

各々がその場から離れ、届かないであろう高さの枝に乗っかる。

 

「オイ...エルヴィン」

「やられたよ」

「.......何て面してやがる、テメェ」

 

 

死体から湧き出る蒸気で周りが白くなる。

 

「総員撤退!森の西方向に集結し陣形を再展開!カラネス区に帰還せよ!」

「なんてざまだ、このままノコノコ帰ったらオレたちの処分はどうなる?」

「それは後で考えよう。今はこれ以上の損害を防ぐのが最優先だ。............今はな」

 

 

隣からの決断とともに、ガスメーターを見ると、もう空だった。

 

「ガス補給をしてきていいですか?今すぐに」

「あぁ、リヴァイ、お前もしていけ」

「.....何故だ?時間が惜しい、充分足りると思うが......」

「命令だ、従え」

 

 

 

ということは合流するのは兵長と一緒.......待て、兵長が到着するのは皆が倒されてエレンが女型に食われたあとだ.......

 

じゃあ、この後兵長と向かったところで............

 

「間に合わない..........」

「あ?なんか言ったか?」

 

 

 

────なんのために、あの人たちの信頼を切り捨てたんだ進んできたんだ?ここまで、生きてきたんだ

 

 

 

 

.................あの人たちを助けたいからだろ

 

 

 

 

 

「オイ、無視してんじゃっ──テメェ.....なんつう面してんだ.......」

 

どんな顔をしてるのだろう。だが今はそんなのに気をかけるほど心は穏やかじゃない。

 

「............兵長....頼みがあります。....貴方のガスボンベと交換して先に向かわせてください」

 

少し眉間が下がり口を開く。

 

「...なんだと?理由を述べ──」

いいだろう。リヴァイ、変えてやれ」

 

兵長に有無を言わせず、俺の要望を通してくれる団長。

 

「...........それも命令か?」

「あぁ、そうだ」

「ッチ、早く変えるぞクソガキ」

 

応じてくれてよかった。

空のガスを渡し、手馴れた手つきで変えていく。確認として兵長に問いかける。

 

 

「残量いくつですか?」

「....半分だ、何するつもりだ?」

 

 

──充分だ。

 

 

すぐに交換が終わり、リヴァイ班の向かった方角へガスを全開で辿っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのクソガキ.........オイ、どういうつもりだエルヴィン?アイツが一番ガスを食うってのに半分のガスで先に行かせやがって.......殺すつもりか?」

 

「言っただろう、彼には危機的状況の時の場をひっくり返す切り札にすると」

 

「....話が見えて来ねぇ、さっさと結論から言え」

 

「彼の考えが私と一致しているのなら、彼のしたいことが分かるからだ」

 

「お前と?」

 

「話は後だ、心配なら早急にガスと刃を補給して後を追え」

 

「チッ、これだからガキは嫌いなんだ.......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガスを全開で吹き、彼らの方角へ急ぐ。

 

直後にお互い近い2つの煙弾が進行方向の奥から見え、方角が正しいことに安堵す─────

 

 

 

 

.........2つ?

 

何故近いところから煙弾が発射されるんだ?

リヴァイ兵長はまだ補給途中だし、煙弾を用いるぐらいなら団長から言伝を貰うはず....なら残された選択肢は.........

 

 

もしそう(アニ)だとしたら........相当やばい。

 

 

見える距離からさほど離れていない事が分かったが、最悪なことに2つの煙弾の距離差があまりにも近すぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも以上に残量を無視して高速移動する。

 

 

 

頼むっ........間に合ってくれ

 

 

 




次回、リヴァイ班壊滅。

感想評価よろしくお願いします!

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