こんだけのガスであんな動き出来るわけないだろ!   作:山崎春のご飯まつり

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あと二、三話ぐらいかな。そこから閑話入るんでよろです


28、

 

 

あれから色々終わり、俺は今医務室までの帰路である廊下をぽとぽと歩いていた。

 

ちなみにあのあとの事を要所々々省いて説明すると、作戦への参加は認められた。よって山場を越えた俺は只今すごく疲れてる、なんなら誰かを強く抱き締めて幸せ成分を分泌させたい。誰でもいいから抱かせろよ

 

というのは半分冗談だけど、疲れたのは本当。これほどまでに対話に労力を使う関係性は滅多にないと思う。なにせ疑われれば殺されるまでがワンセットだ、ガンギマリにも程がある。

だがその点では流石アッカーマン、ミカサと話した時と似たものを感じた。血は抗えないな

 

 

 

 

しかしあの場面でこちらを掘り下げてくるとは思わなかった。まさか作戦の参加権をエサにするとは…地下街で生き残った人は交渉が上手だなぁ、言うつもり無かったんだけどね

 

兵長がどう思うかはこの際後で考えても良いと思うが、あの人の感じたものによっては止めに入る可能性が出てきてしまった。理性的な行動を願うばかりだ

 

だけどその点あまり心配はしていない。

なぜなら、情報を与えた直後が一番感情的になるのに対し、あの人は作戦の参加を許可した。つまり一番の感情の起伏が激しい状態で理性的な行動が出来ているということだ。

 

余程のことがない限り兵団のマイナスでなければ行動の制限はかけてこない…はず。あの人は私情をあまり挟まないだろうし、そうと信じよう

 

 

あと言いふらしたりはしないと思うが、兵長に吐露した事は念の為口止めを願い出た。

 

巨人を滅ぼすために四肢を何度も無くす駆逐ゼミと、そいつの為に身を粉にして何でもするヤンデレがいる世界だ。俺程度の考えがそいつらより目立つようなことはまず有り得ないだろうが……止めるだけでも意味があるだろう。

あと知られたら説明が面倒臭いし

 

 

 

今頃内通者疑惑のあるゴリライナー達はローゼ内のどっかに隔離されてるところか。しかも立体機動を付けずに。いや、殲滅も個人戦闘もお任せあれのベルトルトがいるし過剰ではないか

 

運が良ければゲームみたいに俺がパシられてあっち側のイベントにも参加できて守れるんだけど…これに関しちゃ団長らの判断だ。最悪全部が終わったあとの残党狩りしか出来ないかもしれない。

 

 

 

とまぁこの先遠くない色んなことを考えてはいるが、先程の通り張り詰めた緊張のお陰で凄まじい眠気に襲われている最中だ。足がおぼつかないのがよくわかる。あ、医務室だ

いつの間にか着いていたらしい、とても都合がいい。ここ最近で一番嬉しいかもしれない。

この世界もこんな感じに立て続けに行けばいいのに、不条理な世の中だ。

 

 

 

くだらない愚痴を思いながらドアノブを握り、回して押す。

 

開いた瞬間、隙間から僅かに漂うアルコールの匂いが鼻を劈く。何度もお世話になった医務室はもはや第二の…いや前世も考えると第三か、第三の実家とも思える。安心感から眠気が

 

「寝よ」

 

ベッドに飛び込み、ギシッという木の軋む音とともに、意識が朦朧となっていった。

 

 

 

 

 

─────

 

───

 

 

 

 

 

いつの間に目が覚めていた。

まだ日の出なのだろうか、窓から差す光が弱いことからそう推測する。

 

ベッドから降り、窓を開けて外の空気を中に入れる。解散式が終わったのが夏頃だし…今は秋ら辺か。とはいえまだまだ猛暑が続くだろうな

 

「うわっ…汗疹できてんじゃん」

 

首をさすると、複数のボツボツが掌に感触として伝わる。二日も猛暑の中眠っていたんだ、仕方ないか。

 

前回はヒストリアが体を拭いてくれたらしいが今回はどうなのだろうか。流石にエレンとかアルミンとかだろうけど………アイツらこんなに包帯巻くの上手かったか?

訓練兵時代のアルミンなんか不器用すぎてミイラになってたし、エレンもミカサにおんぶにだっこだった気がする。

不思議だ

 

 

キャラの意外な成長に感心しながら、胴体にも巻かれている包帯を解いて生身の自身の体を見る。

 

ここ最近でようやく付いてきた筋肉、特に腹筋。

あ、腹筋といえば……以前露出の高い姿のミカサ(恐らく着替え中のアクシデント)と出くわした機会があったんだ。

普通は女性特有の肢体とかに目が寄ると思うんだ、実際俺も男だから絶対的な否定はできないし。

けどアイツに対しては全く無かった。まず真っ先に腹筋に目がいったね。あの腹筋、筋肉が喜んでた。

隣にいた馬面は鼻血出して腰引いてたけど

 

 

 

背中を近くにあった長めの手ぬぐいで拭き、取り敢えず包帯内の蒸れは解消できた。願わくば体を洗いたいんだが…後で兵長に交渉してみるか?ライフハックを餌にして。その前に食いつくかな

 

いや限界だ、環境の衛生より自身の衛生が第一の俺にとってこの状況は死活問題だ。ここは旧調査兵団本部らしいし、外に井戸があったはずだ。行くか

 

 

 

 

 

 

 

 

───

 

 

 

 

まだ日が上がって間もないことを加味し、皆寝ていると踏んで上裸になることを決意した俺ことセラス・アービス

 

意気揚々と井戸の前に到着し上着を脱いで井戸の水を汲もうとした時、事件は起こった。

 

 

物音が聞こえ咄嗟に後ろを振り向いた時には既に遅く、こちらを半目で眺めている寝癖全開のミカサがいたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、いつまで見てるの?」

 

「前回のやり返し。貴方も以前私のことを見てた、私の気持ちを知るべき」

 

「あの立派な筋肉を目の前に不可抗力でしょ」

 

「……セラスはデリカシーがない」

 

「俺はあの腹筋かっこいいと思うけどな」

 

「…む、なら私も不可抗力ってことにする」

 

「俺のよりエレンのでも見てろヤンデレ」

 

「…そんなことより、いつ起きたの?」

 

「おい逃げるな」

 

口を噤んで急にこちらの心配をしてきた。

どうやら気まずさよりも私情を優先したようだ。やはりアッカーマンは野蛮、はっきり分かんだね。お労しやエレン、強いヤンデレ女に惚れられたようだな

 

 

「はぁ…昨日の夜ぐらいだよ。心配かけたなら悪いね」

 

「うん、大丈夫。だけど私よりもクリスタとアルミンの方が心配してた」

 

「………なんでアルミンも?」

 

「私もあんな様子は見たことない。だけどどちらかと言うと張り詰めてた気がした」

 

何かあったのだろうか。

そういえば女型の正体を確信したのはアルミンら辺だったな。それで思い詰めてるのだとしたら…

 

 

「アニ関連か?」

 

「っ!…知ってたの?」

 

アニという単語を発した途端に目付きを変えてこちらを睨んで来た。ここまで目の色変えるとは…

 

「あ、あぁ。昨夜兵長から聞いた」

 

「…あのチビが。そう、わかった。ならセラス、率直に聞く。貴方はどう思った?アニって聞いて」

 

 

いきなりぶっ込んでくるなこのヤンデレ女は

 

「いやなんでそんなこ「いいから答えて」…はぁ…アニは根がクズになりきれてない所がある。何か抱え込んでるんだろうとしか思えない」

 

これまでで思った感想だ

決め手はトロスト区奪還作戦の時、ガスボンベを渡してくれた件だ。あの時にはエレンが重要人物としてアニの中にあったはず、なら俺みたいな勝手に自滅するやつに態々長生きさせる行為は正直敵としては理解できない。

 

「貴方も、彼女を庇うつもりなの?」

 

「………どうせエレンが根拠もないこと言って認めてないんだろ?」

 

「…………」

 

「図星ね」

 

 

何も言わずに視線だけを向けて訴えてくる。沈黙は肯定とみなすと、まぁ原作通りってことか

 

 

「ま、女型の動きから面影はあったし、エレンの中でも見当は付いてたはずだ。俺だってわかったんだからな」

 

 

最初から知ってましたよー、なんて口が裂けても言えるはずないし

 

 

「動きで…?あぁそういえばセラスはよくアニと対人格闘術でペアになってた。動きで察するのも分かる」

 

「…そゆこと」

 

 

苦し紛れに提示した理由付けはミカサの中で納得出来るものだったらしい。まだ頭が冴えてないみたいで幸いだ

 

 

「俺も作戦の参加を許可されたし、アニと話す機会があったら俺もエレンもその場で迷いを解消するだろ」

 

「……だとしても、あの女は人を沢山殺した」

 

「あぁ。それは変えようのない事実だ」

 

 

確かにアニは許されない事をしたし、多くの人を悲しませた。

だからこそ、もしそこに罪悪感が残っているのなら、態々漬け込んで真意を問わなければならない。こうするしか方法はなかったのか、と。

 

けど…そんなこと言ったところで頭エレンのコイツを前にこの言葉は無意味と化すだろう

 

 

なにか言いたげなこちらの様子を察してミカサは口を開く

 

「…未練がましくても、私は止まらない。だから、止めるなら覚悟して」

 

「…猶予を設けてくれるならな」

 

 

睨みつけながらこちらに言い放つ警告に、こちらも条件を提示する。少しこちらを観察してから、後ろを向いて兵舎に戻っていった。

 

 

「………結局アイツ何しに来たんだ?」

 

 

歩く度にピョンピョンと躍動する寝癖は面白かった。





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