こんだけのガスであんな動き出来るわけないだろ! 作:山崎春のご飯まつり
話が逸れましたね、お待たせしました。どうぞ
「セラス。お前に願望はあるか?」
夕日で染まる数人の兵士。
その背に描かれた双剣の刺繍は彼らの未熟さを表していた
「ライナーか。願望?なんで?」
水を片手に質問するライナーに、セラスは巻かれた包帯を見ながら質問で返す
「なんでってそりゃお前…オレ達は同じ兵士を志す仲間なんだ。そういうのは気になっちまうんだよ」
「……じゃあなんか例を上げてみてよ、見当違いな回答はしたくないし」
投げ返された質問にライナーは少し時間を置き、頬をかき照れそうに回答する
「そうか?そうだな…え、英雄になりたいとか?」
「……………そう。英雄、ね」
一言
傍から聞いたらなんの捻りのない回答に、セラスは一部を復唱する。まるでそこに突っかかりを覚えたかのように、ぽつりと放った。
「…なんだ、言いたくなかったか?別に無理強いするつもりなかったんだ。い、嫌なら答えなくてもいい」
セラスの異変に、ライナーは回答を控えさせる。羞恥心と感じ取ったか。それとも危機感を持ったのか。何にせよライナーはこの判断が正しいと自信を持てた
だがセラスは止まらなかった。儚げな視線はすぐ様確固たる形を持ち始め、ライナーを見据える
「嫌な訳じゃない、寧ろこれは意志を固めるいい機会なのかもしれない」
「い、し?…な、何のだ」
聞くべきではなかった。
これが、セラスが戻れる最後のチャンスだったのに、ライナーは聞いてしまった。
マルセルを軸とした兄貴分な人格が、偽りの情に火をつけてしまった。だから気になってしまった、知りたいと思ってしまった。
だから、昔のオレは言わせちまった。
アイツの口から、アイツを縛り付ける呪いを引き出しちまった。狂わせちまった。
オレは、アイツに自分の理想を重ねちまってた。欲しかったものがどんどんアイツに集まってるのが堪らなく妬ましかった。
後ろにいるエレン達を見据えながら、セラスは言った
「俺は、アイツらの笑顔の為なら─────」
あの時、オレは気づかなかった。
巻かれた包帯が赤く染まっていたことに。
それが、自分を顧みない覚悟の証であったことに。
オレはその発言に当時、仲間思いだと思う一方出来っこないと内心見下してた。
緊迫した状況じゃ自分可愛さに保身に走るのが普通だ。じゃなきゃマルセルは死ななかった
けど今思えばオレの覚悟なんざアイツからしたら無いに等しいものだった。
焦燥はあった。自分はこんなもんなのかと、自己嫌悪にも至った。
同時に安堵もした。客観的にやばい奴を見た時、自分と照らし合わせて確認するのと同じだろう。
いつの間にか、アイツは行くとこまで行っちまったようだ
──────────────
訓練兵2年目
訓練終わり、皆が宿舎に戻る中俺は逆方向へと足を運ぶ。理由はもちろん自主練だ、だから向かう先は当然訓練所である。
原作通りに進めたいので教官の前では手を抜いてるが、それとこれとでは話が違う。なるべく原作外のイレギュラーにも対応できるよう、この訓練兵期間は死ぬ気で様々なものを取り入れなければならない。でなければ目的を果たせず死んじまう
「けど怪我したし今日は軽めにいこう」
右腕に巻かれた包帯を見る。軽い打撲だろうが無茶したら悪化は免れない、それにどうしようもない時以外無理はしなくない。よって今日は左手でできる自重トレか脚力強化をメインにする
今日の内容を考えながら訓練所へと道すがら歩いていると後ろから声が聞こえてくる
「おーい!セラス!」
女性特有の高い声。先程包帯を巻いてくれた人と心得る、つまり…
「クリスタ?」
「うん、そうだよ。訓練お疲れ様!」
歩く俺を追い越し、ヒストリアは前方に立ち塞がる。背中に手を回し前屈姿勢で見上げてくる。こちらも労いの言葉を投げ返す
「そっちこそお疲れ様、ゆっくり休みな」
「そのつもりだよ。だけどその前に馬のお世話をしたくて…」
なにかモジモジして口数が少なくなった。今思えばユミルがいない、どうしたんだ?
「相方は?」
「相方…?あ、もしかしてユミルのこと?今日は疲れたから先に宿舎に帰ったよ」
珍しいこともあるものだ。てっきりユミルは付きっきりかと思ったが、同伴しない時もあるんだな…
「馬の世話はいつもユミルも一緒なの?」
「うん、渋々だけど一緒にやってくれるんだ」
じゃあ今から一人行動になるのか…普通に心配だ。ヒストリアは確かモテランキング1位のはず、男性兵士からの誘いは多かろう
だが今のヒストリアは誘いを断りにくい性質になっている。だからこそ気の強いユミルが居てくれて心強いのだが…行くべきか…?それとも心配のし過ぎか?けどもしユミルが居ない事が間接的に俺のせいだったら?それにヒストリアは王家の血を受け継いでいると記憶してる、もしもの事があったら取り返しがつかない…
「そういうセラスはどうしたの?こっちは宿舎の方面じゃないけど」
「え?俺はこれから自主練だけど」
「だ、ダメだよ!怪我したんだから!」
───優しい( ◜ω◝ )ニチャア
だけどそれは無理な話だ。
「大丈夫だよ、ただの走り込みなんだから」
「それでも心配だよ…セラスは痛くないの?」
痛いけどコイツの心と比べたら屁でもないと自負できる。体の痛みは引くけど心の痛みはずっと残るからね
「包帯巻いてもらったし大丈夫だよ。方向一緒でしょ?ほら行くよ」
「え?あ、ちょっと待ってよ!」
ほらね、強引に言ったらすぐ流される。ユミル、この子にはまだ貴女が必要なようです
・
・
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「無理させちゃってごめんね…」
「謝罪より感謝が欲しいな」
結局手伝ってしまった…しかも道中ずっと2人きりだったから気まずさから寧ろ誰かに割り込んで欲しかったとさえ思ってしまった
それに今更考えてみれば今日の訓練はかなりハードだったし態々ナンパするような体力バカいる訳がない。完全に失念してた
「それもそうだね、ありがとうセラス!」
「いいよ別に。馬術のお礼も兼ねてだし」
「それでもだよ!困ったらなんでも言ってね、セラスの為なら頑張るから」
「まぁ…程々にね」
今君の自己犠牲の精神に困ってるよ
───────────
やっと自主練ができる。とりあえず体力向上に向けて走り込みをしよう
「ふぅー、よし行く「よぉセラス」ちっ…」
出鼻をくじかれて思わず舌打ちをしてしまった。声のした方向へ目を向けると、ライナーがいた
「……ライナーか。なんの用?」
「いや止めたのは悪かったと思ってる。だからそんな怒るなって」
未だ兵団服を着用したまま近づいてくる寸止めゴールデンゴリラ。両掌をこちらに見せて静止を呼びかける
「これから走り込みするつもりなんだけど。用がないなら始めていい?」
「あぁ、その件についてだがよ。……オレも付き合っていいか?」
「ふっ…ふっ…」
「はっ…はっ…」
隣で荒い息遣いをしながら並走するゴリラ。流石巨人継承者といった所だろうか、体力はあるらしい
「なぁ、ふっ…セラス、お前さっきクリスタといたよなっ」
「はっ…はっ…さっきの人影はやっぱりライナーだったかっ」
走り始めて暫く、ライナーが口を開く。どうも俺がクリスタといたことが気がかりらしい
「ふっ…ふっ…お前ら…どういう間柄なんだ?」
「はっ…はっ…どういうって?」
「…ふっ…ふ、フランツ達みたいな関係なのかって話だ」
「───何言ってんのお前」
唐突すぎる話題につい足を止めてしまう。それを見かねたライナーもつられて俺の前にゆっくりと止まる
「…実際どうなんだ」
「違うよ」
「本当か?」
「本当だよ」
「本当の本当か?」
「本当の本当だよ」
「本当の本「くどい」あ、あぁ…済まない」
お前…本当に気持ち悪いよ。
つか壁崩壊させといてその住民に恋するとか…お前どうしようもないな
「…因みになんでそう思ったの?」
「男女で楽しげに話してる時点でそう思うだろ」
思わねぇよ。
あまりにも恋愛初心者すぎる思考に呆れてるとあちら側から質問が投げかけられる
「こっちも単なる疑問なんだが…クリスタと一緒に居たのは何故だ?」
「偶然会って礼も兼ねて手伝ってただけだよ」
「そうだったのか…いや、他意はないんだ。ただ気になっただけでな…」
そう言って少しぎこちなく話を終わらすライナー。外面だけなら良くできた兵士と言えただろうけど、中身を知ってると印象もまた変わるなと実感する
「まぁ何にせよ、故郷に戻るんだろ?寄り道せずに進むのが一番いい」
「っ……あぁもちろんだ!済まないなセラス。オレはまだまだ兵士としての自覚が足りなかったようだ」
そりゃよかった。頼むからそのまま馬鹿正直に兵士ごっこでもしててくれ。
それにこの出来事がきっかけでヒストリアに危害を被ることになるのは許されない、先手で方向性を変えるのが手っ取り早い。悪いがお前の恋路は絶たれた(最初から存在しない)
「で、用はそれだけ?」
「それもそうだが…折角ならこのまま続けさせてもらおう。体力向上は兵士にとって必要不可欠だからな」
ここで嫌がったらかえって怪しまれる可能性がある。それにこの程度の自主練で鎧の持続力が上がるのはほぼ皆無と考えていいし、放っておいていいだろう。
「問題ない、目標の為にお互い頑張ろうじゃないか。ライナー」
「あぁ。兵士として、共に責務を全うするぞ。セラス」
頼むから強くならないでくれよ、ライナー?
最後のセリフはライナーはセラスの外側しか見てなくて、セラスはライナーの内側しか見てないって感じにしました。対比って美しいよね
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