こんだけのガスであんな動き出来るわけないだろ!   作:山崎春のご飯まつり

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今回多めに書いてみました。


訓練兵団編
4、


 

 

ガスが切れた。

 

この高さからの復帰は厳しいだろう。生き残れはすると思うが、恐らくは足がダメになる。

 

そうすれば当初の目標も達成は絶望的だろう。あと少しでゴールだったんだけどなぁ、調子乗って飛ばしたのどこのどいつだよ…

あ、俺かぁ。

 

せっかくアルミンとかクリスタと話せたのに勿体ないなぁ。サシャの餌付けも楽しかったし、最悪だ。

 

あの2人なら生きてるだけでも十分とか言ってくれるだろうけど、何も出来なくなるのは嫌だなぁ。

 

そう思うと不思議と体の力が抜ける、死ぬ準備はできてるらしい。ちっぽけな人生だった。なにもできず、挙句少なくとも2人に悲しい顔させることになるなんてよ。

 

 

 

■■■■■■■

 

 

晴天の下、成熟していない顔つきがちらほらいながらも皆同じ茶色の上着を身に纏っている。

 

「おい、貴様!」

 

「ハッ!」

 

「貴様は何者だ!」

 

「────です!」

 

 

相手を試すかのようにハゲの人は問いただし、それに返答する単調な会話が続いていく。

 

通過儀礼と言うやつだろう。無視されてるやつもいるが大抵がやばい顔してる奴だった。

 

恐らく2年前の惨劇を体感した奴らなんだろうな。ま、俺も体感してるから無視されるだろうけど。えなんで俺の前で止まった?

 

「貴様は何者だ!」

 

「えっ?あ、シガンシナ区し」

 

「声が小さい!何者なんだ!」

 

「シガンシナ区出身!セラス・アービスです!」

 

「まぁいい、アービス!貴様は何しにここに来た!」

 

よくないわ、喉貧弱すぎて既にガラガラなんだが。それよりここに来た理由か、嘘つくとなんだかバレそうだしあれ言うか。

 

「──────です!」

 

 

 

────────────

 

 

 

で、今俺3時間ぐらい走ってんだよ。解せぬ。

 

あの時言われっぱなしにしとけばよかったとつくづく思う。「お前の頭はどうやらお花畑のようだな」だとよ、自分の頭が枯れてるからって嫉妬すんな~みたいなこと言ったらやばい顔でグラウンド30周とか言われた。解せぬ。

 

目の前には周回遅れしてる芋女ことサシャブラウスがフラフラしながら走っている。こいつ確かランニングより飯抜きにショック受けてなかったか?面白い女すぎるんだよ。

 

そんなこんなで無事ペナルティを終わらせ、痙攣する足に鞭打ちしてどうにか宿舎に向かっていると。

 

「あ、あの!」

 

誰かに呼び止められた、振り返るとそこには小柄で金髪の美少女が立っていた。その表情には心配の色が見られる、可憐だ。

 

「これ!取っといたから良ければ食べて?」

 

手に持っているパンと水を手渡してくる。優しさの塊だ。もしかしたらこの世のクズは目の前に天使にほとんどの優しさを持ってかれたからクズなのかもしれない。そうに違いない。

 

よく見るともう1セットを持っている、もしやサシャの分か!?なんてことだ、ここにいるのは天使以上の存在だ。彼女に似合う代名詞を持っていない自身の語彙力の無さをこれまで以上に呪ったことは無い。

 

「ありがとう、本当に助かった。君のような気遣いができる同期がいるとこの先の訓練で希望が持てるよ」

 

「そ、そんな大袈裟だよ、私は私がしたいと思った事をしただけで…」

 

なんて謙虚なんだ、既に俺の中での印象は彼女がトップだ。しかし、原作の一幕を知ってる以上、彼女の心境は現在複雑なのだろう。どうにか助けになれるよう気を遣うべきか。

 

いや面倒見のいい彼女のことだ、いずれ勘づかれるだろう、だからこそのユミルの存在か。であれば雪山訓練の時期までは少し気にかけておこう。

 

クリスタを見ながらそう考えていると、目を逸らされる。まじまじと見すぎてしまったか。恋愛弱者とばれてしまう、どうにか弁明せねば。

 

「すまない、困らせるつもりはなかったんだ。考え事してて無意識に目がいってたというか」

 

ちくしょう言葉が纏まらない。こんなことならもう少しコミュ力上げとけばよかった。

 

「えっ?う、ううん!全然大丈夫だよ!私こそ急に逸らしてごめんね?少し恥ずかしくてさ」

 

よかった。恋愛弱者とばれてないようだ、俺の懸念点は解消されたみたいだ。そう考えていると後ろから人の気配がしてくる。

 

「や、やっとぉわりましたぁ…」

 

あ、倒れた。

 

その瞬間鼻をピクピク動かしてからクリスタに飛び出してきた。すんごい速さで持ってるパンを咥えて横切って行った。

 

着地点を予測して振り返るとそこには四足歩行でパンを貪ってるサシャの姿がいた。

パン食ってる姿が巨人で少し戦慄した。

 

紆余曲折ありながら俺も残ったパンの半分をちぎって餌付けしてたらクリスタと一緒に神呼ばわりされた。よせやい。

 

そこにユミルが現れて、俺らを引いた目で見てる。

 

「おい、何やってんだお前ら」

 

「えっと、この子は今までずっと走りっぱなしで「お前、いいことしようとしてるだろ」え…」

 

丁度食い終わったのかクリスタの膝に膝枕の体勢で気絶する。血糖値スパイクにやられたなこいつ。

 

「それは芋女とこの男のためにやったのか?お前の得たものはその労力に見合ったか?」

 

クリスタは黙ったままユミルを見つめている。呆れたのか、ユミルは口を開いて、

 

「まぁいい、とにかくこいつをベッドまで運ぶぞ」

 

「…あなたもいいことをするの?」

 

「こいつに貸しを作って恩に着せるためだ。こいつの馬鹿さには期待できる、おい、そこのお前も手伝え、か弱い女2人だぞこっちは」

 

何がか弱いだ、強かすぎて怖いわ。まぁクリスタへのお返しも兼ねてやりますかね。…案外軽いなこいつ。

 

 

 

─────────

 

今日は午前が立体機動適性検査で、午後が座学だったか。

 

列に並んでる間、周りを見てるとジャンだったりコニーがまさにやってる最中だった。ジャンは少しぎこちないが出来てるし、コニーも普通に出来てる。

 

自分の番がやってきた。担当の人が腰にワイヤーを掛け、手を離す。

 

一瞬の浮遊感を味わうが、ワイヤーの向きと装置との重心を調節して無事に安定した姿勢に落ち着いた。何故かしっくりくる。

 

合格を貰えてとても安心してるが、担当者が少し懐疑的な目でこちらを見ていたのが気がかりだった。なにかしただろうか。

 

他の人も次々と合格を貰ってるように見える、頭部を下にしてぶら下がってる一人を除いて。

 

「あれはあれですごいな」

 

理由はもちろんわかっている。旧知の友の息子を戦地へ向かわせたくないため細工を施した。まぁその程度で止まるほどの意思ではないだろうけど。

 

「エレンは僕より運動はできるはずなんだけどね、どうしてだろう」

 

そう声を掛けてきたのはアルミンだった。少し背が伸びたのだろうか、前のような気弱さが無くなっているようにも見える。

 

「君は…久しぶりだね」

 

あくまで初対面に近い話し方を心がける。

 

「あ、僕のこと覚えてくれてたんだ!うん、久しぶりだね。あの時の出来事でまだお礼が出来てなくて気がかりだったんだ、あの時はありがとう!」

 

「その前に俺も君に助けられたからね、借りを返しただけだから気にしないで。これからは同期として頑張っていこう」

 

「っ!うん!僕はアルミン・アルレルト、よろしくね!」

 

「俺はセラス・アービス、協力して頑張っていこう」

 

知ってた。

手を出して握手を求めるとすかさず握ってブンブン振っている。子犬みたいで可愛いな。

 

────────

 

大体の人が検査が終わり午後、座学の移動中にユミルとクリスタ、サシャが共に行動してるのが見えた。

 

うわぁちゃんとパシリにされてる、かわいそ。そう考えているとクリスタがこちらの視線に気づいたのか手を振って近づいてくる。

 

「あっ!昨晩ぶりだね、一緒にサシャを運んでくれてありがとう!」

 

「え、そ、そうなんですか!?ありがとうございます!」

 

笑顔でこちらを見る天使と慌てるサシャ。異様な光景に理解が追いつかない。

 

「そういえばあなたの名前知らないんだ、私はクリスタ・レンズ、あなたは?」

 

「俺はセラス、セラス・アービスだ」

 

「私はサシャ・ブラウスと言います!よろしくお願いします!」

 

一応ユミルにも顔を向けると

 

「はぁ…ユミルだ、ユミルでいい。んな事より早くしねぇと遅れるぞ」

 

「それもそうだね、セラスも早く行こ?」

 

「あ、あぁ、行こうか」

 

嫉妬の眼差しで見られてる気がするが、気のせいだろう。早くしないと遅れてしまう。

 

───────

 

講義も滞りなく終わった。内容は初歩的なものが多かった、恐らく戦術、戦略以外の教養知識に関しては問題ないだろう。記憶様様だな。

 

教室を出ようとしたら一人ポツンと残ってる人がいる。マルコだ。頭を抱えながら教本をじっと見てる。

 

…晩飯まで自主練で時間あるし、少し接触をしてみるか。

 

「皆出ていったけど、何かあったのか?」

 

「えっ!?ほ、ほんとだ…気づかなかったよ、ありがとう。大事じゃないけどここの部分がよく分からなくて」

 

マルコが指を指す部分を見ると、どうやら王政や政治に関する仕組みについてらしい。憲兵志望だし妥当だな。

 

政治関連にはある程度触れてたのもあって、理解はできたためそれをマルコに教えていく。

 

 

そこからはマルコの独壇場だった。一を聞いて十を知るとはまさにこの事だ、一度根幹を理解すると大体理解してくれた。

 

「ありがとう!おかげで理解出来たよ!自己紹介がまだだったね、僕はマルコ・ボット、よろしく」

 

「セラス・アービス、セラスでいいよ、よろしく。俺はこの後の晩飯まで暇つぶししてるよ」

 

「それもそうだね、僕もまとめたら自主練しようと思うよ」

 

───────

 

暇つぶしと言ったものの、記憶のせいと言うべきか、あっちの娯楽と比べてこっちの娯楽は色味がなさすぎるんだ。チェスとかのボードゲームはあるがやる相手が居ないし、何より頭を沢山使うゲームは苦手だ。

 

色々考えたが、結局筋トレで見せ筋を鍛えるのが一番の娯楽だと気づき、現在訓練所で体幹トレーニングをしている。

 

ここ最近で食べてるものが質素すぎるのか、脂肪があまりついてないので腹筋が既に少しだけ見えている。まったくもってやり甲斐しか感じない。

 

そう思いながら続けていると、立体機動の訓練器具に近づく3人が見えた。

 

あれは…アルミン達か。様子を見ながら柔軟をしていると、こっちに気づいたのかアルミンが他の2人と話してるのが見て取れる。

「彼に意見を仰ぐのはどうかな?」

「あいつ、確かあの木の下で寝てた奴か?」

「エレンが木の枝を沢山落として、おばさんに叱られた日にいた子だと思う」

「知り合いなの?」

「いや、一方的に知ってるだけだ。あいつ寝てる時よく泣いてたからさ」

「エレンは涙に弱い。覚えた」

「おい、余計なこと覚えんなよミカサ」

「あはははは…」

 

なんか談笑しながら近づいて来た。さしづめエレンの制御訓練のコツとかだろう。ぼっちの俺への当てつけだったら許さん。

 

「やぁセラス、昼の件で君に頼みたい事があるんだ」

 

「エレンの立体機動についてだろ?ちょうど終わって暇だったしいいよ」

 

「い、いいのかい!?良かったねエレン!」

 

「あ、あぁ、というかお前なんで俺の名前知ってんだ?」

 

「昼に僕がエレンについて話したからだよ、僕より運動できるのになんでだろうってさ」

 

「そうだったのか」

 

「…適性検査の時に彼のやってる姿を見たけど、すごく慣れてる様子だった。姿勢も多分今の私より安定してた」

 

「な!?ど、どうすればいいんだ!?頼む教えてくれ!」

 

まぁ、習うより慣れる方が性に合うだろうし。一度やってる姿見せてみるか。

 

「とりあえず俺がやってるのを見てて」

 

アルミンに合図をして腰のワイヤーを引かせると、体勢を整える。

 

「すげぇ…ほんとにビクともしてねぇ」

 

すると、ミカサが後ろから腰を蹴ってきた。

 

「痛ってぇ!」

 

「ミ、ミカサ!?」

「お前何やってんだよ!?」

 

「やっぱり、あまりにも慣れすぎている、今の力なら私でも体勢を崩す。姿勢制御はあなたの方が上らしい」

 

だからって唐突に蹴りますかね、しかもめちゃくちゃ痛たいし。やはりアッカーマン族は野蛮な人が多いのか?そうに違いない。

 

「試すような真似をしてごめんなさい。私もあなたを見習う事にする」

 

「あぁ、そう…」

 

怖いしやっぱ関わらないとこ、トラウマ級すぎる。

 

そんなこんなもあってエレンに姿勢制御のいろはを教えていざ実践したが、案の定無理だった。今回は頭を殴打して気絶した。あ、泡吹いてる。

 

 

 

「わざわざ時間取ってくれたのにごめん…まさかここまでできないとは…」

 

「もう明日に祈るしかないね」

 

「う、うん…今日はありがとう」

 

 

────────────

 

晩飯時はエレンの件で話は持ち切りだった。

 

啖呵切ったクセにあれはダサい。とか、力が無いものは淘汰されるだっけ?とか。

 

おいダズお前ゲームではCランクだっただろ調子乗んな。

 

ここから早く出たい一心に口の中に詰め込み、外に出て手すりに寄りかかり、一息つく。

 

明日は確か立体機動の訓練だったか。昔から無駄な動きが多いからガス欠だけは気をつけないとな、死に損ないが1番辛いからな。

 

 

 

 

 





5000字行きましたわ。けど1万字をポンポン出す世の中ですから末恐ろしいですね。

極力ですが無駄死にのキャラは救いたいと考えていますんで、対戦よろしくお願いします。

暖かいコメント待ってます( ◜ω◝ )

ヒロインって誰がメジャー?

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