ゲマトリア所属の強欲の権化   作:ぬこぱんち

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終わりに近づくカウントダウン

 

「『KAISER PMC』……?ああ、ここはカイザーの民間軍事会社の基地だったのか」

 

 壁に書かれたロゴマークを見上げ、ため息混じりに呟いた。

 

「ふむ、しかしまあ……わざわざこんな乾ききった砂の海に基地なんて建てて、何がしたいんだろうね?焼けた砂と無遠慮な陽射しがお好みとは、随分と変わった趣味を持っているみたいだけど、僕には到底理解することはできない」

 

 ここはオアシスから遥か離れた、アビドスの砂漠に建てられていた一つの基地。

 

 先ほど、僕の側頭部に被弾した銃弾……あれがなければ、わざわざ足を運ぶつもりなんて、これっぽっちもなかった。

 

 僕はとびきり優しく、慎ましく、丁寧に。そう、ただ一言。

 

『危ないから、気をつけようね?』

 

 ──その注意を伝えるために、ここまで来ただけに過ぎないのだから。

 

「まさか、カイザー系列の基地だったとはね。これは完全に予想外だったよ」

 

 肩を竦めて、壁のロゴマークに微笑みを向ける。

 

「でも、そうだね……残念ながら、僕の中で『許す』という選択肢は、今この瞬間ほぼ完全に消えてしまったみたいだ。君たちは、実に運が悪かったね」

 

 カイザーについての情報は、黒服から聞いている。

 

 銀行経営、リゾート開発、インフラ整備と、あらゆる分野に手を伸ばす大企業。そして、その経営方針はきわめて単純でもある……『儲かればそれでいい』。そのためには嘘も武力も厭わない、まさに悪徳の化身と言って差し支えない。

 

 確か、黒服はある目的のためにカイザーに協力していると言っていた。でも、あの黒服がゲマトリアの外部と手を組むなんて、それこそ『黒服が女装した』と言われた方がまだ信じられる。

 

 ……哀れカイザー。黒服は君たちを利用しているだけだ。そのことに、君たちはまだ気づいていないらしい。

 

「そもそもあの時……黒見セリカを襲っていた、あのヘルメット姿の不良生徒たち。彼女らがカイザーから金で雇われていたって、黒服からちゃんと聞いてるんだよね。それで僕は、ある種の被害を受けたようなものさ」

 

 言葉のトーンが、徐々に低く冷ややかになる。

 

「でもどうやら、まだ自分たちはうまく立ち回れているつもりらしいけど……残念だったね。黒服と手を組んだ時点で、君たちは僕に情報が渡ってしまった。あとはその事実に、いつ気づけるかってだけさ」

 

 言い終えて、僕はロゴマークに視線を向けたまま、右手をゆっくりと持ち上げた。その手に握られていたのは……機械の残骸。

 

 火花を散らしながら、まだ微かに動いているそれは、さっきまで僕を襲おうとしていた機械のなれの果てだった。

 

「不法侵入……確かに、その形でここへ足を踏み入れたのは僕かもしれない。だけど、先に手を出してきたのは君たちのほうだ。追い返すだけなら僕も何もしなかったし、何も言うつもりもなかった。それは確かに正しいことだからね。でも、いきなり発砲してきて僕の身体を傷つけようとした時点で既に話は変わっていたんだよね……やっぱり僕は、意思を持たない機械というのは、どうにも苦手意識があるみたいだ」

 

 想起されるのは、蛇のような巨大兵器であり僕の手によって鉄屑と化した、ビナー。灼熱のビームを受けたあの瞬間の記憶は、今でも鮮明に残っている。

 

 ……早く忘れたい、切実に。

 

「まあ、手加減をする必要がないっていう点では、僕の精神的にもずいぶん楽で助かるんだけどね。余計な気遣いをしなくて済むっていうのは、実に快適そのものだからさ」

 

 僕は鉄屑と化した残骸を、ふわりと軽く放り投げた。その音が、地面の他の破片とぶつかって鳴るのを背に、ゆっくりと歩き出す。

 

 この基地の中に、どれだけの数の機械兵器が潜んでいたのかは知らない。でも、それらはもう……山のように積まれた残骸と化していた。

 

「……」

 

 ──強欲の権能は、扱いを誤れば世界を滅ぼしかねないほどの力を持つ。事実、百を超える悪意が押し寄せたとしても、一瞬で粉々にできてしまうだろう。ビナーの時が、まさにそうだった。

 

 でも、僕がいつも対峙しているのは不良生徒たちが圧倒的に多い。いくら襲ってきたからといって、彼女らはまだ子供で、人間で、意思を持つ存在だ。

 

 それを一方的に潰すような真似をしてしまえば……

 

「……ああ、今は自分自身なのに、あの変哲もないにやけ顔を思い浮かべると、反吐が出るう……!」

 

 あの癇癪を起こす子供以下で、ノミ以下の存在に、自分自身が成り下がってしまう。

 

 それだけは、絶対に許せなかった。

 

 僕は、人としての『僕』を守るために、力を振るう。それは、誇りであり、理性であり、僕の存在の最後の砦なのだ。

 

「……にしても、この基地のセキュリティ、あまりにもガバガバすぎるよね。これでどうやって大企業に成り上がったのか、逆に興味が湧いてくるよ」

 

 呆れ混じりにそう呟く。

 

 僕を襲ってくる機械をこの手で一網打尽にして、こうして歩いているのに、警報の一つも鳴らない。まるで招かれざる客を歓迎しているかのような無防備さだ。

 

「まさか、僕以外にすでに不法侵入者が居たり……なんてことはさすがにないよね。そもそも、こんな場所まで何を好き好んで足を運ぶっていうのかな。常識的に考えて、僕以外にそんな奇特な人間がいるはずがないんだからさ」

 

 僕はあくまで『優しく注意』しに来たに過ぎない。決してオアシスの水を持ち帰る際に妨害されたからキレているわけじゃない。

 

 ……ただ、そのきっかけがなければこうしてここに足を運ぶつもりなんて毛頭無かった。だが、僕は決してキレているわけではない。もう一度言う、決してキレているわけでは──

 

『あんた……わた……アビドスは……!』

 

『やれやれ……それか』

 

「──ん?」

 

 そんなことを内心で考えていると、唐突に聞いた事がある声と聞き慣れない声が耳に入ってきた。どうやら、誰かが口論しているようだ。反射的に足を止めて壁に背を預けると、声の方向をそっと覗き込む。

 

 ……道を曲がった先で繰り広げられているのは、意外な光景だった。アビドスの生徒たち、そして、先生の姿が見えた。

 

「アビドスの子たちと……先生?」

 

 なぜこんな場所に?まさか、銀行だけじゃ飽き足らず、今度はカイザーの軍事基地まで襲撃するつもりなのだろうか?

 

 これはとんでもない。見なかったことにして立ち去るという選択肢が急速に現実味を帯びてきた。

 

「──君たち程度、いつでもどうとでも出来るのだよ……例えば、こういう風にな」

 

 不意に、機械じみた低い声が耳を打った。

 

 僕は素早く視線を移す。

 

 よく見るとそこには、アビドスの生徒たちと先生のほかに、大勢の無機質な機械兵たちが整列していた。そしてその中で、ひときわ目を引く、一体の機械。

 

「あの無駄に図体がでかい彼が、この基地の責任者かな?」

 

 いかにも上司面した態度と威圧的な雰囲気。間違いない、あれがこの拠点の指揮を執っているのだろう。

 

 僕は、その場のやり取りを静かに聞いていた。

 

 ──くだらない脅し文句、的外れな誇示……そして、責任者とは思えない暴論。

 

 まるで茶番だ。こんなものを見せられた後では、僕の内心もだいぶ落ち着いてしまった。

 

「へえ」

 

 軽く目を細め、ふっと口角を上げた。

 

「──本当に、運が悪かったね」

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

「──ならばどうする? 他に何か、良い手でも?」

 

 スーツに身を包んだ大柄な機械の男が、冷たい金属の声で言い放つ。アビドスの生徒たちの前に立ちふさがるその姿は、この基地の主にして、カイザーコーポレーションの理事そのものであった。

 

 アヤネはその言葉に目を伏せ、悔しげに拳を握りしめる。

 

 理事の手によって、これまで努力して支払ってきた利子が、一夜にして十倍以上にも跳ね上がった。理不尽な変動金利。保証金と称して、三億円もの大金をカイザーローンに預託させるような暴挙。もはや大企業と名乗って良いのかと言わんばかりの、搾取そのものの契約だった。

 

「"……これが、カイザーのやり方なんだね"」

 

 先生はアヤネと違って目を伏せはしなかったが、その表情には深い悔しさがにじんでいた。握りしめた拳から血が滲み出しそうなほどに力がこもっている。教師である自分が、何一つできず、守るべき生徒たちの前で立ち尽くすしかないことが、あまりにも情けなかった。

 

 力があれば、影響力があれば……そう思っても、現実は非情だ。この場は、彼女たちにとって負け戦でしかなかった。

 

「……みんな、帰ろう」

 

「ホ、ホシノ先輩……!?」

 

 静かに言ったホシノの声に、セリカが驚きの声をあげる。

 

 あのホシノが諦めの言葉を口にするなんて──。

 

 セリカは信じられない表情を浮かべていた。

 

「これ以上、ここで言い争っても意味がない。弄ばれるだけだよ」

 

「ほう……副生徒会長、さすがに君は賢そうだな……」

 

 理事が忌々しいほど余裕のある声で言う。そして、わざとらしく思い出したように続けた。

 

「ああ、思い出したよ。賢そうな君と一緒にいた、あの全くもってバカな生徒会長のこともな。彼女は今、何をしているのかね?アビドスを卒業してもなお、生徒会長の席にしがみついて、返せもしない借金返済に励んでいるのかね?」

 

「──ッッッッ!!!」

 

 ホシノの目が怒りに染まり、ショットガンを構えかける。しかし、引き金に指をかけることはなかった。彼女は分かっていた。ここで撃ったとしても、状況は何も変わらない。だから、ただ睨みつけることしかできなかった。

 

「では、保証金と来月以降の返済については、よろしく頼むよ……お客様」

 

 理事はそう告げ、あくまで客として扱うつもりの言葉を選んだ。

 

 シロコは何も言わなかった。だが、その目には静かな怒りと殺意が宿っていた。

 

 ──ん、こいつら全員あの世いき。

 

 心の中でそう呟く彼女の思考が読めたなら、誰もが背筋を凍らせたかもしれない。

 

「ふふっ……ふはははは!」

 

 理事の下劣な笑い声が空間を満たす。どこまでも薄汚れた大人だった。

 

「存外、悪くない時間だったな。さあ、お客様を入り口まで──」

 

「僕も、入り口まで案内してもらっても良いかな?」

 

 一つ、場違いな足音が響いた。

 

『──えっ!?』

 

 聞き覚えのある声に、先生を筆頭にアビドス対策委員会の面々が反応する。その声がした方を、一斉に振り返る。

 

「──なんだ、貴様は?どこから入ってきた?」

 

 理事の問いかけに、男はすぐには答えなかった。

 

 ただ、静かに歩み寄り、先生と対策委員会の前に立ち、理事と真正面から向かい合うように立った。

 

「どこから入ったかなんて、もう覚えていないよ。ここの構造、無駄に入り組んでいてさ。迷宮でも作ってるつもりだったのかな?」

 

 深いため息と共にそう呟いた男──レグルスは、視線を理事へと向けた。

 

「──なんでっ……!?」

 

 ホシノの声が小さくこの場に響いた。

 

 理解が追いつかない。どうして彼がこんな場所に現れるのか。なぜ、こういう時に限って姿を見せるのか。そして、彼は何を考えているのか……敵なのか、味方なのか。ホシノの思考は混乱し、まとまらなかった。

 

「そんなに警戒しないでほしいなあ。僕は本当に、ただ道に迷ってここに辿り着いただけなんだよ。ほら、僕はどこにでも居る、特別でもなんでもない、平凡な人間に過ぎないんだからさ」

 

 レグルスは肩をすくめ、どこまでも軽い調子でそう言った。

 

 しかしその前方では、カイザーの機械兵たちが一斉に銃口を彼に向けている。異様な緊張感が場を満たす中で、レグルスだけが、怯えることなく、むしろ穏やかに振る舞っていた。

 

「……ん、今のうちに一網打尽にする?」

 

「シロコさん、どう、どうですよ」

 

 場の緊張感をよそに、ノノミとシロコがひそひそと話す。

 

 二人は、レグルスに対する警戒心を他の者ほどには抱いていなかった。

 

 銀行、市街地の時など、あの時の彼の行動を思い出せば、敵意を向けられているわけではないと感じていたからだ。

 

「……貴様、ここをどこだと思っている。貴様のような平凡な人間が、そう易々と踏み込んで良い場所ではない。そこの連中と共に、早くここから立ち去れ。そうすれば私からは何もしない」

 

 理事が鋭い声を放つ。彼の視線からは、わずかながら敵意が含まれていた。

 

「まあまあ、落ち着きなよ。確かに僕はこうして迷い込んだかもしれない。でも、これは僕の想いを伝えるちょうど良い機会だと思っているんだ」

 

「なに……?」

 

 レグルスの言葉に、理事は興味と警戒が入り混じった視線を向ける。そんな中、レグルスはふっと微笑んだ。

 

「──僕は、君たちを尊敬しているんだ」

 

『──ッ!?!?』

 

 その言葉は、対策委員会の面々と先生にとって、衝撃以外の何物でもなかった。

 

「さすがは大企業といったところだよ。経営の手腕、実に見事だ。アビドスの子たちを『優しく説得』して、きっちり借金返済させるなんて……これはもう、感心を通り越して、感動すら覚えるレベルだよ。僕にはとても真似できそうにないな。いやほんと、参考になるよ……いろんな意味で、ね」

 

 レグルスはゆっくりと拍手を送った。その仕草に、理事は感心したように頷く。

 

「ほう……よくわかっているではないか。そこのアビドスよりも、私たちのことをよく理解しているようだな。周りからは悪徳企業だの詐欺企業だのとほざく連中が多かったが……貴様はどうやら違うようだ」

 

 理事は愉悦に満ちた笑いを漏らす。場の空気が歪み始めていた。

 

「うそ……!?」

 

『──っ!?』

 

 セリカとアヤネの顔が青ざめる。

 

 レグルスが、まさかカイザーに加担するとは思ってもいなかったから。しかも、先ほどのやり取りを聞いていたということは……最初からこの場に来るつもりだったのかと、疑念が胸をよぎってしまう。

 

「ふはは……今の私は実に気分が良い。この際、アビドス……貴様らの非礼も見逃してやろう。さあ、そこの男と共に、ここから──」

 

「ところでさ、僕が心から敬意を払っている君たちに、いくつか聞きたいことがあるんだけど……良いかな?」

 

 理事が言い終える前に、レグルスは一歩前に出る。

 

「なあに、大丈夫。そんなに時間は掛からないよ。ほんの数秒、軽い対話だと思ってくれれば良い」

 

 レグルスの口調は変わらず穏やかだったが、その言葉が持つ重みは場の空気を確かに揺るがせた。

 

「仕方のないやつだ。良いだろう、何でも聞くといい」

 

 珍しく機嫌のいい理事は、普段なら口を噤むようなことさえ、何の躊躇もなく口にした。

 

「君の寛大な心に敬意を払おう……さて、まずは一つ目だけど、この基地の周囲に、こんな弾丸が落ちていたんだけど、これは君たちのかな?」

 

 レグルスは穏やかな口調でそう言うと、ポケットに手を入れ、一つの弾丸を取り出した。それは通常よりも一回り大きく、艶のある黒金属の輝きを放っている。それを親指と人差し指で軽くつまみ、理事の前でひらひらと揺らして見せた。

 

「ああ、それは我が社特製の弾丸だな。私たちはそれを一発一発丹精を込めて──」

 

「……いや、もう充分だよ。回答してくれて感謝するよ」

 

 レグルスは理事の話をさえぎり、静かに弾丸をポケットへとしまった。理事の言葉が途中で切られたことに、周囲の空気がわずかに緊張を孕む。

 

「"……彼は、何がしたいんだ?"」

 

 先生が小声でつぶやく。その声には、レグルスの行動の意図が読み取れず、戸惑う感情が滲んでいた。

 

「それじゃあ、次は二つ目の質問だね。君の……いや、君たちの、そのたくましくて頼もしそうな機械の腕。ずいぶん立派な造形だけど……やっぱり、それもカイザーのご自慢の力作だったりするのかな?」

 

 レグルスの視線が、理事の両腕へと向けられる。その瞳には、どこか皮肉とも嘲笑ともつかない光が宿っていた。

 

「──ふははっ!面白い男だ!そんなことを聞いてきたのは貴様が初めてだ!」

 

 理事はその質問が気に入ったのか、愉快そうに高らかな笑い声を上げた。

 

「勿論だとも。我が社は私を含めた社員達に、いつでもどこでも健康で居られるよう、身体のケアは欠かさない。仮に負傷したとしても、替えのパーツなんていくらでもある。これこそが、私たちカイザーのあるべき姿だからな」

 

 その言葉に合わせて、理事は自身の腕を誇らしげに見せつける。光沢のある義肢が、機械兵と同様の精密な造りをしていることがわかる。

 

「──へえ、替えはいくらでもあるんだね」

 

 レグルスは理事の返答に小さく頷き、口元に微笑を浮かべた。

 

「それじゃあ、少し長くなってしまったけど、最後の質問だよ」

 

 そう前置きすると、レグルスはさらに口角を上げ、ゆっくりと問いかけた。

 

「──きみのその腕、痛覚はあったりするのかな?」

 

「"……うん?"」

 

 ──なんか流れ変わったな?

 

 先生が内心でそう感じる。空気の色が、一気に変わったのだ。

 

「何を言うかと思えば……そんな都合の悪い機能、私たちに備わっているはずがないだろう。その点、貴様たちは嫌でも感じてしまうだろうから、少しだけ同情はしてしまうがね。ふはっ、ふははははっ……!」

 

 理事は嗤いながら、皮肉たっぷりにそう返す。

 

「なるほどなるほど……」

 

 レグルスはその回答に、納得したかのように数度頷くと、おもむろに目を閉じ、静かに息を吐いた。

 

「──それは良かった」

 

 次の瞬間、理事の片腕が爆音とともに吹き飛んだ。

 

「──はっ?」

 

『──ッ!?』

 

 まるで空間ごと弾けたかのような衝撃。理事の機械の腕はちぎれ飛び、宙を舞う。

 

くるくると回転しながら空中を踊り、それを追うように皆の視線も釘付けになる。

 

 ──そして。

 

『────』

 

 ポテッ、と音を立てて、砂漠の砂にわずかに沈んだ。

 

 ──しばしの沈黙。レグルス以外の全員が言葉を失った。まるで時間が凍りついたような、重く張り詰めた沈黙だった。

 

 しかし、数秒経過した後、機械兵の一人が絶叫した。

 

「り、理事!?腕がああああああああッッッ!!?」

 

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