ゲマトリア所属の強欲の権化   作:ぬこぱんち

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閉ざした殻のその先へ

 

「──とまあ、これで君の疑問には十分答えられたんじゃないかな?僕は彼女の判断と手配によって、ここに侵入した部外者なんかじゃなく、れっきとした客人として桐藤ナギサの元へ通された立場にあるんだよね。つまり今の僕はナギサが認めた来訪者であり、形式上も実質上も、ここで対話する正当な権利を有しているというわけだ。やっぱりさ、日頃の行いって大事だよね。善行を積み重ねた者に、こうして巡り巡って利益が返ってくる……まさにその典型例だと思わないかな?」

 

 自画自賛を織り交ぜながら、決して不法侵入ではないことを一言一句余すことなくナギサに説明しきったレグルス。

 

『──分かりました……そうですよね。“客人”が訪れたとなれば、どのような状況であれ、どのような心境であれ、ティーパーティー代表であるナギサ様はそれに応じるしかありません。なぜなら、それもまたナギサ様の務めだからです。私たち身内の生徒はともかく、レグルスさんは“客人”ですから……私は、何も間違った事を言っていませんよね?』

 

 レグルスが本当にナギサに会いに来ているのだと理解した彼女はある覚悟を決めた。

 

 ──それは、処分を受けることも厭わないという覚悟。ナギサの許可を得ないまま、レグルスを客人として招いたことにすると。

 

 その理由として、ナギサにそろそろ誰かと面と向かって話してほしいという想いがあったからだ。

 

 ……レグルスとナギサの間には、本当に大切な約束が交わされているのかもしれない。

 

 あるいは、誰にも話せない機密に関わる話なのかもしれない。

 

 もしくは……ただの、取るに足らない世間話なのかもしれない。

 

 今のナギサの状況を、ほんの少しでも変えられる可能性があるのなら……彼女は、その可能性に何としてでも縋るつもりだ。

 

 ──それほどまでの覚悟が、彼女にはあった。

 

「……そ、そんな……まさか、エデン条約の締結を阻止する真の裏切り者は、貴方をここに招いた──」

 

「おいおい、それはいくらなんでも決めつけがひどすぎるだろ。状況も整理せず、根拠も示さずに結論だけを押し付けるだなんて、さすがに短絡的にも程があると思わない?君は一度落ち着いた方がいいんじゃないかな?明らかに冷静さを欠いている状態だからね」

 

「──っ!……っ……!」

 

 さすがにそれはひどいのではないかと感じたレグルスは、ナギサにそれ以上言わせまいと被せるように言葉を遮る。

 

 ……疑心暗鬼に陥りすぎて、どんな些細な出来事でさえもすべてが疑わしく見えてしまうナギサ。はっきり言って、かなり重症である。

 

 まあ、その傷をさらに抉る結果になってしまったのが、他ならぬレグルスがナギサの元に訪れたせいでもあるが。

 

「──ど、どうしてレグルスさんがこのタイミングでいらしたのですか……!?ティーパーティーの生徒でも、友人でも……先生でもない、『部外者』の貴方が……!」

 

 一度落ち着け、冷静になれ……そう言われて、簡単にそうできるのなら苦労はしない。

 

 部屋に閉じ籠もるほどに精神が非常に不安定なナギサがすぐに平静を取り戻せるはずもなく、動揺を隠せないまま、彼女は目の前に現れた『部外者』へと問いをぶつける。

 

「なるほどなるほど……確かに、今の君にとって僕は『部外者』でしかないだろうね。それに間違いはないよ」

 

「だったら、なぜ……!?」

 

 ハスミからレグルスという存在を軽く聞き及び、さらにティーパーティー内でもその噂を耳にしたナギサが、エデン条約締結において障害となり得る人物かどうかを見極めるため、レグルスをティーパーティーの場へと招いたのはつい最近の出来事だ。

 

 その際、確かにエデン条約についてもわずかに言葉を交わしてはいる。

 

 だが、それでもレグルスが本質的に関与する必要のない『部外者』であることに変わりはない。

 

 なにしろ、これはトリニティとゲヘナの間で交わされる条約であり、加えて、生徒たちの味方である先生という大人も、その締結に協力しているから。

 

 だからこそ、本来であればレグルスが関わる余地など存在しない。

 

 ──それで終わったら良かったのだが。

 

「君はさ、課された試験に合格しようと必死に足掻いている彼女たちに対して、周囲に実害を及ぼしてまで妨害するような人でなしだったのかな?」

 

「…………………………え?」

 

 一瞬、ナギサはレグルスの言葉を理解することができなかった……いや、理解するのを拒んだのかもしれない。

 

 なぜなら、『部外者』であるはずのレグルスに、いきなり『人でなし』と断じられたのだから。

 

「どういう意味ですか?い、いきなり人でなしだなんて、失礼にもほどが……」

 

 ナギサは、表面上こそ取り繕いながら、いきなりそんなことを言うのは失礼ではないかと口にした。

 

 ──だが、ナギサは心のどこかでは分かっていた。

 

 これが正しい選択なのだと。先生の協力すら得られないのであれば、自分が動き、すべてを解決すればいいのだと。

 

 ……そうして選び取った手段が、客観的に見れば『人でなし』と評されるものであると。

 

 そんなナギサの内心を見透かしたかのように、レグルスはため息を吐いて続けてはっきりと言う。

 

「──試験会場を爆破し、彼女たちの試験を妨害するのみならず、僕と同じ一般人に該当する先生すらも爆破に巻き込んだ人でなしと言ってるんだよ僕は」

 

「──っ!?どうして──!?」

 

 ナギサは目を大きく見開き、驚愕する。

 

 だがそれは、人でなしと呼ばれたことに対してではなく、なぜレグルスが試験のことを知っているのか。そして、知ったのだとすれば、いったいどこでそれを知ったのか。

 

 その一点にこそ、ナギサの意識は強く向けられていた。

 

「──トリニティの成績不振者を救済するために新設された『補習授業部』は、学力試験に合格できなければ全員そろって退学となってしまう。そんな中、先生と共に切磋琢磨を重ね、模擬試験では着実に点数を伸ばしてきた彼女たちは、第二次特別学力試験を受ける際、どういうわけかゲヘナの会場まで足を運ぶことになり、どうにか会場に辿り着いて試験が始まろうとした時、『温泉開発部』という連中が会場ごと周囲一帯を爆破し、僕も被害を被った……その全てにおいての主犯である君が、人でなしと言われても仕方がないんじゃない?まあ、そんなこと僕しか言ってないだろうけどね」

 

「それをどこで知ったのですか!?いくらなんでも貴方は知り過ぎていますっ!いくら、いくらなんでも……!」

 

 一連の出来事を知りすぎているレグルスを前にして、ナギサはもはや驚愕ではなく、恐怖していた。

 

 手が震え、唇が震え、やがては全身が小刻みに揺れ始める。正常な判断など、とてもできる状態ではなかった。

 

 本来であれば、しらを切ることもできたはずだ。実際、レグルスは何一つ物的証拠を持っていない。証拠がないのなら、適当に言い訳を並べるだけでも良かったのだから。

 

「どこで知ったのかだとか。知り過ぎているんじゃないかとか……正直、そんなことはどうでもいいんだよね──何故なら、僕がどう知っていようと、君が人でなしなのは変わりがないのだから」

 

「──っ……っっ!!」

 

 ナギサは、レグルスによって徹底的に追い詰められていく。

 

 すでに椅子から立ち上がっていた彼女は、逃げるように視線を逸らすこともできず、レグルスを見据えたまま、じりじりと背後の壁へと後退していく。

 

 それとは対照的に、レグルスはゆっくりと、確実に距離を詰めていく。逃げ場を奪うかのように、一歩ずつ、一歩ずつナギサへと歩み寄る。

 

「ああ、君の言う通り、僕は部外者だ。れっきとした部外者であることに変わりはない……そんな僕から、君は『人でなし』だと言われていることを心の底から──」

 

 レグルスから逃げるように、ナギサは後退し続ける。そして、背後の壁に両手がついた瞬間──

 

「……貴方に、私の何が分かるんですかっっ!!!」

 

 ──ナギサの悲痛な叫びが、部屋中に響き渡った。

 

 レグルスを睨みつけたまま、荒い呼吸を繰り返す。スカートは両手で強く握り締められ、深い皺が刻まれている。

 

「──……」

 

 そんな彼女の様子を前にしてレグルスは、先ほどまでの饒舌さが嘘のように沈黙する。表情を変えぬまま、ただ真っ直ぐにナギサの目を見据える。

 

 ──言いたいことがあるなら、さっさと言えよ。

 

 そう、告げているかのように。

 

「ようやく……ようやく長年にわたるゲヘナとの確執を終わらせるために、エデン条約の締結を進めていたんですよ!?それなのに、真偽も分からない噂ばかりがトリニティ全体に飛び交って……その中には、エデン条約を快く思わず、締結を妨害しようとしている、なんてものまであって……!そんな時に、セイアさんが何者かに襲撃されてしまって、ヘ、ヘイローを破壊されて……!もう、何が本当で何が嘘なのか、何がなんだか分からなくなってしまって……!だからこそ、いま怪しい人物を徹底的に調べ上げようと思っただけで……!私がティーパーティーの代表である限り、たとえ一人であっても果たさなければならない責務なんです!協力が得られなくても、周囲に良く思われなくても……私は、私は……!」

 

 レグルスへの恐怖からか、それともただ吐き出したかっただけなのか。ナギサは目に涙を滲ませながら、これまで必死に抑え込んできたものが言葉となって溢れ出す。

 

 ──それは、隠してきたはずの事すら、思わず口にしてしまうほどに。

 

「……!?い、いえ、ちがっ、違います!今のは違うんです!う、嘘なんです!なので、いま言ったことは全て、全て忘れて……くれませんか……?」

 

 言ってはいけないことまで口にしてしまったナギサは、叫ぶように否定する。

 

 だが、その声は次第に勢いを失い、やがては掠れるように小さくなっていった。最後には、聞こえるかどうかも分からないほどの声で、レグルスに懇願する。

 

「…………」

 

 あれほど饒舌だったレグルスは、依然として沈黙したまま、ただナギサを見つめている。その無言が、何よりも重くのしかかる。

 

 それに耐えきれず、ナギサは思わずその場から逃げ出そうとして──

 

「──君は、最初から本当に不器用だね」

 

 レグルスが、そんなナギサを見てどこか呆れたようにそう言った。

 

「…………………………えっ?」

 

 やれやれ、とでも言いたげに軽く首を振るレグルス。

 

 その様子を前に、ナギサは完全に硬直する。

 

 あまりにも予想外だったのだ。責められるでもなく、断罪されるでもなく、返ってきたのは、思わず拍子抜けするほどの言葉だったのだから。

 

「あのさあ、部外者である僕ですら分かることだよ。エデン条約というのは、トリニティとゲヘナの今後を左右するほどの重大な不可侵条約だってさ。きっと、規模も影響力も段違いなんだろうね。だというのにさ、既に個人でどうにか出来る範疇をとっくに超えている上でたった一人で何もかも背負って成し遂げようとするなんて、土台無理な話だと思わないかな?さすがに限界があると思うんだよね。それに、言ってしまえば君は生徒の一人に過ぎないし、トリニティの全てを抱え込む必要なんて無いでしょ?」

 

 お前は何を言って、何をしているんだと、レグルスはナギサに言い放つ。

 

 一人で何もかも抱え込もうとしている。その時点でもうおかしいのだと。

 

 しかし、レグルスの言葉がすべて正しいとは言い切れない。

 

 ティーパーティーの代表という立場がある以上、簡単にそれを認めるわけにはいかない。だからこそナギサは、わずかでも反論しようと口を開く。

 

「ですが!私はトリニティの、ティーパーティーの代表です!私が動かなければ、抱えなければ、条約も!それによって訪れる平和も!全てを成し遂げる事が……!」

 

「確かにね、責任が伴う話だというのは理解しているよ。君が動かなければ何も始まらない、それも事実だろうね。でもさ、それとこれとは別問題だと思うんだよね。条約を締結させることも、平和を手に入れることも大事だ。僕も大賛成だ。けど、その過程で君自身が壊れてしまうのなら、それはもう成立していないのと同じなんだよ。君が機能しなくなった瞬間、その計画そのものが瓦解するんだからさ……君がやっていることは、本末転倒そのものだと思うんだよね」

 

「っ……」

 

 それは、紛れもない事実であり、同時にレグルスの偽りのない本音でもあった。

 

 ナギサは反論しようとしても、続くはずの言葉が出てこない。言い返そうと思えば、できたのかもしれないが、少なくとも今のナギサには、レグルスに対して反論することができなかった。

 

「現に、君はそうやって引き籠ってしまった事実があるからね」

 

 淡々と突きつけられる現実。

 

 ……そうだ。今この瞬間も、ナギサは壊れかけている。その事実を前にして、いったい何をもって反論すればいいというのか。

 

「……」

 

 すっかり顔を俯かせてしまったナギサ。

 

 ──今、ナギサは何を考えているのだろうか。

 

 自分のしたことを振り返り、後悔しているのか。それとも、まだ間違ってはいないと、そう思っているのか。その答えは分からない。

 

 だが、そんなナギサの思考を容赦なく断ち切るかのように、レグルスが口を開いた。

 

「……君はついさっき、百合園セイアが何者かに襲撃され、ヘイローを破壊されたと言っていたよね?」

 

「……?はい、確かに私はそう言ってしまいましたね……それが、どうかされましたか……?」

 

 本来は機密事項であるはずのそれを、よりにもよってこんな形で口にしてしまったその事実に、ナギサは強い後悔を抱いていた。

 

 トリニティの生徒でもなく、先生でもなく、関係者ですらない部外者であるレグルス・コルニアスに知られてしまった失態。

 

 その事実が、ナギサをさらに追い詰めていく。

 

 ──しかし、運はナギサに味方していた。

 

「──百合園セイアは間違いなくどこかで生きているよ。何せ彼女は、夢という本来なら誰にも侵されることのない個人の領域に踏み込んできたからね」

 

「……?……っ!?」

 

 その想定外の言葉に、一瞬理解が追い付かなかったナギサだったが、脳内でその意味を咀嚼するように、少しずつ理解が追い付いていく。

 

 そして次の瞬間には、弾かれたように俯いていた顔を勢いよく上げた。

 

「セイアさんと接触したのですか!?一体、どういう経緯で……!?」

 

「経緯も何も、向こうから一方的に接触してきたんだよね。百合園セイア曰く、神秘が織り上げた私だけの夢の世界だとか、ここに招かれたのは君が初めてだとか言われたよ。正直僕も意味が分からないんだよね。君はどうせ知っていたんだよね?百合園セイアという人間が、夢を媒介にして他者と接触することが出来る常識外れの手段を持っていることをさ。だから僕は、百合園セイアはどこかで生きていると言ったんだ」

 

 それは、ナギサにとってあまりにも重大な朗報だった。

 

 彼女がここまで疑心暗鬼に陥ってしまった理由の一つに、セイアが何者かの襲撃を受け、すでに命を落としているという思いがあったから。

 

 ……もし本当にセイアが生きているのだとすれば、それだけで、ナギサの心にのしかかっていた負担は確実に軽くなるはずだ。

 

「……いえ、あり得ません。確かに、セイアさんの能力であれば、レグルスさんの夢に干渉できてもおかしくはありません……ですが、セイアさんはあの日、確実にヘイローを壊されてしまっているのです──死者が夢を見ることはできない、というのは当然のことですから」

 

 しかし、それだけで生きていると断言することは、ナギサにはできなかった。

 

 ……疑心暗鬼に陥っている状況は、依然として変わらない。レグルスが虚言を吐いている可能性を、どうしても捨てきることができなかった。

 

 他者を信じきることができない……そんな今のナギサにとっては、どんな情報であろうと、疑いの目を向けずにはいられないのだ。

 

「じゃあはっきり言うけどさ。逆に君は、百合園セイアの死体をその目でしっかり確認したのかな?僕は彼女自身から、世間では現実の私は既に死んでいる事になっているとも聞いたし、私の元に来た彼女のためにも詳しくは言えないと聞いているんだよね。その彼女が誰かは知らないし、微塵も興味は無いけど、百合園セイアが世間では亡くなった事にしておいて、その襲撃者から追跡を逃れるため、干渉を避けるため、あるいは別の目的のためにどこかで生きていて表舞台から退いている。そう考えること自体は、何も不自然じゃないよね?」

 

「……確かにそれはそうかもしれませんが……しかし、レグルスさんがセイアさんと接触したとは言い切れな──」

 

「──トリニティでは珍しいよね、狐耳と尻尾を持つ生徒なんてさ。服装もまた異質で、ティーパーティーの一員とは思えないほどに上半身の背中を大胆に露出している。金髪のロングヘアに加えて、シマエナガを従えているという点も含めて、視覚的な特徴だけでも十分すぎるほど際立っているよね。それに加えて、あの話し方だ。はっきりと分かりやすく簡潔に伝えれば済むものを、わざわざ婉曲的に、遠回しに、回りくどく言葉を重ねてくる。まあ、これに関しては僕と似ているとも言えるよね……ああそうだ。何ならここで君が満足するまで百合園セイアが発した言葉を一言一句違わずに答えても良いよ。どうせなら、早速始めてしまおうか。『──ああ、こうして成功したということは、やっぱり君は他とはどこかかけ離れている存在なんだね。ずっと不思議だったんだ。どうして明晰夢という曖昧な舞台を通して君を観測する筋書きになったのか。こうして考えると──』」

 

「わ、分かりました!も、もう十分です!レグルスさんが嘘をついていないことは分かりましたから……!」

 

「……なんだ。僕は別に最後まで言っても良かったんだけどね」

 

 まあ、理解してくれたようで良かったよ。

 

 レグルスはそう言って、ようやく口を閉じた。

 

 ──このまま喋らせていたら、いったい何時間続いていたのだろうか。考えるだけで、少しばかりナギサの気が遠くなった。

 

「……そう、ですか。セイアさんは今もどこかできっと、い、生き、生きてくださ──っ……」

 

 ナギサの瞳に再び光が宿り、そのまま溢れて重力に従って落下する。

 

 ──ナギサの言う通り、死者が夢を見ることはできないだろう。

 

 しかし、レグルスが語ったセイアの容姿の特徴、言動、性格が、ナギサの記憶とほぼ一致していたことで、その言葉の信憑性は一気に増していく。

 

 それにより、セイアは死者なんかではなく、今もなお一人の生徒として、キヴォトスのどこかで生きているのではないか……そんな確信に近い感覚が、ナギサの中に芽生えた。

 

 それだけでも、彼女の心にのしかかっていた重荷は、確かに軽くなっていた。

 

「──僕が、君のことや補習授業部の内情なんてものを詳しく知っているはずがない。それでも把握していた理由は単純で、全部、百合園セイアから聞いたからなんだよね。こちらが丁寧に頼めば、彼女は意外なほど素直に応じてくれたよ。隠す様子もなく、知っていることを一つ残らずね。彼女はどうやら明晰夢とやらを通して状況を把握しているらしい。だからこそ、僕が知らないはずの情報まで、平然と語ることが出来たというわけだ」

 

「……そう、でしたか」

 

 ナギサはようやくレグルスの言葉を真に受けることが出来るようになった。ここまで来てしまえば、レグルスが嘘をついているようには思えなかったからだ。

 

「……君がそうなってしまった要因は、他にもいくらでもあるんだろうね。その中でも、百合園セイアが君にほとんど何も伝えないまま姿を消して、結果として亡くなったと認識させてしまった。その事実が、君に大きな負担としてのしかかったのは間違いない。そういう意味では、君も被害者だと言えるだろうね。理不尽な形で背負わされたものがあった、それ自体は否定しないよ」

 

 ただね。と一拍置いて、レグルスは続けて言う。

 

「どれだけ事情があろうと、どれだけ追い詰められていようと、君が補習授業部や先生に対して行ったことが消えるわけじゃない。結果として、彼女たちにとっては看過できない被害を生んでいるだろうね。だからこそ君は、人でなしと言われてもおかしくない過ちを犯してしまった加害者でもある。彼女や先生の頑張りに対して、客観的に見ても、君は失礼すぎることをしてしまった」

 

「っ……はい、理解しています」

 

「──改めて言うけどさ。君の言う通り、僕は部外者でしかない。君にとっては、今の僕の言葉なんて大きなお世話でしかないのかもしれない……それでもね。第三者の立場だからこそ、断言できることがある。君は誰よりもエデン条約に真摯に向き合い、何よりも人の事を考えて動くことが出来るその在り方は、間違いなく代表にふさわしい生徒だってね。少なくとも、最初に君と話した時から今に至るまで、その印象は一度も揺らいでいないよ」

 

「……っ、そのように思っていただいて、ありがとうございます……」

 

 確かに、最初に出会った時こそ、権利を侵害してくる失礼な生徒だという印象はあった。

 

 だが、表面的な言動だけでなく、その根底にある人間性まで見たうえで……レグルスは、ナギサのことを悪い人間だと思ったことは一度もなかった。

 

「だからこそ、君を慕っている生徒なんて、いくらでもいるんだろうね。ここに来るまでの経緯を話した時にも言ったけどさ、あの場に居たのは、君をどうにかしたいって本気で考えている子たちばかりだった……それなのに君は、そんな彼女たちの想いに対しても切り捨てようとしたんだ。でも、今の君なら何をどうすべきか、もう分かるはずだよね?」

 

「……一人で抱え込まず、皆さんに相談するようにする、ですよね?」

 

「──ああ、その通り。君は実に良い子だ。僕から君に百点満点をあげよう」

 

 レグルスの百点満点など、別に必要はないし微塵もいらない。その評価は、ひとまず脇に置いておこう。

 

 満足げにうんうんと頷いているレグルスの様子を確認したナギサは、ようやく瞳に溜まっていた涙へと意識を向ける。そっとハンカチを取り出し、静かにそれを拭った。

 

「──そうですね。私には、私にできる限りのことを。そして、何でも一人でやろうとせず、皆さんにも頼らせていただこうと思います。たとえ、私が間違ったことをしてしまっても、止めていただけるように」

 

「間違える前提なのは非常に気になるけど……まあ、人間というのは些細なことで判断を誤る生き物だからね。どれだけ気を張っていようと、どれだけ理性的であろうと、完全にミスを排除することなんて出来ないよね……うん、その事に関しては、僕がこれ以上何も言えることはないけどさあ……」

 

 本当に大丈夫なのだろうかと、レグルスは内心で思う。

 

 非人道的な行為に走ることはないだろうが、いつか自分の平穏を脅かすような存在になりはしないか……そんな懸念が少なからずあったからだ。

 

 平穏を何よりも愛するレグルスにとって、己の権利が侵害されるような事態はごめんである。

 

「……レグルスさん、一つ、お伺いしてもよろしいですか?」

 

「──?ああ、今の僕はあることを除けば気分が良いからね。君の質問にも答えてあげよう」

 

「ありがとうございます。では……」

 

 あることを除けば……?非常に気になるフレーズだが、ひとまずはナギサの疑問を聞くとしよう。

 

「──レグルスさんでも、一人で全てをこなすのは難しいのでしょうか?」

 

「────────……………………」

 

 それは、純粋な疑問だった。

 

 ナギサは噂を通して、ある程度レグルスという人物を知っている。

 

 一人で何の動作もなく複数の戦車を吹き飛ばしたり、アビドス市街地でゲヘナの風紀委員を相手に単独で制圧したり、さらには侵攻してきたPMCをほぼ一人で壊滅させたり……伝え聞く話のほとんどが、レグルスが一人で成し遂げたものばかりだった。

 

 だからこそナギサは、自分と比べるまでもなく、レグルスならば何であろうと一人で解決できてしまうのではないかと、そう考えていたのだ。

 

 ──しかし、ナギサ、それは大きな間違いだ。

 

 レグルスは、この世の誰よりも一人で生きていくことは出来ない。

 

「…………そうだね。僕一人でも全てをこなすことは難しいよ」

 

 レグルスの脳裏に、不協和音を植え付けてしまった三人の人物が思い浮かぶ。

 

 彼女たちの目元は黒く塗り潰され、表情を読み取ることはできない。だが、固く結ばれた口元だけははっきりと分かる。

 

 ──それが、笑顔でないことも、分かる。

 

 ……それこそが、彼女たちの本心なのではないか。誰も、レグルスの不協和音など望んでいないのではないか。

 

 その考えを振り払うように、レグルスはほんのわずかに首を左右に振ることしかできなかった。

 

「……そうでしたか。質問に答えていただき、ありがとうございます」

 

 その言葉を受けて、ナギサは改めて思う。やはり、一人では限界があるのだと。レグルスの答えは、ナギサの中にすっと落ちていった。

 

 そしてナギサは、突然の問いにもかかわらず答えてくれたレグルスに感謝をした。

 

「気にしなくて良い。僕は些細な疑問に答えただけだからね」

 

 ──謙虚な人だ。

 

 ナギサは、内心でレグルスの事をそう思った。

 

 ……いや、レグルスに限ってそれは絶対にない。とはいえ、どう感じるかは人それぞれか……いや、やっぱりレグルスに限ってそれは絶対にない。

 

「……本日は、本当にありがとうございました。レグルスさん……貴方がこの場に来ていただいたことで、私は自分を見つめ直せる良いきっかけになりました。本当に、感謝してもしきれません」

 

「僕が何も言わずに感謝することが出来るだなんて、やっぱり君は僕の見立て通りの生徒だったというわけだ。少なくとも、筋を通すべきところではきちんと通す。その在り方は評価に値するよ……この前も言ったけどさ、僕に直接手を貸せることなんて何ひとつないし、わざわざお節介を焼くつもりもないけど、君が少しでも報われるように、密かに応援し続けるよ。そして、百合園セイアが見つけれるようにも、僕からも祈っておくよ」

 

「!……はい!」

 

 ナギサは、自身の未熟さと向き合い、閉ざしていた殻を、その手で打ち破った。

 

 トリニティの生徒の象徴であるその羽は、きっと彼女の事をどこまでも高く導くだろう。そしてその先で、数え切れないほどの可能性を掴み取っていくに違いない。

 

「私が今、やるべきことを……!レグルスさん、本日は本当にありがとうございました!私は、今から──」

 

 これまで迷惑をかけてしまった補習授業部のこと、先生のこと、ティーパーティーのこと……そして、百合園セイアの捜索についても。

 

 向き合うべきものは、まだいくつもある。

 

 それでも今のナギサは、そのすべてに立ち向かおうとする意志に満ちていた。

 

 ──今後のナギサの活躍に、乞うご期待だ。

 

「──何処へ行こうというのかな?」

 

「……えっ?」

 

 ……しかし、ナギサがレグルスの横を通り過ぎようとしたその瞬間。レグルスは静かに手を伸ばし、彼女の肩にそっと触れた。

 

「言っておくけどさ、僕の要件はまだ終わっていない……覚えてるかな。僕が一連の出来事を言う時に、君に向かってこう言ったはずだよね?『温泉開発部という連中が会場ごと周囲一帯を爆破し、“僕も被害を被った”』って。そして、ついさっき君の質問に答える前にも、『あることを除けば気分が良い』と言った……それの意味が分かるかな?」

 

「──えっ、と……」

 

 ナギサは、なぜか大量の冷や汗を滲ませていた。

 

 ──おかしい。つい先ほどまで、こんな事はなかったはずだ。

 

 自分の不甲斐なさに対する悔しさと、レグルスの言葉に胸を打たれた際に零れた涙しか無かったはずなのに。

 

 それなのに今は、まるで別人になったかのように、止めどなく冷や汗が流れ落ちていく。

 

「──君は、爆破によって宇宙まで飛ばされてしまう人の気持ちを考えた事はあるかな?」

 

「うちゅ……!?」

 

 思わず、変な返事をしてしまうナギサ。

 

 あまりにも現実離れした言葉を、いきなり突きつけられたのだ。動揺してしまうのも無理はないだろう。

 

 ──今のレグルスに、そんなことは一切関係ないが。

 

「もちろん、初めてのことだから気持ちなんて全てを理解できるわけでは無いよね。それは僕でも分かっているよ──だからさ、廃墟群とはいえ、昼ではなく真夜中に爆破するという選択がどれだけ危険なのか。そこに居るのが君たち生徒だけとは限らない、僕や先生のような一般の人間が巻き込まれる可能性がどれだけあるのか。トリニティ、ティーパーティーの代表である君が、そういった無差別的な行為に手を染めることが、どれだけ重大な意味を持つのか……丁寧に、徹底的に、一人の大人として教えてあげようと、ずっとずっと考えていたんだ。ここに来るまでね」

 

「──あっ……えっ……と…………」

 

 ナギサは、ぎこちない動きで、まるで壊れた人形のように顔だけをゆっくりと動かし、レグルスの方へと振り返る。

 

 その間も、冷や汗は止まることなく流れ続けていた。

 

 本能が拒絶している──そんな明確なサインであるはずなのに、今のナギサにはそれを考える余裕すらない。

 

「────ぁ……」

 

 そして、視線の先に映ったもの。

 

 レグルスの額には、浮き上がるほどの大量の青筋。

 

 それでいて、満面の笑みを浮かべていた。

 

 その歪な光景を目にした瞬間、ナギサはようやく理解する。

 

「──ナギサ。少し、時間を貰うよ」

 

 ──本当の意味での本番は、ここからであったと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なかなか、出てこられませんね」

 

 ──レグルスが部屋に入ってから、すでに一時間が経過していた。

 

「も、もしお二人に何かあったら……!いえ、その時は私も中に──」

 

 レグルスを客人として迎え入れる手続きを済ませた後、彼女はナギサの籠もる部屋の前まで案内し、そのまま扉の脇に立っていた。

 

 万が一にも、不用意な侵入が起きないように見張るためだ。

 

「……ナギサ様」

 

 ナギサが誰とも言葉を交わさなくなったのは、確か一週間ほど前のことだっただろうか。

 

 気付けば、トリニティの生徒たちだけでなく、彼女を慕うティーパーティーの面々でさえ、まともに会話することができなくなっていた。

 

 もちろん、それは彼女も例外ではない。

 

 普段は代表たちの近くにいることの多い彼女でさえ、ナギサには拒絶されていたのだ。

 

 ──そういえばあの頃から、ミカとも連絡が取れなくなった……そんな話をしていた気がすると、彼女は内心でそう思う。

 

「………………」

 

 処分なら、後でいくらでも受ければいい。

 

 トリニティの生徒でもなく、ティーパーティーでもなく、先生ですらない……ただ一度ここを訪れた客人。その彼によって、少しでも今のナギサ様が変わるのなら……それでいい。

 

「……!」

 

 ──その時だった。静かに、扉が開かれた。

 

 おそらく、客人であるレグルスとの対話が終わったのだろう。そう思いながら、彼女は部屋から出てくる人物へと視線を向ける。

 

 ……だが。

 

「────」

 

「……ナ、ナギサ様!?」

 

 彼女の視界に飛び込んできたのは、客人であるレグルスではなく、ふらりと足元を揺らしながら立つナギサの姿だった。

 

「──あ……」

 

 名を呼ばれて、ナギサはようやく彼女の存在に気付く。

 

「ナ、ナギサ様!一体何があって……!いえ、申し訳ありません!私がナギサ様に余計なことを──」

 

 ようやく部屋から出てきてくれたというその事実に胸を撫で下ろすと同時に、目の前のナギサの様子を見て、強い後悔が込み上げてきた。やはり、自分の判断は軽率だったのではないかと。

 

 勝手なことをして、結果的にナギサに負担をかけてしまったのではないか。

 

 ──自分は、何をしているのだろう。

 

 そんな自責の念が、彼女の胸を強く締め付けていた。

 

 ……しかし、次の瞬間。

 

「──!?!?ナ、ナ、ナギサ様っ!?」

 

 ──ナギサから、優しく抱きしめられた。

 

 ナギサの腕が彼女の背へと回り、続いて白い羽が静かに重なる。もはや、抱きしめるというより、包み込んでいる……そんな優しさを感じさせた。

 

「──ありがとう、ございます……本当に、ありがとうございます」

 

 耳元に落ちた声とともに、抱きしめていた力がふっと抜ける。

 

 羽が離れ、腕もほどかれた瞬間……急に空気が冷たく感じられた。

 

 だが、それは失われたのではない。

 

 確かに残されたものが、胸の奥で静かに広がっているのだ。

 

「……私は、いま最優先でやるべきことをしてきます。また後で……貴女にも、皆さんにも、謝礼をさせてください」

 

 深く、深く頭を下げる。

 

 その仕草で精一杯の誠意を示した後、ナギサはふらつく足取りのまま、その場を後にした。

 

「……!?…………!?!?」

 

 その場に残された彼女は、突然抱きしめられた出来事に、脳の処理が追いついていなかった。

 

 ナギサが自分に言葉を向けてくれた、その喜び。そして、不意に抱きしめられたことへの恥ずかしさ。

 

 相反する感情が一度に押し寄せ、思考はうまくまとまらない。まるで、脳がショートしてしまったかのようだった。

 

「──少しばかり危険性について語りすぎたかな……?いやいや、これも将来のナギサのためだ。むしろ本題はそっちだし、僕としては必要なことを必要なだけ伝えただけに過ぎない……そう考えれば、僕に非があるはずはないよね──おや、君はまたここで見張ってくれていたのかな?その勤勉さには相変わらず感心してしまうよ。与えられた役目を疎かにせず、そうして律儀に立ち続ける……うんうん、実に良い子だ」

 

 そんな混乱の最中、遅れてレグルスが部屋から姿を現した。

 

 何やら独り言を零していたが、その中には、彼女を褒めるような内容も含まれていて、ただでさえ追いついていない思考は、さらに混線していく。

 

「うん?ナギサはもうどこかに行ったのかな?」

 

「……え、あ……は、はい。私に一言お礼を言ってから、すぐにこの場を……私、何もしていませんのに……」

 

 抱きしめられたことなど、恥ずかしくてとても口にはできない。彼女は、それ以外の無難な事実だけを選んで伝えた。

 

「──ふーん……」

 

 その様子を見たレグルスは、何かに納得したように小さく頷く。

 

 ……そして。

 

「君、両手を仰向けた状態でこちらに差し出しなよ」

 

 かつて一度、彼女に対して求めた要求をなぞるかのように、静かに口を開いた。

 

「……えっ?」

 

「ほら早く、二度は言わないよ。今の君は、両手を仰向けた状態でこちらに差し出すしかないんだ」

 

「──え……えっ?」

 

 レグルスは、有無を言わせず彼女に両手を仰向けた状態で自身の近くに差し出させる事を催促する。

 

 それに混乱しながらも、彼女は、レグルスの言う通りに両手を仰向けにし、差し出した。

 

 ……彼女はこの光景に、デジャブを感じていた。そう、数間前にも、こんな感じで全く同じことがあったような──

 

「──これは今日の感謝の印だ、ぜひ受け取って欲しい」

 

 そう言ってレグルスは、胸ポケットから、包装された一切れのロールケーキを取り出し、彼女の小さな手のひらの上にポンと軽く乗せた。

 

 そうそう、こんな感じに──って。

 

「あ、あの!?ですから……このロールケーキはレグルスさん、貴方のですよね!?ぜ、前回はありがたく受け取りましたが、客人である貴方にそう何度も受け取るわけには……!」

 

 しかも、前回より一回り大きくなっている。パワーアップして再び彼女の手の中に帰ってきたのだ。

 

「元々君に会う事が出来れば、君にそれを渡すつもりだったからね。さっき渡しそびれてしまったから、今渡したというわけだ……ああ、僕の胸ポケットにしまっていたけども、ちゃんと包装されているし、これでも衣服には気を遣ってるから、品質そのものに問題はないはずだよ。そこは心配しなくて良い」

 

「!?そ、そういう問題じゃ……!」

 

「──っと、少し長居し過ぎてしまったね。ナギサもどこかに行ったみたいだし、僕の目的も達成された。だから、僕はこれで失礼するよ」

 

「あっ……!?」

 

 言うべきことだけを言い終えると、レグルスは踵を返す。彼女が先ほど案内した廊下を進み、その先にある裏口へ向かって、慌てる彼女に背を向けたまま歩き出した。

 

「──ああ、僕としたことが、忘れていたことがあったね」

 

 だが、数歩進んだところで足を止め、身体ごと振り返る。

 

 未だにあたふたとしている彼女を、真っ直ぐ見据え……姿勢を正し、右手を胸元に添えた。

 

「──ありがとう。僕から君に、最大限の感謝を捧げよう」

 

 そして、ここまで案内してくれた彼女への、改めての礼を告げた。

 

「……っ!?……っ──」

 

「それじゃあね」

 

 それだけを残し、今度こそレグルスは立ち去っていく。

 

「────」

 

 あとに残されたのは、彼女ただ一人。

 

 人の気配を失った廊下に、ぽつんと立ち尽くしていた。

 

「──……」

 

 手元には、レグルスから受け取った感謝の印。

 

 前回より一回り大きいロールケーキを、彼女は小刻みに震える手で見つめる。

 

「……ああ、もうっ!何がなんだか、本当に分かりません!……もうっ!!」

 

 勢いのまま、やや乱暴に包装を開き──

 

「──んっ!!」

 

 半ばやけくそ気味に、それを頬張るのだった。

 




いつもお気に入り、評価、感想、誤字脱字報告等ありがとうございます。とても励みになります!

なんと、今日でこの作品は一年目に突入いたしました!

本当は一年以内に第三章を完結させたかったのですが、完結までまだ先になってしまいそうです……なにはともあれ、ここまで投稿を続ける事が出来たのは、日々読んでくださる皆さんのおかげです。本当にありがとうございます!

今後とも、ゲマトリアのレグルスをよろしくお願いいたします!
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