ぼろ布のほつれ(切り札の相棒ヤリモンを試合で温存してたら病んだ件) 作:もう助からないゾ♡
丸括弧はフッ太の言っていないセリフを示しています。
まぁ雰囲気で書いているんで、気楽にお読みください。
「……!閉鎖エリアを抜けてきたか」
実験室奥に佇むクリスタ―の淡い光が、総帥テレサの顔を照らす。正八面体のクリスターの中には、私の元の体が収納されている。幸いなことにまだ白の神は目覚めてはいない。
テレサを説得するなら今しかない!
「ちゅげぷ、ちゅげちゅげぷ!(テレサ、目を覚ませ!クリスターの中のソイツは私じゃない!)」
「…ごめん、チケープ。多分それ総帥に伝わってない」ゴソゴソ
「……」
「……」
…少し気まずい空気が流れた。我ながら少し興奮し過ぎてた気がする。
「…総帥、そのクリスターの中身はフレアという少女ですか?」
「ちょげぷ!?(相棒!?)」
「……!貴方がなぜその名前を」
「信じてもらえるかわかりませんが、僕は2000年前に貴女とフレアの身に起こったことを夢で見ました。いけ、カケラン」パカリ
「……?」
「フレアが実験中に亡くなったということも知っています」
「ちょげぷ!?ぷいぷい!(いや、相棒、私ここにいるって!)」
「……何を馬鹿な。お嬢様は死んでなどいない。現にここに」
「…本当にその少女の
「……?」
「フレアはかつて貴女に実験に参加した理由を話していたはずです。「水や寒さで困らなくなる人を少しでも減らせれば」と。それは勿論、物理的に人間を減らすという解釈じゃない。皆が現実で少しでもいい暮らしをしてほしかった!だからあんな胡散臭い、苦痛を伴う実験にも参加し続けた。…人類総安楽死など、あまりにかつての彼女の理想からかけ離れている。」
「…当然だ。人類はお嬢様を裏切った。貴方がなぜそこまで知っているかは見当もつかないが、お嬢様が人類に怒りを抱き、報いを受けさせるのは至極当然のことだ。」
「…本当にそう思っていますか?」
「なに?」
「貴女はただ人類を滅ぼすために2000年間、人類のためのインフラを整え続けたんですか?それこそ人口が激減した神世紀初頭であれば、エネルギー供給を断つだけで人類を滅ぼせたでしょう。少なくとも、2千年前の人類に対する報復が目的ならそれが一番確実だったはず。
……とっくに貴女は気づいていたはずだ。」
テレサの思考がフリーズする。
―――――――――――
人類が再度繁栄できる環境を整えたのは、現在
そうして2千年が経った。試算の時点で、この程度の時間がかかることは予測できた。
2千年前から、随分と世界は変わった。
救済光線によって激減した人口は70世代ほどの時間をかけて緩やかに戻りつつある。
それでもなお、一人ひとりに不足なくリソースが届けられる世界。
かつて人類を苦しめた環境問題の多くが人口スケールの減少により解決し、かつて旧世界の環境を汚染していた数多の処理困難物質は、救済の光により悉く分解されていた。
そして、人類は人類以外の友人を得た。
小さな揉め事さえあれど、西暦のそれとは比べるべくもない。
かつての
表向きは、クリスターで得られた資源を適正に市民に分配する、セントラルの最高責任者だ。
魂エネルギーを供給し、休眠するお嬢様を、より短い期間で効率よく、確実に復活させ、
…考えないようにしようとした。しかし、考えてしまう。
多くの人が満たされ、争いの無い今の時代こそ、かつてのお嬢様が望んだ世界なのではないのか?
休眠から目覚めたお嬢様は、この世界に何を思うのか?この状況でも尚、人類を滅ぼそうとするのか?
…私は、私を信頼し尽力する部下や市民を裏切れるのか?
…そして何よりも、人類を滅ぼした後の世界で、果たしてお嬢様は幸せになれるのか?
休眠する前にお嬢様は「私を再び目覚めさせろ。再び人類救済の続きを…」と私に伝えられた。
最初は報復が目的だろうと考えた。私は大いに賛同した。世界のために自らの力を分け与え、大切な時間を全て捧げ、そして裏切られたお嬢様にはその資格がある。
痛みすら与えないのは温いと思ったが、それがお嬢様の慈悲深さなのだろうと。
…2千年の間、私は見てきた。
救済光線直後の、「なぜ自分が生き残ってしまったのか」と悲しみに沈む人間達を。
しかし、時間が彼らの傷を癒し、新たな共同体が構築され、再び奮起して文明を再建する様子を。
報復の対象だったはずの西暦の当事者たちは、100年も経たず死んでいった。人類再興の夢、よりよい未来を次の世代に託して、彼らはその礎となっていった。
もはやこれは報復なのか?
一人残らず現在の人類を
お嬢様の幸せになれる世界がまだそこに残っているのか?
本当に私がすべきだったのは、お嬢様をクリスターから解放し、それでもなお存続し、お嬢様が新たな生き甲斐を見つけられる世界を作ることではなかったのか?
お嬢様が長い眠りにつく前、何を望んでいたのか、私にはもはや分からない。
…それでも…
「……私は、お嬢様と再び逢いたかった。逢いたいんだ。」
「そして、今度こそお嬢様の力になりたいんだ。だから…」
「………」
―――――――――――
[チケープ(フレア)及びフッ太視点に戻る]
フリーズするテレサを横に、相棒は無言で懐から取り出した端末を操作する。
そして、床のタイルの上に置いた端末を、テレサの足元まで滑らせた。
「それ、拾って下さい」
「………」
テレサは警戒して、端末から距離を取る
「…別に爆弾ではないですよ。ヤリモンで攻撃した方が確実ですし。
もう言葉で説明するよりも画面を見てもらった方が早い」
(まぁチケープには攻撃できないだろうけど)
警戒しつつも端末を拾い上げ、開かれた画面に目を遣るテレサ。
「……この写真に写っているのは…!?」
「そう、『チケープ』です。貴女が名付け親だったと本人から聞いています。」
「…
目を見開くテレサの眼前には、半年前に撮影した、相棒と私のツーショット。
半年前、私がかつてのペットのチケープと融合してから、進化する以前の頃の写真。現在のくたびれたマスコット様ではなく、手足のない丸々ボディの頃だ。
(そっか、テレサは進化する前の
今回や千虎竜神社で出会った時も、進化後の知らない姿だったから無反応だったのか。焦って失念していた。
「…まさか、貴方の隣のヤリモン?ですか?」
「そうなります。進化する以前はその姿でした。」
「ぷいッ!んげぷ!(応!やっと気づいてくれたか!)」
「…しかし、2千年もどうやって…?お嬢様からの魂エネルギーの供給もない状態で…」
「フレアの魂が乗り移って何とかしたみたいです。…厳密にはタイムスリップありきの話ですけど。」
「……!?」
(流石にここら辺は説明する時間は無いな、詳細も分からないし)
一呼吸置かずに相棒は続ける。相棒も普段そんなに喋らないからか、なんだかしんどそうだ。
「少なくとも、フレアとしての記憶は持っていると聞いています。それが、僕がそのクリスターの中の少女がフレアではないと確信する一番の理由です。」
「……貴方の話を信じろ、と?」
「…2000年前、人類救済光線を防ごうと戦った黒い魔物は、血とオイルに塗れたチケープだったみたいです。流石に映像媒体は残ってなさそうですが…少なくとも救済光線よりは方針は一貫しているはずです。」
「……ッ」
(もう、時間がない、でも…)
「納得できないなら直接こっちのフレアに聞いて確認して下さい…。プライベートな質問とか。筆談ならできる、よね?…できれば急ぎで。」
「ちゅげぷ!(応!)」
相棒が私の短い手にメモ用紙とペンを手渡す。
テレサと視線が合う。疑い9割、しかし僅かに期待するような視線を感じる。
(…ここまで、2分弱。この間に最低限の
(…アテナさんが心配だ。もう四の五の言わずに白の神を叩きたい。最低限確認が取れたら直ぐにでも…いや、もうここで…!)
『…テレサ、侵入者相手に何をしているのです?』
「「「……!?」」」
テレサからの質問に答えようとした矢先、それを遮る少女の声。
クリスターが力強く発光し、中の白髪の少女が白目を剥いてこちらに視線?を向けている。
…白の神が覚醒してしまった。
『貴女程の忠義者が、まさか昨日今日来た侵入者の言葉を信じると?』
「いえ、そのような…しかし…」
『私には、もう貴女しかいません。…今度こそ役に立ってくれますね?』
「……ッつ!!!」
その瞬間、テレサのこちらへの目付きが、明らかに敵対者に対するものへと変わった。
(マズイ、完全に説得の時間が無駄になった…!)
「ちゅぷ、ぷいい‼(てめぇ!テレサを洗脳したな!)」
『おやおや、人聞きの悪い。彼女の心の傷を巧く利用…「SET、速攻‼」
「ぷいッ‼(応‼)」
相棒の素早い指示で、西暦の戦いでも有効であった
「それ以上お嬢様には近づけさせん」
「……ッ‼」
行く手をテレサに阻まれる。
――それを見越して、加勢を得ようとスターディスクを取り出していた相棒。
「させませんよ」
――しかし、白の神の救済光線が、相棒目掛けて無慈悲に降り注ぐ。
(間に合わな…!)
「!? 危ない!相棒‼ ぐッ!?!?」
「…ッ、チケープ‼」
土煙が舞う中、辛うじて相棒を横に突き飛ばし直撃から庇った。
救済光線は人間特攻だ。相棒に当たれば、魂が霧散し即死してしまうだろう。
…なんとか間に合ったが、直撃した私にいいダメージが入ってしまった。
(チケープの出足が潰された。ノコノコ着いてきて話し合った僕の判断ミスだ。でも…)
「視界の悪い今がチャンスだ、ガルドリーは上空待機、ビルド―マは瓦礫に擬態、ジェイリアンは、ビルド―マの足元から地面に潜れ!」
「ぎ…げろ、ぎゅ…(逃げろ…相棒…‼)」
掠れる声で何とか相棒に避難を促す。…例え自爆で刺し違えてでも…!
「ごめん、それは嫌だ」
「……ぎゅ…!?ぷりぷぷい!? (は?こっちは遊びで言ってんじゃ…!?)」
「相棒を一人死地に送るトレーナーがどこにいるんだ?」
「僕とチケープに半球2-5、9-11柳」
「…なにやら言い争っているようですが、固まるなら好都合ですね」
私の決死の退避勧告を、相棒は頑なに拒む。…一緒に居てくれるのは嬉しいけど
一匹と一人、土煙の中動けない私達を、再び光の雨が襲う。ダメージを負った動きの鈍った私では相棒を庇うことさえ…
相棒が私を抱えて伏せる。駄目だ、流石にそれではこの雨は避けきれない。
…しかし、覚悟した痛痒は私達を襲わなかった。
相棒がビームを避けた?いや、ビーム
「その技はさっき見た」
(チケープを一撃で戦闘不能にできない時点で威力は問題外。「柳に風」のバリアなら光線系の技ならいなせることも実証済み。救済光線の攻撃速度も大体分かった。)
(私の狙いが逸れた?否、直前でビームが屈折した?…まさか、土煙に紛れて既に新手を…?)
いつの間にか相棒と私の周囲に展開されていた不可視の風のバリア、そしてその上空に佇む猛禽:ガルドリーに白の神が瞠目する。
「12から1へ
「…ちゅぶぶ…!?(…ビルドーマ…!?)」
そして、私達の背後、土煙の中紛れ潜んでいた人型土偶:ビルドーマが、12時方向の白の神目掛けて「驚天動地」を放つ。
床のタイルを割り進みながら、圧倒的質量の土砂が白の神に襲い掛かる!
「
「…お嬢様‼」
「…なにッ?テレサを!?」
凄まじい勢いで白の神をクリスターごと呑み込まんとする土砂の一部が流れを変え。テレサを白の神後方1時方向に押し流した。
(土砂で視界が…おのれ!)
そのまま土石流の残りはクリスターごと白の神を部屋の奥へと押し流す。
「この…!お嬢様に、、きゃッ!? 」
大量の土砂に分断されたテレサは再び白の神の盾になろうと、泥濘の中駆け寄ろうとするが、その細い脚に地中から伸びた白い触手が絡みついた。
「ジェイリアン、そのまま抑えてろ!…チケープもう一回速攻‼」「ファルックスはカバー!」
「…‼ぷい!」
ジェイリアンがテレサを拘束している今こそチャンスだ。
ダメージのためか怠い体に鞭を打ち、相棒に導かれるまま私は今度こそ白の神に突貫する。
白の神も抵抗しようと光線を連発するも、バリア表面にこびり付いた土砂の所為で狙いが甘い。
「ちけぷいいいいいいいィ!!」
「ぐうッ!?この…‼」
無数の光線をすり抜け、チートタックルが炸裂し、バリアの一部を小破させる。しかし、白の神本体にダメージは通っていない。
(まだ…!でももう力が…)
「くたばりなさい!」
必殺技の反動でグロッキーとなった私に至近距離で光線を放とうとする白の神。
だめだ、避けられない!やられる‼
「…よくやった、チケープ、
しかし、そこに割り込んだのは相棒手持ちの一匹である不死鳥:ファルックス。
低空飛行と鉤爪で私を搔っ攫い、間一髪光線からの回避に成功する。
なおも追撃に移ろうとする白の神の前に、立ち塞がる二体の影。
全身刃物超合金ロボ:ゴーゴーギンと、クエムの切り札と同種の大狼:ガルルガンだ。
「7体同時だと…⁉」
「チケープは…フレアは、やらせない!」
まずは目の前の二体を排除しようとターゲットを切り替えたその時、鈍重そうな見た目のゴーゴーギンの両腕の爪が煌めいた。瞬間、雷鳴のごとき速度で白の神までの間合いを潰し、大爪がバリアの亀裂越しに貫いた。
「がはッ⁉」
チートタックルを除けば全ヤリモン中最速にして、光属性最強の先制斬撃。「光芒一閃」である。
「畳みかけろ!」
ーーーーーーーーーーーー
「ぷぎゅッ!(痛てッ!)
「フゥ、、、、チケープ、今回復するよ」
ファルックスが、少し乱暴に私を相棒の元に降ろした。相棒はビルド―マの影から仲間たちにキビキビ指示を出している。
朦朧とする意識の中で見た光景。
――それは、異常。ほぼ全てのトレーナーが、魂の出力の限界から3匹まで、まともに指示を出せるのは一匹までのところ、相棒はあらんかぎりにスター鉱石を輝かせ、仲間のヤリモンを6体、私を含めれば7体同時に顕現させていた。そして彼らは相棒の指揮のもと一糸乱れぬ動きで、まるで一つの生物のように白の神を怒涛の如く攻め立てていた。
着かず離れずの距離から放たれるジェイリアンの悪魔的な
二匹のコンビネーションを崩さんと、両者の
一度態勢を立て直そうにも、ガルルガンが擦り付けた呪いが自己回復を阻害し、動きが縺れたところに、床上をホバリングするゴーゴーギンが光の刃を合わせ、手堅くダメージを積み重ねていく。
苦し紛れに相棒に向かって放たれた光弾は、その間に立ち塞がる重装甲のビルドーマによって容易く弾き返された。
総帥——テレサは脚部と腕部をピンポイントで破壊され、いつの間にか無力化されていた。
「おのれ…ちょこまかと!!」
エネルギーでは白の神が圧倒的に優っている。相棒のヤリモンも野生で捕まえた、特別なヤリモンではない。しかしそれでも白の神は、相棒とヤリモン達のコンビネーションに、徐々にではあるが確実に追い詰められている。
(神の使徒はなぜこっちに来ない!?このままでは…!)
時間稼ぎの肉壁を作ろうにも、集合信号を受け取った筈の
「ッつ!!」
白の神が被弾しつつも、半ば強引に包囲を抜け、壁の隅まで後退する。回復のための時間稼ぎではない。バックアタックを壁で防ぎつつ、トレーナーとヤリモン達を全て視界に収め、大技で一網打尽にするためだ。
そして、当然のように相棒はこの動きを読んでいた。
「…!?」
何者かの両腕が
「———ビルドーマ!?」
しかし、フッ太とチケープを守るビルドーマは未だ前方で攻撃に備えている。それでは、白の神の背後から突然現れたもう一体の
「まさか…ソウルアップ…?」
相棒は否定も肯定もしないが、更に光量の増した相棒のスター鉱石がそのトリックを雄弁に語っている。
相棒は激闘の最中、もしかしてテレサとの会話中にも?初撃のビルドーマによる土石流に紛れ込ませていた?
ともかく、相棒は密かに手持ちのカケラン複数体を四方の壁の瓦礫に擬態させ、白の神が角に下がった瞬間、遠隔で
ビルドーマの剛腕から逃れようと白の神は必死に抵抗するが、ビルドーマの金属装甲相手には効果が薄い。
「!?ッがぷッッッ!?!?」
そして霹靂一閃とばかりに間合いを詰めたゴーゴーキンが、辛うじて白の神が再展開したバリアを右の剛爪で切り裂き、続けざまに白の神の腹部を左手両足で蹴り破った。白の神はヤリモン全員を射程に入れるどころか、もはや満足に力を溜めることもできない。
「ハァ、ハァ、、、、ジェイリアン、ガルドリー、ビルドーマ(前方待機)は
フッ太の指示の下、中遠距離火力を持つヤリモンは力を溜め、他のヤリモンがカバーに入る。ヤリモン達の潜在エネルギーの発露に同調するように、フッ太のスター鉱石の輝きがさらに強まる。
(私だって…まだ相棒の、役に…!)
「!?チケープ!!、まだ」
治りかけの体を押して、ビルドーマの横から狙いを定めようと…
「あッ…」
そして、
苦し紛れの一撃、本数も心許ない。しかし、対人特攻の救済光線ではない。威力偏重の、手負いのヤリモンなら殺せる光線。素早さの劣るビルドーマの壁役は間に合わない。
「チケープッっ!!」
「!!!?」
瞬間、視界が白い光に包まれた。
――――しかし、私は死ななかった。そして、白の神は賭けに勝った。
ビルドーマの陰から駆け出した相棒が咄嗟に私を抱え、致命傷を避けたのだ。
「ッはぁ、人の子よっ、ククッ、痛みなく救済することは適わなかったな……すまんな」
土煙の中、相棒は私を抱えたまま力無く地面に倒れた。血塗れの手が私の体からずるりと離れる。
相棒に…命中した?私を庇って…?
嫌な汗が流れ、体の芯が凍る。
「ぎゅむご…(相棒ッ…ごm)」
「……チケープ、いいから前を」
土煙の中、見えない相棒の姿を確認しようとした私を、相棒は微かな声で制した。
土煙の切れ目から、白の神がビルドーマの拘束を力技で解いた様子が見えた。
「————まだ終わっていない」
「!?」
見れば相棒のスター鉱石が、土煙をかき消さんばかりに輝いている。そして、痛むはずの体から力が湧き上がる、いや流れ込んでくる!相棒の力が!———相棒は大丈夫だ!そして、諦めていない!
「…ラストアタックだ。頼むよチケープ」
「…ぎゅぴっ!!(うんッ!!)」
「痛みを取り除いてあげましょう」
土煙の中の異変を察知した白の神が、チケープに止めを刺さんと、無数の光線を360°包囲するように放とうとする。
しかし、鋭い嗅覚で予備動作を感知したガルルガンが、白の神の視界を闇に閉ざす。
白の神は光源を細かく分割して、下がった命中率を光線の本数で補い、放った。
同時にゴーゴーキンの放った電撃が瞬間的に白の神の意識をシャットアウトし、いくらかの光線がコントロールを失い、軌道から外れる。
残った軌道上の光線も、ジェイリアン、ガルドリーの風のバリアが、そして幾層にもコーティングを重ねたビルドーマが受けきった。
瞬間、土煙を掻き切るような超スピードで接近する黄色/青色のツートンカラーの少女。くたびれたマスコットキャラクターではない、白の神の容姿と酷似する、ヤリモンでも少女でもない、尻尾の生えた何か。
(———速い!!それが奴の完成形か!しかし)
白の神の口角が吊り上がる。自身の背後に隠しておいた幾個かの残弾光源を掲げた。
本数は心許なくとも、ゼロ距離集中砲火なら確実に仕留められる。
(!? 避けられな)
(貰った!)
放たれた残弾は黄色いそれに直撃した。終わった筈、だが、
(なぜ、倒れん…!)
チケープ否、
(相棒…‼)
「これが、私と相棒の…だから、負けられないんだぁああああああッ!!!」
ワンインチ距離で急加速するチケフレアの右腕。否、白の神には
鋏の両の刃のように噛み合わさった二つの魂が、敗北の運命の糸を断つ。片翼しか持たぬ死を待つ鳥が番となって空を飛んで行くように、
チートタックル転じ、
「……どうやら、私の負けのようだ。それなのに、これは、なんと…温かい…」
拳から溢れだした、私と相棒の魂が白の神を包み込む。心なしか、
「…人間にもそういう側面はあるんだよ。…そうじゃなきゃ、私はここに辿り着けさえしなかった」
「ふふ、そうか…。多くが救済を望んだあの時代とは、変わったのだな
…しかし、少し気づくのが遅かったやもしれん」
「…?」
「…随分苦しませてしまった。救済どころではなかったのだ。それに、あの少年は自ら燃やし尽くしたのだ。…余程貴様が大切だったらしい」
「なんの…、……‼ッ!?」
そこで、初めて気づいた。先程まで温かく体を包み込んでいた相棒との魂との繋がりが無くなっていることを。相棒と出会ってから一度も感じたことのないはずの冷たさを。
背後を振り向くと、瓦礫の下で、血を流し物言わず倒れ伏している相棒。
その手に固く握り締められたスター鉱石は既に輝きを失っている。
既に駆け寄っていた仲間のヤリモン達が、相棒に呼びかけ揺さぶるも反応がない。
ビルドーマが瓦礫をどかし、ファルックスが痛みに構わず自らの尾羽を喰い千切り、相棒を灯す。が、不死性を担保する尾羽の光を前にしてさえ、相棒の傷は癒えず目を覚まさない。
狼狽えながらも、誰かに助けを求めるようにガルルガンが遠吠えする。
覚束ない足取りで私も駆け寄ろうとした。何でもない段差に躓いた。
相棒を助けないと。頭が回らない。
相棒の腕に振れる、冷たい、脈がない。あんなに温かかったのに。
相棒の胸元を見る、呼吸をしていない。
ゴーゴーギンが数度、相棒の胸元で電気ショックを行った。駄目だ、脈が戻らない。
ジェイリアンが相棒に口付けし、息を吹き込む。その横で、私も見様見真似で、震える手で胸を何回も圧迫した。
息も、脈も戻らない。相棒の体が血の気が引いて、どんどん冷たくなっていく。
体の震えが止まらない。足元に流れる相棒の血が、冷たい床の亀裂に吸い込まれて
「どう…して…」
相棒がいない? 嘘 相棒がしぬ、死ぬ? さっきまで生きて あいぼうあいぼうあいぼうあいぼう わたし、白の神倒したよ? フレア、キミは私のものだ 魂、全部私が…? どうしよう
相棒が死んだ相棒が死んだ 誰か 私が食べた 違う、いやだ 見ないで 相棒が相棒が 殺した私が 私が行かなければ相棒は死ななかった 嫌だ!!! 私が弱いから 助けてだれか 巻き込んだ やめて 違う!! あんなに輝いていたのに 私がフッ太に会わなければ なんでフッ太が 他のヤリモンばかり
殺したのは
そもそも実験に参加しなければ白の神も
…全部、私のせい…? チケープ、いやフレア、どうか自分を責めないで
・瓦礫に擬態したカケランも含めると同時に10体くらいヤリモンを使役していますね。
(図鑑説明より、カケランは複数体集まることでビルドーマに進化できるため)
・土煙使い過ぎな件
Q.なんか原作より白の神の復活のタイミングが遅くない?
A.いくつか理由があります。
①YBT決勝でフッ太くんがマキ、ヒカリ相手にジェイリアンで3タテワンサイドゲームをかました所為で全然場が温まらなかった→試合会場で魂の高揚が起こらず、白の神の復活エネルギーがたまるのに時間がかかった。
②南の島で武者修行していた所為で、フッ太くんとチケープのレベルも原作より高く(Lv.120台後半)、原生ヤリモン(Lv.75)が全然足止めできなかった。
白の神が復活するまでの時間こそありましたが、なまじテレサ周りの話を夢で見ていたために非情にもなり切れず、対話を選んでしまったようです。フレアの肉体の状態について現状最も詳しいテレサの協力が得られれば、比較的穏便な方法で対処できた可能性があったのは否めませんが…
…一応透明文字でフッ太くんが戦闘中に心の中で出した指示とかを隠しているので、時間のある方は探してみてください。(別になくても支障は無いはず…テンポも悪くなるし)