ぼろ布のほつれ(切り札の相棒ヤリモンを試合で温存してたら病んだ件) 作:もう助からないゾ♡
※本バトルは作劇の都合上、技を4つに制限していません。
4つ縛りで熱いバトルを描けるポケモン二次創作作家ってスゲーんだな、とつくづく感じる次第です。
追記:ヒカリのヤリモンの出す順番を変更しました。
part1 vs スパールス
『ヤリモンバトルトーナメント準決勝ォォ、第一ブロックッ!』
『両選手入場ォォォ!!』
「「「「ワアアアアアアアアアアアア!!!」」」」
1回戦最後の対戦カード、チャンピオンのアテネさんと、ベテラントレーナーのクエムさんによる、目で追うのさえやっとのハイレベルな一戦の直後。その興奮冷めやらぬ中、私とアイツの準決勝が始まろうとしていた。
『実況はMCマツオカとォォオ‼』
『解説役は、セントラル公認水属性師範の竜泉でお送り致します。』
『東コーナーから登場するは、
『付いた異名は「蒼き稲妻」‼ヒカリ選手の入場だぁぁぁ!』
『一回戦のアオイ選手との死闘で見せた、彼女の高速アグレッシブな戦闘スタイルは、かつてのルナ選手を彷彿とさせるものがありますね。』
…ママのことを引き合いに出されて少しばかり気恥ずかしい。
でも、もうそんなことは気にしていられない。なんせ、目の前の相手は…
『対する相手選手は、南の島エンドラボラトリー主催『レンタルヤリモントレーナー最強決定戦』初代優勝者ァ‼そしてあの『白い悪魔』の使い手、フッ太選手ゥゥゥゥ!!!』
『本戦一回戦でも、あのマキ選手相手に一体の損耗も出すことなく勝利したフッ太選手ゥ。見た目とは裏腹に実力派かァ⁉』
『例の大会では、レンタルヤリモン同士とはいえ、あのアテネ選手に土をつけていますからね。間違いなくトレーナーとしての実力はホンモノでしょう。』
良く知っている、半袖短パン、猫背、肥満体、幼馴染の男の子。
だらしなく伸ばした前髪の所為で、視線を伺うことができない。
どうせ碌なこと考えてないんだろうけど…
あふれ出るモブ感、陰のオーラは、見るからに大会とは場違いにさえ見える。
…まぁ、アイツの大会出場依頼の返信期限が過ぎて、大会側に掛け合った私が言えるセリフではないけど…
『お二人は共に今大会初出場で、出身地を共にする同郷の徒という共通点もありますゥ!』
同郷の徒、ね…。
アイツの家族が近所に引っ越してきて、公園で初めてアイツを見たときの印象は、「なんか鈍くて臆病なやつ」だった。
公園の隅で、地面に落ちた木の実をつつくハトリ―の群れをぼーっと眺める男の子。
手にはクレヨン、時々スケッチブックに何か絵を描いたと思ったら、またぼーっとハトリ―を眺めている。
横で同年代の子供が遊んでいるのをチラチラ視線を向けるも、話しかけられずに、また一人で絵を描く。
イタズラでクレヨンを奪われて、走って追いかけるも全然追い付かず、泣いて家に逃げ帰るのがワンセット。
…妙に絵がうまかったのは憶えている。
暫くして、図鑑にも乗ってない
『竜泉さん的にはどっちが勝ちそうと見ますか?』
『うーん、両選手ともに対戦経験こそありますが、どちらにもボコボコにされたもので…』
『まぁ、本選出場者ってそういうレベルですよねぇ…』
『…強いて言うなら、ヒカリ選手相手には3番手を見る程度には善戦できましたが、フッ太選手については全く底が見えなかった、ぐらいですかね。』
『ルナ博士のファン1号の竜泉選手視点でも、フッ太選手優勢と?」
『なんでそれを…。お互いの相性もあるので何とも言えませんが、ヒカリ選手が仕掛ける高速戦闘にフッ太選手がどう対応するか、といった部分が大きいと思います。』
『なんとも煮え切らない答えですねぇ…おっと続報が届きました。お二人の対戦成績はぁ……ッ⁉』
『え…99対4?そんなことある?』ごにょごにょ
『うーん、まぁ直近はフッ太選手の3連勝なので、何かのきっかけで一皮剥けたのかもしれませんね』
そう、
私にかつて99連敗したアイツは、新たに捕まえたヤリモン達と共に、行く先々で鎧袖一触にスタートレーナーたちをなぎ倒した。
同時期に旅に出た私も何度か戦いを挑んだものの、結果は全敗。
レンタルヤリモン大会では現役チャンピオンさえ押しのけて優勝し、私より早くトレーナーとしてのママを攻略し、私が今日まで一勝もできなかったアオイさんに何度も土をつけていた。
それまでの鬱滞が噓のように、アイツは私を追い越していった。
でも、私も立ち止まっていたわけじゃない。
「アンタに先に謝っておくわ」
「?」
クスリと笑い、肩をすくめるアイツ。心当たりが有りすぎるって肚かしら?
…まぁまぁムカつくわね…。
「アンタとチケープが…会話できるのをキモいっていったことよ!」
「………」
少しアイツの目線がキツくなった、気がする。
「…私が未熟なだけだった。」
「………‼」
前髪の奥に隠されていても、アイツの両目が見開いたのが分かった。私の言わんとすることを察したのだろう。
自分でもこれまでに無いコンセントレーションの昂ぶりを感じる。
………いける。
「さあ、勝負よ」
「……来い」
―――――――――――――――――――――
試合開始のブザーが鳴った。それと同時に、私とアイツはスターディスクからリングへと、互いに先鋒のヤリモンを繰り出した。
「行きなさい!スパールス!」
「頼むよ、ジェイリアン」
盛り土で作られたリングの上に双方のヤリモンが姿を現す。
私の先鋒ヤリモンはワラビー型光属性ヤリモンのスパールス。その大きな稲妻型の尻尾は、集電機関とホッピング走行時のカウンターウェイトを兼ねており、そのトップスピードはヤリモン界でも最速を誇る。
対してアイツが繰り出したのは、空中に浮遊する6つの触手を持つクリオネ型?水属性ヤリモン、ジェイリアン。この地方ではアイツの一匹を除いて未発見であり、一回戦でマキ選手のパーティーを悉く薙ぎ倒した、今のアイツの強さを象徴するヤリモン。
『さぁ、両トレーナーのお互い一番手を繰り出しましたァ!このファーストオーダー、竜泉さん的にはどう見ます?』
『相性的にはほぼほぼイーブン。フッ太選手については言わずもがなエースヤリモンの『白い悪魔』。ヒカリ選手についても高機動の光属性だけあって自身の強みを最大限引き出せるヤリモンと考えるのが妥当でしょう。』
「チケープは使わないのね?…力不足で戦力外通告かしら」
「生憎、切り札としてスタンバイしてもらっているよ。」
「なら、この期に及んで舐めプかしら?」
「悔しかったら引きずりだしてごらんよ。」
…言ってくれるわね。随分デカい口叩けるようになって…。
「スパールス‼」
私の呼び声に反応して、スパールスが右へ左へ、二足で跳ねながら加速していく。
ジェイリアンとアイツに的を絞らせぬよう、縦横無尽に砂煙を上げながらスタジアムを駆け巡る。
ジェイリアンは新種であり、チケープと同様に研究が進んでいない。
情報アドバンテージでは、こちらが圧倒的に不利なのは百も承知だ。
…それでも、マキさんとの一回戦を通じて、猛攻の機転となった『
2m近い触手から、体力、抵抗力を根こそぎ奪う凶悪な専用技を放つジェイリアンは、接近戦主体のヤリモンにとっては、まさに脅威といって差し支えないだろう。
(絶対に2m以内の間合いには入れさせない!距離を取って情報を引き出す!)
『ヒカリ選手のスパールスが凄まじいスピードを見せている!これにはフッ太選手もお手上げかァァ?』
「ジェイリアン、連続で『スプラッシュ』!」
ジェイリアンも追いつこうと包囲の内側から旋回するが、スパールスは影すら踏ませない。
スパールスの軌跡をなぞるように水を撒くだけだ。
(いける‼)
「スパールス、ボルトブラスター‼」
先ずは、その厄介な必殺技を、中遠距離からの放電で封じる!!
スパールスの放った一筋の紫電が、側面からジェイリアンに襲い掛からんと…
「4時に柳」
乾坤一擲の放電は風のバリアで、あっさりとかき消された。
『柳に風』。風属性の防御技。
エントロピーから解放された、文字通り完全統制された分子運動は電荷移動さえ無効化する。
(それにしたって、この精度は…!!)
瞬間、私の視界の右端に、辛うじて捉えられた鞭状の何か、
「(触手ッ⁉)伏せて!!!」
反射的に叫んだ回避の指示に合わせ、スパールスは斜めに上体を傾け、尾でその反対方向に重心を取り、まるでバイクでリーンインするかのように滑り込み、迫る
『あれは、ジェイリアンの触手ゥぅッ⁉しかし、なんだこの馬鹿げたリーチはァァ‼』
『マキ選手との試合では見せていませんでしたね。スピードで勝る相手への対策?といったところでしょうか?』
ジェイリアン本体の大きさは、60cm程度、頭部の
それが、触手に至ってはどうだ?
コート半面、10m以上離れていても軽々と攻撃を届かせてきた。
マキさんとの試合での、ヒット&アウェイに徹していた姿が嘘にさえ見えるリーチの長さ。
(これが、本来の戦闘スタイルってこと?)
息つく間もなく、スパールスに無数の触手が迫る。
それらを、時に
『ヒカリ選手のスパールス、華麗なフットワークでジェイリアンの触手を紙一重で躱し続けているゥ‼』
『やはり華がありますね。しかし…』
(触手攻撃よりもスパールスのトップスピードの方が速い。このまま距離を取って、触手が伸びきったところで、本体に
プランニングは建てた。スピードで引っ搔き回して、ガードできない速度で攻撃する!
(…あれ?)
被弾は無い。徐々にではあるが確実に加速している。トップスピードまであと僅か。
サプライズこそあれど、触手4本相手にも、自分のペースを押し付けれているはず。
なにか、見落としているような違和感。
(4本……残り2本は⁉)
「ジェイリアン、3二、アンダー」
縦横無尽に跳ね回るスパークル。
その次なる着地点に、まるで
「避けッ⁉」
言葉にする前にスパールスは反射的に応えた。
着地寸前、前傾姿勢を強め、尻尾を後方に振り挙げる。そして着地した瞬間、足に絡みつこうとする触手相手に、帯電した尻尾を叩きつけ、俄かにひるませたのだ。
その僅かな隙に、尻尾の反動を利用し過度な前傾を防ぎつつ、さらに前方に加速。さらに地面の触手から距離を取る。
「……ッ!?」
そして、その前方加速を読んでいたかのように、半拍先に前方から飛来した触手がスパールスの全身を絡め取った。
スパークルスも必死に振りほどこうとするが、
次の瞬間、ジェイリアンが突如、身体を上下に回転させる。回転に巻き取られる形で、触手に拘束されたスパールスが空中で振り回され――
「スパールス、放電ッ!!」
逃れさせようと放った悲鳴のような指示も虚しく――勢いをつけたままリングへと叩き落された。
『あの高速移動を見切り、強烈な叩きつけを浴びせたァ‼これは勝負あったかァ⁉』
リングに響き渡る轟音。
高々触手数本の攻撃とは思えない凄まじい威力を前に、観客たちはスパールスの安否を心配そうに見つめている。
…その中心で、スパールスはどうにか二足で立ち上がった。
『ヒカリ選手の咄嗟の指示が功を奏しましたね。』
咄嗟に指示した放電により、僅かに触手による拘束が緩まり、受け身が取れる余白が生まれたのだ。
しかし、いくらか感電したはずのジェイリアンも未だ健在。
(残りの触手をアース代わりに…!)
ジェイリアンは残りの触手を地面に突き立てていた。これにより、触手から伝わる高圧電流は本体を通過することなく、他の触手を介しそのほとんどが地面に吸収されてしまった。
……加えて、スパールスが振り落とされたこの場所は…!
――――――――――――――――ー
「ジェイリアン、連続で『スプラッシュ』!」
――――――――――――――――――
『ヒカリ選手のスパールス、泥水の中で思うように身動きが取れない!』
『ジェイリアンの『スプラッシュ』で作られた水たまりに叩き落されましたね。』
(当たりもしない攻撃を擦り続けていたと思ったら…!)
あの時、ジェイリアンは攻撃するように見せかけ、『スプラッシュ』でフィールド一面に水を撒いていたのだ。
…思えば、スパールスの挙動が読まれたのも、水たまりの数を増やすことで、スパールスの移動範囲を制限し無意識のうちに誘導されていたからかもしれない。
スパールスが泥沼に落とされて、ようやく自分の失策を悟った。
『しかし、予想以上に水深が深い…!これは一体…!』
スパールスの膝まで泥水に漬かってしまっている。いくら何でもそこまでの水量は撒いていなかったはず…。いや、、、
『…なるほど、ミズキ選手の試合の際に撒かれた水も再利用したといったところでしょうか…。』
1回戦第三試合。ミズキ選手VSレオの一戦で、ミズキ選手は無数の水属性攻撃でレオのヤリモンを翻弄した。その時に撒かれた大量の水分は、表面の砂地からは見えなくなっていたものの、基礎のコンクリ―ト層の上に大量に蓄積していた。それを…
(地面に突き刺していた触手で地面をかき混ぜさせていたってこと?あの攻防の最中に?)
…どおりで地面から触手で攻撃できるわけだ。
高レベルの水属性ヤリモンからすれば、水で柔らかくなった砂を掘ることなんぞ朝飯前だろう。
「スパールス‼『光芒一閃』!」
スパールスが泥濘の中から勢いよく飛び出し、ジェイリアンとの間合いを詰める。
現状、リーチで圧倒的に勝る相手の懐の内だ。しかも相手は浮遊しており、この泥濘の中悠々と移動できると来た。
泥濘に足を取られ機動力が落ちた現状では、今までのように距離を取ろうとしたところで間合いを詰められて捕まるのは目に見えている。中距離の撃ち合いでも、この足場の悪さではまともに狙いが定まらないだろう。
それでも、純粋な瞬発力と攻撃の回転数ならこちらが優っている。いっそインファイトに持ち込んで不意をつければ…。
しかし、その光属性最速の不意打ちは事もなげに避けられた。
「…!まだよ、クイックムーブ‼」
さらに速度のギアを上げる。
一撃・二撃・三撃と、足と尻尾を駆使して、攻撃を仕掛ける。
『ヒカリ選手、先程までとは打って変わってインファイトを指示ィ!』
『泥沼を抜けた先にも水たまりがありますからね。今まで通りでは後れをとると判断したのでしょう』
『泥沼に足を取られてなお、これほどの機動力ゥ!思い切りもイイ!しかし…』
(当たらない…!動きが…全く読めない!)
攻撃が悉く空を切る。
…接近戦で攻める側になって気付いた。
基本的にヤリモンに限らず生物は、二足・四足・羽根つきに関わらず、方向転換する際には重心移動に伴うなんらかの予備動作が出る。それはヤリモン界最速のスパールスとて例外ではない。
それが、このジェイリアンは何だ?一切の予備動作を見せず、スイスイと空中で移動方向を変えてくるのだ。
加えて、ジェイリアンの目は顔に二つ、
空気が乾き、ジェイリアンの周りが霧がかる。
蒸気が水滴に変わる、…水属性の大技の前兆。
「スパールス‼『サンダージャマー』!」
「『柳に風』」
相手が攻撃態勢を整える前に広範囲に拡散する回避困難な放電で怯ませようとするも、これは読まれて風のバリアで防がれた。
その間にも、霧が大きな水滴に、氷粒に、霰に…!
「ジェイリアン、『ブリザード』!
「スパールス、『クイックムーブ』!」
急激に気温が低下し、スパールスに、否、フィールド全体に吹雪が襲い掛かる。
『寒ゥううううううううう』
『凄まじい攻撃範囲です。どこに逃げてもこれは避けられませんね…しかも』
膝部分まで漬かった泥水が凍結し、一度距離を取ろうとしたスパールスの高速移動を完全に封じた。
「……ッ」
身動きの取れない、寒さで震えるスパールスに
「ここよ!」
「ッ!!!!」
触手がスパールスに触れようとした次の瞬間、スパールスの全身が激しく発光した。
多くの光属性ヤリモンが所有する初級技の「目眩し」だ。
至近距離での目くらまし。
これでジェイリアンの4つの視界も潰した。
勝利を確信した相手を怯ませた!
「貫けええええ!」
ボルトブラスター。身動きが取れない今のスパールスの最大火力。
電撃の爆弾が至近距離から、視界を失ったジェイリアンに襲い掛かる。
「『鏡花水月』」
しかし、視界が潰れたはずのジェイリアンは、一切の淀みなく流麗な動きでこれを躱し、
「あ…」
そのまま、空中に作り出された水流に乗って強烈な体当たりをスパールスに叩きこんだ。
ガクリ、と力なく崩れ落ちるスパールス。
『スパールス、戦闘不能。勝負あり!!』
『目まぐるしい攻防に魅入って、後半はコメントを忘れていました…。ヒカリ選手のスパールス、機動力を奪われてなお粘りましたが、ここで脱落です』
『いや、最後の目くらましには我々もびっくりさせられましたがァ…』
『視界を封じられた状態で追撃を避け、水属性奥義を使って反撃まで行うとは…。』
『竜泉さんのヤリモンでも難しいんですか?』
『多分無理ですね。如何せん『強花水月』は巧みなボディーワークと水流操作で相手の意識外から攻撃を放つのが要です…。相手の姿も、自身の水流も確認できないとなると…』
『もう水属性ジムの看板フッ太選手に譲ったらァ…?』
『いや、それは流石に…。視覚がダメなら他の感覚で補った、ということなのでしょうが…』
――――――――――――――――――
「竜泉はああ言っておるが、目眩し直後にあんなに迷いなく避けられるもんかのう?」
「避けることだけならできるかもしれなけど…」
観客席の更に上方。撮影用、記録/計測用機材が揃った研究者用の観覧席。
自身の研究分野である「ヤリモンとトレーナーのシンクロ現象」、そして娘の晴れ姿を一目見に、ルナ博士はハジメ村研究所を離れ、会場まで訪れていた。その白衣の下には、1児の母にはとても見えないスタイル抜群の美貌とクールな空気感を漂わせている。
その横に佇むのは、これまたスタイル抜群の黒髪美人、魔女のヴリトラ。ルナ博士のかつてのライバルトレーナーであり、現在は魂魄について研究を進めている。30代にして「のじゃ」口調の使い手だ。
「反撃に関しては、能力低下に耐性が無いと多分無理ね」
能力低下に耐性を持つヤリモンは、土属性ヤリモンを始めとしてそれなりにいる。
ジェイリアンがその特性を持っているかどうかは定かではないが…
「他に可能性があるとすれば、『シンクロ』かしら…?」
シンクロ現象。固い絆で結ばれた高レベルのトレーナー・ヤリモン同士が極稀に見せる超能力的現象。
連携精度が桁違いに高まり、互いの五感・思考さえ共有し、相手を追い詰める。
(封じられた自身の視覚を、共有されたトレーナーの視覚で補った?)
(捕獲してからひと月経つかどうかのヤリモンが?)
「…ここからが勝負所よ、ヒカリ」
画面の向こう、枚数的不利、劣勢に立たされ俯く娘に、そう声をかけた。
――――――――――――――――――――――――――
負けた。
泥水に叩き込まれたのが、ターニングポイントだった。
あれを起点に時に泥沼で、時に氷結で、スパールスの機動力を封じてきた。
スパールスを勝たせてやれなかった自分が悔しい、情けない、申し訳ない…。
当たりもしないスプラッシュを繰り返したアイツの意図を読み違えていなければ…。
最後の一撃、仕留めるためのボルトブラスターではなく、サンダージャマーで広範囲に電撃を散らしていれば、もう少しスパールスが体勢を立て直すだけの時間を稼げていたのかもしれない。
…それでも、スパールスは十分に頑張ってくれた。
ジェイリアンの本当のリーチを、高い回避能力の要因を、私たちの知らなかった、ジェイリアンの情報をたくさん引き出してくれた。
「ごめんなさい、スパールス。貴方の頑張りは無駄にしない。必ず仇は取るから…!」
スパールスを収納する。
そして二番手のヤリモンを、白い悪魔の居座るフィールドへと繰り出す。
スパールスが身を挺して教えてくれた情報、それを最大限生かせるヤリモンの名は…
『頼むわよ、バクレシア!』
そのヤリモンが降り立った瞬間、フィールドに花畑が広がった。
あざまる水産さん、9評価ありがとうございます。(土下座)
冷静に考えたら泥濘んだ場所に機動力特化のスパールス出すのは、トレーナーとしてどうなの?と思って変更した次第です。
ゲームではバクレシア、スパールスの順なんですけどね…
フッ太くんがスパールスの動きが読めた理由は、水たまりで着地地点を制限していた以外にも、尻尾の傾き具合で次の動きを予測していたってのもあります。