魔王バルドVS勇者セージ ~極悪非道なバーコードハゲ魔王をフサフサ勇者がやっつけるお話~ 作:ナオ3
職場の建物は、変わっていなかった。
変わったのは、自分の心と、頭部の造形だけだった。
エントランスの自動ドアが、ウィンと音を立てて開く。
青年の足取りは重かった。
けれど、旅行で出会った仲間たちとの時間が、背中をそっと押してくれていた。
「……大丈夫。俺はもう、ひとりじゃない」
帽子を外す。
ひとつ深呼吸して、フロアに足を踏み入れる。
「おかえりー!!」
「待ってたぞ!!」
「ってか、あんた旅行焼けしとるやん!」
「おぉ……そのバーコード、ちょっと整ってきてね!?成長感じる!!」
全然変わっていない――
いや、“変わらずにいてくれた”みんなの笑顔が、そこにあった。
そして視界に飛び込んでくる、あまりにも見慣れた“あの髪型”たち。
バーコード×3。
うんこヘア×2(うち一人はサイド盛りでゲーミングカラー)
逆毛爆発型×1(たぶん開き直った)
「なあ、あいつ新入りだよな?」
「やっと“こっち”来たかって顔してるな」
「おいで、我らがバーコード族へ!」
「いや、ちょっと落ち着いて!?俺まだこっち側になじみ切ってないから!!」
「なーに言ってんの、**“抜けたら仲間”**が合言葉でしょ?」
昼休み。
社食にて、バーコードテーブルが組まれる。
バーコードな先輩が、箸を構えながら言った。
「なあ、アンタ旅行行ってたって言ってたろ? どうだったよ」
「……良かった。最高に、笑えて、癒された。
泣きそうなぐらい、仲間って感じだった」
「いいねぇ、それ。俺も最初はめっちゃ荒れたけど、ここの連中が笑ってくれたおかげで吹っ切れたわ」
「ってか、笑わせてくれたわ」
「うんこの位置でな」
「てめぇ今ゲーミング点滅してんぞ!!!(怒)」
「いやだってさ、あの呪い、笑ったら髪がゲーミング化するんだろ?
それ、ある意味世界平和やん」
青年は、そんな騒がしいやりとりの中に混ざっていた。
自然に。無理なく。
“戻ってきた”という実感が、ようやく胸に落ちてきた。
あの時、旅先で出会った仲間たちも。
ここにいる自分の居場所も。
全部、自分の人生の一部だと思えた。
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昼休みも終わり、オフィスに戻った青年は、ふと気づいた。
「……あれ? そういえばさ、同期の子……いないよな?」
彼が言うと、周囲の同僚たちは一瞬固まり、
それからなぜかそろって、苦笑いを浮かべた。
「……あー……うん、あの子ね」
「ちょっと待ってれば来るよ……ふふっ」
「な、なに? なにその“来るぞ来るぞ”って顔!?」
ざわ……ざわ……
まるで嵐の前の静けさのような空気。
すると、ドアが音もなく開いた。
そして、そこに――現れた。
ドリルだった。
見事なうねりと巻き上げを見せる、天を突く二重渦。
まさに――うんこヘア。
だが、その髪の下には、間違いなく見覚えのある顔。
勝気な目元、しっかりとした口調、ベリーショートが似合っていた彼女が――
今は、堂々たるうんこヘアで立っていた。
青年の脳裏に、何かが走った。
(ま、まさか……同い年……!?!?)
ピコン!!(レベルアップ音)
彼女の年齢と呪いの発動条件が脳内でリンクした瞬間――
ぷすっ……ぴぴぴぴぴぴぴぴ……!
「ッブフォォォォッ!!」
青年、吹き上げゲーミング現象発動!!
光る。ピカピカする。バーコードがレインボーに染まりながら逆立つ!!
そして――
「ちょ……アァアアアアアア!?!?」
彼女も、同時に吹き上げる!!!!!!
うんこドリル、虹色に光りながら回転する。まさかの回転発光ギミック搭載型ゲーミングヘア。
ふたりの髪型が、天に向かってゲーミングコラボを果たした瞬間――
オフィスがレインボーに包まれた。
キラキラキラァァァァァァァァァッ!!!
「……やっぱりな」
「あのふたりは“交差”すると思ってたんだよね」
「バーコードとうんこが合わさると、ああなるのか……」
職場の同僚たちは、すっかり慣れた様子でサングラスをかけ始める。
「ゲーミング照射の時は保護具必須って、朝礼で言ったでしょーが」
「はーい、対ゲーミングマニュアル4ページ開いてくださーい」
新人たちは教本を開きながら必死に記録した。
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「……アンタ、なんで笑ったのよ」
彼女がにらみながら言った。
青年は、虹色に光るバーコードをピカピカさせながら苦笑した。
「いや……お前があまりにも見事すぎて……言葉を失っただけだよ……」
「……同感よ。アンタも、思ってたより光ってた」
ふたりは、一瞬だけ見つめ合い――
そして、再び同時に吹き上がった。
その日、オフィスは終日レインボーに染まっていた。
バーコードとうんこ。
その交差点で、世界は新たな輝きを手に入れた。
ゲーミングに発光したバーコードとうんこが、
オフィスの天井を照らしてから、数分後――
ふたりは、社屋の喫煙所横にある通称「ゲーミング冷却スポット」にいた。
備え付けの魔力ファンが静かに回っている。
ふたりとも、支給された**“対ゲーミング反射サングラス”**を着用済み。
「……なにこれ。もう、なんなのこの状況」
「俺に聞くなよ……光るバーコードとうんこがツッコミ合ってる現実、俺だって想定してなかった」
「てかお前、なんでそんな“自然なピカピカ”してんのよ!?“発光し慣れてます”って顔じゃん!」
「お前だってな!?うんこドリルが虹色にグルグルしてんの、もはや回転寿司の軌道なんだよ!!」
「誰がうんこスパイラルシャイニングだコラァ!!!」
「誰がシャイニングブレードバーコードだァ!!」
ピカッ……ピカピカッ!!
「やかましいなもう!!こちとら夜道で街灯代わりになるぐらい発光しとるわ!!」
「うるせぇこっちは防犯対策に役立つって評判なんだよ!!近所の子供に“虹の戦士”って呼ばれてんだわ!!」
「それなんかもう逆に誇れよ!!!」
魔力ファンが、疲れたように回る。
ふたりは、笑いながら額を押さえた。
「……はぁ……」
「……なぁ」
「ん?」
「ちょっと、楽しいな」
「……意外と悪くないわね」
ふたりの声は、どこか照れくさそうだった。
「でもさ、お前ってベリーショートで勝気な感じだったよな。
今、そのドリル……正直、脳に刺さりそうなんだけど……」
「うるさい。こっちだってお前のバーコードが風でビッと立った瞬間、ハート撃ち抜かれたかと思ったわ」
「え、それときめきなの!?刺さったのってゲーミングじゃなくて乙女心だった!?」
「お前、ちょっと黙って発光してろ」
「はい、ピカピカァッ☆(敬礼)」
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「……ま、でもさ。
うんこだろうがバーコードだろうが、こうやって笑えるなら、ちょっとぐらい輝いてたっていいかもな」
「……そうね。光ってんなら、せめて“前向きな光”でいたいよね」
ふたりは、しばし無言で空を見上げた。
そして、発光した頭頂部から虹色の輝きが、空へと反射した。
まるで、それがふたりの心の“前向きさ”そのものを示すように。
「なぁ」
「ん?」
「……明日も一緒に発光しよっか」
「……うん、いいよ」
笑いながら、ふたりはオフィスへ戻っていった。
世界は今日もレインボー。
だけどそれは――ただの呪いの光じゃない。
自分たちを肯定する、希望の発光だった。
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2人がレインボーになってからしばらく後。
「……本当に、ここに通うの?」
「マジだよ。上から“通知来たでしょ?”って言われたし。
しかも“この訓練は国家事業です”って書いてあったんだけど――」
「「魔王個人財産だろがァァァ!!!!!!」」
青年と同期の彼女は、施設の前で魂のツッコミを入れながら叫んでいた。
目の前にそびえ立つのは――
《国家公認 対ゲーミング耐笑訓練施設》
通称:「ゲラ止め園(えん)」
施設の外観は、なぜかやたら立派だった。
魔法石をあしらったモノリスのような玄関。
金属の門には**「耐えよ、そして生きよ」**という謎のスローガン。
「こっわ!!!精神修行か!?」
「“耐えよ”って書いてある施設に“笑い”に来るとか業が深すぎるだろ……」
入り口の警備員が帽子を取りながら笑顔で言った。
「ようこそ、お二人とも。今日も“笑ってください”」
「「いや逆じゃねえの!?!?」」
受付では丁寧すぎる案内係が説明してくる。
「ようこそ、ゲラ止め園へ! 本施設は、ゲーミングの呪いにおける発光トリガーである“笑い”への耐性強化を目的として設立されました!」
「職場復帰後、3回以上の“吹き上げゲーミング現象”が確認された方は自動的に招待対象となります!」
「なお、訓練日は勤務扱いでございます。報告書提出義務はございません!福利厚生バンザイ☆」
「費用は?」
「魔王様のお財布から、全額出てます☆」
(お前さぁ……どんだけ……どんだけバーコードうんことゲーミングに人生捧げてんだよ魔王ぉ……)
「なお、施設内には**魔王陛下直々の“笑っても呪い発動しない魔結界”**が常時展開されています。ご安心を」
「いや魔王!!!そんな便利な結界を作ってまで!!!!本気すぎだろ!!!」
「てゆーか!それするくらいなら!!ゲーミングに光る呪いを掛けるんじゃないわよぉぉぉぉォォォ!!!」
施設の中は、広い。
各エリアには以下のようなプログラムが用意されていた:
• “動画耐笑ゾーン”:面白動画を延々見せられ、顔がピクついたら即アウト(職員が容赦なくカウント)
• “笑顔耐性ミラー”:自分のゲーミング状態を拡大表示し、笑わずに受け入れられるかの訓練
• “地獄の一発ギャグラッシュ”:うんこヘアの芸人たちによる怒涛のギャグを浴びる地獄訓練
• “すべらない話サバイバル”:元芸人による鉄板ネタに笑わなければクリア。なおスベったら強制笑い。
「え、なんで俺のバーコードだけ3Dモデリングされて回転してんの!?」
「私のドリル、特大モニターでスローモーションになってんだけど!?回り方エレガントに調整されてない!?」
「……あのなぁ。誰だよ、このプログラム考えたやつ」
「100%、魔王でしょ・・・・・・・」
「ぜんぶ魔王の財布だもんな……」
「……何者なのあの人?」
「髪の呪い作って、人の笑いにここまで全力出してんの、お前だけだよ魔王ォ!!」
2人の訓練は続く、この施設のすごいところは――
結界が張られていて、どれだけ笑ってもゲーミングにならない。
「やば……さっき耐えきれずに吹き出したけど、光らなかった……!」
「うわ、安心して笑えるって……こんなに……幸せだったんだ……!!」
笑ってもいい場所。
安心して顔を崩しても、誰も咎めない。
そして何より、“変わってしまった自分”を無理に隠さなくてもいい。
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修了式。
厳粛な空気……になるわけもなく、
会場は虹色のライトに照らされ、微妙にテンションの高いBGMが流れていた。
壇上には、金色に輝く賞状と、謎に重厚なクリスタルトロフィー。
その中央には燦然と輝く文字。
『耐笑認定資格 ゲーミング級』
「……なんで“ゲーミング”って正式名称なんだよ」
「国家資格なのに名前が一番ふざけてるわね……」
「しかもフォントが虹色発光仕様とかマジで何!?全力でフザけに来てんの!?」
「では、ただいまより!
第七百五十八回 耐笑認定授与式を執り行います!!」
司会の訓練官が大声で叫ぶ。
壇上の青年たちは、硬直していた。
「多すぎね!?回数多すぎじゃね!?!?」
「マジで?!?!人類そんなにゲーミング化してた!?!?」
進行役の職員がマイクを取り上げ、誇らしげに読み上げる。
「耐笑認定資格ゲーミング級は、“笑ってはならぬ状況下”において、
外的・内的笑撃に耐える精神力・忍耐力・職場適応力を認めた者に授与されます!」
「もう内容からして悲しいんよ!!」
「“笑ってはならぬ状況下”ってなによ!?」
「人間として自然な反応を逆にスキルにしてんじゃねえ!!」
そして、青年たちの名前が呼ばれる。
拍手と共に、二人は壇上へ。
魔力紙でできた賞状と、異様にピカピカするクリスタルトロフィーを受け取る。
「お、おいこれ重すぎない!?本気で持たせにくるやつだぞこれ!?」
「中にたぶん魔石かゲーミングエネルギー詰まってる!なんかほのかに温かい!!!」
「持って帰って家のWi-Fi干渉しそう!!」
賞状には、以下の文言が記載されていた。
あなたは笑撃に屈せず、己を制し、
人類の平和と社会秩序のために戦いました。
その勇気を讃え、ここにゲーミング級の資格を授与します。
なお、今後笑ってもピカらないとは限りません。
十分ご注意ください。
「注意書きぃ!!!」
「意味ねぇじゃん!!資格とっても油断したら光るのかよ!?!?」
「じゃあなんのための訓練だったのよ!!!?」
青年(バーコード)は受け取って、目を細めた。
「いやぁ……なんだこれ。
人生で初めて“金ピカの紙に認められたバーコード”だわ」
同期(うんこ)も、同様に受け取りながら呟く。
「私は“笑い耐性がドリル級”ってことか……どんな特性持ちよ……」
「いやお前、VR最終試験のとき笑いすぎて回転数上がってたよな?
訓練中にパトカーのサイレンみたいにグルグルと?」
「お前だって!バーコード光らせながら“耐えられないけど発光できる自信ある”って名言残してたじゃない!?」
最後に司会が高らかに言った。
「ふたりの耐笑は、今後世界を照らす光となるでしょう!!」
「「もう照ってんだわ!!!!(叫び)」」
ざわ……ざわ……
教官たちがヒソヒソと話す。
「……あれが……」
「バーコードとうんこの……“適性最上級ペア”……」
「次の訓練施設ポスターに使おう。ポーズは発光時のやつで」
「「公式CP化されるのやめろォオオ!!」」
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卒業式を終え、ふたりは控え室に戻っていた。
式典の最後、教官がふたりに金色の封筒を手渡した。
「卒業特典の金一封だ。お疲れ様だったな」
青年(バーコード)は、恐る恐る封を開ける。
中には……
札束がびっしり。
「…………ッ!!」
同期(うんこ)も、中を見て、ピクピクと目を震わせている。
二人、無言のまま顔を見合わせる。
そして――
「「いや!!なんで!?!?!?!?」」
「「いやいやいやいやいや!!!」」
「「笑いを耐えた報酬が札束ってどういう感性してんだ魔王ォォォ!!!」」
「金で解決すなァ!!感情でぶん殴られたあとの慰めが“現ナマ”ってお前……!!」
「額面デカいのが逆に腹立つんだよ!!こっちは人生の誇りとか髪とかいろいろ失ってんのに!!!」
「ちょっと待って!?この袋、“フサフサ応援基金”って書かれてるんだけど!?」
「誰に応援されてんだ俺たちッ!!」
ふと、封筒の中にもう一枚紙が挟まっているのに気づく。
青年が広げてみると――
「これからも、君たちの笑顔が世界を照らすことを願っています」
—魔王バルド・コード
「「…………」」
「「“お前の呪い”が発光原因じゃァァァァァァアアアア!!!」」
写真撮影。
ゲーミング資格証を手に、虹色に輝くバーコードとドリル。
サングラスを着け、ピースサインで並んだふたりは、
なぜか誰よりも誇らしげだった。
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帰り道、青年がふと呟いた。
「……なあ、俺たち、ついに“公式で笑いを耐える力”持ったんだな」
「うん……なんかもう、悟りに近いよね」
「これで将来、“好きな芸人誰?”って聞かれて、“自分の髪型”って答えても文句言えないわ」
「絶対ゲーミング光るやつだ、それ」
ふたりのツッコミは止まらなかった。
でもその声には、笑いと誇りが混ざっていた。
ゲーミングは止まらない。
だが、それでも笑える未来がある。
書いてて思ったけどこの二人滅茶苦茶相性がいいw