魔王バルドVS勇者セージ ~極悪非道なバーコードハゲ魔王をフサフサ勇者がやっつけるお話~   作:ナオ3

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この世界の形が大まかに見えてきたかな?


外伝 とある青年と同期の女性 魔王バルドの功罪(なお)

——光る頭で酒を飲む夜、でも心はあたたかい

 

卒業式が終わり、支給された金一封をポケットに突っ込んだ青年と同期の女性は、

居酒屋の個室にいた。

 

個室といっても、**「対ゲーミング光害仕様」**の完全防音型。

店名は《髪ひととき》。

 

 

「乾杯……」

「……にしては酒のツマミがツッコミどころ満載なんだが」

 

 

テーブルの上には

「毛根への供養だし巻き」

「ヘアライン風つくね」

「ゲーミング虹色酎ハイ」

 

 

「メニュー攻めすぎィィィ!!」

「テーマ型居酒屋にも限度があるだろうが!!!」

 

 

しばらくして、ふたりは酒を飲みながらぽつぽつと喋り出す。

 

 

「……なぁ、お前、知ってたか」

「ん?」

「魔王、特許持ちすぎて、世界中から金が勝手に入ってきてるらしいぞ」

「科学技術も、魔法の理論も、だいたい彼が“土台作った”って」

「うん、知ってた。……ていうかさ、ぶっちゃけると」

 

 

ふたり、ほぼ同時に言った。

 

 

「「功績のほうが圧倒的にデカすぎるんだよなぁ……」」

 

 

この世界の魔導インフラ。

空中輸送システム。

完全自動再生農場。

人工精霊サーバーと、意思感応デバイス。

 

すべての基盤技術には、必ずと言っていいほどバルド・コードの名が刻まれていた。

 

「魔王陛下特許第1349280号:長距離魔力変換システム」

「魔王陛下特許第9032898号:魔力対流式気象制御」

「魔王陛下特許第6660000号:再生型全自動サロンチェア(開発中)」

 

 

「……発明で言えば、ガチで歴史上最高峰なんだよな。

 技術の神様って言っても過言じゃないレベル」

「でも、その神様が“髪型の自由”を奪ったっていう……」

「どんなパラドックスだよ!!」

「収入だって、ほぼ全部特許料だもんね。世界中から自動でチャリンチャリンしてるし……」

「耐笑訓練の施設費とか、俺たちの交通費とか……

 下手すりゃ**“バルドの印税の1秒分”ですらないっていう**」

「いや、それだけ稼いでて、なぜ呪った!?!?!?」

 

 

酒をぐいっと飲む2人。

 

 

「あ〜〜〜これだけ世界に貢献されてりゃよぉ、

居酒屋の個室でコソコソと愚痴ることしか出来ねぇよ、チクショウ」

「客観的に見れば人類の大恩人、髪型の呪いをぶち撒けた事なんて可愛いものよ……」

 

 

つまみを食べる。

 

「そういや魔王が支配する前から生きてる魔族、結構ザラにいるらしいぞ?」

「魔王が支配する前は相当酷かったらしいから、髪型で騒ぐの人間だけなのよねぇ」

「それだけ過酷な時代だったと、んで魔王様はそれを解放してくれた大英雄」

 

 

ふたりは同時に天を仰いだ。

酒が少し回ってくると、ふたりの口調はどんどん砕けていく。

 

 

「……でも、俺さ、ちょっと思ってんだよ」

「ん?」

「バーコードになってからさ。……“人に支えられてる”って、やっとわかったっていうかさ」

「……わかるよ。

 私も、ドリル抱えたまま誰にも笑われなかった日、

 “ああ、世界って優しいかも”って初めて思えたもん」

 

 

ふたりは、しばらく無言でチビチビ酒を飲んだ。

虹色酎ハイのグラスが、頭のゲーミング光に照らされてキラキラしていた。

 

 

「……世界が輝いてるな」

「うん。主にお前のせいだけどな」

「いや、お前のうんこが“七色で回転してる”のも結構輝度高いぞ?」

「……飲み直すわよ」

「すみませーん!フサフサ風サラダもう一つー!」

「注文の癖が強いわ!!!」

 

 

笑い声が、個室のなかで優しく響いた。

 

 

青年と同期は知っている。

 

魔王の呪いがどんなに理不尽でも――

その裏にある優しさと知恵が、世界を支えているということを。

 

でも、それでも言わせてほしい。

 

 

「「感謝はしてるけど、やっぱお前の呪いは悪質だよバルドォ!!」」

 

 

ふたりは酒を飲み続ける

 

 

「……魔王の功績は認めてる。マジで世界レベル」

「でも、罪の存在感だけはノーベル髪罪賞クラス」

「わかる。罪のインパクト、マジでノーベルやらかし賞。」

 

 

それでも――

 

ふたりは、バルドという魔王に、少しだけ親近感を抱いていた。

 

だって、あの呪いは、

世界中の“同じ立場の人間”を繋いでくれたから。

 

 

「……今度会ったら、言ってやろうか」

「“あんたの呪い、最悪だけど悪くなかった”って?」

「うん。でもその前に――」

「――“呪いを解除できるならしろやボケェ!!”って全力で叫ぶよね。」

「そこは絶対譲れねぇ」

 

 

________________________________________

 

 

虹色酎ハイ、3杯目。

テーブルのつまみは「前髪ピンチ盛り」から「ハゲでも辛い麻婆豆腐」へ。

 

個室の魔法ランプが、ほのかに赤く染まり、空気がほんのり甘くなる。

 

虹色酎ハイの氷がカラン、と音を立てた。

ツッコミの嵐がひと段落して、ふたりはふぅ、と息をつく。

 

ふと、青年が問いかけた。

 

 

「なぁ……お前、旅行……した?」

 

 

女性は驚いたように目を細めてから、

ふっと小さく笑った。

 

 

「……うん。したよ。

 あの特別有給のやつで。あの“呪いケアの豪華旅行”」

「そっか……」

 

 

青年も笑った。

ちょっとだけ、懐かしそうに。

 

 

「……友達、できた」

 

 

彼女が言った。

 

 

「いろんなヤツがいた。みんな笑えて、

 泣けて、光ってて……うん、ゲーミングで」

 

 

青年も、少し目を細めて頷いた。

 

 

「俺もだよ。

 最初はひとりで震えてたけどさ、気づいたら、笑ってた」

「帽子の下を見せても、“わかるよ”って言ってくれるやつらがいた」

「……ああ。

 なんかさ、“呪われた”って思ってたのに、

 あそこにいた自分は、たしかに“救われてた”んだよな」

 

 

彼女はゆっくり、グラスを傾けた。

 

 

「……不思議だよね。

 私たち、別々の場所にいたのに――同じこと、してたんだ」

 

 

青年もまた、グラスを持ち上げた。

 

 

「……だな。

 髪はなくても、縁ってのは……ちゃんと生えてくるもんだな。」

「それ、いいこと言った風だけど、“縁が生える”って何語?」

「髪が抜けた人間が言っていい唯一のポジティブな単語なんだよ、たぶん」

 

 

ふたりは、また笑った。

 

今度の笑いには、涙も苦しさもなかった。

ただ、共鳴するような、同じ経験をした者同士のぬくもりがあった。

 

 

「……じゃあさ」

「ん?」

「今度その時の友達とも、会ってみたいな。お前の“ゲーミング仲間”たちにもさ」

 

 

彼女は少しだけ考えて――頷いた。

 

 

「……いいよ。紹介する。

 でも覚悟してよ? ゲーミングのレベル、ウチらより上だから」

「マジかよ……虹の先を見に行く覚悟しとくわ」

「発光止まらなくなっても知らないからね」

「その時は、隣で一緒に光ってくれよ」

「……うん、いいよ」

 

 

静かに流れる時間。

髪を失ったふたりは、確かに今――

ひとつの“縁”を得ていた。

そして、それはきっと、

これからもずっと、消えない光になる。

 

 

________________________________________

 

 

「……あー、効いてきた……」

「だな……頭の発光ちょっと落ち着いたけど、内側から火花散りそう……」

「ってかさ、アンタさ」

 

 

同期が、ちびちびとグラスを傾けながら言う。

 

 

「今まで……彼女とか、いた?」

「……」

 

 

青年、目を伏せる。グラスの中を覗き込みながら、ぽつりと。

「……いたよ。一応。大学の頃な」

「へぇ……」

「……でも、やらかした」

「やらかした?」

「……『君の髪型って猫っぽいよな』って褒めたつもりがさ、

 “ヘルメットかぶってんの?”って言われてる思われて、秒で振られた」

「……ダメすぎる!!」

「俺もそう思う!!あの時の俺をゲーミング照射で焼き払いたいわ!!」

 

 

笑ったあと、ふたりは一拍置いてから、同期が静かに言った。

 

 

「……私、付き合ったことないよ」

「……え?」

「自分から行くタイプじゃないし。男からも“怖そう”とか“勝気すぎ”とか思われて、全然寄ってこなかった」

「いや、わかるけど……でも、なんつーか……意外」

「まぁ、今となっちゃ“レインボードリル”だけどね」

「近づいた男、光と回転で即死だから」

「やめろ、その表現。お前自分の髪型でカラミティ発動するな」

 

 

しばらくの沈黙。

やがて、同期がぽつりと呟いた。

 

 

「……でもさ。もし“普通の髪”のまま生きてたら、

 こうしてアンタと飲んでなかったんだろうなって、ちょっと思う」

「……俺も。自分から話しかけたりしないタイプだったし。

 でも、“同じ髪型災害”に遭っただけで、こんなに距離が縮まるんだもんな」

「……人の距離って、ほんとに髪一本だな……」

「ってか俺たち、“髪一本”どころか“全喪失”だけどな!!」

「地肌で繋がる友情だな……」

「いやその表現やめろおおおお!!!」

 

 

グラスが空になった。

でも、ふたりの心はぽかぽかだった。

静かに、でも確かにお互いを知って、笑って、ほんの少しだけ寂しさも共有した。

それだけで、世界はちょっと優しくなった気がした。

 

それでも、ふたりは笑いながらこう思った。

 

“この夜は、ちょっとだけ特別だ”

 

頭は光ってる。

でも、心はすこし落ち着いていた。

 

 

「……なぁ」

「ん?」

「俺たち……このまま、また光りながらどっか遊びに行くの、アリか?」

「……それ、デート?」

「いや、デートってほどじゃないけど、まぁ、そんな感じの」

「……なら」

 

 

彼女は、ドリルを軽く揺らしながら笑った。

 

 

「ちゃんと整えてきなさいよ、そのバーコード。」

「まじかよ……メンテナンス代がかかるじゃんか」

「魔王の補助金で出せば?(笑)

 

 

________________________________________

 

 

職場の食堂、“ゲーミング光遮断カフェテリア”の片隅に、

妙な緊張感が漂っていた。

 

理由は一つ。

 

あのふたりの様子が、おかしい。

 

 

「おい見たか。あのバーコードとドリル……距離、近くね?」

「さっき、並んで食券買ってたぞ。“じゃがバタ二つ”って、同時に言った。」

 

 

そして、ひとりがつぶやいた。

 

 

「……トットカルチョ、始めるか」

「出たッ!!非公認社内イベント“トットカルチョ”ッ!!!」

 

【ルール】

・「あのふたりがくっつくかどうか」「いつ進展するか」などを賭ける

・掛け金はすべて食券(主にAランチ、たまにCランチ)

・成績優秀者には“ゲーミング光抑制リストバンド”が贈呈される(非公式)

 

誰もがソワソワしている中、

当の本人たちはというと――

 

「ちょっと塩多くない? 減らしたら?」

「お前さ、俺の健康管理まで入ってきてない?」

「……してあげてるって言い方はないんだ?」

「……まぁ、おかげで血圧下がったけどな」

「素直に言えバーコードォ!!」

 

光るふたりを囲んで、笑いと予想が飛び交う職場。

 

ゲーミングヘアの呪いが、ここではただの愛すべき風景だった。

 

そして誰よりも、魔王の財布が今日も知らぬ間に支えていた。

 

魔王の功罪がまた一つ増えた

 

 




とある青年シリーズはここで終了します、この二人がどうなったかご想像にお任せしますw
この世界でバーコードとうんこにどう向き合い、どう付き合っていくのかお分かりいただけたでしょうか?
あと知ってもらいたかったのは、魔王バルドがこの世界を支配しなければ髪型で一喜一憂する余裕すらありません。
この二人というか世界に住まう人間はそれを知っています。
そんな偉大過ぎる魔王様に真正面から交流できる者は例外中の例外でしょう。
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