魔王バルドVS勇者セージ ~極悪非道なバーコードハゲ魔王をフサフサ勇者がやっつけるお話~ 作:ナオ3
『ゲーミングの呪い:光る者と光らせた者』
午後二時。
蒸した空気に押されるように、人々の足取りは遅く、
誰もが日陰と風を探していた。
その中を歩く、二人の男。
一人は青年――エイン・フォルセイン(21)。
学生を終えたばかりで、まだ社会に出たての青臭さを残していた。
もう一人は、くたびれた上着を羽織る中年――
おじさんとしか言えない、どこにでもいる市井の男。
そして――事件は起きた。
突風が、吹いた。
「――あっ!」
おじさんの帽子が、ふわりと宙に舞う。
反射的に、エインは目を向けた。
そこで――見てしまった。
頭頂から張りつくように描かれた完璧なバーコード。
しかし風のせいで、その数本が踊るように横にズレた。
まるで……パラパラ漫画の途中で手を滑らせたようなズレ方。
そして、エインの口が、勝手に動いた。
「……ふっ」
一音だった。
だがそれで、全てが終わった。
次の瞬間、彼の髪が――
虹色に爆光した。
「ぅわぁあああああああああああッ!?!?!?!?」
ゲーミング発光、即時発動。
髪は七色に発光しながら“ピコーンピコーン”という音を立てて点滅。
通行人が一斉に距離を取り、店の窓が自動的にシェードを下ろした。
「ぉぉぉぉぉおぉぉぉお俺、やっちまったああああああああ!!!」
その場に崩れ落ちるエイン。
頭を抱えて号泣する。
周囲にはギラギラと踊るネオンヘアーの残像。
――そんな中。
風で帽子を拾い直したおじさんが、
静かに歩いて、エインの隣に腰を下ろした。
そして、ぽつりと。
「……ごめんな、若いの」
エインは顔を上げる。
その目は、涙とゲーミングの光でぐちゃぐちゃだ。
「な、なんで謝るんですか……ッ!! 笑ったのは、俺で……!」
おじさんは首を振った。
「……そりゃあ、風に負けるような頭で出歩いた俺も、悪いんだよ」
「だがな。笑ったからって、苦しむことはねぇ。
お前は“悪意”で笑ったわけじゃないだろ?」
エインは言葉が出なかった。
おじさんは、そっと鞄から一枚のチケットを取り出す。
「これ、使え」
見れば、**“ゲーミング被害者救済美容院《光遮の杜》”**の紹介券。
しかも――
「……“完全遮光コース”……!? これ、超高いんじゃ……」
「知り合いがいる。俺もな、何度かやった」
エインの喉が詰まった。
涙が、止まらない。
「……うっ……ありがとうございます……っ……! 本当に……」
「いいって。
俺たちはな、こうやって**“誰かに笑われて、誰かを笑って、許し合って”**
そうやって、髪の未来を歩いていくしかねぇんだよ」
立ち上がるおじさん。
そのバーコードは、風で少し揺れながらも、誇り高かった。
「行こうぜ。早く遮光処理しないと、今晩、隣の猫まで騒ぐからな」
エインは立ち上がった。
ゲーミングヘアーのまま、肩を震わせて笑った。
今度は、自分自身の光を。
その後、エインは“笑わない男”として市政の講師に招かれ、
バーコード協会から感謝状を贈られた。
だが彼は、こう語っている。
「あの日笑ったことは、消えません。
でも――その光を、誰かのために使うなら、
……ゲーミングヘアーも、意味があると思うんです」
笑ったことを、悔やむな。
笑った先で、誰かと繋がれ。
それが、“髪の未来”である。
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『不発のゲーミング、愛の起爆点』
その朝、会社の空気はいつもと違っていた。
――ゲーミング警戒日。
誰かが“二十歳の誕生日を迎える”とき、職場は自然と緊張する。
“呪い”があるからだ。
二十歳を超えた者に確実に降りかかる、髪の制裁。
男はバーコードに、女はうんこヘアーに。
そして、それを笑えば、ゲーミングが爆光する。
その日、対象だったのは――セレス・ミハリア(20)。
企画部所属。美人。仕事ができて、性格も穏やか。
社内の男性社員の中でも、隠れファンが異様に多かった。
そしてその中の一人、ヴァイス・レンダ(21)。
整った顔、クールな雰囲気、だけどちょっと天然。
彼は去年、自分がバーコードになった瞬間を今も忘れていなかった。
あの日、笑われた。
通勤中の電車で、見知らぬ少年に指を差されて、
「すげー、ホントにバーコードだー!」と大声で言われた。
――泣いた。ガチで。
以来、ヴァイスは**“他人の髪型を笑わない男”**として有名だった。
だが――その日。
運命が、彼の意志を、試しにきた。
昼休み。
休憩室のドアを開けた瞬間。
そこに、セレスがいた。
――既にうんこになっていた。
しかも悪質な角度で、片方だけ微妙に曲がったツインホーン型。
色もまた絶妙なテクスチャー。
リアルな立体感が脳の処理を圧迫してくる。
「……ッ」
ヴァイスの顔が引きつる。
一歩後退。
呼吸を整える。
口元が、どうしても、吊り上がる。
「や、やば……ッ、やべぇ……」
自分で自分を殴った。
「バカ野郎……笑うな……俺……ッ!」
ゴンッ!!
壁に頭を打ちつける。
「この女の……この、俺が……好っきな女の髪をッッ……笑うんじゃねえええええええええ!!!」
完全にパニックだった。
周囲の社員が叫ぶ。
「誰か止めろ!! ヴァイスがゲーミング覚悟してる!!」 「もう爆光する流れだこれ!!」 「やめてくれええええ!! 愛の敗北見たくねえええ!!」
――だが、そこで動いたのは当の本人。
セレス・ミハリアが、ヴァイスの胸ぐらをつかんだ。
「やめてヴァイス!!」
セレスが駆け寄る。うんこヘアーを揺らしながら。
その顔は、恥と羞恥と涙でぐしゃぐしゃだった。
それでも、彼の顔を見つめ、叫んだ。
「お願い、やめて、笑っていいから! 笑ってくれていいのに!」
ヴァイスの目が潤む。
拳が止まる。
そして、言葉が漏れる。
「……俺は……」
「……俺は、お前のこと……!」
「うんこヘアーでも、好きなんだよおおおおおおお!!!!」
――静寂。
時が止まったかのような沈黙。
誰もが固まる。
セレスの頬が、みるみる紅潮する。
「……ッッ!!」
彼女は、頭を両手で覆った。
「こ、こんな頭で告白されるの最悪なんだけどぉおおおおおおおおおおお!!!!!」
そして――爆笑。
だが、笑ったのはセレス自身だった。
ヴァイスは笑わなかった。
最後まで、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりながらも、一音も笑わなかった。
――ゲーミング、不発。
その瞬間、オフィスが総立ちになる。
「やべぇ……!」 「笑わなかった……!!」 「アイツ、涙で耐え切ったああああああ!!!」 「愛で……うんこを超えた!!!」
後日、この告白は**“オフィス告白三大事件”**に記録される。
数ヶ月後。
二人は社内で結婚を発表。
こうして――笑わない者と、笑わせたくなかった者の物語は、
“髪よりも深い結びつき”として、永遠に記録された。
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『ゲーミング懲罰録 ~貴令嬢ミュレーヌの末路~』
ラヴィエール家。七大貴族のひとつに数えられる高名なる血脈。
その邸に生まれた女――ミュレーヌ・ラヴィエールは、誰もが羨む存在だった。
金髪碧眼。均整のとれた肢体。整った肌と気品ある声音。
そしてなにより、流れるような黄金のストレートヘアこそが、
彼女の美の象徴であり、誇りであり、武器であった。
彼女は信じていた。
いや、信じ込んでいた。
自分は美しい。
世界は自分のためにある。
そして、魔王の呪いも“自分だけは”逸れると。
だが――その誕生日の朝、鏡に映ったのは。
左右にねじれた巨大な茶色のツイン渦――“うんこヘアー”。
しかも、髪質はごわつき、色は濁り、先端には不自然な光沢があった。
まるで、罪を盛り込んだ便意の造形美。
最悪だったのは――元の色さえ奪われたこと。
今や濃厚な茶色に変質し形状も色も、完全に“汚物の呪い”に染まり切った“完全うんこヘアー”。
しかも――なぜか、若干湿っているように見える。
人々の視線が遠慮なく彼女の頭に吸い寄せられる。
「……は……?」
最初は言葉も出なかった。
しかし次第に、声にならぬ悲鳴が、喉を突いてあふれた。
朝、邸内に響いたのは――
悲鳴ではなく、絶叫だった。
「いやああああああああああああッッ!!」
「これが! わたくしの髪だとでも言うの!?」
「こんな、こんなの、違うッ!! 私じゃないッッ!!」
「私がこんな髪型になるわけないでしょうがああああ!!」
鏡を割り、召使いを叩き、呪詛を吐く。
だが髪は、整えようが、魔術で隠そうが、天を突く渦を解かなかった。
メイドたちは、誰も何も言えなかった。
否――言えなかったのではない。
笑いを堪えていたのだ。
部屋中の鏡を叩き割り、召使いを怒鳴り散らす。
エルナ・フロルベール。
年上の元教育係兼メイド。
今は雑用係として屋敷に残っていた、気丈な女。
ミュレーヌは彼女を見つけるなり、指を突き立てた。
「……あんた、今、笑ったわね?」
「してませんよ、ミュレーヌ様。私は口元一つ動かしておりません」
「嘘よ! 顔に出てる! 心で嗤ってる!
だってそうよね、昔私があんたの失敗ヘアを笑ったとき――あんた、悔しがってたもんね!」
エルナは目を伏せる。
その通りだった。二年前、彼女が不自然な逆立ち寝癖をつけた朝。
ミュレーヌは、皆の前で腹を抱えて笑い転げたのだ。
「……でも今の私は笑ってない。
この髪型のせいで、今あなたに何か言えば――“巻き込まれる”のは私ですから」
「なら証明しなさいよ。笑ってないなら、光らないでしょ?」
「……それは、そうですが」
「――じゃあ笑いなさい。わざと。
ゲーミングに光らなければ、私が正しいって証明になるじゃない」
エルナの表情が凍った。
「……それは、“わざと笑わせた”と、呪いに判定されかねません」
「は? なにそれ。なによ、あんた魔王の回し者?」
「笑いなさいよ、ほら、笑えって言ってんの。
今ここで、爆笑しなさいよ!! 私は間違ってないって証明してよおおおおお!!!」
――圧だった。
ミュレーヌの手には鋏。
その切っ先がエルナの顎を持ち上げる。
「笑えば、光るんでしょ? だったら、笑いなさいよ。
笑わなければ、あんたを謀反の罪で投獄するわよ」
室内が静まり返る。
ほかのメイドたちも、空気を凍らせて見つめていた。
誰も口にしないが、皆が思っていた。
(この女、終わった……)
ミュレーヌは自分が“特別”だと思っていた。
自分は貴族で、髪も選ばれし金。
だから呪いも“軽く済む”はずだと、本気で信じていた。
だが、茶色く染まった髪こそが、“性根の染み”だった。
「笑え、笑えって言ってんのよ……」
エルナの喉が、震えた。
歯が軋み、唇が痛むほど閉じられていたが――
「……ふっ」
ほんの、小さな笑いだった。
それだけでよかった。
――ゴオォォォォォォォオオオッッ!!!
ミュレーヌの頭が、閃光を噴いた。
髪の全域がフルスペクトル七色ライティングに変化し、
波打つような脈動とともに、謎の電子音が鳴り響く。
ピコピコピコピコピコォォ――!
「な……な、なにこれえええええええええええええッ!??!?」
《懲罰型:ゲーミング螺旋発光汚髪(ちょうばつがた・レインボーうんこ) 発動》
かつてない輝き。
それは光というより呪詛の意思そのものだった。
ゲーミングの呪いは、蓄積する。
そしてそれが一つの笑いをトリガーに、“発光”する。
しかもそれは、普通のゲーミングではなかった。
【懲罰型・特等指定:メガネオン断罪髪】
色は常に脈動。明滅。粒子が空中に飛び散り、音波干渉すら引き起こす。
見る者の角膜に影響を与え、“映像焼き付き”を残す最悪の演出型。
「い、いやああああああああッッ!!」
「これ……消して!! 誰かああああああああああ!!」
ミュレーヌの絶叫と同時に、
魔王城付きの警備隊が到着。
エルナが保護対象として引き取られる。
「助けて!! 私は被害者なのよ!!
この女が、笑って、私を……!!」
「違う。笑わせたのは貴様だ」
応じたのは、魔族警備隊の隊長。
「ゲーミング呪いは、“因果”を見ている。
貴様の所業、すべて記録されている。
過去に笑い、今、脅し、そして自分が笑わせた。
貴様のうんこは、“闇のうんこ”だ」
「やだあああああああああああああ!!!!!!」
ミュレーヌは引きずられるように連行された。
その髪は今も、夜の街を照らす看板のように、ギラギラと回転していた。
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◆数日後
王都で、エルナの証言を元にした倫理教育プログラムが策定される。
タイトルは:
『笑うな、笑わせるな、うんこを恐れるな』
~ゲーミング時代の新常識~
ミュレーヌはというと――
“ゲーミングヘアー光源提供者”として、街のイルミネーション係に任命された。
本人の意思は問われない。
夜、街角で彼女の髪が輝く。
そして、誰かが言う。
「……あの光、ずっと消えないらしいぜ」
「心の底から“後悔”しないと、ね」
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魔族たちは語る。
「彼女は、呪いを笑いものにし、笑わせることの重さを知らなかった」
「だがゲーミングの呪いは、赦さない」
「最も悪質なのは、“他者の口を無理やり歪めさせる者”だ」
それが、呪いの核心。
それが、ゲーミング断罪の裁き。
屋敷はその後封鎖され、
ミュレーヌの髪は現在も光り続けている。
昼は地上に、夜は空に。
その醜悪な色と形で、“何をしてはいけないか”を世界に問い続けている。
髪を嘲るな。
人を嘲るな。
そして、自分の笑いを忘れるな。
これは、笑わせた罪人が喰らう、髪の審判である。
ゲーミングの呪いはフレキシブルな判断が出来たりします。
エイン君の場合「エイン君、アウトー! でも控えめに光っておくか」
ヴァイスさんの場合「えっ、何かあったの? 僕ドラマ見ていてわかんなーい」
汚物令嬢の場合「リリアだな!リリアなんだろう!!汝リリア罪ありきぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」