魔王バルドVS勇者セージ ~極悪非道なバーコードハゲ魔王をフサフサ勇者がやっつけるお話~   作:ナオ3

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魔王城は今日も一日平和です、髪以外は。


幕間 魔王城の一日 愉快な幹部たち

 

黒き円卓の間

 

魔王直属の幹部たちが円卓に集まり、静かに席についていた。

炎の柱が揺らめき、荘厳な黒曜石の壁が沈黙している。

まさに“魔王の威厳”にふさわしい空間——なのだが。

 

今日の空気は、いつにも増して重い。

理由は明白だった。

会議室の最奥、漆黒の玉座に座る魔王・バルド・コードが、

明らかに“悪夢明け”の機嫌の悪さを滲ませているからである。

頬杖をつき、指をトントンと机に打ちつけながら、無言で睨むように視線を巡らせる

 

魔王。

 

その額の中央に、誇り高きバーコードヘアが今日も静かに主張していた。

幹部たちは、それを見ないように、必死で視線を泳がせる。

 

 

(見るな……見るな……そこを見たら終わりだ……!)

 

 

皆が心の中で念じる。

この会議室で最も触れてはならない“聖域”。

だが、それは見ようとすればするほど見えてしまうという性質を持っていた。

 

ピカァ……。

 

光が、当たった。

会議室の照明が反射したのだ。偶然?いや、もはやこれは呪いに近い。

 

 

(うわああああああああ光った!!よりによってライン部分が反射した!!!)

 

 

ざわり、と空気が揺れる。

 

一人の幹部、低階級魔族のグレミオが、

肩を震わせ、口を必死に押さえていた。

 

 

「……くっ、ふ、ふふ……」

「やめろグレミオ……死ぬ気か……!」隣の幹部が肘でつつく。

 

 

が、ダメだった。

 

 

「ぷっ……ぶっ……ぷふっ……!!」

 

 

小爆笑、発動。

その音が空気を裂く。

魔王の瞳が、スゥ……とグレミオに向く。

 

沈黙。

 

次の瞬間、笑いが伝染する。

 

 

「っ、く、くく……」

「ふ、ふふふ……!」

「見たら……だめ……!見たら……っふ、っはっ……!」

 

 

ドミノ式に、幹部たちの肩が震える。

咳で誤魔化そうとする者、ペンを落としてごまかす者、

机に頭をぶつけて意識を飛ばしにいく者すら現れた。

 

会議室はもう、笑ってはいけない魔王軍24時状態である。

 

魔王はゆっくりと立ち上がった。

その動作ひとつで、場が静まる。

 

 

「………………」

 

 

そして、ゆっくりと、指を一本、天に掲げた。

 

パァンッ!!

 

何かが弾けた。

全員の頭髪が一斉に——

 

ゲーミング化。

 

ピカァァァァァァァァァァァ!!!

 

会議室が、**虹色に光り輝く。

 

レッド、ブルー、パープル、ネオンイエロー。

 

“希望の光”という名の懲罰が、全員を包んだ。

魔王は、座る。

 

 

「……笑っても、よい。

 だが、一ヶ月は光れ。」

 

 

誰も反論できない。

誰もがカラフルな髪をぶら下げながら、深々と頭を下げた。

 

「はっ……申し訳ありません、陛下……!」

「ありがたきゲーミング裁き……!」

 

かくして、この日もまた、

魔王軍幹部の大半が光る一ヶ月を迎えることとなった。

ちなみにこの事象は、既に魔王城の日常風景と化しており、

「月初恒例ゲーミングデー」としてカレンダーにも記載されている。

 

——張り詰めた空気、緊張、失敗、ゲーミング制裁。

 

これが、魔王城の風物詩である。

 

 

 

魔王会議の翌日。

 

幹部会専用フロア、通称“禿談室(とくだんしつ)”では、

静かに、しかし深い反省が行われていた。

 

 

「グレミオ……お前さぁ……」

「……すみませんでした……ほんとに……」

 

 

頭を下げるグレミオ。

その頭には、まだ鮮やかなゲーミングレインボーが煌めいている。

側頭部はブルー、天辺はパープル、前髪(数本)だけがネオンイエロー。

完全に夜の道路工事レベルの発光具合である。

それを囲むのは、同じくゲーミング化した魔王軍幹部たち。

誰もが頭を光らせながら、グレミオを責めていた。

 

 

「いやさ、わかるけどさ? 魔王様が機嫌悪い時に笑うとかさ、正気じゃないだろ」

「魔王様のバーコード、昨日はセンターラインが光ったんだぞ、反射で。もう罠だよあれ」

「笑うなよ!こらえろよお前!!」

「無理っす……あれはもはや事故……」

 

 

一同が黙る。

 

確かに、あれを見て笑うなというのは、人間性の否定に等しい。

 

——バーコード。

 

世界に広まった呪いの象徴。

人も魔族も神々ですら、それを受け入れて生きている。

だが、魔王バルド・コードのバーコードは格が違った。

 

まず、“密度”が違う。

3本の束が**“まるで分け目の意志を持っているかのような構成美”**を生み出している。

 

そして“光沢”。

反射率は通常の約3.7倍。角度によっては相手の目を潰す危険性すらある。

 

さらに、“形”。

風に揺れることがない。完璧な固定。物理法則をねじ伏せた安定感。

 

そのうえ、魔王のオーラがバーコードラインを神々しく演出してしまう。

 

もはやアート。

もはや儀式。

もはや見るだけで膝が砕ける宗教的感動がある。

 

 

「……あれは、芸術なんだよな……」

「うん。世界で唯一、“崇められるバーコード”……」

 

 

幹部たちは口を揃えた。

 

 

「グレミオの気持ちはわかる。むしろ全員が通ってきた道だ」

「俺も初任の時、一週間ぶっ通しで爆笑してゲーミング延長されたもん」

「私なんて、笑いすぎて魔王様に“二段階発光”させられたからね。しかも音つき」

「ピッて音するやつ!?!?」

「そう、それ。歩くたびに“ピッ……ピッ……”ってなってた」

 

 

そんな風に笑い合いながら、

幹部たちは改めて、**あのバーコードの“尊さ”と“業の深さ”**を思い出すのだった。

そして静かに誓う。

 

 

「俺たちは……二度と、バーコードを“笑う”んじゃない。

 “拝む”んだ……」

 

 

ゲーミングに光る頭を垂れて、

彼らは心の中で手を合わせた。

 

その日、魔王城には珍しく——

 

静かな、敬意ある沈黙が流れていた。

 

 

「……そもそもだよ?」

 

 

全員が静かになる。

 

 

「“バーコードハゲ”って呼び名、誰が最初に言い出したか……」

「……言うな……あの女の名前を……」

「でも、もう言わずにはいられないだろ」

 

 

そう、全員が分かっていた。

 

リリア・ノワール・ヘルフェン。

 

あの女。あの悪魔。あの美貌。あの爆笑。

300年前、魔王様の頭を見て、初めて世界に“あの言葉”を放った張本人。

 

 

「……ふざけんなって話だよな」

「なにが“バーコードハゲ”だよ。なにが“語呂がいい”だよ」

「語呂が良すぎて定着しちゃっただろが!!!!」

「しかも一発で流行ったからな……。あいつ、センスありすぎんだよ」

「は?天才か?あの悪口、音の跳ね方おかしかったよな?

 “バァーコードハゲ!!”って語感が一度聞いたら脳にこびりつくんだよ……!」

 

「……そういや、最近リリア見たやついる?」

 

全員が微妙な顔をする。

 

 

「ああ……“今月の散歩”ね……SNSでバズってたよ」

「ゲーミングうんこヘアにト音記号の新パーツついてたらしい」

「え、あれ音なるの?嘘でしょ?」

「ピアノモード付きらしい。風が吹くと“ポローン”って……」

「いやもうそれ、芸術か呪いかわかんねぇよ……」

 

 

一同、思わず乾いた笑いをこぼす。

だが、誰も“可哀想”とは言わなかった。

それどころか、誰かがぽつりとこぼす。

 

 

「……笑うことが悪いとは思わない。でも、あの時“笑った理由”が悪質だった奴らは、当然の報いだよな。」

 

「わかる。魔王様のことを“からかうため”に笑ってた連中、いたもんな」

「リリアなんて、笑いのセンスが高すぎて“文化的破壊”レベルだったし」

「しかも全員、昔の上級魔族出身ばっかだ」

 

「性根腐ってたなぁ……人の痛みを笑いながら、平気で仲間に押し付けて、

 下の階級の連中を“ハゲにふさわしい”ってバカにしてたんだぜ」

 

「そのくせ、今は月イチで笑いながら歩いてるっていう皮肉よ」

 

「ま、同情は……ないな。」

 

誰も表情を歪めなかった。

むしろ、全員が静かにうなずいた。

 

——この魔王軍。

現在の幹部たちは、すべて下級魔族や一般市民出身で構成されている。

 

採用基準はただ一つ。

 

「誠実であること」

 

派手な実績や強さよりも、

 

「仲間を大切にし、

 人のコンプレックスを笑わず、

 心に誇りを持てる者」が選ばれる。

 

 

「昔の幹部は、“力があれば何をしても許される”って連中ばっかだった」

「魔王様は、それを全部見てたんだろうな。だからああやって呪ったんだろ」

「俺たちがここにいられるのは……嗤わなかったからだよ。」

 

 

沈黙が流れる。

誰かが、ぼそりと呟いた。

 

 

「……でもさ、それでもリリアの語感センスだけは認めざるを得ないんだよな……」

「“バーコードハゲ”って響き、今聞いても悔しいけど完璧すぎるよな」

「だからってピアノモード付ける必要はないけどな……!」

 

 

一同、今度は心から笑った。

けれどその笑いには、決して人を見下すような悪意はなかった。

彼らは、“選ばれた者”ではない。

 

 ただ、“人を傷つけようとしなかった者たち”だった。

 

だからこそ、誇りを持ってゲーミングに光っていられるのだ。

今日もまた、

静かに、誠実な魔王軍は――世界を支えている。

 

 

 




魔王様を嗤った魔族は相応しい報いを現在進行形で受けています。
この世界にはパソコンやスマホ、SNSにインターネットなど現代日本レベルの科学力があったり。
魔王様が溢れる知性をもって開発してくれました、優しい魔王様は皆の為にせっせと夜なべしました。
決して自分を笑った者たちを晒しものにする意図はありません、器のでかい魔王様がそんなみみっちい真似はしません!
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