"ん、ここは……"
一瞬だけ意識が遠のき、目を開けるとそこには……
壁が崩れ、そこから見える青い海と青い空、そしていくつかの机と椅子が置かれた教室のような空間が広がっていた
そして、もう一つ補足するならば、手前の机では青い髪で大きめな白いリボンをつけた小柄な少女が寝ている、ということだ
「むにゃ、カステラにはぁ……いちごミルクより……バナナミルクの方が……」
食いしんぼうなのかこの子?
"君、起きてくれないかい?"
寝ている彼女の肩を揺らし、声をかける
「にへへ、そんなに食べれないですよぉ……まぁ食べますけど」
"おきてー!!"
さっきよりも強く肩を揺らし、声を張り上げる
「ふぇ!?だれですかわたしのねむりのじゃまをするのは……って、先生!?」
"よかった、これでも起きてくれなかったら最終手段を使うところだったよ……"
先生がそう言うと、彼女は手で体を隠しながら頬を赤く染め、喋り出した
「最終手段ってなんですか!?"聞きたい?"……遠慮しときます……」
彼女は疲れたような表情をした後、ハッと何かを思い出したのかのように飛び上がる
「先生が来たってことは……もうこんな時間!?落ち着け私、まずは深呼吸……ひっひっふー、ひっひっふー」
"それ違うよね?"
なんでこの子深呼吸って言ってるのにラマーズ法をしてるんだ……
焦りすぎじゃない?
「えっとまずは……自己紹介!そうだ自己紹介しなくっちゃ!」
「こんにちは先生!私はアロナ、このシッテムの箱に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから先生をアシストする秘書です!」
彼女————アロナは自分のことについて話す
"君は私の秘書なんだね……これからよろしく!"
先生は握手を求めるように手を前に出した
アロナはそれに応えるように元気な声で話す
「はい!よろしくお願いします、先生!」
先生と握手を交わし、笑顔でお互いを見つめ合う2人
それが数秒続いた後、彼は手を離して彼女にあることを問いかけた
"アロナ、早速で悪いんだけどお願いしてもいいかな?"
「もちろん!なんでもどうぞ!」
先生に頼られたことがよっぽど嬉しかったのか、彼女はわかりやすく顔を喜ばせ、声を高らかにあげた
"それでなんだけど、アロナはサンクトゥムタワーって知ってる?"
「そのぐらい知っています!連邦生徒会の本部で、連邦生徒会長が最終的な制御権を持った建物ですよね」
ふふん、と鼻を鳴らしながらドヤ顔をしていた
……あいかわらず感情の起伏がわかりやすいなぁ
"うん、そのサンクトゥムタワーについてなんだけど……
さっきアロナは連邦生徒会長が最終的な権限を持っていると言ったじゃん?"
「はい、そうですね
でもそれの何が関係あるんですか?」
頭に疑問を浮かべ、首を傾げる
つまりどういうこと?、そんな独り言を呟きつつも真剣に考えているようだ
"実はね、最近その連邦生徒会長が行方不明になったみたいなんだ"
「えぇ!?そうなんですか!?」
アロナは飛び上がって驚いた
このキヴォトスの実質的なトップがいなくなったんだ、驚くのにも無理はない
"そう、だからサンクトゥムタワーの制御する手段がなくなっちゃったんだ"
少し考えるような仕草をして彼女が答える
「なるほど……つまり私にサンクトゥムタワーの問題を解決してほしいということですね!」
"そういうこと!なんだけど、できるかな?"
「もちろんできます!アクセス権の修復をしてくるので、少しだけ待っててください!」
数分後……
「お待たせしました!サンクトゥムタワーの制御権を回収してきました、今サンクトゥムタワーはアロナの統制下にあります」
"ありがとうアロナ、さすが私の秘書だね!"
本心からそんな言葉を彼女に告げる
それを聞いた彼女はえっへんと先ほどと同じようなドヤ顔を披露した
「私は先生の秘書なのでこのくらい朝飯前です!それじゃあ、この制御権を連邦生徒会に移せばいいんですか?」
ん?強調する部分違くなかった?
まあいいや
"うん、よろしく頼むよ"
「わかりました、連邦生徒会に制御権を移します!」
***************
戻りたい、そう意識して目を瞑るとさっきまでいたはずの教室からもといた場所に戻ってきていた
少しあたりを見回したらリンが電話で何かを話しているのが見える
あれ?イツキはどこにいったんだろう?
「……はい、わかりました」
彼女は電話を終えると、端末をポケットにしまい、こちらに向かって言った
「サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認できました」
"そっか、それはよかったよ。そういえばイツキはどこにいったの?"
そう言ったら彼女が答えてくれた
「あぁ、彼ならシャーレの部室にいますよ、物が散らかっていたので片付けているみたいです」
"そうなんだ、イツキって案外綺麗好きなんだね"
彼の意外な一面を見つけたところで、彼女が言った
「とりあえず先生、お疲れ様でした
キヴォトスの混乱を防いでくれたこと、連邦生徒会を代表して感謝いたします」
'どういたしまして"
「それでは、最後に連邦捜査部シャーレをご紹介いたします。ついてきてください」
後ろを向き、歩いていく彼女の後を追う
先ほどまでとは違い電気が付いているので不気味さは少ない
それから少し歩くと、『空室、近々始業予定』と書かれた紙が貼ってあるドアにたどり着いた
「こちらがシャーレのメインロビーです」
「長い間空っぽでしたが、ようやく主人を迎えることができましたね」
コンコンッ、彼女がドアを叩く
「入ってもよろしいですか?」
「ちょうど片付け終わったところだからどうぞー!」
ガチャッ
ドアを開けると、中にはきれいに片付けられた棚や机、そして中央には仕事用のパソコンが机の上に置かれていた
「これから、先生にはここで仕事をしてもらいます」
"わぁ、すごいねここ"
「たしかに、片付けしてたからわかるけどいろんなものがあった」
「まあ、ここで仕事をするんですから当然なんじゃないんですか?」
そういうことなのかな?
正直パソコンがたくさんあっても意味ない気もするけど……
"あっ、仕事といえば私はここで何をすればいいの?"
「そうですね……、シャーレには権限だけはありますが目標は何もない組織です。なので、特に何かをやらなければならない、という強制力は存在しません。」
"なるほど…"
「ですが、今も連邦生徒会に寄せられてくる苦情、支援物資の要請、環境改善などなど……」
あれ?今リンが支援物資って言ったときに少しだけイツキから黒いオーラ出てない?
……あっ、すぐに戻った
「もしかしたら時間が有り余っているシャーレなら、この面倒な苦情を解決できるかもしれません」
ちょっと!?イツキの顔が怖くなってるんだけど!!
「その辺りの書類は、机の上に置いておきましたので、気が向いたらお読みください」
「それではごゆっくり。必要な時にはまた連絡します。イツキさんはどうしますか……って大丈夫ですか?」
息を荒げながらプルプルと震えているイツキの方を見て彼女が問う
……本当にどうしたの?
「ふーっ、ふーっ……あぁ、気にしないで、俺はもうちょいここにいるから」
「そうでしたか、それでは私はこれで」
ドアを開け、部屋の外に出ていく
バァン!!
彼女が出て数秒後、イツキが机に向かって台パンをした
"!?本当に大丈夫?"
「……はぁ、大丈夫。少しイライラしてただけだから」
すこし?
「それで?先生はこれからどうするの?」
話を逸らしたな……まぁ別にいいけどね
"うーん、ひとまずリンが置いていった書類をみようかな。やることもあんまりわかんないし"
「そっか、じゃあ俺はそこら辺を探検してこようかな。こっちらへんにあんまきたことなかったから」
あー、そういえばイツキもここら辺の人じゃないのか
たしかアビドスだっけな
"イツキの行ってるアビドス?だっけ、そこってどんな感じなの?"
「アビドスかぁ、アビドスはすごいいいところだよ。人数は少ないけど、みんな優しくて大好きなんだ」
笑顔でそう言う彼を見ていい場所なんだってことがすぐわかる
……そっか、私もいつか行ってみようかな
「それと先生、連絡先交換しない?そっちの方が色々楽だし」
"それはいいんだけど私そういうことわからないんだよね……"
先生はまだキヴォトスに来たばかり、こういうことを知らないのは当たり前だ
「たしかに……じゃあそれ少し貸して?」
イツキが彼の持っているシッテムの箱を指差す
"はい、じゃあお願い"
そう言ってそれを手渡す
しまった、起動するの忘れてた
"イツキ、ごめん起動するの——「たしかパスワードは…… 我々は望む、七つの嘆きを。我々は覚えている、ジェリコの古則を。!?"
「あちゃー、やっぱり先生がやんないとだめなのか。先生、これパスワード解除してくれない?」
"ちょっとまって、なんでイツキがパスワード知ってるの!?"
彼に問い詰める
なぜ彼がシッテムの箱のパスワードを知っているのか、そもそもなんで生徒じゃ起動できないはずなのに起動できてるのかを……
「へ?……あっやべ」
明らかになんかやらかしたって顔してるよね?
"ほら、早く答えて楽になりなよ"
「……」
彼が黙ってしまう。それはつまり自分が何かを知っているということを白状しているようなものだ
"そんなに私が信用ないかな?たしかにまだここにきたばかりだけど、生徒——-いや、イツキの話を聞きたいんだ"
そういうと、彼が閉ざしていた口を開けて話し始める
「ちがう、先生を信用してないってわけじゃないんだ。むしろめっちゃ信用してるよ。でも、それでも言えない。これだけ先生にもいえないんだ」
"……そっか。じゃあこの話はこれでおしまい。これ起動するから連絡先交換しようよ"
彼は豆鉄砲を喰らったかのような顔をしたあと、私に言った
「え?いいの先生、その…自分で言うのもなんだけど俺だいぶ怪しいよ」
"べつにいいよ、君がそんな悪い人に見えないし、何か理由があるんでしょ?"
「それはそうだけど……」
顔を俯かせる彼に、先生は声をかける
"私がいいって言ったらいいんだよ、ほら、連絡先交換するんでしょ?"
(……ハハッ、こんなのを花の女子高生がくらったら余裕で落ちるのも、当然だわな)
「わかった、…………おっけ、できたよ」
画面を見るとモモトークというアプリの友達の欄にイツキが登録されている
「もしなんかあったらいつでも呼んで、速攻で行くから」
"わかったよ、ありがとう"
「どういたしまして、じゃあバイバイ、先生」
"うん、またね"
"さっ、書類見るか"
その後、先生は書類を全て見終わるまで2時間かかったという
作中であったけどイツキが原作知識を誰にも言わないのは下手に歴史を変えてバッドエンド直行させないようにしたい*1のと周りをできるだけ巻き込みたくないからです
次の章はどれにしますか?(どれにしろ数話挟んでからのスタートです)
-
パヴァーヌ編
-
エデン条約編
-
アビドスリゾート編