普通の高校生たちによるクトゥルフのリプレイ 作:白痴イア
第一話『今日こそ、奇跡が起こるはずだ』
不老不死side
文明が滅んだ地球を歩き回った。
無限の退屈は、自身が何者であるかも忘れさせたが、それでも、この星を歩くのを止めようとは思わなかった。
過度な栄養であまりにも大きく育った巨木の下にしゃがみ、夜空を見上げる。
とても多くの星がそこにはあった。
そのほとんどが、かつての輝度を失っているのにも関わらず、今もまだ、自身を見下すように輝いている。
再び歩き出した彼女はお気に入りの場所へと向かう。
生命の溢れる深い湖や、その周囲に生えている沢山の木々の元は、彼女にとって素敵な場所だ。
彼女が訪れると、湖がさざ波に揺れ、木々がざわめく。
この植物たちの成長は、彼女の数少ない楽しみだろう。
そして、文明の名残である建造物がいくつか地表に点在するこの場所は、遥か昔の歴史を想起させ、少しだけ彼女の心が沸き立たせるのだ。
ざわめく木々に寄りかかり、数万年ぶりに明るい月を見上げる。
「今日が最高の日になればいい」
これは、彼女にとって日課のような願いだが、今日は本当に何かが起こる予感がするのだった。
■□■
重病人side
「……今日は、何日目だったっけ」
ふと、
その病室の天井は、すでに夢からすれば見飽きた光景だった。
……花見夢は幼い頃から、大病を患っていた。
学校の体育の授業などでは必ず見学し、スポーツなんてやったことすらない。
外で自由に駆け回る同級生を見て、何度羨ましいと思ったことか。
そんな日々を送っていたが、つい先日。余命を言い渡された。
「あと、数日か……」
皆が、僕のことを『可哀想』だと言う。
そこに詰まっているのは好奇心、同情、憐れみ、嫌悪、思いやり……様々だ。
「……ッ」
そんな現実から逃げるように、夢は愛用しているノートを手に取った。
震えに気づかないように強くペンを持ち、ノートを開く。そこには、今まで書き連ねてきた世界への恨み辛みが書き殴られていた。
夢はペンをさらさらと動かして、思い描いた物語を綴る。
それは、ただの暇つぶし。 ただの、息抜き。 ただの、自己満足。
だけど、書いている間だけは忘れられた。逃げられた。もうすぐ死んでしまうと告げる現実から、目を背けられた。
……窓の外を見ると、空は曇っていた。病室の時計は止まりそうなほど遅く、静かに時を刻んでいる。
その時、彼は
今日こそ、奇跡が起こるはずだ……と。
■□■
全身の激痛と吐血を誘う咳で目が覚める。
「……クソ」
病に蝕まれた身体は、移動中の仮眠すら長く許されない。
夢は今、イギリス南西部のグロスタシャー州の山奥にある、ゴーツウッドに向かう電車に揺られている。
日本を中心に蔓延し始めた、数日で死に至る不治の病に侵された夢は、数ある大学病院の全ての意思に治療付加と診断された。
高度な延命治療を受けるには金銭的な問題と人脈的な問題があり、死を待つばかりだった。
打開策の無い窮地に追いやられた者が最後に縋るのは、宗教か奇跡だ。
ゴーツウッドに伝わる山羊の乳が、数々の奇跡をもたらすという話。人生最後の海外旅行を兼ねて、現地に向かう事にしたのだ。
ブリチェスターから列車に乗って30分が経った頃、車窓から景色を見ていれば、密集した木々の隙間からチラホラと建造物を見つける。
その中で、ひと際高い丘の上に、円錐状の奇妙な建造物が見えた。
花見夢【『知識』65→32/成功】
更によく注視してみれば、その建造物に設置されているのは多数の鏡であり、それらが多方面に向けて光を反射させることのできる装置であるようだと想像がつく。
だが、それが何の用途で存在しているかは想像もつかない。
「…………」
別に用途なんて気にしなくていいか、と思った夢は再び椅子に座り込む。
そして5分後、列車はゴーツウッドの駅に停車する。
他には誰も降りないその駅は、プラットフォームがむき出しの滑りやすい板で作られ、待合室の窓は薄汚れて落書きが書かれている。
固い木製の椅子は塗装もされていない。
「……ぐ、げほっ!」
途端、夢は咳き込んだ。咳をするたびに全身に痛みが走り、壁によりかかり体重をかける。
花見夢【『POT対抗』50→91/失敗】
「がはっ!?」
……これは、まずい。
そう夢は確信したが、だからと言って何かができるわけでもない。
その場に倒れ込み、咳を繰り返す。
視界が霞んでいき、意識が遠くなっていくように感じる。
意識を失う瞬間、ふと夢は思った。
……英語、あんまりできないのにどうしよう、と。
花見夢【HP:3→2(自動気絶)】
■□■
花見夢【『CON×5』75→19/成功】
「……ぅ……」
頭が痛い。ぐらぐらする。
それを我慢して状況を把握しようと目を開けると、どうやら仰向けに寝転がされているらしい。
視界の端に、奇妙な円錐状の建造物と、石造りの扉で閉じられた洞窟のような場所の入口が見える。
ここは一体どこなのだろうかと見渡すと、視界を遮る者たちが視界に入る。
それらは、目の下に大きくクマを作っている不健康な人間と、頭に山羊の角を持った亜人達だった。
花見夢【『正気度ロール』80→42/成功】
花見夢【SAN : 80→79】
随分とふざけた光景だ。僕の知っている現実は、果たしてどこへ失踪してしまったのか。
どうせ失踪するのなら、僕の病もついでに持っていってほしかったのだが……。
すると、異形の一人が夢の口を無理やり開かせて、乳白色の液体を流し込んでくる。
抵抗しようと藻掻くが、こちらは重病人。相手からすれば、大した障害にはならないだろう。
そして、そのまま飲み込み……直後、身体が焼けるように熱くなった。
花見夢【『POT対抗』45→32/成功】
「……っ"ぅッ!」
痛い。痛い。痛い。
痛みに必死に耐えながらも悶えていると、夢は動かない身体を引きずられて石造りの扉の前まで連れて行かれる。
その扉は丘の壁面に作られているようで、幾何学模様が描かれている。
模様にどこからか月光色をした光線が伸びると、扉は誰が触れることも無くゆっくりと開いていく。
扉の奥にある、洞窟のような
内部から、白い肉隗が多関節の骨のような足で近づいてくるようで。
花見夢【『正気度ロール』79→65/成功】
花見夢【SAN : 79 → 78】
うつぶせに転がされた夢は、幸運にもこの異形の全貌を見ることなく、意識を暗転させた。
■□■
花見夢【STR:8→13】
花見夢【SIZ:11→18】
■□■
不老不死side
空を見上げていた私には、光線が伸びているのが見えた。
この地に残っている鏡が複数寄り集まった謎の建造物に月光が反射し、丘の一点を照らしているようだ。
「うん?」
光線の先に向かえば、何万年も閉じたまま開くことが無かった、石造りの扉が開いていることに気付く。扉の内部は洞窟のようになっており、中心に意識を失っている青年が倒れていた。
真っ白の髪は伸ばしているのか長く、青年に覆いかぶさっている。その姿は、人間そのものだった。
「……え」
いずれにしても、倒れている青年は生きているようだ。
「ねぇ、貴方大丈夫? こんなところで何してるの?」
「……ん、ぅぅ」
すると、青年は少女の声掛けによって目が覚めたようで、声を出した。
「君、は……?」
「私? 私はティア。それよりも、貴方人間よね? どうしてこんなところにいるの?」
「どうしてって、僕は……そうだ、駅で拉致されて……! ……君は、僕を拉致した奴らの仲間?」
「拉致? そんなことしないわよ」
私……ティアは、手を振って青年の言葉を否定する。
どうして拉致なんてしなくてはならないのだろうか。ティアには見ず知らずの青年を拉致するような動機なんて無かった。
「それよりも、貴方は誰なの?」
「……花見夢、だよ」
「夢ね、分かった。……それで、拉致されたって誰に?」
「えっと……知らない人たちに拉致されて……」
「人? 何言ってるの?」
本当に、彼は何を言っているのだろうか。
「人間なんて、どこにも居ないでしょ? この世界に居る人間は、貴方くらいじゃないかしら」
「…………は?」
私が告げた、当たり前の現実に対して。
目の前の青年……花見夢は、間抜けな声を漏らした。
【キャラクターシート】
名前:
性別:男 年齢:19歳 職業:小説家
HP17/17 MP16/16 SAN78/80
アイデア70 幸運80 知識65
STR13 CON15 POW16 DEX11 APP12 SIZ18 INT12 EDU13
【技能】
応急手当55 隠れる50 聞き耳60 図書館65 目星55 信用35 説得50 オカルト40 芸術(執筆)80 心理学60 人類学6 歴史25
【所持品】
なし
↓花見夢のイラスト
【挿絵表示】