普通の高校生たちによるクトゥルフのリプレイ 作:白痴イア
「……とうとう気が狂った?」
「は?」
石像だった男……藻武夫との会話が終わると、ティアが突然そんなことを宣った。
「何の話?」
「だって、急に虚空と話し始めたから……ああ、狂っちゃったんだなって……」
「〈魂の抽出〉を使って話してただけなんだけど!?」
「大丈夫、もういいのよ。夢くんが発狂してしまったのなら、私が介錯してあげないと」
「だから誤解──おい待て気合を入れて近寄ってくるな微笑んで蹴りの構えをするな死ぬ!?」
必死に説得した夢は、藻武夫に教えてもらった過去についてのことをティアと共有し、神殿へ向かうことにした。
そうしてたどり着くと、そこは崩壊しかけた外観に合わず、神殿の入口は堂々と存在していた。
花見夢【『目星』55→58/失敗】
「何もないか」
「早く先に進みましょう?」
「そうだね」
ティアに従って中に入ると、かつて迷宮のように入り組んでいたとされるルルイエは、区画整備され、荘厳な建造物に変わっていた。
ガタノソア、イソグサ、ゾス・オムモグ、そして名前が削り取られた女神の像が並ぶ屋外礼拝堂があり。奥には、巨大な大理石の扉がある。
「懐かしいわね……」
「ここに、一度来たことがあるのかい?」
「まあね」
花見夢【『目星』55→98/
何かあるかもしれないと石像に近づくと、床がツルツルしていたからか夢は派手にスッ転ぶ。
すると石像の尖っている場所に頭が激突し、頭の傷口から大量の血が流れ出る。
花見夢【HP:4→0】
そして、あっけなく死んだ。
花見夢【HP:0→16】
……のだが、ルリム・シャイコースの時のように、気がついたら生き返っていた。
花見夢【『正気度ロール』53→27/成功】
花見夢【SAN:53→51】
「いや、待ってくれ。あっけなさすぎじゃないか? ダサいにも程があるだろう、僕」
「夢くんはアホだと思っていたけど、まさかここまでだなんて……病院に行く?」
「僕はずっと病院にいたから結構だよ。それとアホだと思われていたのか僕、心外だね。それに病院なんて今の世界のどこにも無いだろう」
そう言いながら、間抜けすぎる死に方を晒した夢はティアから逃げるように奥の扉を開けた。
すると、そこには50mはある天井に頭が付く程の大きさをした、頭足類に似た怪物の巨大な石造があった。
「…………ぁ」
夢は、人知を超えた存在が石化したものだと確信した。
眼前の石造は怒りに満ちており、石化しても尚憤怒の波動を周囲に放っていたからだ。
花見夢【『正気度ロール』51→28/成功】
花見夢【SAN:51→45】
ティア【『クトゥルフ神話』98→68/成功】
そこでティアは、目の前のクトゥルフのように思える石像に何か違和感を感じた。
花見夢【『アイデア』70→64/成功】
どこか違和感が……とティアが悩んでいると。
「…………今、なんて言った?」
ポツリと、夢がそう呟いた。
「……夢くん?」
そして……石像を見たことで発生した狂気とともに、今まで押さえつけていたもの全てが溢れ出した。
「うるさい……うるさい、うるさいうるさいうるさいっ! やめろ、やめろって言ってるだろう!? そんな自分可愛さしかない言葉を僕に向かって吐くな! そんな目で、僕を見るな! そんな哀れむみたいな、値踏みするみたいな、好奇心とも軽蔑ともつかない、その下劣な視線で、僕のことを覗き込むなぁっ! 何様のつもりなんだ!? 何で君たちは、自分が安全な場所に立ってると錯覚して、人の痛みを覗き込むことを娯楽にできるんだ!? 『可哀想』なんて、僕に向かって言うな! 可哀想? 誰が? 僕が!? ふざけるな、ふざけるな、ふざけるなよ! 何がどうなってそう見えたんだ!? 僕の、何を、どれだけ、知ってるつもりなんだよ!? せいぜい表面だけだろうね、ちょっと弱いとこ知ったくらいで、全部わかったような顔するな! 同情してやってる、理解してあげてる、そうやって自分の方が上だって位置に立って、気遣ってるつもりになって、心の中で優越感に浸ってるだけじゃないのか!? 僕はっ……僕は、他人からの憐れみで生かされるほど、薄っぺらい存在じゃない! 勝手な解釈で僕の価値を計るな、安っぽい感傷で触れるな、踏み込むな、侵すな! そういうのが一番、吐き気がするほど気持ち悪いんだよッ!」
「…………?」
突然訳がわからないことを叫び散らかす夢を前に、ティアはどうすればいいかわからず狼狽えるしかなかった。
一時的狂気:幻覚あるいは妄想