普通の高校生たちによるクトゥルフのリプレイ   作:白痴イア

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第十五話『小説を書きたい気分なんだ』

「……試しに使ってみたほうがいいのかな」

 

 夢はプラプラと【冥王星の薬】を揺らしながら、胡散臭いものを見るような目をしていた。

 

「過去を見れる薬、ね……本当にそんなものが、と言いたい所だけど、目覚めてからは不思議なことしか起こっていないからねぇ……」

 

 もし毒だったとしても、生き返ることができるはずだし。

 

 そんな軽い気持ちで、夢は【冥王星の薬】を一本飲み込んだ。

 

 すると一瞬ぐにゃりと視界が歪んだ気がしたが、目をこすれば視界が正常に戻る。

 

 そこは、保管庫のままだった。

 

「……何の効果も無い液体だったのか……? ……いや」

 

 【冥王星の薬】の効果を疑い始めた夢の視界に、研究員のような服装の者が入り込む。

 

 彼はコールドスリープ装置を整備しており、礼装に身を包んだ宗教家のような者達が例の御札のようなものを持って話している。

 

『余計なものを作りやがって。ガタノソア様の討伐などさせるものか! しかし、これでソヨグは旧神の印を持ったと勘違いしたまま挑むことになる』

 

 ────………………。

 

「──ハッ!」

 

 目が覚めた夢は、一見札のようにみえるそれが『旧神の印増幅装置』とやらであることが分かった。

 

 それと同時に、ゾス派の神官の人相も知れた。

 

「……これで、この保管庫でできそうなことはすべてやり尽くしたかな」

 

 夢は深く息を吹く。

 

 これまで、神だのなんだのと化け物に追いかけ回されたり、変な怪物を倒せだのと言われて、気が張り詰めすぎていたのだ。

 

 だが、この保管庫の中ならば少しは安心できるというものだ。

 

 化け物が入ってくる気配もなければ、危険性があるようにも思えない。

 

 いや、もうマジでここから一歩も出なくてもいいんじゃ──

 

「資料は大体読み終わったわ。待たせてしまったかしら?」

 

「……いいや、待ってないよ」

 

「そう。なら良かったわ。さあ、ここでの用事は済んだことだし、ヤディス=ゴー山に行ってみましょう」

 

「ああ、そのことなんだけど……ごめん、ちょっと待ってくれるかい?」

 

 そこで、夢は気がついた。

 

 こんな保管庫だ。ペンと紙くらいはあるのではないか──と。

 

 つまり、以前のような小説を書けるのではないか──と。

 

「小説を書きたい気分なんだ。ペンと紙を見つけないとね」

 

花見夢【『幸運』80→50/成功】

 

「よし、あった」

 

 棚の端に積まれていた真っ白のノートとインクが残っているペンを見つけた夢は、適当な場所に座り込みノートにつらつらと物語を綴り始めた。

 

「……これは長くなりそうね。焦る理由も見当たらないし、ここで一晩過ごしましょうか」

 

 やった、と夢は内心ガッツポーズをした。

 

 ルリム・シャイコースの元でも得られなかった“安心”というものを、この保管庫では得られるのだ。

 

 床は硬いし、壁は無機質で面白みなんて一切ないが……この世界で目覚めてからのことを考えると天国のようなものだ。

 

「何を書くの?」

 

 そのような謎の感動に浸っていると、ティアが夢のノートを覗き込んでいた。

 

「う〜ん……そうだね、どうしようか。小説を書きたいと思ったからペンを取ってみたけど、肝心の内容を考えていなかったよ」

 

 しまったと言わんばかりに額にペンを当てて、夢は妄想の世界に浸る。

 

 恋愛、ファンタジー、ミステリー、SF、歴史小説……メジャーなジャンルだけでも、これだけあるのだ。

 

 そこから主人公の性格、ヒロインとの出会い方、そして敵やラストシーンへどう導くか。いいや、そもそもどのようなエンディングにするのか。

 ハッピーエンドか、バッドエンドか。

 

 ──と、そのように考えていた夢は、ふと一つのアイデアを思いつき、そのままノートに向けてペンを動かす。

 

 そのペンは止まることなく、夢の心の中の世界を描いてゆく。

 

「あら、何を書くのか決まったの?」

 

「まあね」

 

 ペンを動かし続けながら、夢はティアに向けて言った。

 

「この世界で目覚めてからのことを、このノートに記そうと思ってね

 

花見夢【『芸術(執筆)』80→4/決定的成功(クリティカル)

 

 そうして出来上がった小説は、試しに見せたティアに大好評だった。

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