普通の高校生たちによるクトゥルフのリプレイ 作:白痴イア
「は、ははっ……何を、言っているんだい……?」
本当に、何を言っているのだろうか。
人間だぞ? どこにも居ない? いや、そこら中にいるはずだ。
「だから、貴方以外の人間なんて居ないって」
「そん、な……ことが……」
「数万年は昔に、もう人類は滅びてるわよ」
意味が分からない。
「じゃあ、君は? 君が、いるじゃないか」
「私は、数万年前からずっと生きてるし……」
「何、それ……不老不死ってやつ? ……人間、なの?」
「長く生きていたら人間じゃないの?」
「数万年は流石に人間じゃないと思うよ……? 寿命という概念があってね」
「それなら、貴方も人間ではないことになるわね。今まで生きてるわけだし」
「……いや、それに関しては、まだ僕が滅ぶ前からずっと生きてたっていう可能性以外もある。タイムリープとか、ね。だから、僕は人間……人間……人間の定義ってなんだろうか……」
「貴方が人間かどうかは知らないけど、人類は滅んだ。それだけは知っておいた方がいいわ」
「……そうか」
だが、何故か僕は軽く受け入れられた。
少しだけ、自分でも驚いている。ここまであっさりと受け入れるなんて。
「って、あれ?」
そこで、ようやく夢は違和感に気がついた。
……身体を動かしても、痛みを感じない。
跳びはねてみる。身体に痛みは無い。
軽く歩いてみる。身体に痛みは無い。
深呼吸をする。身体に痛みは無い。
「……急にどうしたの? 頭がおかしくなった?」
鋭い言葉に刺された。心がとても痛い。
「いや、待て、待ってくれ。誤解だ。実は僕は、幼い頃から大病に悩まされていてね。だから、いつも動くと全身に痛みが奔っていたんだけど……それが無くなってて、びっくりしてたんだ」
「ふーん」
全く興味が無さそうなティアは、それだけ呟くと目を閉じた。
気にせず夢が辺りを見回す。内部は湿度・温度共にかなり低いようで、何かを保存しておくには丁度いい場所だと感じた。
少しだけ進んでみると、そこには白骨死体があった。
花見夢【『正気度ロール』78→35/成功】
幼い頃から大病によって『死』の隣にあった花見夢にとって、死体なんて驚くべき対象ではない。
花見夢【『目星』55→80/失敗】
「何もない……かな」
「いや、あるわよ。ほら、ちゃんと見なさい」
ティアにツッコまれてそちらを見ると、骸骨はビデオカメラとテープレコーダーを持っていた。
「ジャーナリスト、とかかな?」
そう思いながらも、手にとって見る。
流石に何万年も放置されていた物である為か、当然そのまま使用することはできなさそうだ。
硬く閉ざされた洞窟の中にあった事と、洞窟内に湿気が極端に少ない事から、部品がさびていないようだ。
ビデオカメラはどうやっても起動しそうにないが、テープレコーダーは修理できそうなのだが……。
「こういうの、詳しくないんだけどな」
花見夢【『機械修理』20→32/失敗】
試しにやってみたが、直すことは難しそうだ。
「もう、いいや。適当にやってやろ」
花見夢【『幸運』80→8/成功】
がチン、と上手くハマるように音がして、夢は驚く。
「あれ、ガチャガチャやってたら本当に直っちゃった……?」
「すごいわね、花見くん」
「うわぁ!?」
いつの間にか近くに来ていたティアが、こちらを覗き込んでいた。
「びっくりした……」
「あら、ごめんなさいね」
いや、大丈夫などと言いながら、テープレコーダーを流してみる。
すると、聞いたことの無い言葉が流れた。
『Iä! Shub-Niggurath! The Black Goat of the Woods with a Thousand Young!』
「ん? 何だ、これ。何て言ってるんだ……?」
「…………」
ティア【『クトゥルフ神話』98→74/成功】
「いあ、しゅぶ=にぐらす。森の黒山羊に千人の生贄を……と、言ってるわ」
「分かるんだ!? ……いや、つまりどういうことだよ」
日本語に翻訳されても、全く理解できなかった。
それにしても、これからどうすれば……ん?
「……ごめん、ちょっとお腹空いたんだけどさ、何か持ってない? おにぎりとか」
「何も無いわよ」
「そっか……じゃ、近くに飲食店とか」
「そんなもの無いわ。人類ごと滅びてる」
「そうだった……どうしよ」
あれ、今の僕はもしかして絶体絶命なのではないだろうか。
「……食料くらいはあるでしょ? 君が食べる用の。図々しくて申し訳ないんだけど、それを分けてくれないかな」
「無いわよ。私、何も食べなくても生きていけるもの」
「それは便利だね、そういえば不老不死だったね。お腹が空いた僕からすれば羨ましいというか……どうすれば……」
せっかく病が治ったというのに、餓死するなんて嫌すぎる。
そう考えていると、顎に手を添えて何かを考えていたティアが口を開いた。
「近くの森に川ならあるわよ。水しかないけど、まずはそれでいいかしら」
「ああ、うん。そこまで案内してもらってもいいかな?」
「構わないわ」
よし、と夢は内心でガッツポーズをした。
森ということは、最低でも植物はあるということだ。
最悪、それを食べればいい。
「こっちよ」
案内されるままに洞窟から出ると……そこには、滅びた世界があった。
あちらこちらに崩れた建物があり、緑は欠片も存在していなかった。
正に滅んだ世界といった風景をしている。
「……わーお」
そんな衝撃的な光景を前に、僕の口からはそれしか出なかった。
【キャラクターシート】
名前:ティア
性別:女 年齢:不明
HP11/11 MP15/15 SAN1/1
アイデア70 幸運60 知識55
STR14 CON12 POW12 DEX10 APP18 SIZ10 INT14 EDU11
【技能】
目星55 聞き耳37 図書館65 回避40 キック75 マーシャルアーツ51 応急手当40 跳躍75 クトゥルフ神話98
【所持品】
なし
↓ティアのイラスト
【挿絵表示】