普通の高校生たちによるクトゥルフのリプレイ   作:白痴イア

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第二話『Iä! Shub-Niggurath!』

「は、ははっ……何を、言っているんだい……?」

 

 本当に、何を言っているのだろうか。

 

 人間だぞ? どこにも居ない? いや、そこら中にいるはずだ。

 

「だから、貴方以外の人間なんて居ないって」

 

「そん、な……ことが……」

 

「数万年は昔に、もう人類は滅びてるわよ」

 

 意味が分からない。

 

「じゃあ、君は? 君が、いるじゃないか」

 

「私は、数万年前からずっと生きてるし……」

 

「何、それ……不老不死ってやつ? ……人間、なの?」

 

「長く生きていたら人間じゃないの?」

 

「数万年は流石に人間じゃないと思うよ……? 寿命という概念があってね」

 

「それなら、貴方も人間ではないことになるわね。今まで生きてるわけだし」

 

「……いや、それに関しては、まだ僕が滅ぶ前からずっと生きてたっていう可能性以外もある。タイムリープとか、ね。だから、僕は人間……人間……人間の定義ってなんだろうか……」

 

「貴方が人間かどうかは知らないけど、人類は滅んだ。それだけは知っておいた方がいいわ」

 

「……そうか」

 

 だが、何故か僕は軽く受け入れられた。

 

 少しだけ、自分でも驚いている。ここまであっさりと受け入れるなんて。

 

「って、あれ?」

 

 そこで、ようやく夢は違和感に気がついた。

 

 ……身体を動かしても、痛みを感じない。

 

 跳びはねてみる。身体に痛みは無い。

 

 軽く歩いてみる。身体に痛みは無い。

 

 深呼吸をする。身体に痛みは無い。

 

「……急にどうしたの? 頭がおかしくなった?」

 

 鋭い言葉に刺された。心がとても痛い。

 

「いや、待て、待ってくれ。誤解だ。実は僕は、幼い頃から大病に悩まされていてね。だから、いつも動くと全身に痛みが奔っていたんだけど……それが無くなってて、びっくりしてたんだ」

 

「ふーん」

 

 全く興味が無さそうなティアは、それだけ呟くと目を閉じた。

 

 気にせず夢が辺りを見回す。内部は湿度・温度共にかなり低いようで、何かを保存しておくには丁度いい場所だと感じた。

 

 少しだけ進んでみると、そこには白骨死体があった。

 

花見夢【『正気度ロール』78→35/成功】

 

 幼い頃から大病によって『死』の隣にあった花見夢にとって、死体なんて驚くべき対象ではない。

 

花見夢【『目星』55→80/失敗】

 

「何もない……かな」

 

「いや、あるわよ。ほら、ちゃんと見なさい」

 

 ティアにツッコまれてそちらを見ると、骸骨はビデオカメラとテープレコーダーを持っていた。

 

「ジャーナリスト、とかかな?」

 

 そう思いながらも、手にとって見る。

 

 流石に何万年も放置されていた物である為か、当然そのまま使用することはできなさそうだ。

 

 硬く閉ざされた洞窟の中にあった事と、洞窟内に湿気が極端に少ない事から、部品がさびていないようだ。

 ビデオカメラはどうやっても起動しそうにないが、テープレコーダーは修理できそうなのだが……。

 

「こういうの、詳しくないんだけどな」

 

花見夢【『機械修理』20→32/失敗】

 

 試しにやってみたが、直すことは難しそうだ。

 

「もう、いいや。適当にやってやろ」

 

花見夢【『幸運』80→8/成功】

 

 がチン、と上手くハマるように音がして、夢は驚く。

 

「あれ、ガチャガチャやってたら本当に直っちゃった……?」

 

「すごいわね、花見くん」

 

「うわぁ!?」

 

 いつの間にか近くに来ていたティアが、こちらを覗き込んでいた。

 

「びっくりした……」

 

「あら、ごめんなさいね」

 

 いや、大丈夫などと言いながら、テープレコーダーを流してみる。

 

 すると、聞いたことの無い言葉が流れた。

 

『Iä! Shub-Niggurath! The Black Goat of the Woods with a Thousand Young!』

 

「ん? 何だ、これ。何て言ってるんだ……?」

 

「…………」

 

ティア【『クトゥルフ神話』98→74/成功】

 

「いあ、しゅぶ=にぐらす。森の黒山羊に千人の生贄を……と、言ってるわ」

 

「分かるんだ!? ……いや、つまりどういうことだよ」

 

 日本語に翻訳されても、全く理解できなかった。

 

 それにしても、これからどうすれば……ん?

 

「……ごめん、ちょっとお腹空いたんだけどさ、何か持ってない? おにぎりとか」

 

「何も無いわよ」

 

「そっか……じゃ、近くに飲食店とか」

 

「そんなもの無いわ。人類ごと滅びてる」

 

「そうだった……どうしよ」

 

 あれ、今の僕はもしかして絶体絶命なのではないだろうか。

 

「……食料くらいはあるでしょ? 君が食べる用の。図々しくて申し訳ないんだけど、それを分けてくれないかな」

 

「無いわよ。私、何も食べなくても生きていけるもの」

 

「それは便利だね、そういえば不老不死だったね。お腹が空いた僕からすれば羨ましいというか……どうすれば……」

 

 せっかく病が治ったというのに、餓死するなんて嫌すぎる。

 

 そう考えていると、顎に手を添えて何かを考えていたティアが口を開いた。

 

「近くの森に川ならあるわよ。水しかないけど、まずはそれでいいかしら」

 

「ああ、うん。そこまで案内してもらってもいいかな?」

 

「構わないわ」

 

 よし、と夢は内心でガッツポーズをした。

 

 森ということは、最低でも植物はあるということだ。

 

 最悪、それを食べればいい。

 

「こっちよ」

 

 案内されるままに洞窟から出ると……そこには、滅びた世界があった。

 

 あちらこちらに崩れた建物があり、緑は欠片も存在していなかった。

 

 正に滅んだ世界といった風景をしている。

 

「……わーお」

 

 そんな衝撃的な光景を前に、僕の口からはそれしか出なかった。




【キャラクターシート】
 名前:ティア
 性別:女 年齢:不明
 HP11/11 MP15/15 SAN1/1
 アイデア70 幸運60 知識55
 STR14 CON12 POW12 DEX10 APP18 SIZ10 INT14 EDU11
【技能】
 目星55 聞き耳37 図書館65 回避40 キック75 マーシャルアーツ51 応急手当40 跳躍75 クトゥルフ神話98
【所持品】
 なし

↓ティアのイラスト
【挿絵表示】
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