SCP機密学園──確保、収容、保護、あと時々破壊──   作:nikupower

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暫定協力

さて、ここで明記しておくべきことが一つだけある。不幸を嘆きたいわけでもない、彼女らとやりあうことのバカらしさを強調したいわけでもない。

我々は、小鳥遊ホシノと遭遇()()()()()

 

”やあ、君たちは昨日の……”

「手伝う気がないならさっさと帰りなさいよ!」

「言われなくとも帰るさ!」

 

セリカの発言にβがそう返した。まさしく売り言葉に買い言葉といった様相だが、それよりもだ。

 

「ベータ、静かにしろ」

「ボス?しかし……」

 

ばつの悪そうな顔で言い返すβに、私はきつい口調で返す。

 

「静かにしろと言っている、私は先生と話したい」

「らす……、しかし、一体何を」

 

βが困惑の声を上げると、アビドス高校の生徒も口々に「ん、さっさと帰る」「何も話すことなんてないわよっ」などと口撃をしてきた。メガネの子がおろおろとなだめようとしているし、先生も”私は別に……”などと困り顔だ。

言い返したい気分だが、推察が正しければ悠長にしている余裕はまったくもってない。

 

「小鳥遊ホシノはどこだ?」

「っ……!」

”……やっぱり気づくよね”

 

アビドス生の面々は明らかに顔色を変え、先生すらも苦虫を嚙み潰したような表情になった。最悪だ。

 

「あの、先輩、どういうことでしょうか……」

「そうですよボス、まるで話が見えません」

 

部下の疑問気な表情に応えるべく、私は口を開いた。

 

「この緊急時にあの小鳥遊ホシノが居ないのなら失踪一択だ、留守にするような用事もあるまい。

誘拐ではない、倒された? そんなはずはない」

 

ヒントはカイザーの襲撃、なぜこのタイミングで襲撃をかけた? それもあの程度の、小鳥遊ホシノを相手にするには圧倒的に足りない通常兵力で。答えは一つ。

 

「小鳥遊ホシノは借金を交換条件にカイザーに身売り、利用価値はいくらでも思いつく。そしてそれを知ったカイザーは襲撃を決行した。で、あってるか?」

「……そうよ」

 

絞りだしたようなセリカの声は、震えていた。

 

「ホシノ先輩は、借金を肩代わりする代わりにカイザーPMCに無期限雇用されたの」

「そうか、君らの先輩は随分と向こう見ずだな」

 

思わずそう口をついて出た。しまったと思った時には手遅れ、場の雰囲気は一気に険悪モードだ。ならば開き直るしかあるまい。

 

「どういう意味よっ!」

「……先輩を馬鹿にするなら」

「許さないか? 許しをべきなのは我々か? それとも図らずとも生贄を差し出した──

”その辺にしておいてあげてくれないかな”

──ああ、すまない先生、少々長話が過ぎたようだ」

 

ああそうだ、我々の目的はこんなことではなかったはずだ。とっとと帰還しなければ。

 

「先輩、その……」

「何だ、ガンマ」

 

γが耳打ちをしてきた。なるほど、中々ちゃんと考えたようだ。方向性が規制の目をかいくぐることに向いているのはどう評価したものか困るが、まぁ、この際目をつむろう。

 

「……我々は帰還する」

「でしょうね」

「その際、不明武装勢力に火力を投射し退路を確保する。付いてきたければ好きにしろ」

「え」

 

γが小さくありがとうございますといい、βが愕然とした表情を浮かべる。それはアビドス生の面々も同じだった。

 

「何よそれ、手伝わないんじゃなかったの?」

「事情というものがあるのだよ、こちらにも」

 

そう言い残すと、駆け足で乗車しドリフトしつつ玄関から抜け出す。

 

「早くしろよー、遅れても知らねえぞー」

 

煽りめいた口調でβがそうヤジを飛ばした。慌てて駆け出しすっころんだセリカを見て、ふんと鼻を鳴らしている。

 

「さて、せいぜい派手にぶっ放そう……と?」

 

見知らぬ回線からの着信、念の為警戒しつつ開く、と。

 

『助けていただき、ありがとうございます』

「えーっと、君は確か……奥空、奥空アヤネか」

 

画面に映るメガネの少女、アビドスの頭脳と言い換えてもいいだろう彼女がビデオ通話を飛ばしてきたのだ。

 

「例には及ばん、言うなら後ろのガンマに言ってくれ」

 

後ろが少しにぎやかになったが、気にしないことにする。

 

『面白い人ですね。……でも、悪い人たちではなさそうです』

「よく見た方がいいっすよ、このいかついつがっ」

 

後ろから首を伸ばしたβを裏拳で黙らせる。アヤネはその様子を見て少し苦笑、いや、微笑み、それから言葉をつづけた。

 

『事情があるのはみんな同じですから』

「大人だな、君は」

 

あるいは、そうならざるを得なかったのか。せめて生来の体質であることを望もう。

 

「それより、せっかくの機会だ」

 

詳しい事情を聴きたい、とつなげると、彼女は少し悩んだようなそぶりを見せ、しかし最終的には快く答えてくれた。

が、その内容がなかなかの物である。

 

「……つまり、カイザーの基地を襲撃して借金が3000倍に膨れ上がり、返せなくなって小鳥遊ホシノはPMCに渡り、その隙にこうして絶賛軍事侵攻中と」

『はい……』

 

こめかみを摘まむ、1、2、3、よし。

 

「……scp-003-kvについて本部に緊急連絡を回す、ベータ、ガンマはアビドス高校に同行しろ」

『え』

「ふぇっ!?」

「げっ」

 

私の発言に三者三様の反応を見せるが、驚きはおおむね共通しているとみていいだろう。

 

「な、なんでっすか!? ボス、殺されちゃいますって」

『ええっと、その、多分皆さん歓迎はされないかと……でも、できる限り抑えます、けど……』

 

大げさに騒ぐγと、悩ましげな表情をするアヤネ。無理もないだろうとは思う、が、こうなっては無理をするしかあるまい。天秤の片方に乗っているカイザーとscp-003-kv(リスク)はあまりにも重い。

 

「無茶を言っているのは重々承知だが、しかし、君たちが小鳥遊ホシノ救出に行くことはそれだけ重大な事案なんだ」

「そうっすか?」

 

γの頭を殴りたい衝動にかられたが、カイザー兵士をダース単位で轢殺して正気を保つ。

 

「小鳥遊ホシノが正気を失っていたら、カイザーが秘密兵器を持ち出して来たら、誰も把握していなかった脅威存在を呼び起こしてしまったら……アビドスとカイザーはそういう想像が山のようにできるような存在、端的に言えば地雷原だ」

『そういうことであれば、こちらとしても非常時に対応してくれる助っ人がいるのは心強いですけど……皆さんはいいんですか?』

 

バックミラをちらりと見る。無表情で平静を保っているように見えるγ、顔を真っ青にしてぶんぶんと手を振っているβ。うん、大丈夫そうだ。

 

「大丈夫だろう、私が保証する」

『ならいいんですけど……』

 

後ろから抗議の声が飛んできたが、間一髪でミュートにして難を逃れた。

 

「無理っす! いやあの連中と仲良くできる気はしませんし、何より私にそんな化け物みたいなの相手にできませんって!!」

「無理じゃないするんだ、ああ、化け物は撮影データを送ってくれればそれでOKだ」

「マジっすか」

「ああ、あとは好きなだけ伸びてていいぞ」

 

βが声にならない声を上げてシートに突っ伏した。

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