奥空アヤネの先輩と先輩でない男   作:Bar_00

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なんでこの一話に原作キャラが居ないのか…?さぁ……?


「最善を望む者は、最悪を避けることさえできない。」
- フリードリヒ・ニーチェ『人間的、あまりに人間的』



3.「マーケットガード」

 

 

 

 

マーケットガードの同僚たちの一団、小隊ではあるが、一番乗りでやって来た。荒くれ者のという割には、その装備は整えられ、同一のものだ。銃器は”十分に”改造されている。

 

その暴力性は洗練されたものだ。走ってやって来た態度は官僚然としている。驕りはない。パトロール小隊は戦場を見て、揃って足を止めた。

 

戦場についたのだ。彼らが最も早く戦場についたとは思っていなかった。アプリは単独のガードが突っ込んでいるのが見えたし、それが彼であることを知っていた。そしてその現状も予測できていた。

 

彼らは、死屍累々とも呼ぶべき不良達を見下した。物理的にも、まぁ当然、精神的にも。雨が降っている。コンクリートに張り付いたタイヤの泥は彼女らの不良としての一張羅を汚している。

 

ガード達は溜息をついた。なんと汚れていることか。まぁ、ヴァルキューレに差し出せばそれなりに金になるだろう。

 

優秀な同僚であるジョン•ドゥはびしょ濡れだが、一人、軒先に立っている。タバコを吹かしている。雨で人が寄りつかない店の店主は気まずそうにガード達から目を逸らした。

 

ジョンは不良たちを指差した。いつも通り、”協力してぶちのめしたことにしてやるし、賞金も分けてやるから、代わりに運べ”の意味だ。ガード集団の、階級制で一番高い奴は右腕を彼にまっすぐに伸ばし、グッドマークを作った。

 

ジョンもグッドマークを返した。シュールな姿勢だ。彼はそれほど悪い人間ではない。

 

さぁ、仕事の時間だ。

 

 


 

 

「まったく、逆らう相手くらい選んだらどうなんだよ。」

 

戦闘用に換装された機体の機械人間は、起きあがって反抗しようとしていたリーダー格を義足で抑えた。

 

その屈辱的な行為を具現化したのが、自身を打ち倒した者じゃないことにリーダーは憤慨してジタバタした。

 

手錠はしてある。だが、破るかもしれない。油断はしない。

 

その行為は虎の威を借る行為に見えた。実際、彼ら他のマーケットガードはリーダー格に何もしていない。仲間であるジョン•ドゥがぶちのめした不良達を回収しに来ただけだった。

 

しかし、それは親切心だった。

 

「俺たちはさ、」半ば起きあがろうとするリーダーに対して、機械人間は目線を合わせるためにしゃがんでやった。「グレーな商売してんの。」

 

「マーケットガードは治安維持だけではなく、マーケットを真っ黒にしない為に活動してるんだよね。マーケットが摘発されるのは全体の不利益になるわけ。ここは犯罪者の巣窟だけど、アジトそのものではないわけ。分かるか?」

 

リーダー格は反抗的に睨み付けた。

 

機械人間はその首根っこを掴んだ。そのまま、少し空中に浮かせる。足の力が入っていない故に重力が彼女を首絞める。

 

「だから臓器売買もちゃんと摘発するし、指名手配犯の”部品”を売買したりしないの。お前達はちゃんと纏めてヴァルキューレに突き出してやるよ。仲間とも離さないさ。」

 

「分かるか?俺たちはとても親切なんだ。」

 

知るかよ、とまだ反抗的な目だ。

 

「虎の威を借る狐だか俺たちをどう捉えるか知らんが、喧嘩を売る相手は選べよ。深く考えず生きるなら、」

 

彼は放してやった。咳き込む音がしている間に、ライフルを構える。不良リーダーの意識はすぐにそのライフルに集中し───、

 

「その内、すぐ死ぬぞ。」

 

なんてこともなく、その頭は一マガジン分銃弾をぶち込まれて沈黙した。勢いよく倒れるが、血も出ていないし、死んではいないだろう。後で死ぬほど痛むだろうが。

 

 


 

 

ある人間が、最も上位の権限を持つ代官様に訊いた。「ガードの力で、マーケットを完全に健全化することができないのか?」

 

「それが可能性の質問なら、Yesだ。俺たち(マーケットガード)はできるように設計されている。」

 

彼女は一息置いた。

 

「それが提案なら、答えはNoだ。やらない。そこまですると、ここは自治区になっちまうし、俺たちは外部組織の認識として、危険地帯を“最悪にしない”便利な走狗という立場から逸脱する。」

 

ガードが目の上のタンコブなのに処理されないのは強大な軍事力だけでなく、外部の公的学園組織が彼らを維持している。

 

「ガードは最善を目的とする。最高を目指さない。完全に正しい組織として、理論的にはマーケットの統治が可能だが、やらない。完全な統治はグレーなマーケットが最も嫌うことだ。やれば組織は崩れ、マーケットは最悪に逆戻りだろうよ。」

 

「ま、これは全部”受け売り”なんだがな。」

 

彼女は名目上のお代官様なのだ。真の代官様は、組織そのものだ。彼女は笑った。ガードが有する一つの駒でしかないのだ。どいつもこいつも、彼女に擦り寄るが、彼女はプロトコルに則って、ハンコを押すことしかできない。

 

 


 

 

お代官様はその言葉に笑いました。

 

「彼を私のものにしたいだって?貴方が?」

 

あれが制御できると思っているなら、とんだお笑いだ。あれは俺の部下というわけじゃないぞ。誰の部下でもない。ジョン•ドゥという人間は誰にも味方しない。

 

暴れ馬が運良く草をむしっているから俺はソファでふんぞり返っているんだ。知ってるのはカタログスペックだけだろう?

 

あれは天才の類だ。神秘(ヘイロー)では測れない人間だ。ヘイローがないというハンディキャップを埋め得る暴力と天才性の塊だ。彼は一年か二年前に当然やって来て、マーケットに秩序を生み出した。

 

あれは俺たちには下ろせない存在だ。カイザー理事。君もだ。

 

ヴァルキューレの「狂犬」尾形カンナとタメを張る強さ。破壊力。知恵。法。

 

マーケットガードの組織のあり方は彼が改革した結果だ。既存の物は、ただただ既存勢力の利益を保護するためのものだった。保守派はみなみな潰された。病院送りのうちに、全てが変わった。

 

反対する勢力は全て、彼一人が潰した。臓器売買、身体部品売買。人身売買に児童誘拐、違法薬物。ちょっと前まではありとある犯罪に満ちていた。

 

深い深い闇の中で、彼はその濃淡をリセットした。”無秩序の下限”を作ったのだ。許容できる悪と「絶対に許されない悪」。ガードは後者を潰すのだ。

 

そして、彼らは警察権をマーケットに見せつけるように設計されている。

 

目の前で行われる軽犯罪?市民がいなければ見逃すさ。対応するのは気分次第だ。だが、市民が見ているなら潰す。

 

暴動?産業に害がないなら好きにすればいい。外するなら潰す。不良?学校をサボって?好きにしてもいい。一線を越えたら潰す。

 

官僚と法と軍隊。外交関係。官僚的対応の構築。ガードの合法資本化。彼はマーケットの長ではないし、外交官でも、警察でも、軍隊でもない。

 

彼はマーケットガードの新しい規則と体制を明文化した。そして少し外部勢力と話をした。それだけだ。彼があぁしろと言ったことはない。ただ、”潰せ”と言い続け、それを成功させて来た。

 

結果として、マーケットの経済はそれなりに健全になり、経済成長率とやらは高まったらしい。知る人ぞ知る人間だ。マーケットの一般的な住民からすれば無名だが。彼はそのリーダーの立場を降りた。理解できないことにね。次代が俺だ。

 

当時を知らない人間は、彼を無力な一般人だと捉える。ほとんどの人間が彼を舐め腐る。彼は一線を越えたら潰す、そんなことを永遠と繰り返している。彼はミステリアスだ。

 

彼はただ、長く続く官僚的組織を作るのが上手いのだ。ひょっとすると、どこかの学園で政治官僚でも勤めていたのかもしれない。

 

この営利組織は長く続くだろうし、彼がいなくなったとしても続くだろう。どのヤクザよりも強大だ。彼らのシマすら監視下に置いている。

 

王すらいない、指揮官と指導者は容易にすげ変わる強固な官僚システムだ。彼は指導者を名乗っていない。プロトコル的に見れば、全員が一駒だ。柔軟に対応できるプロトコルが彼らを動かし続ける。

 

誇りや仁義ではなく、報酬と賞金にプラスして、サラリーマン的給料が彼らを結びつけている。複数の信頼できる事業も立ち上げている。

 

対する重犯罪組織はどうだ?幹部が重要で、怯えて隠れている。表立った商売があるなら、マーケットガードが視察にやってくる。部下の構成員がガードに多額の報酬で買収されるかもしれない。スパイはどこまで入り込んでいる?どこに耳があるか分からない。

 

組織的に大量犯罪を生み出せば、組織の人的リソースが足りなくてパンクする?プロトコルが想定してないと思うか?大量に傭兵を雇い、時間を稼ぐ間にソレを潰せる。

 

証拠が無いから捕まえられない?警察じゃないんだ。公務員しぐさはしない。ソイツのアジトにガードは入らない。正体不明の強盗団がお家にやってくる。

 

ガードを買収する?一般的にガードは職業軍人だ。職務中は常に(身元)を隠しているし、ボディカメラをつけなきゃいけない。

 

それを確認するガード情報部の連中を皆買収できるのか?そして、買収した人間に私たちより安定した給料を与えられるのか?

 

さぁ、その悪徳貴族の政体はどうやって保つ?

 

誰がこの組織を潰せよう?そうしようとしても、外の学園や警察学校からもいつでも援護射撃がやってくるだろう。マーケットガードは代替不可能の傑作だ。こんな危険地帯じゃ、リボルバーがいっぱいのお巡りさんじゃあ守れない。そんな所の治安を維持している。それが回り回って自分達の利益になっている。

 

替えが効くのか?いいや、効かないね。

 

俺たちみたいのは、そんなエリートの尾っぽを踏まないように生きるのさ。真に優秀な人間についていけば食っていける。これこそが上手な人生だ。

 

馬鹿にするなって?理事、君ほど愚かな人間は見たことないぜ。君は彼ほど天才じゃないし、君の努力は彼に敵わない。

 

図星か?

 

…別にいいぜ。君の武器供給がなくとも俺たちは困らない。カイザーの進出がまるでできていない?それは君たちの責任だろ。労働法の文面はよく見たのか?

 

まぁ、彼にお話はつけよう。彼は傭兵だからね。知人として話ぐらいはつけよう。

 

 


 

 

捕縛の後で、機械人間は五本の指を出して計算し始めた。彼は営利企業に属するのだ。彼らを捕まえればボーナスだ。

 

「情報によるとコイツらの賞金が100万円で、手配代金の1/2がマーケットガードに入って、1/4が単独鎮圧者に入って、俺たち5人は1/4を山分け。」

 

彼は指を折った。

 

「…ボーナスが5万入るから許してやるか。」

 

彼は不良をグルグル巻きにしないことを決めた。手錠だけで良いか。

 

 






「資本主義社会における労働者は、単なる交換可能な商品である。」
- カール・マルクス『資本論』より







お代官様:
コードネーム”オフィサー”。現ガードの名目上のリーダー。元「ホームレスの王」の俺っ子生徒。デカいサングラスを掛けて顔を隠している。美少女。

武力は弱いが頭脳明晰。かつて不良だった過去を持つが、ジョン・ドゥの恐怖をある人物の護衛として経験して逃げ出した。そしてホームレスから成り上がった。

改革中のガードはホームレスグループを”企業的に”吸収し、彼女をスカウトした。現在の使命は、マーケットガード全員に健康で文化的な最低限度の生活を送らせることを努力目標としている。

ジョンはなんかいうことを聞く戦略兵器だと思ってる。普通に怖いが、なんとなく地雷は分かるので大丈夫。地雷を踏まなきゃ問題ない。多分…あれは言語が通じる人間だよな?

ジョン•ドゥ:
現在の経営に全く携わってない。ガードの駒として扱われている。何でここまで組織作って一兵士に戻ったんですか……?何者…?

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