この話を端的に纏めると、ツンデレのツンの部分です。オリジナル男子生徒のツンは誰得か?希望が見えて来て元気になったアヤネが曇るので俺得です。デレの方は十話でやります。
ノックノック。返事はない。ノックノック。返事はない。
404号室のドアはマスターキーによって開かれた。
ノブを回し、ドアが放たれると窓から風が吹き込んだ。息を呑むような突風だ。電気は点いていない。ノノミの髪は揺れ、目は沈む夕の日に眩んだ。
ネフティスホテルの壁はどこまでも白く、金属色の窓枠に縁どられる塗りつぶされた紅い空の影響下にあった。部屋は赤く染まり、ノノミと窓の直線状に居る人物の表情は射し入る逆光で伺い見ることはできない。
「ルームサービスは頼んでいないはずだが。」
白いベットにはナイロン製の黒い手提げカバンが無造作に置かれている。他に部屋に散乱する要素は無い。目が慣れる。黒い人影は拳銃をこちらに向けている。こちらが来るのを予期していたらしい。
「十六夜ノノミ、だったか。どうしてここに?」
「まぁ…あまり使いたくはなかったのですが、”ネフティスグループ”の力ですよ。
ネフティスグループ。過去にはカイザーと鎬を削った一大企業。今や死に体だが、
カイザー理事から見せられた資料に載っていたな。十六夜ノノミはネフティスグループの令嬢だったか。入ってきたが、護衛は無い。戦場感覚がささやいた。外に何人か控えている。しかし、合図があってから目標を捉え銃撃するまで5秒は掛かる。制圧が目標なら、もっとだ。
「確かに、マーケットのホテル産業はネフティス一強だ。評価も高い。だが、こんな形に裏切られることになるとは。」
一瞬目を逸らし、窓を見る。カーテンはまだ閉められていない。
泊まっているのが10階。地面まで100フィートはあるだろう。棺桶16個分。30m。
「それは私の我儘ですね〜親に少し無理を言いました。」
目先を戻す。十六夜ノノミの顔には罪悪があるように見えた。三塁で生まれた自覚があるらしい。
「信用は大事だ。客商売にはな。後輩の過去を取り戻しにきたのだろう?アビドス生がホテルで暴れ回るなど、よく親が許可したものだ。それで、
十六夜ノノミはあいも変わらず、その笑みを維持していた。「会いましたし、状況はある程度分かってるつもりですよ?」
「…論理的な整合性が取れてないと思うが。」
「ふふ、鏡を粉々に割ってしまった方には言われたくないですね〜」「…賠償したが。」「お陰で特定が早かったです⭐︎」「…墓穴を掘ったか。」「カッコつけても、やらかしたコトは変わりませんよ〜」
ジョーク半分、威圧半分に感じられた。「…特段の用がないのなら、俺はホテルをチェックアウトする。このホテルは
「向こうにアヤネちゃん達は居ませんよ。」
「…理解できない。なら、誰がいる?」
「一応、グループの令嬢ですからね。執事さんとか、その立場で動くと一緒に行かないといけません。」
「…なら、ネフティスグループのご令嬢として客をもてなす為に一人でやって来たとでも言うのか?」
「えぇ、そうですよ。前地リクさん?一緒に来たいと言われて断れる気がしませんでしたし、アヤネちゃんだとどうにも上手く行かない気がしましたので。独断です。一緒にディナーでもいかがですか?」
上手くいく、とは何を指しているのか。何を考えているのか分からない。
「…このホテルは最悪だ。評価は⭐︎1。顧客アンケートは終いでいいか?チェックアウトすると言ってるだろう。」
彼はこちらを見据えたまま、ベットの横にある電話で内線につなぐ。コール音。
「宿泊代金は私のお小遣いで支払っておきました。少なくとも一週間分は。仮宿にはなるでしょうか。もっとグレードの良いお部屋も用意できますよ。」
…こういう人間は、本当に借りを作るのが上手いんだ。面白くはない礼儀作法だ。タダより高いものは無い。財布を出し、タンスの上に7日分の宿泊料金を置いた。
「プロとして、"借り"は作らないようにしている。乞食の貧乏人だと思われるのは不愉快だ。」
「えぇ。可愛い後輩のために来てますから〜。なんとしても引き留めようとしているんです。私に何かできませんでしょうか?」
「…俺は物質的豊かさに興味はない。」
「精神的豊かさは物質的豊かさに依存してると考えてるのですが、後輩関係者割引きでタダなので受け取ってもらえると嬉しいですね。」
「笑えるな、ここはいつからペットシェルターになったんだ?」
ジョン・ドゥはグロックを下げた。信頼の証ではない。その目の焦点は半分はノノミに向けられ、25%はドアの後ろに控えているだろう不可視の部隊に、そして残りは
十六夜ノノミがまた一歩足を出した。ジョン•ドゥはそれなり広い部屋で窓の方へ一歩下がった。数歩進まれ、…最後の一線を超えなかった。
ノノミも立ち止まり、ある程度の限界点を見極めているようだった。向く方向を変えた。
彼女は鼻唄を歌いながら窓際のテーブルに近づき、備え付けの電気ポットに触れた。「まぁ、少しゆっくりお話しをしましょう。」その側の小さな冷蔵庫を開け、備えられたペットボトルをポットに開けた。
「ティータイムに付き合う気はない。」
彼女は優雅に無視した。
「ここは静かで良いですね」
「ブラックマーケットのホテルだ。騒音対策だけは本気だ。人が消えるには
「そうですか」
否定も肯定もしない相槌だった。ノノミは聖母のような笑みで彼の威圧を受け流し、そのまま言葉を続ける。
「そういえば、アヤネちゃんたちは無事ですよ。あの後、誰かに捕まってもいません」
ジョン•ドゥは頭を振った。何の話だ。まさか、アレのことを言及しているのか?
「……そんなことを言う為にわざわざ来たのか?」
まさか、あの警告のことを言っているのか?
シャーレの先生をあの時見逃したのは連邦生徒会との対決を避ける為だ。アビドス生を見逃したのは、そのオマケだ。面倒だったからだ。捕まえても面倒だったからだ。
それを、心配と捉えているのか?アビドスへの情だとでも少しでも思っているのか?
「はい、心配してくれたのでそのお礼も兼ねて。」
あぁ、なんて傲慢なんだ。
『随想録』
「あれは心配じゃない。面倒だから忠告しただけだ。断じて、一片たりとも情は無い。少しでもそう感じたなら、お前は幼稚園から”英才教育”とやらを受け直した方がいい。」
それまでの皮肉気な冷静沈着な声色ではなかった。皮肉はより直接的な批判として部屋に響いた。ノノミは何らかの地雷を踏んだことに気づいた。何が不快だったのか、検討が付かなかった。
「えぇと、その、何か気に障りましたか?気分を害する意図はなかったんですが…」
『自由論』
ジョンは一歩下がり、開け放たれた窓枠に手を掛ける。彼は窓の外を見て、言語化を躊躇ったように見えた。
「…これ以上、話す気はない。奥空アヤネにもう一度伝えろ。二度と関わるなと。」
頭から落ちる。少しして、ノノミは窓から顔を出す。焦った顔だ。驚きに満ちた顔だ。
「30mはありますよ!?」
「断る。さぁ、種も仕掛けもある───」
ノノミは部屋の外に大声を掛ける。落下後の応急処置を完璧にする為に。それとも、何か策があるのか?ノノミは窓枠越しに落下するジョン•ドゥと目を合わせた。何の感情も読み取れなかった。いや、あらゆる感情が噴出していた。
重力加速度、秒速9.8m。どんどんと加速していく。そうして、そうして見えなくなる。呟きが聞こえる。
「───イリュージョンだ。」
夜の闇は何もかも覆い隠す。どこにトリックがあったのか、彼は何時間探してもどこにも見つからない。ポッドの水が沸く。それに茶っ葉が入れられる事はない。
捜索は少しして打ち切られた。ホテル周辺にホテルは彼をチェックアウトとした。
これ以降、ノノミにできる事はない。
何を間違えた?ノノミは頭をそのまま、枕に近づけた。彼は、心配されること自体を嫌がっている?彼は“弱さを見られること”を嫌っている?
兎も角、私は彼が大事にしている“距離”を越えてしまった。これは明確に私のミスだ。
……アヤネちゃんに何て言いましょうか。
ジョン: イリュージョンした。普通に生きてる。アイデンティティに触れると爆発するマインスイーパーを会話相手に強制する地雷男。
十六夜ノノミはプライバシーを侵害し、第三者ズラした後に、自らのことを勝手に推測して規定したため嫌いになった。悪気はなかったのでイリュージョンに留めた。面倒臭い自覚はある。
ノノミ: 地雷を三つぐらい踏み込んだ。イリュージョンや地雷が何かまるで分からないので罪悪感で悪夢に魘されることになる。
筆者としては、そんなとこに地雷が埋まってるとは分かるわけないのでジョンが全面的に悪いと思う。
いつまでも”過去”から逃げ続けられると思っているのか?