立香 1/2
パテをコネコネ、スパチュラでモリモリ、鑢でゴリゴリ。
生前は何か造形物を作る際、粘土を使っていたが現代は便利になったものだ。なにせ欲しい性質になるまで土を混ぜてこね回す必要がない。
土器なんて簡単に作れるやろ。あんなもん土こねて焼くだけやん、なんて思って盛大にコケたのは苦い思い出だ。そもそも乾かしてる間に割れるし、焼いても割れるし、ちょっと使っても割れる。素材が悪い、加工が悪い、初期不良がひどいの三重苦。多分ダメなところを改善して5回くらいやり直した覚えがある。
そしてオマケに成功させてから、次を作る際に前回の土の再現から始まって再び四苦八苦。それに比べれば品質は均等、加熱時間も機械に任せて自由自在の現代は楽になったといえる。
「あなた、器用ね」
「粘土細工には多少の覚えがあるので」
とある日の昼下がり。メディアさんと二人で顔を突き合わせながら造形作業に勤しんでいた。
ことの始まりは食堂で趣味の話になった際、私に趣味らしい趣味がないと発覚したのが発端だ。休日の趣味はボランティアといえるほど私は善人ではなく、タスクが消えて時間が空けば無限に惰眠を貪れる人種。惰眠を貪るのが趣味と言い張れなくもないのだが、それはそれで何かが違う。
つまり私に趣味と呼べそうな趣味、ないのでは?
『それなら私の趣味にちょっと付き合いなさいよ』
そんなメディアさんの気遣いを無碍にするわけにもいかず、こうして工作室で二人仲良く粘土細工と洒落こむこととなった。
裏切りの魔女なんて言われる彼女だが、その性根は思いのほか善性に寄っている。魔術師らしく外道な手段もカードとして持っているタイプだが、無暗矢鱈とそれを切らない倫理道徳を有しているなら仲良くするのに不都合はない。むしろ付き合いやすい部類だ。
そんなこんなで、二人してフィギュア制作に精を出しているというわけである。
細かな造形というのは初めての経験だが、素材の良さもあってサクサク進む。
大まかな人型を形成し……そして、目の前のメディアさんに視線を向けた。
「光栄だけど、モデルはほかの誰かにしてちょうだい。私はそういった柄じゃないわ」
視線に気づいたメディアさんは手元のねんどろいどアルトリアに視線を落としたままそう言った。
ところで関係ないのですが、自室にあるアルトリア含めてそれ何体目ですか……?
視線を手元に戻し、ヒト型の素体を前に考え込む。
いざ用途が明確であるなら、その用途に寄せた形にすればいい。しかしそうでないと、途端に選択肢が増えすぎて収拾がつかなくなる。
何を作ろうか。腕を組み頭の中で候補を挙げていくが、どれもピンとこない。
「……少しリフレッシュしてきます」
「そうね、行き詰ったまま考えても仕方ないでしょうし」
そんなこんな。
カルデアの廊下で出会ったサーヴァントたちとの会話でインスピレーションを得ようと目論んだわけである。
ケース1、通りすがりの女の子。
『誰をフィギュアのモデルになんてそんなもの、安珍様以外ありませんよ。実在の人物を模すことに抵抗のある方もいらっしゃるとは伺いますが、そうでなければ是非とも安珍様を推薦させていただきます』
ケース2、厨房の弓兵。
『なるほど、大方理解はしたがそれは私が口を出すべきものでもないな。ちょうどいい機会だ、自分の欲するものを自覚するのもいいのではないか? なに、承認欲求? そう思うならギリシャの神々を思い返すといい、それに比べれば無いも同然だろう』
ケース3、金ぴか。
『そんなもの我をモデルに作ればよかろう。それ以外に誰がある』
ケース4、小動物。
『フォーゥ?』
ケース5、海賊。
『拙者としてはやっぱりフィギュアってのは美少女だと思うんですよ。イケてる野郎のフィギュアも悪くはないんですがね、ここカルデアじゃん? その手のイケてる野郎が三次で歩いてるこの環境、だったらそっち見ればいいじゃーん? って話だと思うんですよ拙者としては。その分、美少女フィギュアはわかりやすい可愛いが脳にスゥーっと染み込むじゃない? いやいや待ちなさいよお嬢さん、結論を急いじゃいけねえ。確かに美女美少女もカルデアには多い、もちろんお嬢さんも可愛い。けどね拙者は作り物からしか得られない栄養もあると声を大にして言わせてほしい。作り物、偽物だっていいじゃない、この世に造花より奇麗な花はないのよ。天然ものじゃないからこそ、そのモデルの"良さ"を前面に出したデフォルメは作り物でしか表現できない。と、拙者は思うワケ。お嬢さんのその近未来メカニカルボディもそういったデフォルメの結果だろうし、それでもやっぱり可愛いじゃない? つまり拙者が言いたいのは――……』
『そう! そんな可愛いお嬢さんもメカクレになればさらに可愛さがアップ! 君もメカクレにならないか!?』
『……ちょっとバーソロミュー氏ぃ、まだ拙者が喋ってる最中なんですけどぉー』
帰りがけのオマケ。
『そりゃお前、ヘラクレスだろ。見ろよこの雄大な立ち姿、これを完全に表現しきるのが真の芸術ってやつだと俺は思うね。やっぱりヘラクレスは何においても最高なんだよ、わかるだろ? ……わかれよ!』
『■■、■■■■■■■……』
そんな風に目についた相手に助言を乞い、場所は再び工作室へ。さて、忘れないうちにサクサク進めてしまおう。
「というわけで、出来上がったものがこちらとなります」
「だいぶ……大きいわね。しかもなんだか見たことが無いはずなのに見たことある気がする……なによこれ」
それは工作室の一角を占有し、それなりに豊満に盛られた胸を張った立ち姿を披露していた。
「俺がモデルって聞いてたんだけどこの女の子は一体……」
モデルにしたというのに、当人に知らせないのはいかがなものかと呼びつけられたマスターは困惑した様子でそれに視線を向けている。
流石にヘラクレス要素を入れるのは難しかったので単純にサイズを大きくしたのだが、そのせいで割とアカン雰囲気を醸しているのはご愛敬。
「1/2スケール女性マスターメカクレバージョン英雄王フォーム。属性欲張りセットです」
「……なんて?」
「1/2スケール女性マスターメカクレバージョン英雄王フォーム。属性欲張りセットです」
「いや、わかった。けどわかりたくない! どうして!?」
いやね、確かに私もちょっとやっちまったなとは思いましたよ。でもね、みんなが望んだから……。*1
「なぜかその説明で何となく理解できるのかわからない。自分が怖い」
「わかるわ。言っていることはおかしいのにこの女の子、マスターっぽいもの」
メディアさんと一緒になってひそひそ。
しかし、ぶっちゃけ問題はそこではない。このままマスターに押し付けてしまおうかと思ったのだが、健全な青年の私室にこのサイズの美少女フィギュアは絵面がよろしくない気がする。
「作ったのはいいのですが、これどうしましょう?」
「まさかのノープラン。しかも絶妙にクオリティ高いから壊すのも忍びないんだけど……仕方ない、あまりスペースに余裕はないけど折角だから」
結局マスター預かりとなり、最終的に礼装保管庫に突っ込まれた。
気遣いはありがたいけれど、そんなもの突っ込んでるからスペース圧迫するんだと思うんですよ。
エミュ力の低下がひどすぎてどうにも進まず、どうも集中力が続かなくなってしまって同じ話を書いてられず、実は裏で10話くらい別の話並列で書いているのですが全然完成しない。そんな状態ですが私は元気
そんな状態でもいろいろ書きたい話ができてしまって収拾がつかない、そんなこの頃です。ヒロアカで筋肉個性から寄生獣のクロスオーバーとか、フリーレンで人を食ったような魔族の話とか、ちょっと前に流行ったカードゲーム系のアレとか構想だけあって書かれない奴ですはい
そんなものよりギディムの書き直しを進めないと……