いつ眠りについたのだったか。夢と現の狭間から、意識が力任せに引っ張り出されるような感覚を覚えた。
ふと気が付けば、見渡す限り炎の海。しかもなんか生理的にちょっと無理味を感じる嫌な臭いというか、気配というかそんなものも漂っている気がする。
原始人生活はいくら文明を推し進めても命の危険が伴う。
獰猛な獣を遠ざけても、火を焚いて明かりを確保しても、武器を拵えて天敵に備えてもそれは付いて回るのだ。
猛獣を遠ざけて、安心したのかそのノリで集落の外に出て捕食されるとか。火を焚いて明かりに感動したのか手を伸ばして火傷するとか。武器を拵えて調子に乗ってしまったのか振り回して怪我をするとか。
そう、現代において現場猫案件と呼ばれる無謀な行いである。
いやはや本当に無知って怖いね。想定するにも経験がいるんだな、というのをつくづく実感させられた気がする。でもね武器振り回すのは危ないって気付いてほしい。
そんなとき決まって、自分の中の何かが警笛を鳴らすのだ。
『ここ / これは危険だ』と。
この場所は、まさにそんな気配が充満していた。
そのとき、脳裏に電流奔る。
君はこの特異点の異常を解決するためにアラヤの遣わしたサーヴァントであり、その方法は君に一任されているよ。取り敢えずなんか原因排除すりゃ解決すると思うよ。あとなんか伝承にあった槍も付けといたよ。以上!
言語化するのは難しいのだが、何やら唐突にそんな使命を思い出した。
ありもしなかった用事を思い出して急用からやってくるとか何なんだ。もう許せるぞオイ。
意味の分からない怪電波に混乱しながら、頭は特異点、アラヤ、サーヴァントという単語から実に嫌な正解を導き出していく。俺こんな記憶力よかったかな、なんて益体もないことを考えるのは余裕ではなく現実逃避によるものだろう。
そしてチートで冴え渡った脳みそは自分の意思を完全に無視し、コンマ数秒のうちに事態のすべてを理解した。そして俺は地面に膝を突き頭を抱えた。
ここ型月世界、それもGrand Orderじゃねえか!
おそらくこの場所は、一番最初の特異点である炎上なんとか都市の冬木だろう。
転生以前の記憶を引きずり出すが、流石にもういい加減そのあたりの細かなことは覚えていない。確か聖杯を持ってるセイバーを成敗すればいいんだっけ?
いや無理でしょ、生前のチートはともかく魔術とか知らんし。原始人的には世界は神秘に満ちてたけど、流石にドラゴン的な生き物なんて見たことなかったぞ。精々めっちゃでっかいワニがいいところだ。なんなら俺は神秘に翻弄される側であって神秘に包まれた側じゃないんだが?
そこまで考えてふと、視界が燃え残ったガラス片へと向いた。
それと一緒に鮮やかな長い髪が視界の端で揺れる。
もうやめてくれ、俺のライフはもうゼロよ。そんなどうでもいいことを考えられる辺り、実は余裕があるのではないだろうか。
ガラス片に映っていたのは、それはもうかわいらしい美少女だった。
販促の! 都合!!
なぜ原始人から現代人ナイズされた美少女になっているのかは甚だ疑問だが、そりゃもう販促の都合ってことで納得するしかない。
いや、今の自分には紛れもない現実なのだ。変なメタ思考はやめよう。
依り代ちゃんが美少女だったりしたのかな、なんて考えて両腕を見ればそれは鈍い鉛色の反射光を返してみせた。その機械的な手足はすごく……未来的です。
わからん! 閉廷!!
もう考えるのは止めだ止め。一人で考え込んでもどうにもならないなら受け入れるしかない。俺はそれで一度、原始人を受け入れた男!
でも今の俺は! 美少女!! きゃっほい!!!
ふぅー、と長めのため息を吐き、一緒に送り込まれてきたらしいハルバードをヤケクソ気味に拾い上げた。
これを見るにどうも俺はランサーのサーヴァントらしい。エクストラクラスみたいな特別感あふれる存在ではないようだが、既存三騎士はそれはそれで癖がなくて安心感がある。
散々取り乱したが思考の海に溺れて溺死していられるほど、現状に余裕があるわけではないだろう。
ひとまず、ここにレイシフトしてくるであろうカルデアのマスター……名前なんて言ったかな。さすがに前々世の掠れた記憶で覚えてないが、そいつとの合流を目指すべきか。
こうしてサーヴァントになっているということは、カルデアについていけば俺のデータとかもあるだろう。
幸い、原始人的には槍はメインウェポンの一つだ。自分もそれなり程度には扱える。
最初期のクルミ割り石器時代にはそんなものはなかったのだが、結局これは発想の有無の問題だ。約二百数十万年の進歩を俺一人で一気に進めたと表現すれば一気にチート主人公感が出るが、概念を教えた後は他の奴のがうまく発展させていくのを見て枕を濡らしたものである。
気を取り直し、未だそれなりの数が立ち並ぶビル群に視線を向ければアーチャーが――居ない。
雑に誘い出せば手を出してくるだろうかと、近場をうろつくシャドウサーヴァントを派手に吹き飛ばしてもそれらしい気配すら見せない。
おかしいな、確かアーチャーがビルの上に陣取って哨戒に勤しんでいた覚えがあるのだが。
騒ぎを聞きつけ近寄って来たおかわりを雑に蹴り倒しながら、うろつくこと一時間余り。アーチャーどころかセイバーの気配すら感じない現状に、ようやっと事態を把握するに至った。
もうこれ、ファーストオーダーとっくに終わっとらん?
そんな疑念を抱きつつ、念のためと出しっぱなしにしてあった槍をストレージへと放り込んで、後ろから近寄ってきたシャドウサーヴァントにノールック裏拳を叩き込む。
なんだかんだ言ってもチート持ち主人公。アイテムストレージと鑑定は三種の神器である。あと一つについては諸説あるが、世界三大〇〇的なアレで人によって違うやつだろう。強いて言うなら成長系が多い気がする。
生前でもこのストレージには大変お世話になった。何せ家電製品なんてない原始時代、時間が経過しないストレージは事実上の冷蔵庫扱いだったのだ。これがなければ危うくなんかキモい幼虫を食べる羽目になるところだ。
さて、そんなことは今はいい。
ファーストオーダーが終わったというのに、特異点の異常を解消とはどういうことか。
割かし派手に暴れてみたが、寄ってくるのは雑魚ばかり。なんか山の上のお寺から行ける地下とやらを探してみたが、やっとの思いで探し当てたそこはもぬけの殻。
これは、出遅れましたねえ……。
どうしたものかと途方に暮れながら、寄ってくるシャドウサーヴァントを殴り倒した。
いや骨ならまだしもシャドウサーヴァントが多い。いい加減、キルスコアが3桁に届きそうなところで、それを見つけた。
遠目に見えた黒髪に、なんか現生人類っぽい立ち姿。耳を澄ませてみれば、何やら話し声が聞こえるところから察するにがれきに隠れているのかもう一人誰かいるらしい。この美少女機械ボディ、スペック半端ないな?
向こうはまだこちらに気づいていないようで、俺は手を振って声をかけた。しかし、その時は完全に失念していたのだ。
言語構造の違いというものを……。
その日、藤丸立花はドクターに頼まれて冬木に大量発生したシャドウサーヴァントの対応を請け負っていた。なんでも一体一体は大した強さではなく、ドクターでも倒せるかもしれないというほどの、本当に取るに足らない相手。最悪、支給している魔術礼装を使えば1、2体くらいなら君でも行けるとまで言われたほどの弱い相手だ。
そんな任務を請け負い、誰に同行を頼もうか迷っていると珍しい人物が手を挙げた。
アンリマユである。
自称最弱英霊。人間相手なら世界最強と豪語する、実のところよくわからない彼。
理由を聞いても、雑魚相手にキルスコアを稼ぐためなどとおどける始末。実際に任務に当たれば確かに他のサーヴァントと比較すれば見劣りするのは否めないものの、彼は卑下するほど弱いわけではなかった。
そしてあらかた片付け、あとは帰るだけとなったその時のこと。
どこかからフルートのような、管楽器らしき音色が聞こえた。
あまりに場違いな音が聞こえた方向を向けば、そこには両手を地面について絶望した様子の女性の姿。
どうも音源は彼女だったらしく、口を開けばフルートのような綺麗な音が聞こえてくる。ただ、なんとなく言わんとしたことは分かった気がした。
そう口の動きが明確に読めたのは、きっと彼女と自分の考えが一致していたからだろう。
『どうして……』
それがファーストコンタクト。
そして間違いなくその時の彼女は、そう言っていたのだった。
1話目と2話目のテイストがなんか違う問題。あると思います
前の話の冒頭でチートをもって転生したぜ!って言った割にチート全くなしでただ一般常識レベルの知識披露してただけってことに気づいて急遽増設しました。内訳はアイテムボックス、鑑定、アイデアロール確定成功です。なお目星はありません
これで詐欺は防げたのでヨシ!
ステータス関係の有無のアンケートです
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要る(ステータスとマテリアル)
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要る(ステータスとマテリアルとAI画像)
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いらない